会社や商品のシンボルとなるロゴ。クオリティの高いロゴを作ることで、費用以上の効果を期待することができます。新商品の発売や、Webサイトの立ち上げ、新規子会社用など、意外と多くの場面で必要になるにも関わらず、どのように作ればいいのかわかりづらいのも事実です。
素敵なロゴを作るには、これまでの魅力的なロゴデザインから学ぶことも大切です。今回はタジキスタンのフリーランスデザイナー Shavcat Sharipov さんの作成したロゴマークをご紹介します。※記事掲載はデザイナーに許諾を得ています。(Thank you Shavcat !!)
オーソドックスなシンボル+ロゴタイプ
ロゴマークの基本形となるのは、シンボルとなる図形とロゴタイプとよばれる文字部分を組み合わせたデザインです。図形の持つ一瞬でメッセージを伝えるイメージ効果と、文字による多くの情報伝達力、双方が相乗的に機能する効果が期待できます。
オンラインバザーのロゴマークであるこちらは、家やアイコンに似た、温かみのあるシンボルマークで興味を惹きつけ、隣の「bozor」という文字がコンセプトをわかりやすく伝えてくれます。シンプルでありながら、効果的なロゴマークです。青と黄色を組み合わせて、控えめながらコントラストをはっきりさせ、ポイントを目立たせる効果を加えられています。さりげなく加えられたオレンジ色が、家のドアのような箇所に用いられていることで、家庭的でありながらにぎやかであたたかい印象を与えてくれます。ロゴを作ろうと思ったら、この基本形からスタートしてみると、考えやすいかもしれません。
図形部分は文字をモチーフにするのも定番
建築材料のサプライヤーであるこちらの会社のロゴデザインは、図形部分が「R」という文字になっています。白黒という定番で力強いモノトーンカラーも印象的です。全体的に灰色調の中に、赤・黒・白といった強いカラーが用いられることで、人目を引きつける引力のあるデザインに仕上がっています。フォント自体も工夫されており、重厚で頑丈そうな頼りがいのあるブランドコンセプトを上手く伝えてくれるロゴマークと言えます。
「R」といアルファベットは、多くの人にとってなじみやすいわかりやすい文字です。知名度が向上するにつれて「R」と言えば「ROMSAR」と言うように、人々にブランド名を認知させる効果も期待できます。
以前のロゴマークと見比べてみると、可読性が格段に向上し、モダンなデザインへと変貌ととげていることが分かります。※比較ロゴは、キリル文字(ロシア語)バージョンです。ROMSARはキリル文字で表記するとPOMCAPとなります。
工夫次第で古典的デザインも生まれ変わる
ハートマークは、古代ギリシャの時代から使われてきた世界中の人にお馴染みのシンボルです。知名度が極めて高い分、使用頻度も高く、一見すると見慣れていて紋切り型のつまらない印象を与えてしまうかもしれません。しかし、古典的な形にこそ、デザイナーの工夫が光ります。
こちらのロゴマークは、交差する部分があえて交わらないことで、他にないデザインを作り出しています。人が腕を広げているようにも、拍手しているようにも見える、何かを包み込むようなシンボルマークです。デザインスタジオならではの、一見平凡な形を新しく生まれ変わらせた個性的なデザインです。腕の良さを感じさせます。
ロゴタイプだけで勝負
文字だけを組み合わせたユニークなデザインです。ファッションデザイナーのロゴらしく、リボンのような横線が全体に統一感と動きを持たせていて見ていて楽しい印象を覚えます。クラシカルで安らぎを感じされる茶色を効果的に使っているところもポイントです。古いようで新しい、個性的なデザインに仕上がっています。
ロゴマークだからといって、図形+文字の形にこだわりすぎる必要はありません。大切なのは、そのロゴに込められたメッセージを、素早く的確に見た人に伝えることです。その為に、あえて文字だけで勝負するのも有効な手法の一つと言えるででしょう。完成されたロゴならば、たとえ文字だけでも、図形のようなイメージ力を付加させることが可能です。うまく機能すれば、一気にイメージと文字情報を伝えることができると言えます。一挙両得のデザインと言えるでしょう。
こちらは「RPHHAL」の文字の中央にあたるHの横線がつながっていることで、どっしりした安定感を感じさせますし、医療関係のロゴらしくベットが図形化されたデザインにも見えます。一見シンプルなようで工夫をこらしたデザインに仕上げている点が見事です。
全体のテイストを揃えよう
宝石店のロゴマークであるこちらは、よく見ると情報が多いです。しかし、パッと見た第一印象はむしろスッキリまとまってシンプルと言えます。繊細な装飾のシンボルとポップな書体は一見マッチしないように思えるかもしれませんが、シンボルの角を取り、丸みを帯びさせることで、違和感のない組み合わせになっています。
図案は1つだけ…なんてことはない!
