グラフィックデザインの技法として、人気の高いのがフォトコラージュ。
一般的に「コラージュ」とは、現代絵画の技法の一つであり、フランス語の『collage=糊付け』から発しています。本来のコラージュは、紙媒体の書物や写真等のばらばらの素材を組み合わせて一つの作品を作りあげるという創作技法ですが、現在ではデジタルでの制作が可能となり、さらなる発展を遂げてきました。
レイアウトや配色を考慮しながら、画像の一部の切り抜き・貼り付けを施し、新たなイメージを創造するフォトコラージュは、日常ではありえない非現実的なモチーフ制作にはなくてはならない技法です。
実際の紙などを切り貼りするコラージュと違い、コンピューターで行うフォトコラージュは切り取った画像の大きさを自由に変形できたり、色味を変えることができたり、と細かい作業がコンピューター上で容易に行えるのがメリットです。
しかし、デザイン性に優れた作品を作り上げるか否かは、IllustratorやPhotoshopを万全に使いこなせることは言うまでもありませんが、選択画像の選定やそのカットの仕方、色調やレイアウトの調整など、デザイナーのセンスにかかってきます。
今回は、見る人を魅了する素晴らしいフォトコラージュ広告を次々と発表しているデザイナー、Rui Gonçalves 氏の作品を見てみましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Rui Gonçalves ! )
伝説の剣をモチーフにした広告デザイン
Rui Gonçalves氏は、スペイン、バルセロナを拠点に活動を展開しているグラフィックデザイナー。幼い時から絵画に興味を持ち続けて育ったそうです。2013年にポルトガルのリスボンの大学Universidade Lusíada de Lisboaのデザイン科を卒業後、フリーランスのデザイナーとして活動しています。
彼のデザインの特徴は、自然や生物をテーマにしたものが多いこと。自然界を形成する様々な事象は彼にとって最も関心があり、そこから受けるインスピレーションを上手に作品に刷り込んで制作活動をしています。独特なュ技法で作られた彼のデザインは、見る人の目を離さない、完成度の高いものばかりです。
very Legend has a Startは、1731年に創業開始したドイツの刃物メーカーZWILLING J.A. HENCKELS社の広告デザインプロジェクトです。
『Every Legend has a Start(全ての伝説にはスタートがある)』は中世の騎士道物語の中のフレーズの一つ。ZWILLING社の包丁を、岩をも刺すことのできた伝説の剣・エクスカリバーに見立て、この包丁の切れ味を表現している大変ウイットに富んだ広告です。
キッチン風景を背景に、まな板、ジャガイモ、トマト、ニンニク、バジルなどの画像を並べることより制作がスタート。包丁の鋭利な切れ味を彷彿させるみずみずしいカット面を強調するトマトなど、作品を構成する各モチーフがそれぞれ生き生きとした表情を見せられるよう細かい配慮がなされています。
大幅なレイアウトの決定後、全体の色調の調節や同系色でまとめられたキャッチコピー『Every Legend has a Start』のフレーズが配置され、最後に視覚的に安定するように各モチーフの陰影を施す作業を経て作品が完成。新鮮な食べ物に囲まれた明るいキッチンで使われる切れ味の素晴らしい包丁、というイメージが鮮明に伝わる広告デザインです。
保険の大切さを伝える広告デザイン
次は、Reliance Life Insurance社(生命・障害保険)への広告制作例です。
この広告は、海編と雪山編の二つのバージョンから成り立っています。どちらも保険の有り難さを感じさせられるストーリーを表現したモチーフですね。
まずは海編ですが、「サーファーが楽しむ爽やかで穏やかな海→その海底の中にじっと潜む大型のタコ→突然水面に現れたタコの足→危機に晒されてしまうサーファー」
雪山編は、「晴れた日の平穏な雪山→突然の雪崩→遭難→レスキュー隊の始動」というシークエンスを一見してイメージさせられます。
どちらのバージョンの広告も、海や雪山を一種の箱庭のように位置付けてモチーフが構成されているのも非常に興味深いです。
海底や雪山の下層をベースとし、海編では、『海面や海下のタコの存在』 『水上のタコの足』『逃げようとするサーファー』、雪山編では、『雪に覆われた大地』『雪煙の舞い上がる雪崩』『頂上に向かうレスキュー隊』がリアルに構成されています。まさに、異次元の世界を作りだすことのできるデジタルコラージュ技法を上手に利用した広告デザインです。
どちらの広告も青系色をベースカラーとし、彩度や明度を調整したカラーリングが施されています。
鮮やかな自然を味覚と結ぶ広告制作例
最後は、デンマークのシードル飲料Somersbyの広告制作例です。
『Narure Calling(自然が呼んでいる)』というキャッチコピーにもあるように、この広告の特徴は、実際の自然よりもより一層強い仮想的な自然を感じさせられる施されたデジタルワークにあります。
Somersbyを取り巻く爬虫類たちや植物のモチーフ画像は、オブジェクトの持つ各フォルムや色彩の特質を誇張しながら、より鮮明なものに作り上げられています。これらのモチーフと鬱蒼とした森林の中に差し込む太陽の光線を見事にマッチさせてレイアウトされた最終画像は、緑色を基調として全体が構成され、エコロジーでリラックス感溢れる様相に仕上がっています。
まとめ
秀逸なデジタルワークで幻想的な画像を創造するRui Gonçalves氏の広告デザインをご紹介しました。デザインセンスに溢れたレイアウトを展開するGonçalves氏のフォトコラージュは、クライアントはもちろんのこと、多くのデザイナーをも魅了するものではないでしょうか。
created by : Rui Gonçalves ( Portugal )
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