2010年のロゴデザインの傾向は「明るく」、2011年のロゴデザインの傾向は「軽さ」がポイントになっています。黒色が用いられがちな部分が、茶色や灰色で表現され、透明性を感じるものが多く見られます。今回も海外のデザインWEBマガジン「LogoLounge」より【2011年のロゴデザインのトレンド】を紹介していきたいと思います。(Thank you Bill !! )※翻訳・編集・掲載許可をいただいています。
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2011年 流行したロゴデザインたち
ロゴトレンド1 【グラデーション】
デザイナーの持っているトリックの全てが大げさなものである必要はありません。繊細さも、消費者への十分なアピールになります。ロゴデザインの多くで、フラットで単色の緩やかなグラデーションが見られるようになりました。このグラデーションは10%ほどの明度の変化から、Chermayeff&Geismar’s Women’s Tennis Association (図右下) のロゴマークのようにマゼンタから深いバイオレットにドラマティックに変化するものまであります。
この方法によって、デザイナーが形や画像ではなく動きや色の変化を使って視覚的メッセージを伝えることができます。これはここ2年にわたって見られてきた、デザイナー達がロゴの表面を使ってさらなるメッセージを伝えようとしているトレンドの連続です。
技術的な観点から見ると、これは挑戦の現れです。シンプルなグラデーションは異なるプラットフォームやファイル形式で表示されづらいのです。しかし、慎重に作成されれば素晴らしいものになります。
1. Rylander Design, Baker Ave 2. Signifly, Plesso 3. Pixonal, Stallion 4. Chermayeff & Geismar Inc., Women’s Tennis Association
ロゴトレンド2 【子供っぽさ】
ついに昨年このトレンドは転換点を迎えました。デザイナー達のソーシャルカルチャーのキャラクターへの情熱が、可愛いロゴデザインが生まれるきっかけになったのです。
今や、ニコニコしているものならなんでもござれという社会になりました。新しいジェネレーションと共に、ゲームキャラ、ツイッターの青い鳥、漫画などがやってきました。WEBサイトのポップアップは常に「自分の顔写真でアバターを作ろう!」と言っています。
これらのロゴは、ただのキャラクターの書かれたシリアルの箱ではありません。シンプルで、多くの場合幾何学的でモノラインが使われています。
1. Design Ranch, Target 2. Schakalwal Design Studio, Musiq Launch 3. Vectory Belle, Box of Cravings 4. Tad Carpenter, Yummo Yogurt and Smoothies
ロゴトレンド3 【バイブレーション】
読み手を途中で困惑させ、視覚的なバイブレーションを生む印刷ミスのような表現が、今はロゴデザインとして扱われています。このスタイルはかつて、CMYKの印刷問題と考えられていました。しかし今では、バターのたっぷりついた指で3Dメガネを拭き取った時に起きる現象です。
どちらにせよ、それは消費者が「素晴らしい作品には素晴らしい理由がある」と思わせる体験です。これらのロゴマークはそのマジックのトリックを明かすのです。トリックアートを見る時のように、消費者はもう一度そのロゴを見なければなりません。でも彼らには本当のジョークがわかるでしょうか?問題は、消費者がただデザイナーがミスをしたと思うか、それともそれ以上の意味を見出せるロゴであるかどうかです。
1. Cricket Design Works, Momentum 2. PUSH Branding and Design, Blur MediaWorks 3. Corporate Movement, Waterfunk LLC 4. Judson Design, Cradle Robbers
ロゴトレンド4 【O】
はい、Oです。360度に渡る、完璧な、動脈の断面図のように太い円のロゴデザインがやってきました。表面の加工や影、線、星、ストライプなどで様々なグラフィックを表現しているそれぞれのOに拍手。どれもとてもクリーンですが、ボドニフォントの線の太さの違うOや前屈みのイタリック調のOが恋しくなってきますね。ただの丸ではなく、文字を見ているのだとわかりますからね。何かを意味するO (オー)と、何も意味しない0(ゼロ)の違いはまさに紙一重です。
政治界の伝統を破ったオバマ大統領のロゴマークもこのトレンドの仲間です。ロゴ自体は斬新なものでしたが、あまりにも人気があるロゴトレンドなので飽きてしまう人が出て来そうです。消費者がこれらのロゴには親近感が含まれているとわかったら、このロゴの存在についての意見も変わってくるのでしょうか?
