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adidasの広告事例

元マラソンランナーが「自由」へと走り出す、adidasの美しい広告


adidasの広告事例

高齢化が進む日本では、今、高齢者の生き方が注目されています。それは、日本だけでなく世界的に言えることで、医療技術が進歩した現代では先進諸国を中心に高齢化が進んでおり、高齢者が活躍できる社会をどのように構築したらいいか模索している最中のようです。

今回ご紹介するのは、79歳の元マラソンランナーを主役に描いたスポーツブランド「adidas」の映像広告です。静かな映像の中に描かれるのは、いくつになっても変わらない人の想いの強さと、自由への切望。adidasをきっかけに、主人公と周囲の人々がどう変わっていくのでしょうか。

 

表情や感情が感じられない、ただ生きているだけのように見える老人たちが暮らす施設。 窓から外をぼんやり眺めている主人公の老人「カール 」は、ふと表を颯爽と走る若者を見つけます。味気ない毎日の中で生きる自分を見つめ、外の世界を思うカール。そんな彼の目にふと映る、古いadidasのランニングシューズ。

次のシーンで、カールは走り出します。少し誇らしげな表情を浮かべ、adidasの古いウェアとシューズを履いて。

周りの老人たちは驚き、ナースたちは必死にカールを制止しようとします。施設の扉を開け、外に出ようとしたカールは寸前のところで止められてしまいます。その後も、何度も走ろうとするカール。カールを見つめる周囲の老人たちの目も少しずつ変わっていきます。しかし、その度にナースたちに無情にも止められてしまい、とうとうウェアとシューズを没収されてしまいます…

肩を落とし、自室にこもる意気消沈のカール。そんなカールの部屋に一筋の光が…ふと顔を上げるとそこに立つのは、入居者の老人たち。そして、彼らが手にしているのはカールのウェアとシューズ。

場面はガラリと変わり、若かりし頃の写真をバックに靴ひもを結ぶカール。廊下に出ると大勢の入居者たちが手を叩きカールを迎えます。手を振りエールを送る老人たちの間を扉に向かい走り抜けていくカール。その後ろを追い掛けるナースたち。捕まりそうなカールを身を盾にして守る入居者の老人。

そして、ついにカールは外に出て満足そうに景色を見下ろします。

ラストシーン、木々の間を手を広げ走り去るカールの後ろ姿に、「break free」の文字。そして最後にadidasのロゴが映ります。

 

全編セリフはなく、静かな音楽だけが流れます。言葉がないからこそ印象深く心に刺さるキャストたちの表情や眼差しは映画さながら。抑圧された重々しい日常から主人公が解放されていく様は、見ている側も感情の動きを抑えずにはいられません。

スポーツブランドの広告はスタイリッシュで格好良いのが定石であった今までを、ガラリと覆すようなこの広告は、普遍的な人間性に寄り添い、内から溢れる「希望」を描いた実に味わい深い作品です。上辺だけの格好よさは、瞬間的なインパクトはあっても感情に深く刻まれることはありません。しかし、このadidasの広告は、決して派手な印象はないものの、人間臭く、共感を呼び、人々の記憶に残ります。

主人公を動かすきっかけになった、adidasのシューズ。今も昔も変わらないトラディショナルなスタイルのシューズは、主人公の思いとぴったり重なります。 長い歴史をもつからこそできる、「変わらないもの」を伝えるメッセージ。そして、殻を破り「自由」を掴む人間の強さを描くことで、いくつになっても、「想い」さえあれば自由に生きることが出来る、そう語りかけるようなadidasの広告は、余計な装飾や説明を必要としない、力強いブランド力を感じさせます。

 

Advertising Agency: Filmakademie Baden-Württemberg, Germany
Creative Director: Eugen Merher
Art Director: Eugen Merher
Copywriter: Eugen Merher
Photographer: Mortimer Hochberg
Cast: Jens Weisser, Herman Van Ulzen, Anja Karmanski, Hiltrud Hauschke, Daniel Hubertus
Director / Script: Eugen Merher
Producer: Karli Baumann, Karl Heidelbach
Director os Photography: Mortimer Hochberg
Editor: Ernst Lattik
Music: Alexander Wolf David
Sounddesign: Marcus Fass
Sound Recording: David Hill
Production Design: Nora Brockamp, Julian Dieterich
VFX: Tim Markgraf
Make Up: Sandra Untenberger
Production Company: Filmakademie

 

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