みなさまもご存知のように、人の視覚的要素として消費者の記憶に最も直結しているのが企業や商品、サービスなどのシンボルやロゴのデザインです。企業理念や消費者に対するメッセージを伝えるロゴは、ビジネスにおいても大きな効果と価値を生み出すもの。優れたロゴデザインは見た目が美しいだけではなく、商品やサービスのブランド性を的確に具現化したものであり、他社のものとは一線を画しつつ、見る人の記憶に残るようなものである必要があります。
ここ数年のロゴデザインのトレンドを見てみると、無駄な装飾を無くしたシンプルなものが世界中で好まれている傾向にあるようです。建築界の巨匠、ミース・ファン・デル・ローエが提唱した「Less is more(より少ないことはより豊かである)」という言葉がそのままぴったりと当てはまるロゴのデザインが現在の主流となっています。ある物に追加要素を加えたり、装飾で飾り立てたりするのではなく、基本となるものから余分なものを削ぎ落としていくことで、デザイン目的の本質を付いた新しく美しいロゴが次々と誕生しています。
ロゴの制作にはいくつかのデザインスタイルがあります
今回ご紹介するのは、北イタリアのピエモンテ州クネオ県を本拠にデザイン活動を展開しているグラフィックデザイナー Emanuele Abrate氏の制作例です。「シンプルで洗練されたロゴを生み出すデザイナー」として定評がある彼のロゴを通して、優れたロゴのスタイルについて考えてみましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Emanuele! )
スタイル1− Cute(可愛らしさ)
まず最初に見て頂きたいのはこちらのロゴマークです。
衣料品ブランドのロゴデザイン
『LEMONADE STAND』はアメリカ・ニューヨークに拠点を置く衣料品ブランド。グラフィカルなプリントとアップリケを取り入れたティーンエイジャー向けの衣料品を取り扱っています。名称のLEMONADE(レモネード)からレモンをモチーフとしたポップなロゴですね。
ペストリー&ベーカリーのロゴデザイン
一方、『PASTTICI’AMO』は、 ピエモンテ州・クネオ県BRA市にある、創業30年以上の歴史を持つペストリー&ベーカリーのお店です。こちらのロゴは、ペストリーへの愛『ハート』と『パティシエのコック帽』を組み合わせて作られています。
この二つのロゴは可愛らしさを前面に出したスタイル。馴染みやすい雰囲気のイラストを活用し、ソフトなイメージでユーザーに対して親近感を醸し出すロゴのスタイルです。
スタイル2− Cutting edge (先進性)
次は、 企業・サービスの名称やそのプロダクトに見られる、独特なタイポグラフィーを組み合わせたシャープで最新的なスタイルです。このスタイルの特色は、デザインの中に抽出した企業やサービスの特徴を盛り込んで作られるということです。Abrate氏は次の2つのロゴのデザインを担当しました。
レーシングドライバーのロゴデザイン
『DOMENICO SLOMBRINO』は、プロフェッショナルのレーシングドライバー。DOMENICOの頭文字『D』にレーシングドライバーに相応しくスピード感溢れたカットを施し、SLOMBRINOの『S』字も彷彿させるテイストに仕上げています。単一のシンボルながら、頭文字のDとSを同時にイメージさせる秀逸なデザインです。
3DCGアーティストのロゴデザイン
『MARTINO MASTROVITO』は、3DCGソフトを利用して平面状で表現されているものを立体的に形作るアーティストです。 MARTINO MASTROVITO の頭文字『MM』と3DモデラーであるMASTROVITO氏の仕事を表現した立方体を組み合わせたものですね。立方体の陰影をモノクロームカラーで表現した仕上がりとなっています。
スタイル3− Communicative(メッセージ性)
ロゴを一見しただけでサービスの内容がイメージできるものがメッセージスタイルのロゴです。ユーザーに伝えたいメッセージの内容を、いかに洗練して盛り込んでいくかがキーポイントとなります。
マンガスクールのロゴデザイン
『LUCCA MANGA SCHOOL』は、中央イタリアの都市Luccaにあるマンガスクールです。欧米での日本の漫画の人気は年々上昇しており、イタリアでも各地で漫画を学ぶ・描く講座が沢山見受けられます。このLUCCA MANGA SCHOOLもそのうちの一つ。年間50以上の講義を実施するアクティブな学校です。漫画を制作するのには欠かせない『鉛筆』、漫画発祥の地『日本』の国旗がモチーフとなったロゴデザインです。家型の鉛筆の輪郭からは『学校』もイメージさせられます。学校の内容が一目してわかる、まさにメッセージ型のロゴデザインです。
ピザ専門店のロゴデザイン
また、『Il CORSARO』は、ピザを専門とするレストランです。『Il CORSARO』はイタリア語で海賊の意味。この名称から、魚介類の美味しいピザが特徴のレストランであることが伺えます。ロゴのデザインは、カットされたピザと船の舵が組み合わさってできたもの。シンプルながらレストランの内容を的確に表したデザインです。
スタイル4− Clean&Cool (クリーン&クール)
次は、構成する要素やカラー・線の数を極力抑え、クリーンでシックな普遍的な存在感を打ち出しているロゴスタイルです。
アイスクリームメーカーのロゴデザイン
『IL GELATIERE』は、100パーセントのナチュラル素材で作っているアイスクリームメーカーです。GELATIEREの頭文字『G』を含んだアイスクリームの形を、エコカラーの緑のモノラインで構成したロゴですね。右上に配置された葉っぱが、軽快な感じを施すアクセントとなっています。
コスメティックブランドのロゴデザイン
『PHEME COSMETICS』は、コスメティックブランドです。こちらもモノラインで構成されており、頭文字の『P』と女性を表すシンボルの掛け合わせによって出来上がっています。
レストラン・バーのロゴデザイン
『CORALLO』は、レストラン・バーの名称です。『CORALLO』はイタリア語で珊瑚を意味します。珊瑚特有の赤い色で描いた、実にクールなロゴマークです。このロゴの特徴は、赤色部分と余白の面積がバランスよく構成されており、品位を感じさせる美しいデザインとなっています。
スタイル5− Creative (創造性)
最後は、見る人に企業・商品・サービスの特性を伝えながらも、インパクトを重視した記憶に残るクリエイティビティに富んだユニークなロゴスタイルです。
ソーシャル・コミュニティーのロゴデザイン
『PUNTI DI VISUAL』は、ビジュアル・アートに対するアイデアや意見を交換するソーシャル・コミュニティーです。グループ活動の本質を表す「ビジュアル」「洞察力」「物事を見抜く力」を表す『目』と、様々な意見が交わされるイメージを示した二つの『吹き出し』がベースとなって、このロゴは作られています。単純な円の組み合わせで構成されている形態ですが、象徴となるものをわかりやすくユニークな方法で簡略化し、視認性にも富んだ卓越したデザインです。
まとめ
Emanuele Abrate氏の制作例を見ながら、ロゴデザインのスタイルをご紹介してきました。ユーザーに正しい印象を与えるロゴは、一見してシンプルなものに見えたとしても、形やバランス、色彩・フォントなど、細部に渡って細かく配慮がされているものです。また、どのようなスタイルのロゴがプロジェクトに適応しているのか、の正確な判断も制作の成功を左右します。
design : Emanuele Abrate ( Italy )
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