1. Chermayeff & Geismar Inc., Conservation International 2. 1310 Studios, Orange Product Design 3. Today, Quantumize 4. Sparc, Inc., Standing O
ロゴトレンド5 【地球】
これは地球の全てを含んだロゴが見たいクライアントにはぴったりです。通常、「関連性のあるものに”囲まれた”地球」と、「関連性のあるもので”出来た”地球」の2つのカテゴリーに分けられます。どちらも同時に現れたものなので、どちらも持続性のあるロゴデザインと言えます。ガリバー旅行記のように星を囲むシルエットには気まぐれさが感じられます。
このデザインの良いところの一つは、限られた空間の中で見られるディテールの多さです。太陽の周りを回るこの緑の星に住むことの大切さと敬意を伝えてくれます。地球の大きさを表す要素はなく、乗客が落ちないように大げさな重力を持っているただの丸い物体として表現されています。ロゴにミニチュアを描くことは、縮小する際に消えてしまうため避けられる事が普通ですが、これらのロゴマークたちはむしろ見る人に虫メガネを持って来いとでも言わんばかりです。
1. United by Design, Earthmedia 2. Blackboard, green park play school 3. Mattson Creative, Discovery Channel 4. Troyca – Visual Solutions GmbH, Troyca
ロゴトレンド6 【モノライン】
社会の達人の古くからの格言に、「ダイエットと金儲けはきりがない」とあります。エレガンスが感じられる極細の線はデザイナーにずっと愛されています。しかし、上手くデザインされたものでも、人によっては老眼鏡を取り出さないといけない場合もあります。
昨年、多くのロゴが減量(ダイエット)に成功したようです。これらのロゴデザインには手描き風のものとサンセリフ(かざりひげの無い書体)のものがあり、線の太さが全て等しいモノラインが使われています。
1. Vistaprint, Vistaprint 2. FCB Durban, Oubaai 3. RDQLUS Creative, Expeditiously Delicious 4. Sommese Design, Dantes Restaurants
ロゴトレンド7 【シリーズ】
一人のクライアントがロゴのシリーズを所有していることは珍しくありません。これは、異なる部署、製品、サービスで一貫したビジュアルアイデンティティを維持する方法です。驚くのは、これらのシリーズロゴが突然至る所で見られるようになった事です。
全てのロゴに共通したファミリーマークがあるロゴがあります。それとは異なり、全てのロゴが等しく重要に作られているものもあります。Nickelodeon(ニコロデオン)は何年も前にオレンジからはみ出した部分が共通しているロゴマークを考案しました。しかしこれは、ロゴの特殊性というよりはバラエティーの多さに重点を置いたものでした。
一つのアイコンが多くのものを含む事が多いモバイル機器やインターネットのアプリのアイコンの普及は、考慮すべき点と言えます。ただ色違いのアイコンは覚えにくいので、あまり効果的ではありません。また、ロゴのコンテキストが不十分なために、それがより大きなシステムの一部だということがわからないものもあるかもしれません。
A) Gardner Design, College Hill Neighborhood Association B) Hulsbosch, Woolworths Limited C) Sunday Lounge, Weathervane Farm D) Sebastiany Branding & Design, Softway
ロゴトレンド8 【茶色】
例年、デザイナーの色の好みがわかるロゴマークがトレンド入りします。今年、デザイナーたちは茶色で何ができるかを見せつけました。これは突然世界中で起き、トレンド入りすることとなりました。
ここ20年ほど、コントラストのレベルを最大に上げて作業が行われていたように思えましたが、それが突然下がっても消費者は受け入れてくれることがわかりました。このトレンドは繊細さと新しい世代が訪れた印です。セピアやチョコレート、暖色系まで、トーンの幅は様々です。