こちらのロゴデザインは、文字部分が遊び心に飛んでいますね。若葉を感じさせるE、スプーンとフォークのようなX、鍵のようなP、タイヤのようなO。実に様々な図案が効果的に用いられています。図案が多いことで伝わってくるるメッセージも飛躍的に多くなると言えるでしょう。反面、一歩間違うとデザインがうるさくなってしまい、人に敬遠されかねません。対してこちらは、文字部分にうまく図案を当て込むことで、一つのまとまりを感じさせながらも、愉快なデザインに仕上げている好例です。このロゴは「国際農業・食品・住宅・自動車博覧会」のロゴですので、まさにこのイベントを体現していると言えるでしょう。
図案というとついつい1つだけしか使えないと思い込んでいる方もいるかもしれません。しかし、デザインは自由なのです。調和が取れていれば、枠にとらわれず新しいロゴを生み出すことができます。頭が固くなっているとつい可能性を狭めてしまうこともあります。そんな時はこちらのロゴを思い出してみましょう。自分の中の枠をとっぱらうと、様々な方向性が見えてきますよ。
シンボルがあれば、多国籍でも大丈夫
IT企業のロゴマークです。文字だけに注目すると、一瞬別のロゴかな?と思いかねません。しかし、統一するシンボルマークがあることで企業のアイデンティティとして同一性を感じさせることが出来ます。ワールドワイドに活動することが予想される貿易企業や商社は、シンボルマークがあると何かと便利かもしれません。
“読みにくさ”もデザイン
一見よくわからないデザインのロゴです。しかし印象的な金色とともに、なぜか目が惹かれる力強さを持っています。こちらは、金を取り扱う会社のロゴマークです。SBSというブランドを表す文字がまるで金塊を使ったかのように豪華に彩られています。金色には、もともと成功や高級、貴重といった人が求めてやまないイメージを連想させる効果があります。
ロゴにおいて大切なのは、ひと目でブランドのコンセプトを伝えることです。あえて読みやすさを二の次にし、間に空白がないほど金塊に似た文字を敷き詰めることで、企業サービスを表現しています。重厚になりすぎない、最近のフラットなデザインを取り入れている点も注目すべきポイントです。金を扱う会社ならではのお客様を引き寄せるデザインと言えるでしょう。
シンボルのみで勝負
こちらはどんな会社のロゴでしょうか?非常に分かりやすいですね。運送会社のロゴです。人が何かを急いで運んでいることがよくわかります。よく見ると、丸い黄色の上の円に描かれた人には影が付いており、立体的でより疾走感のあるデザインが作られています。ロゴにおいて「どんなことを感じ取ってもらいたいか?」は非常に重要なポイントです。
このロゴマークを見たとき、人は「スピード」を感じ取ってくれるでしょう。また、足が交差するように急いで見えるのに対して、手に持った赤い箱のような四角形は、腕をまっすぐ伸ばし、大切そうに運ばれています。「丁寧」「しっかり届けてくれそう」といったイメージを受け取る人も多いでしょう。簡単そうに見えて、ロゴデザイナーの緻密な計算が見えてくるデザインです。
人の心理を利用したロゴ
ボタンがあると押したくなりませんか?
