トレンドがある一方で、それに反発するデザイナー・企業などによるカウンタートレンド(流行と真逆のデザイン)も生まれており、トレンドの傾向を見たり、予測することはますます困難になっていると言えます。今回も海外のデザインWEBマガジン「LogoLounge」より【2007年のロゴデザインのトレンド】を紹介していきたいと思います。(Thank you Bill !! )※翻訳・編集・掲載許可をいただいています。
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2007年 流行したロゴデザインたち
ロゴトレンド1 【二重螺旋】
デオキシリボ核酸(DNAを構成する物質)は、デザインが影響されるものとしては考えられ難いですが、初期のDNAを分解すれば話は変わります。それは生命の基盤であり、生きるものの過去と未来を支配するものです。二重螺旋ロゴは今や科学の分野を飛び出し、現代ではポップカルチャーの分野へと足を踏み入れました。
人々が二重螺旋を生命の光や個人のマークとして見るようになってから、デザインコミュニティはそれに注目し始めました。命・健康と寿命・家系図・暗号・謎、あるいはまだ解明されていないシークエンスなどを表すこれらの螺旋は、科学や宗教の観点からも理解されるようなシンボリックな力を持っています。
1. lwdgraphics for Chillosophy 2. Sumo for Science City 3. Demasi Jones for RCRH 4. Gibson forWomen for Women
ロゴトレンド2 【輪ゴム】
Enterprise IGによってデザインされた「改革の輪」(図4)からは、その輪のような繊維が表す企業のグローバルな一面と製品と努力の連結が簡単に想像できます。(世間や素人からすれば、デスクの引き出しに入っているただの輪ゴムにしか見えないかもしれませんが。)
このトレンドはこれまでの「自然の渦」や「洞窟の輪」のトレンドの傾向と直接的に繋がっています。これはカオスと幾何学が融合したロゴデザインなのです。
これらの連結した輪は製品、従業員、企業、部署が共に協力して作業する様子をコンセプトとして表しています。これらは輪の引き締まりや形によって様々なレベルの自主性とフレキシビリティを表しています。色は通常個性を表すものですが、要素の集まりよりも全体の方がより大きい意味をもつということを、このロゴマークは私たちに理解させてくれます。
1. Koch Creative Group for MBM Study 5 2. Substrate for Zilo 3. Grafikonline for Guba 4. Enterprise IG for Invista
ロゴトレンド3 【輝き】
これらのロゴマークは、トンネルの先にある光のような暖かみと心地よさを持っています。私たちがこの光で楽観、純粋さ、暖かみ、逃げ道を伝えようとすれば、その数は更に増えていくでしょう。これらの光は道しるべや知識の源としての役割を持ちます。
1. Cato Purnell Partners for Skywest Airlines 2. Gardner Design for The Center 3. LandDesign for Sunhaven 4. Siegel+Gale for SunTrust
ロゴトレンド4 【エコ&スマート】
企業が最前線に居るために必要なものは今でも「持続可能性」です。エコをテーマとしたデザインはLogoLoungeでご紹介してきたロゴトレンドの要点となってきました。未だにここでご紹介しているのは、持続可能性が強く働いている証なのです。
これらのエコ&スマートなロゴはどんどん賢くなっていっています。木や葉や変わらなくても、エコを伝えるアプローチは以前より知的なものになりました。もしかしたら以前のロゴではほとんどテーマを正確に表す事ができていなかったのかもしれません。ただ緑色を使えばよいというわけではありません。これらのロゴは、より環境に対して敏感な応用法と精神によって作られているのです。まるでロゴデザインが、甲高い声ではなく、ささやくような声で物語を伝えているようです。
1. Gardner Design for Dandurand 2. Ulrichpinciotti Design Group for Resources for Healthy Living 3. Eggnerd for Greenhill Academy 4. Steve’s Portfolio for Small Planet
ロゴトレンド5 【ライト】
ここ数年で、シリコンのインプラントのようにクリスタルで覆われ、光を当てて膨らませたようなロゴが見られるようになりました。このコンセプトはシンプルです。ロゴマークがページから飛び出してしまうくらい質感をリアルにすればいいのです。この立体感は、ロゴが二次元とは違う世界で活躍できるようにしてくれます。少しではなく、確実に。
しかし、ここにあるロゴはそれよりもっと繊細です。これらのロゴはスポットライトに当たるように言われましたが、これはただの巧妙なステージクラフトではありません。これらのロゴは立体的というよりはむしろ控えめです。大きな違いはライティングの良さです。それは消費者が見て初めて露になる、気取らない実力なのです。
1. Zed+Zed+Eye Creative Communications for Ebert Pool Construction 2. FutureBrand for Pure Tasmania 3. Sebastiany Branding for Cafao Lar 4. Cato Purnell Partners for Flower Factory
ロゴトレンド6 【偽クレスト(紋章”風”)】