2次色の飽和度もゆるやかになりました。ピンクは常に茶色と合う色ですが、上にある他の色も同じくらい合います。通常これらの色は、鮮やかさが半減された原色です。
1. 1310 Studios, Small Hands Big Art 2. Gerren Lamson, NONA 3. Defteling Design, Candywinkel 4. Odney, MBT’s
ロゴトレンド9 【かすれ】
ほんの小さなことで緊張がほぐれるという証拠がこれです。これらのロゴデザインは白いかすれ無しでも生き延びる事はできますが、まさにそれがこれらのロゴをよりハンドメイドで親しみやすいものにしているのです。しわくちゃにして、曲げて、悩んで、加工されたようなデザインを作ることは何年も人気の方法です。この繊細さは他のロゴマークとは少し違った特徴を持っているのです。
表面の加工は全て同じではありません。多くの場合、ロゴの一部にのみ加工がしてあります。白いかすれは、ロゴの居場所をより主張してくれます。この加工の真似をするなら、きちんとインクが塗られていないレタープレスの印刷がよいかもしれません。一部にのみ加工が使われているので、過去と未来を行き来できるようなロゴです。
1. Helius Creative Advertising, GearSwap.com 2. Gardner Design, Pauline Reese & Blake Behrns 3. Carol Gravelle Graphic Design, Los Padres ForestWatch 4. Pierpoint Design + Branding, Rep Cafe
ロゴトレンド10 【中心への集中】
ロゴのディテールの限界を超えたトレンドがこれです。しかし、これらのロゴデザインは消費者を魅了するどこか催眠的な雰囲気も持っています。極細の線の繰り返しは、木の断面が木の物語を語るのと同じような効果があります。これらのロゴはプロセスの物語を語っているのかもしれません。その科学的な特徴から、これらのロゴはテクノロジーとは切っても切れない縁なのです。
このデザインは、それがロゴの基盤に使われていても一部のみに使われていても、見る人が目眩を起こしてしまうような特徴を持っています。強制的に消費者がロゴを直視するように作られているのです。
1. Notamedia, gogol.tv 2. Sommese Design, State College State Theatre 3. Clover Creative Group, LLC, CLOVR Media Inc. 4. Vectory Belle, Web Application
ロゴトレンド11 【ぐるぐる】
これからご紹介するトレンドはロゴの表面加工についてです。もしあなたが2時間以上ロゴ制作に費やすなら、次のトレンドへスキップしてください。
素晴らしい職人技と賢いコンセプトで作られた覚えやすいロゴが大好きですが、様々な表面的テクニックも素晴らしいということ知っておかなければなりません。デザイナー達は次の世代のサーフェス・デコレーションの発見に必死になっています。
このトレンドは特別な「緩さ」と親しみやすさを持っています。ハンドクラフトされたグルグルの線は、普通なら何の形も持ちません。実際は、このグルグルがロゴのミソなのです。筆記体を装った線はありません。このトレンドもまた、今年のトレンドに多く見られたモノラインによって作られています。今年のその他のロゴマークは不規則な殴り書きで作られたシルエットでしたが、このトレンドのように堂々とはしていません。
1. Noetic Brands, Green Bills 2. Shawn Wideman, Vida Church 3. petervasvari.com, ACTUART 4. Kraftwerk Design Inc., Terravant Wine Company
ロゴトレンド12 【帯】
今まで2次元の世界で満足していたロゴが突然、3Dの世界への冒険を始めました。これらのロゴマークはプラスチックや他の物質で作られた帯によって構成されています。ロゴ自体には影がありますが、ページ(背景)には影が無く、ロゴがこの世に実在するものではないような雰囲気があります。堂々としたディメンションを思わせるものもあれば、ただ単に逃げ出す準備をしているようなものもあります。