こちらのロゴデザインは、何かのスイッチのように見えます。思わず押せるか試してみたくなるような遊び心に富んだデザインです。単純に見た目に面白いだけでなく、人間の好奇心を絶妙に刺激したくなる印象的な形に仕上がっています。背景が落ち着いた深い青の中に、ポッと浮かびあがっているような作り方もうまいと言えるでしょう。青と黄色は補色色相配色の関係になっており、はっきりしたコントラストを生み出す効果があります。目立たせるという意味では抜群の配色です。
シンボルをロゴタイプに組み込んでしまう
こちらのロゴマークは、図形と文字が合体したような不思議な印象を与えています。オンライン関連サービスらしく、まるでeの文字が人のようにしゃべっているように見えます。それは次のRの文字の丸い部分をうまく吹き出しのように見せる工夫によるところが大きいでしょう。深い青に水色という目立ちにくい配色の中に白い部分が印象的に浮き上がって見えます。
一見文字だけのように見えて、図形部分も巧妙に組み合わさっている実にユニークなデザインです。かぶせるように使用したり、融合させるデザインに仕上げると、物語のような深みを感じさせる個性的なロゴに生まれ変わらせることができます。製作者の遊び心を感じさせる楽しいデザインと言えます。
一見すると、赤い図形部分は文字部分へ誘導する矢印のようにも見えます。しかし、実はこちらは全体で「FFPSD」という1つのブランド文字を形成しています。FFという部分をうまく象徴化し、図形であり文字という工夫の上に、さらに全体で1つを表すというテクニックが用いられている力作です。意味が分かって図形部分を見ると確かに「F」の字を見つけることができます。1粒で2度美味しいような、探究心をくすぐるデザインは、製作者のセンスの良さと遊び心を感じさせると言えます。
モノグラムは人気の手法
青い図形部分は「FW」がシンボリックに昇華したデザインです。ブランド名である「FORWEB」のFとWが上手に組み合わさっています。キーワードから連想される形を図形にあしらう方法もありますが、このように文字を図形化してしまう方法も面白いですね。複数の文字をこのように組み合わせる手法をモノグラムと言います。
込められている意味が複合的なので、一度意味がわかると忘れられない印象的なデザインに仕上がっています。謎解きのような楽しさも感じさせてくれるといえるでしょう。使用されている配色やフォントを見ても、一見地味な基本形が用いられていると言えます。これを個性的にしているのはWの使い方です。他にはないユニークなWの図形部分が、このロゴを他から際立たせています。大人しいようでいながら、人目を引きつける不思議なロゴデザインです。明るい色に頼らず見せる工夫は、お見事と言えるでしょう。
背景もブランディングの一部
工夫された文字やシンボルマークも印象的ですが、何より個性的なのはエレガンスな背景のデザインと言えるでしょう。宝石店のロゴマークらしく、ラグジュアリーな印象を際立たせています。ロゴマークの部分には、よりカットの細かいルビーのような配色が用いられており、ネックレスのような形と合わせて、一体感を生み出しています。
赤は情熱的な印象がありますが、あえてクラシカルな赤い色を用いることで、上品で落ち着いた仕上がりにしている点も美しいです。
落ち着いた色も魅力的
全体的に清々しいロゴマークです。シンプルなデザインもそうですが、配色が工夫されています。背景の水色はフレッシュで若々しい印象のようにも見え、同時に安心感と信頼を象徴する落ち着きも感じさせる不思議と目を引く色と言えるでしょう。あえてロゴマーク部分に濃い青や水色を水しぶきのように配置することで、控えめでありながら個性的なバランスのよいデザインへと昇華しています。落ち着いた色合いでも充分人目を引きつける良作と言えるでしょう。
日本には文様に代表される、完成された図様がそこかしこに見受けられます。最後にご紹介するこちらのロゴマークは、色合いも黒と白に近く、デザインは雪マークに似て、作りもロゴマークの基本形に沿っています。1つ1つの要素を見ると地味なように感じますが、全体を見ると、ITエキスポらしいスタイリッシュな印象を与えてくれます。伝わってくるメッセージも力強いです。
まったく新しいデザインを1から生み出そうとするのは大変です。しかし、使い古されたように見える古典的な図形デザインでさえ、ひと工夫加えたり新しい角度からみることで、新鮮な印象を与えるロゴに生まれ変わらせることは可能です。身近なロゴマークにあなたなりのアレンジが加わると、新しい世界が広がることもありますよ。
Designer : Shavcat Sharipov (Tajikistan)
・この記事は制作者に許諾を得て掲載しています。
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