高慢な態度・退屈・家紋・皮肉・ナポレオン・ダイナマイト(アメリカのスクールコメディ)を混ぜ合わせれば「偽クレスト」のできあがりです。楽しさが溢れるこれらのロゴは、あらゆる権力に反抗するような要素を持ち合わせています。高校や大学の分野では、Jason Schulteの企業であるOfficeが、Independent Studiesシリーズのクラス最高のロゴとしてTarget(図1)を製作しました。
これらのロゴデザインは一見、その構成要素を理解するまでは、紋章スタイル集の本のから出て来たように見えます。じっと見て、レンチやギター・ペンギン・靴・携帯電話といったありとあらゆる予想外のものが見えてくるのです。デザイナーたちはこれをファッションカルチャーや音楽業界のソース言語としているのです。これは今至る所で見られるモダントレンドであり、紋章だけではなくビクトリア朝の壁紙などにも影響されています。
1. Office for Independent Studies/Target 2. Reaves Design for JCPenny Nation 3. Miles Design for 12 Gauge Wakeskates 4. Launchpad Creative for Astonish Entertainment
ロゴトレンド7 【アーバン・ビニール風】
(ソフトビニールのフィギュアブランド)
90年代にMichael Lauによって香港で人気となったアーバン・ビニールたちは、今やKidRobotやSuper 7などにその名を轟かせています。Tim Biskupのアートはキャンバスから始まり、ビニール製のキャラクターへと変換されます。これらのキャラクターには火を吹くドラゴンからスライムのような体のエイリアンまで様々なものがあります。Fortune 500(アメリカの総収入ランキング)には影響しないまでも、アーバン・ビニールはポップカルチャーでその居場所を確保し、こうして二次元のロゴデザインとしても使われるようになったのです。
1. San Markos for webpublica 2. Innfusion Studios for Innfusor 3. Glitschka Studios for Fire Squad 4. Tactix Creative for Cyclops
ロゴトレンド8 【ハブ(中軸)】
これらのロゴマークはどんなオンラインコミュニティも表す事ができます。中心にあるハブから情報が拡散していき、このハブがなければ、コミュニティの他のメンバーと連絡が取れなくなってしまいます。だから、ロゴがコミュニケーションツールであってもなくても、中心からの拡散がコンセプトの鍵となるのです。このテクニックのもう一つの意味は、たくさんの要素が集まってより大きな力となることです。多作になりつつあるこのトレンドですが、デザイナーたちは個性的なビジュアルコンセプトを作り続けています。
1. Selikoff+Co for Pomology 2. Starlight Studio for RM Custom Creations 3. Brent Leland Design for Haciendo 4. Demasi Jones for Fibre Optic Australia
ロゴトレンド9 【減衰する点】
このトレンドのロゴを探し始めてみると、至るところで発見することが出来るでしょう。これらのロゴは、数少ない例外を除いては、上昇したり下降したりする点によって構成されています。そのほとんどが、メッセージを伝えるために動きを表現しています。アニメーションを1枚化するためのツールとして考えてみてください。
動きが関連するユニークなコンセプトは、色々な表現方法に溢れていることが分かります。以前のトレンド報告では「ぼんやり」「ふわふわした点」「吹き消す」など、より新しいテクニックで”動き”を表すことについてお話しました。Robert Miles Runyonは1984年のオリンピックロゴで、動く星を表すのにストライプを使っていました。しかし、10年以上にわたってストライプを使って「私は動いていますよ」と大声で主張してきたロゴたちの時代は終わったのです。
1. Ardoise Design for Raymond Engineering 2. Aron Creative for Springboard 3. Glitschka Studios for Windows Gaming 4. Brand Bird for Arby’s Franchise Association
ロゴトレンド10 【花】
このトレサリー(ゴシック建築の窓)のようなビジュアルは様々なデザイナーから影響されていますが、おそらく一番のパイオニアはオランダのTord Boonje氏でしょう。Tord氏は、繊細にカットされたポップ要素の生みの親です。細かく装飾されたオーガニックのレースの重なりは、特に小売企業でのロゴデザインに影響するものとなりました。
1. Shift Design for Charme 2. Doug Beatty for Art for Aid 3. Gardner Design for Holly Root Massage 4. Entermotion Design Studio for Marshmallow Kisses
ロゴトレンド11 【半分】
これらのロゴは楽観的に考えれば、半分はしっかりと見えています。消費者がロゴデザインと関わることは、ロゴとの絆を築く強力な方法です。謎が解けたときの「わかった!」という瞬間は、私たちが当事者意識を感じる瞬間でもあります。コツは、ジョークのオチを隠さないことです。見えないもう半分が物語を語るのです。
もう半分はどこか近くにあるのか、それとも沈んでいるのか、あるいはこれから浮き出てくるのか?シンプルな言葉遊びや、場合によっては画像遊びが、消費者がロゴに対して行動を起こすきっかけとなります。画像の一部を切り取ることは時には対立的な意見を生みますが、完璧な数字や文字を半分に切る事はもはや異端と同じです。文字は消費者にとって神聖なものです。変形させるのもいいですが、半分にしてしまえばより目立つのです。
