商品やブランド、企業を対外的にアピールしていく上で欠かせないロゴマーク。伝えたいイメージを一目で印象付けられるよう、試行錯誤しながら、そのブランドの顔となるデザインが考えられ、形作られていきます。
元々、確固たるイメージが固まっているブランドであれば、イメージをデザイン化するにあたり、それほど迷う必要もありませんが、新しく立ち上げたばかりのブランドや、今までのイメージから脱却したいと考えているブランドの場合は、これから看板となるイメージを背負って立つロゴデザインを考えるのはとても大変な作業です。
メキシコにあるSeisTrece Studioは、ブランディングに特化したデザインスタジオ。主に国内にあるブランドや企業を顧客に、ブランドのイメージを伝えるビジュアルデザインや広告戦略を提供しています。
ブランディングの中でも、アイデンティティを構成する要素として主軸になるのが、ロゴマークのデザイン。SeisTrece Studioは、クライアントにブランディングの提案をする際、複数のロゴマークのデザインを考案しプレゼンテーションしています。一つのブランドをどのようにイメージを住み分けし、ビジュアルに落とし込んでいくのか。実例を見ながら考察していきましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, SeisTrece Studio! )
Grill Eat Repeat ― Facebookページのロゴデザイン
GrillEatRepeat・・・焼く・食べる・繰り返す。
グリル系の外食産業が持つFacebookページのロゴデザインです。ページのコンセプトをあらわすモチーフとなっているのが、グリルを象徴する炎の絵柄。こちらのパターンでは、「i」のカンマ部分の代わりに炎のモチーフが使われています。
シンプルなイラストながら、左右非対称に揺らめく炎は、ジューシーな肉や野菜をさらに美味しくするスパイスのように、ブランドのシンボルとして立派な役割を果たしています。
この一つめのデザイン案は、ブランド名を筆のような書き味で自由に流れるように描いています。ロゴタイプが主体のロゴデザインでありながら、柔軟で伸びやかな印象を受けるのは、大小強弱をつけた手書き調のフォントと、リズミカルな配列にポイントがあります。
GrillEatRepeatのロゴデザイン案、もう一つの提案は、炎のモチーフをメインとした、アイコンのようなデザインです。ロゴの中心に大きく炎のモチーフをシンボルマークとして据え、周りを円で囲み、シンプルなサンセリフ体でブランド名とスポンサー名を明記しています。
このロゴマーク単体では、名称を認知させるツールとしては少々物足りないかもしれませんが、炎のマーク=GrillEatRepeatという認識が成立していれば、一目でブランドを認知させるアイコン的な使い方ができます。
とくに、Facebookページであることを考えた時、スマートフォンなどのデジタルデバイスでのアプリアイコンやwebページのファビコンなど、小さく表記した時の認識しやすさは、ロゴデザインする際忘れてはならない要件の一つになります。
Yummer ― フードトラックのロゴデザイン作成例
日本でも時折見かける移動販売車。目を引く派手な装飾のトラックで食べ物を売り歩くこの業態は、日本以上に海外で多く見かけます。フードトラックと呼ばれ、人の集まる公園や学校、イベント会場などあちらこちらで人気を博しています。道行く人に興味を持ってもらい集客につなげるには、食べ物の匂いだけではなく、見た目のインパクトも大切です。
英語で美味しいを意味する「Yummy」からインスパイアされたと思しき「Yummer」。
シンボルマークに選ばれたのは、フォークのような形をした「Y」の文字。
「Y」の上側に開いた部分が「U」の字のように丸みを帯び、右側に少し傾斜しています。
シンボルマーク「Y」を先頭に、「ummer」が、頭文字の書体とは異なる、スクリプト体で綴られています。テイストの異なる書体ながら、同じように右斜め上方向に並んでいることで、ひとつの統一感を持ったロゴタイプとして機能しています。
丸みを帯びた「Y」と以下の抑揚あるスクリプト体が、カジュアルでPOPな印象を醸し出しています。
Oiko ―建築会社のロゴデザイン作成例
メキシコで10年以上続く住宅メーカーの「Oiko」。これまで別のアイデンティティで事業展開していましたが、並み居る競合メーカーの中で抜きに出るため、イメージの刷新をSeisTrece Studioに依頼しました。
イメージするコンセプトは、キャリアを積んだ信頼できる住宅メーカーであるという点。それに加え、現代の流れに柔軟に対応できる洗練された企業であるということ。
建築業界もデザイン業界と同じように、デザインのトレンドを上手く掴み、オリジナリティを尊重しながらも、新しい風を取り入れられる柔軟さと敏感なアンテナが求められます
一つめの案は、デザインのトレンドを取り入れたミニマルで大胆なロゴデザイン。
あえて「建築」や「住宅」という雰囲気は強調せず、企業としての姿勢をデザイン化したものです。太くシンプルな書体は、実直で信頼がおけるメーカーであることをあらわし、「O」の文字の上下に横線を置くことで、「O」を擬人化し、Face to Face で対応するコミュニケーションを大切にする企業であることをイメージしているのではないでしょうか。
二つめの案は、住宅メーカーらしく「屋根」をイメージしたシンボルマークをメインとしたロゴデザインです。
濃淡で変化をつけた4本のバーを斜めに傾け、反転させてコピーすることで、屋根の骨組みのようにデザインし、太字のロゴタイプと共に一つの家のような一体感のあるロゴマークを形成しています。
三つめの案は、これまでの案とは雰囲気が異なる、ファッションブランドのような華奢で洗練された雰囲気をもつロゴデザインです。
細身で装飾性の高いフォントを採用し、繋がれたリングのようなシンボルマークが、信頼できるパートナーであることを示唆しています。住宅メーカーは、建てた後も長く付き合う企業。信頼感を感じさせるイメージ作りは欠かせないファクターです。
そして最後に紹介するのが、採用されたロゴデザインです。
シンプルで力強いロゴタイプの上に、家そのものをイメージさせるキューブ。
安定感のある二つの要素はさりげなく信頼性と普遍性を表現しています。シンボルマークのキューブは、ネガティブスペースを上手く使い、背景と溶け込むフォルムで企業としての永続性を意味しています。
また、サイコロのように四角い家は、時代を超越した住宅の形を象徴しており、これから何年経っても色あせない、概念的な住宅のイメージを見事にデザインしています。
OIKOのためにデザインされた4つのロゴ。どれも甲乙つけがたい秀作揃いでしたが、やはり採用されたデザインが、企業の求める要件をすべて満たし、これから先も長く使い続けられるデザインであるといえるのではないでしょうか。
まとめ
言葉や思いには決まった形がありません。だからこそ、見えるものに表現しようとした時、さまざまな試行錯誤が生まれます。たどりつく答えは一つでも、その過程で真の意味に気がつくこともあるでしょう。
ロゴデザインも過程が大切です。はじめから決まった「一つ」を提示するよりも、可能性を広げ、さまざまな角度からアプローチしたデザインをカタチにすることで、最良の答えにたどり着けるのではないでしょうか。
design : SeisTrece Studio ( Mexico )
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