今までにない新たな商品を提供するとき、そのプロモーションは人々にそれが何であるかを説明するため非常に重要なものになります。今回はギリシャでオープンした新感覚のスイーツカフェ「JAR」のロゴデザインとブランディングについてご紹介したいと思います。制作はアートディレクターのKonstantinos Tsaganis 氏によるものです。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Konstantinos! )
ジャーサラダならぬ、ジャーケーキ
少し前に流行した“ジャーサラダ”をご存知でしょうか。メイソンジャーというふたができるタイプのガラス製の広口のビンに、野菜とドレッシングを入れて作る、持ち運びができるサラダです。ガラス越しに見える色とりどりの野菜の色が美しく、オフィスや野外にもラクラク持ち運べる手軽さから世界的に大流行しました。
スイーツカフェ「JAR」の看板スイーツは、そのジャーサラダのスイーツ版“ジャーケーキ”です。このジャーケーキもジャーサラダ同様、アメリカではじまり、そのルックスのキュートさや合理性から瞬く間に世界へ広がっていきました。とはいえ、それを冠するカフェともなるとこの地域では珍しく、「JAR」と言われても「?」となってしまう可能性がありました。そこで、なぜ「JAR」なのか、その答えを想像させるようなデザインで、尚且つ、スイーツを好む層に響く、ファッショナブルなスタイルをもったロゴデザインが考案されました。
ジャーのカタチを用いてアルファベット“J“ “A” “R”を描いたこのロゴマーク。一目で何かのビンであることがわかりますよね。タグラインに聞き覚えのあるカフェの名前が入っていることで、流行に敏感な層なら「あのスイーツ」であることが想像できるのではないでしょうか。
黒地をベースに描かれた「Jar」の文字。ビン特有のフォルムが手伝い、50年代を彷彿とさせるダイナーやバーのネオンサインを思わすカタチをとっています。「Bar」と「Jar」は語感も似ており、扱うものは正反対でありながらもイメージを共有するという非常にユニークな現象が起きています。
ロゴのカラーを生かしたポップなデザイン展開に注目
ロゴに使われたマゼンタ・シアン・イエローをブランドカラーとし、さまざまなビジュアルツールがデザインされました。
メモやメニューなど、スクエアをベースにカラフルな世界が展開するPOPなデザインは、流行に敏感な層にフィットするキャッチーなムードで溢れています。見ているだけでも楽しくなるビジュアルデザインは、つい足を運びたくなるようなスイーツを扱うカフェに相応しいデザインと言えるでしょう。
パッケージデザインもロゴデザインに合わせ展開されています。同様のデザインで制作されたカップや個袋はブランドイメージを引き継ぎ、クラフト紙に単色で印刷されたロゴマークはまた一味違ったシンプルな味わいです。
ジャーケーキをテイクアウトする際に付属する、紙製のトレイ。一見するとロゴがプリントされただけの黒いトレイに見えますが、ジャーが入る窪みの底部分を見てみると、「SWEET」「TILL」「THE」「END」と書かれています。「最後まで甘い」。最後まで手を抜かないデザイナーの遊びゴコロが隠された非常に面白いパッケージデザインです。
まとめ
商品である「Jar」をそのままコンセプトにし、カラフルでPOPな世界が商品のイメージにぴったりはまる、ロゴを中心としたブランディング例でした。ただ単にはしゃぎ過ぎで終わらない、ピリッとした大人の隠し味が効いたデザインは、トレンドセッターである流行に敏感な女性層に響く、ハイセンスなビジュアルコミュニケーションといえるのではないでしょうか。
design : Konstantinos Tsaganis ( Greece )
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