みなさんはポスターをデザインする際、どんなことを重視されますか。格好の良い洗練されたものや可愛らしく親近感が持てるもの等、ポスターのテイストには色々なタイプがあります。しかし、いくら視覚的に素晴らしいポスターができたとしても、人の目に留まらないポスターでは意味がありません。
見る人を惹きつけ記憶に残す宣伝効果と、きちんとした情報の伝達を担うのがポスターの役割です。何を伝えたいのか、どんな価値があるのかを織り込みながら、人の目に飛び込んでいくような効果的なレイアウトを施したポスターを作り上げることがポスターデザインの重要ポイントです。
アメリカ合衆国中西部ウィスコンシン州メノモニー市を拠点にグラフィックデザイン活動を展開している Collin Garcia 氏は、伝達内容に合ったモチーフや鮮やかな色やメリハリのある色遣いでインパクトのあるポスターを多数制作しています。 彼の仕事を見てみましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Collin ! )
ウィスコンシン大学 グラフィックデザイン展のポスターデザイン
こちらの作品はウィスコンシン大学における春のグラフィックデザイン展『Undoing Design』のポスターです。展覧会は『Undoing Design(原点に回帰するデザイン)』をテーマとし、日常生活の様々な事象を基盤とし、Undoing Designを通して、ライフスタイルをいかに豊かなものに変換させていくことができるのかを問う展覧会です。
ポスターデザインの制作プロセス
Undoing Designに対するコンセプトとして、「様々な事象を体験し時間をかけて経験を蓄積・理解することで、複雑な問題を解決する糸口を見つけることができたり、新鮮なアイデアや新しい視点を見いだすことができたりする。」とGarcia氏は提唱しています。この考え方がポスターのベースモチーフとして採用されました。 豊富な体験や経験を意味するレイヤーを用いてUNDOING の各大文字を構成し、3Dで表現。この3D文字を積み木を並べるように配置し展覧会名称を組み立て、メインモチーフとしてポスターのセンターにレイアウトされています。
ポスターのカラーリングについて
ポスターのカラーリングを見てみましょう。 メインモチーフの基本カラーリングには、UNDOINGにはブルー、DESIGNには彩度の高いオレンジを採用。メインモチーフ内に挿入された展覧会の日程や時間帯、場所の情報にもこの二色が使われていますね。
アピール感の高いメインモチーフに加え、このポスターの視認性をさらに上昇させているのがポスターのバックカラーです。鮮やかなイエロー、ブルー、グリーンの用紙にメインモチーフが配され、遠くからでも認識できるカラーリングが施されています。 普通、これだけの彩度の高いカラーの組み合せとなると統一性に欠けるケースが多いのですが、この作品に至っては一体感を感じられるテイストに仕上がっています。
スクリーン印刷を用いた印刷過程
この作品のもう一つの特徴は、スクリーンプリントで作られた制作工程にあります。 スクリーンプリントは、ステンシルや型紙を使用した染物に見られる技法を起源に持ち、一色ごと版を起こしてインクで刷るプリント方法です。19世紀にヨーロッパでその技術が考案され、20世紀初頭にイギリスでスクリーンプリント技術として確立されました。素材を選ばず複数の印刷が可能で、近年に至っては現代アートやファッションの分野にも深く浸透しているプリントです。
Garcia氏は、手描きスケッチから行うトラディショナルな方法に加え、版画やデジタルレンダリングなど様々な方法で作品を仕上げているデザイナーです。伝統的な木彫りのアート、ストリートアート、シュールレアリズムアートからデザインインスピレーションを受けることが多いと言及する彼。その制作に対するモットーは、プリントやデジタルの技術面での新しいスタイルの探求を続け、作品の中にユニークな美を取り入れることだそうです。 Undoing Designのポスターは一色一色、一枚一枚、手刷りで出来ています。カラー用紙からメインモチーフ部分に白抜きをさせる版、ブルー部分の版、オレンジ部分の版と、多層のレイヤーを施して作られたUNDOINGの文字の成り立ちとリンクした制作工程です。
ポスターの構成要素は他のデザイン媒体であるリーフレットやWebサイトデザインにも展開され、一貫したデザイン性を保っています。
警察の行き過ぎた権力に警鐘を鳴らすポスターデザイン
こちらは、アメリカ合衆国で警察の行き過ぎた武力行使を調査する機関『The Guardian』による、残虐行為を警告するためのキャンペーン『The Counted』のポスターシリーズです。 ブルー、グレー、赤色をバックに、白色で表現された警察官と黒色の被害者の一般市民のイラストレーションで構成されているポスターです。
それぞれ、「過剰な力は法律に反する」「野蛮な警察は法律に反する」「偽の訴訟は法律に反する」のキャッチコピーが下部に配置されています。
ポスターデザインの細部に注目
このシリーズの特徴は何と言っても警察官と一般市民の巧みなイラストレーションです。『Undoing Design』同様、こちらもスクリーンプリントで制作されており、塗りつぶしではなく掠れた表現を施し、キャンペーンの内容に反映したどことなくレトロな風貌でやるせない寒々しいテイストを作り上げています。
力強い主張をイメージさせるキャッチコピーの書体の選択や、イラストレーションと背面の人の目を引くカラーリングの仕方など、まさにポスター制作のお手本となるようなデザインです。
まとめ
一見して瞬時に興味を引き、その後もう一度ゆっくり内容を見てみよう、という気持ちにさせられるのがCollin Garcia氏のポスターデザインの特徴です。 主張すべき内容をしっかりと考察し、高いデザイン性でまとめ上げる彼の技法は、ポスターを制作するデザイナーの参考になることでしょう。
design : Collin Garcia ( USA )
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