
ロゴマークをデザインする時、シンボルとなるモチーフは、大きく分けると「文字」か「絵柄」、またはその2つの組み合わせのいずれかになります。文字がモチーフとなる場合、よくあるのが、頭文字や2~3文字のイニシャルをデザイン化する方法です。この方法で数えきれないほどのブランドのロゴマークがデザインされ、世の中にリリースされてきました。例えば「M」という一字をデザイン化したロゴマークは、世の中に何通りあるでしょう。おそらく、知ることが叶わないほどたくさんのデザインが存在しているはずです。
それほど数多くの文字を使ったロゴマークが存在しながらも、同様の手法のロゴデザインが後を絶たないのは、ブランドのアイデンテイティを示すのに文字は優れた記号であり、多くの人に共通認識を持ってもらえるからです。また、そのブランドのコンセプトに合わせた装飾は、ブランドの数だけあるといっても過言ではありません。
アメリカのカリフォルニアにあるデザイン事務所 Marks&Maker は、文字を使った印象深いロゴマークをいくつもデザインし、そのロゴマークを起点に数多くのブランディングを手掛けています。彼らが、文字を使ってブランドの個性をどのように引き出しているのか。実例を見ながら考察していきましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Marks and Maker! )
「文字を印象的に用いる」ロゴの設計原則は「1つの処理だけで差異を作る」こと
この事例集のロゴが「文字が印象的」と感じられるのは、既存のフォントにたった1つの処理(1画だけ太くする、1文字だけ色を変える、1箇所だけ角度をつけるなど)を加えることで、「既視感のない見え方」を実現しているからです。
文字を印象的にしようとして複数の処理を同時に加えると、文字が過度に装飾的になり可読性が落ちます。「1つだけの処理」に絞ることで、「読める」と「印象的」の両方を維持できます。この「1処理だけ」の制約が、文字を使ったロゴ設計の実用的な原則です。
機動力と医学的要素を反映した整骨院のロゴデザイン作成例

「Mobile Chiro Care」は、その名の通り移動式の整骨院です。バスほどの大きさのRV車を改造し、車内で施術ができるようにしたこの一風変わった車は、海を愛する女性オーナーの理想をカタチにした整骨院で、カリフォルニアのビーチで地元のサーファーを施術したり、整骨院に通うことが困難な人たちにも施術を提供することができます。
移動式整骨院のロゴデザイン


ロゴデザインの中心になっているのは、ブランド名の頭文字「M」。医療をイメージさせるグリーンでシンプルに描き、その周りを2つの「C」のような円弧で囲っています。「M」「C」「C」・・・3つ合わせると「Mobile Chiro Care」のイニシャルになります。
この2つの円弧はRV車のタイヤを意味し、どこにでも移動可能な機動力の高さを表現しています。
ブランドツールに描かれる曲線デザインの意味とは


ロゴデザインをあしらったレターセットやカードなど、さまざまなツールがデザインされました。ロゴの上の方に波のような模様が描かれていますが、これが何を意味するかおわかりになるでしょうか?

答えは、人の背骨が描くカーブです。「S字」と表現されるこのカーブですが、背骨の場所ごとにその長さは異なり、それぞれのカーブを抜きだし繋げたものが、あの波模様になっています。
緩やかで規則的なカーブは、見るだけで不思議な落ち着きを感じさせます。元になっているのが、人の支柱とも言える背骨のカーブなのですから、その感覚にも合点がいきますね。
羅針盤をモチーフにしたWebサイトのロゴデザイン作成例

「Jfaye Home」は、家事が楽しくなる「家づくり」をテーマにした、ブログ形式のwebサイト。ホームアドバイザーである「Jessica」が綴るコラムを通し、家づくりのノウハウが学べる仕組みになっています。

シンボルマークのモチーフになったのは、イニシャルの「J」と「F」。「J」の文字の上に輝くのは、海図や地図などで方角を表わす「羅針盤」に用いられる「羅針図」です。家事や暮らしについて詳しく書かれたこのサイトは、まさにユーザーの生活の羅針盤となり得る存在。イニシャルとサイトのコンセプトを掛け合わせ、上手くロゴデザインに仕上げています。
カテゴリー(テーマ)毎に変化するロゴ

さらに、サイト内で記事をカテゴライズするため、シンボルマークをベースにしたアイコンが制作されました。「J」の上にある羅針図をさまざまな図形に変えることで、カテゴリーごとのシンボルマークとしての役割を持たせ、各サイトに誘導するよう配置されています。
ロゴを活用したノベルティの展開例

シンボルマークをプリントしたノベルティグッズなども作られ、シンプルでセンスのよい暮らしのアイコンとして役割を果たしています。
宝石の複雑なデザインにインスパイアされたジュエリーメーカーのロゴデザイン作成例

「Courtney Kaye」は、大胆で複雑なデザインが特徴的なエレガントなジュエリーブランド。その非日常的な美しさは、多くの大人の女性を魅了しています。
ブランドのイニシャルを用いたロゴデザイン

そんな「Courtney Kaye」のシンボルマークとなったのは、イニシャル「C」と「K」。
「C」の中にすっぽりと「K」が収まり、まるでペンダントヘッドのようなデザインになっています。デザインの参考にしたのは、ジュエリーによく見られるインターロッキングなデザイン。

とくに「Courtney Kaye」は、大ぶりなアクセサリーが多く、このロゴマークのように図柄を描くようなジュエリーが多くデザインされています。
ブランドのカラーについて


ロゴマークのカラーリングは、黒地にグレー。シックに徹した無彩色のコンビネーションで、ジュエリーの煌びやかさを最大限に引き出します。


ロゴデザインとカラーパターンは、パンフレットやタグ、ペーパーバッグなどにデザインされ、ジュエリーとの強いコントラストで、一層、モダンに美しく見えます。
文字だけのロゴ(ワードマーク)が「シンボルマーク付きのロゴ」より有利な場面
この事例集に見られる「文字だけで構成されたロゴ(ワードマーク)」は、シンボルマーク付きのロゴに比べて「ブランド名が直接読める」という利点があります。
認知度が低い段階では、シンボルマークだけ見ても「何のブランドか」がわかりません。ワードマークなら、ロゴを見ただけでブランド名が読める。新規ブランドや認知度がまだ低い段階では、ワードマークの方がブランド名の認知を早く獲得できます。認知度が十分に高まった段階で初めて、シンボルマーク単体での運用が機能し始めます。
まとめ
文字を使ったロゴマークは、ロゴデザインにおいて定番のスタイルです。しかし、どれだけ時が経っても、どれだけ数が増えても、この手法がなくなることはないでしょう。なぜなら同じイニシャルや頭文字のブランドがあっても、そのブランドの個性は千差万別で、そのデザイン表現の仕方にも数多のパターンがあるからです。
今回ご紹介したMarks and Makerのデザインをとっても、ユニークな角度から発想したロゴデザインや、商品とのコントラストを視野に入れたロゴデザインなど、ブランドによってデザインアプローチを適宜変え、ブランドの価値がもっとも魅力的に見える形態をチョイスしていました。
文字を使ったロゴデザインは、ブランドの名前を覚えてもらうには非常に有効なデザイン方法です。どのようなパターンのデザインスタイルを選択しても、大切なのはそのブランドの魅力を伝えられるデザインであること。ロゴをデザインする際は、商品との相性や競合と重ならない表現の仕方などさまざまな視点から考えることが大切ですね。
design : Marks and Maker ( USA )
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