多くの有名企業で進められてるブランディングの方向性に、「Debranding(デ・ブランディング)」というものが挙げられます。「Debranding(デ・ブランディング)」はまだ日本では聞き馴染みのない言葉だと思いますが、特にB to Cの企業においてこの流れは盛んに起こっています。
「Debranding(デ・ブランディング)」とは
「Debranding(デ・ブランディング)」は大きく分けて2つの定義・使われ方が存在します。
1つ目は、「脱・企業らしさ」を演出する事です。
広告戦略において、ロゴマークから「社名」を切り離し、企業のロゴを消費者にとってより身近に感じられるようにする試みと言えます。企業のロゴと言えば、シンボルマーク+会社名という安定感のある組み合わせがセオリーでした。しかし、デザインを通じたコミュニケーションの形は変化し続けており、多くの企業は「企業然」とした姿勢から、「顧客に寄添う」姿勢へと変化を遂げつつあります。
最近では、マスターカードのロゴリニューアルがその典型例と言えます。
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マスターカードのロゴは、二つのシンプルな円の組み合わせに進化を遂げました。
また身近な所ではスターバックスのロゴのリニューアルも有名です。最早、どこにもスターバックスとは書かれていません。
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ちなみに、スターバックスの旧ロゴはこんな感じでした。
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この変貌は、「Debranding(デ・ブランディング)」の完璧な例と言われています。消費者にアピールする看板・商品にのみセイレーンのロゴを残し、スターバックスは見事に地域に溶け込みました。
このような「Debranding(デ・ブランディング)」には心理学的な意図があります。より企業らしさを控えめにすることで、顧客が身近さを感じることに加えて、「先進的な考え方」を持つ会社であることを伝えることが出来るためです。既に世界的に周知されているブランド・企業でなければ、逆効果になってしまう可能性もあります。つまり、「Debranding(デ・ブランディング)」が成功している企業は、世界的に認められているとも言えるでしょう。
では、もう1つの「Debranding(デ・ブランディング)」とは何でしょうか。
2つ目は、旧来のブランド戦略からの脱却です。
業界のトップを走るブランドや企業を私たちは自然と知っているように思いますが、そう思えるのは、その企業が莫大な費用をかけて広告戦略を行っているためです。しかし、そうした有名ブランドが、ノーネームブランドに浸食されてきているという実態があります。
アメリカのある調査によると、広告戦略や開発に多くの費用を費やす大手ブランドの医薬品も、後発のジェネリック医薬品も、満足度にさしたる違いはなく、86%もの人がジェネリック医薬品の購入を続けることに興味を示したそうです。
つまり消費者は、大規模なブランディングや広告キャンペーンにはあまり影響を受けていなかったと言う事です。これは、ジェネリックはあくまでローエンド製品であり、ブランド医薬品は意識の高いハイエンドな消費者向けという、企業の仮定を覆す結果でした。
またスーパーマーケットにおいても、1980年代により手頃な価格のノーブランド商品が台頭し、さしたる宣伝戦略もなく市場シェアを獲得していきました。ノーブランド商品は、ブランド力の恩恵を受けることなく、主要ブランド商品の収益性に脅威を与え続けたのです。
その結果、旧来のブランド意識を考え直し、「ブランド」を維持するために高い広告費用を払うのではなく、広告を排除し、利益率を向上させる戦略が生まれました。これが2つ目の「Debranding(デ・ブランディング)」です。
まとめ
インスタグラムの広告らしさのない企業アカウントや、オウンドメディアを運営する背景には、上記のような「Debranding(デ・ブランディング)」戦略が隠れていると言えそうです。不特定多数をターゲットとした大々的な宣伝はもう古く、より顧客と緊密なコミュニケーションを取れるものが好ましい時代なのかもしれません。
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