Soho(ソーホー)といえば、英国ロンドンでもっとも有名なエリアのひとつです。そのソーホーで1807年、Mr. Andrew Pears(アンドリュー・ピアーズ氏)が透明な石鹸をつくることに成功しました。彼の石鹸づくりは「すべての不純物や有害物質から分離する不思議な化学的プロセス」でした。
以来、イギリスでピアーズの石鹸が使われ続けています。
このコラムではPears Soapの魅力に迫ります。歴史、石鹸づくりへのプライドと哲学、そしてPears Soapの英字がシンプルで引きたつパッケージデザインとともに紹介します。
プレミアム感のあるPears Soapのシンプルなパッケージデザイン
石鹸といえば以前は固形のものが主流でした。今では液体のもの、泡状のものと選択肢が増えました。
様々なタイプやブランドの石鹸があるなか、洗浄力の高さ、肌への負担が少ない、人工的に作られる合成界面活性剤が入っていないため環境に優しいといったメリットから根強い固形石鹸ファンがいます。
Pears Soap(ピアーズ・ソープ)も液体のボディウォッシュやハンドウォッシュがあるものの、やはり代表と言える石鹸は固形のものです。
ピアーズの固形石鹸は3タイプ、天然オイル配合ピュア&ジェントルソープ、ミントエキス配合ジェルミシールドソープ、レモン花エキス配合オイルクリアソープと揃っています。
ここで、天然オイル配合ピュア&ジェントルソープのパッケージデザインを見てみましょう。
パッケージは白をベースに中央に透明感のある琥珀色の石鹸と商品名、そして左肩にPearsのロゴ、ロゴの下にはEST.1807が配置されています。使われている書体には美しいシンプルさを感じます。
グローバルクリエイティブエージェンシーSid Leeによるパッケージデザインは誠実さ、純粋さ、透明性そして伝統が核になっています。
紙の箱には質感を持たせ、石鹸の透明感を強調するためにエンボス加工にしプレミアム感を演出。この演出によって、本物思考の消費者にアピールします。石鹸は光が当たっているかのように見え、ペアーズの特徴である透明感を綺麗に表現するとともに伝統を大切にする姿勢が示され、消費者にこの石鹸が本物で信頼できることを訴えます。
215年の歴史に裏づけされたPears Soap
ペアーズのウェブサイト上にあるそれぞれの商品説明には、「独自の成型工程を得て純粋な透明感がでるまで熟成される。ピアーズの石鹸は今もなお手作業で仕上げられ、目で確認されている。」と共通して書かれています。
今もなお、とありますが、これは1807年の創業以来という長い年月を指し、そのため文化遺産とも呼べる伝統に基づいたピアーズならではのコピーになっているのです。
一方、ペアーズのインスタグラムを見ると、「Just call us soap aficionados」(私たちは石鹸の愛好家です)とあり、215年間ピアーズがどう石鹸づくりに向き合ってきたのか感じられる投稿となっています。
Pears Soapの哲学は「優しい石鹸づくり」
アンドリュー・ピアーズ氏は石鹸づくりを始める前、ソーホーで理髪店を開きました。ソーホーというエリアの特徴から、多くの裕福な顧客を獲得します。今でも階級制度が残る英国ですが、1800年初頭のロンドンでピアーズ氏は繊細で白い顔立ち、そしてデリケートな肌を持つ上流階級の人のために優しい石鹸が必要だと考えました。
試行錯誤を重ねるピアーズ氏は不純物を取り除き、石鹸素地を精製、そこに庭の花の繊細な香りを加える方法を発見します。これこそピアーズの石鹸であり、高品質で透明なものが出来あがったのです。
今も受け継がれる製造方法、それはローズマリー、シダー、タイムなどのハーブの香りと天然オイル・ピュアグリセリンを組みあわせ、2ヵ月以上熟成する方法です。この方法は200年以上経った今でも受け継がれています。
ひとしきり便利で合理的なもので溢れる世界になった今、持続可能なもの、エシカルなものが求められる時代になりました。この点を考えても、ピアーズが信頼されるブランドと言えるでしょう。
スピーディに製造することができるようになった現在でも、ピアーズでは一つひとつ手作業で磨き上げ面取りがされています。最終チェックは光を当てて欠点がないか目で確認というやり方です。こういう方法で作られている石鹸と知ることは、使う側になってみれば嬉しい点ではないでしょうか。
215年も前にピアーズ氏が作った「優しい石鹸」をつくる哲学はは確実に現在に引き継がれており、それが消費者の心を掴んでいるのでしょう。
肌に安心のPears Soap
ちなみにペアーズのウェブサイト自体とてもシンプルなデザインです。もともとそれほど多くない商品数が取り扱われ、サイトも商品紹介、Our Story, The Pears Differenceの3ページのみ。トータルで不純物のない、石鹸で勝負できるブランドです。
変化の早い現代だからこそ、創業当初の哲学を守り続けるPears Soapが貴重な存在なのかもしれません。
参考:
・Pears our story (https://www.pearspuresince1807.com/us/our-story)
・Pears (https://www.pearspuresince1807.com/us/products/pears-pure-and-gentle-soap)
・GDUSA Graphic design USA (https://gdusa.com/packaging/hornall-anderson-cleans-up-pears-soap-packaging)
・Packaging Strategies (https://www.packagingstrategies.com/articles/89848-personal-care-packaging-variety-over-loyalty)
・Sid Lee (https://sidlee.com/en/cities/europe?loc=#work-list)
<プロフィール> ビスコム
ロンドン在住ライター。イギリスに住み、さらに強くなったデザインやアートへの興味をライティングに活かす。インテリアにも食指が動き、Edward BulmerやWilliam Morrisのセンスに憧れる。剣道道場運営やボランティア活動も行ない、バランスのとれた在英生活を満喫中。
※掲載商品・パッケージ等のデザインは当サービスの制作実績ではありません。
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