1.Design Firm: Fresh Oil Client: Spats Logo Concept 2.Design Firm: Thomas Manss & Company Client: Cutcost.com 3. Design Firm: Meme Design Client: Edge 4. Design Firm: Miles Design Client: Urban Forward
ロゴトレンド12 【オーバーラップ(重なり)】
このトレンドは見方によっては昨年の「オーバーレイ」のトレンドの進化系であり、透明な構成要素を使ってロゴマークの持続性を表しています。たくさんの色付きのジェルのような、どちらかといえばフラットな色のオーバーレイを使いながらも、これらのロゴは「連結」により重点を置いているようです。これらのロゴは、集合と部分的集合を使うことで企業との実際の繋がりを表しています。企業の透明度は、世間・従業員・投資家に対して重要な特性です。
全てをさらけ出して集まる要素は、企業の深いところや多様性を表しています。互いに重なり合う要素は企業の構成を表すために使われます。ソフトウェアの発展によって、透明なものをデザインすることが大いに簡単になりました。例えばイラストレーターを使えば、フォトショップの困難な手順を使わずに、その場で透明なものを作り、実験することができます。
1. Fitting Group for i-Squared 2. Cacao Design for Renza Morello 3. Matthew Schwart Design Studio for Agency Access 4. Gillen’s Army for The Electric Company
ロゴトレンド13 【立体】
何年にもわたってロゴマークは膨らんだり、光を反射したり、ガラスのようになったりしてきましたが、全て平面上での話でした。ロゴが強い立体感を持った途端に、今まで問われる事のなかった様々な疑問が浮かんできます。もしロゴを90度回転させても、そのロゴのままだろうか?変わった角度からロゴを見ても、そのロゴのままだろうか?もし光を当てなくても、そのロゴのままだろうか?
Miles Newlynは大手テレコム企業のBの文字のロゴ(図2)を手がけたロンドンのデザイナーです。また、もしあなたが変わったデザインを探しているなら、彼に頼むことをおすすめします。Milesの立体的なロゴは、どの角度から見てもわかりやすいJaguarのオーナメントからインスピレーションを得ています。本当に立体的なロゴをデザインするということは、そのロゴを360度どこから見ても存在できるようなメディアリソースを持っていなければならないということです。しかしこのトレンドのロゴは、実際に立体ではないので、一つの角度から見た時に立体的に見えるようにデザインされているのです。
Milesは今でもこのトレンドの先導者です。彼は、3Dロゴを作る技術より、どのクライアントがそれを必要としているかが大事だと言います。しかし、スタイリッシュだという理由だけでリクエストする企業が増えてきているようです。
1. Wolff Olins for djuice 2. Miles Newlyn for B 3. GrafikOnline for Aramova 4. Substrate for Palio
ロゴトレンド14 【錯覚】
トリックアートを目にして立ち止まらない人はいないでしょう。誰でも、そのトリックを解いてみたいものです。これらを挑戦とするか娯楽とするかは別として、私たちはそれに注目してしまいます。錯覚アートは通常、MCエッシャーの絵のように物理法則に逆らったようなものが多いです。もしくは、それを二度目に見た時に初めて新しい見方ができるような純粋なものです。
この不可能の可能性という概念はデザイナーに好まれるコンセプトです。その巧みなイリュージョンは「私たちは他の誰よりも賢く、他の誰にもできないことができる」とアピールしているのです。これらのイニシャルはとても自然にこの魔法にかかっているようです。これらのロゴデザインは、その特性から、建築企業や新たな観点から環境に目を向ける製品などに使われる事が多いようです。
1. MINE for Paradox 2. Face for Institute of Cancer Therapeutics 3. JDK Design for Zune 4. Elixer Design for Perspecta, Inc.
ロゴトレンド15 【リボン】
中国のいくつかの都市はマグネットのついたアウェアネスリボン(図3のような輪状に折った短い一片のリボン)の輸出のおかげで存在しているのではないでしょうか。アウェアネスリボンはなぜここまで増えたのでしょうか?もちろん私たちの関心を示す事は大事ですが、今ではこのアイコンのせいで本来の意味が薄れてしまっています。私はもうずいぶん長い間リボンに貪りついてきましたから、そろそろ罪をあがなわなくてはなりません。
幸い、これらの瀕死のロゴアイデアに心肺蘇生を行ったデザイナーたちがいました。ここには、リボンをベースとしたロゴデザインの傑作が紹介されています。これらはリボンを応用したユニークなものですが、そのアイデアの数はどんどん少なくなっていきます。このトレンドが生き延びるかどうかが見物です。もし生き延びれば、足元のマグネットの山をどうリサイクルするか考えなければなりませんね。
1. Seamer Design for Motek Trading 2. Ty Wilkins for Tulsa AIDS Walk 3. Square One for Cinema Fighting Cancer 4. Felix Sockwell for AIDS National Quality Center
参考 : LogoLounge ©2007 Logolounge Inc.
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