デザイナー達は、立体的なものと形を組み合わせることを新しいテリトリーとして探索しています。フラットでつまらないコンセプトが立体的になることで消費者の注意を引きます。このトレンドに限ったことではありませんが、このテクニックはここ10年の2次元的なベクター図形と立体の折衷案を表しています。Mac用のMicrosoft Officeの以前のロゴは、大胆な3Dなルックスと球根のような形に光が反射したデザインでした。上にあるように、Frog Designはディメンションと影の世界を劇的に支配したと言えます。
1. BrandBerry, Artive 2. Higher, Voscast 3. Dickerson, Healing Touch 4. Frog Design, Microsoft Word
ロゴトレンド13 【カンマ】
この形の何がそんなに良いのでしょう?常に、様々な形で生まれ変わっています。「未知との遭遇」でRichard Dreyfussがマッシュポテトで宇宙人の着陸地を作ろうとしたときのような、説明のつかない執念があります。このトレンドは大きくて立体的なカンマのように見えるので、私たちはこれを「カンマ」と呼んでいますが、オウムガイの殻のようにも見えます。渦巻きは、動きもコンセプトの一つだということを表しています。もしくは、それは春に新たな命の始まりを知らせる新芽なのかもしれません。
表現の仕方はもちろん様々ですが、これらのロゴに共通している点はその手透明度と立体感、そして私たちの目を引く鮮やかな色の使い方です。これらのロゴは、何年か前の球体のトレンドのように、ビューアーに理由を追求せずにただ信じろと言っているように思えます。
1. FutureBrand BC&H, Grupo Boticário 2. Karl Design Vienna, Bertha Benz Challenge 3. BrandBerry, Olive 4. Baris Atiker, Euroclean
ロゴトレンド14 【バックミンスター風】
バックミンスター・フラー(ジオデシックドームの生みの親)が言ったように、角がある図形で形が崩れない唯一の図形は三角形です。それゆえに、この銀河にある全ての図形の構成も三角形から成るのです。デザイナー達は三角形を使って空間、次元、図形を表そうとしています。三角形の集まりは、数によって生まれる力強さを表すと同時に、多様性を表すモザイクにもなります。
バスエールビールの赤い三角形のロゴは、ロゴの歴史の中で最も古いものの一つです。その完璧な幾何学的図形は間違いなくアイコニックですが、デザインするにあたって不快間が生まれます。単一の三角形は安定していますが、文字との相性が悪く、いびつなネガティブスペースを作ってしまいます。しかしそれを2倍、3倍、集団で使うと、もはやどんな図形や次元にもなり得る素晴らしい膜となるため、バックミンスターにもこの世で最強の図形だと認めてもらえたのです。
1. Siren Design, Berkeley Estates 2. Vladimir Isaev, Telecom trade company 3. Dee Duncan, Razorfish 4. Publicity Upstream, Nouveaux Marches de France
ロゴトレンド15 【フルーツ】
「Apple」がりんごではないときはいつでしょうか?「Blackberry」がブラックベリーではないときはいつでしょうか?答えは、「世界のテクノロジー、イノベーション、コミュニケーションの一流企業のロゴであるとき」です。だから、一切れのフルーツからゼリー工場以外のものを連想することが必須なのです。ここ1年で、このトレンドはロゴデザインの世界では至る所で見られるようになりました。
全ての果物には、消費者が関連できる物語や記憶があります。親しみやすく、ほとんどの場合甘い、自然界の代表者です。私たちの労働の成果を表し、純粋性と生殖のシンボルなのです。(※英語でフルーツには、結果・成果・報酬 という意味合いがある)
これらのロゴには、私たちがクライアントの感情を呼び起こすシンボリズムがたくさん詰まっています。誰かにある果物を描いてもらうとき、誰でも知っている形、葉、茎を描くでしょう。このトレンドは飽和点に達するかもしれませんが、果物ばかりを勧めてくる人に悪い人はいませんよね。
1. Strange Ideas, Hunger Free Heartland Foundation 2. Iconologic, MS&L Worldwide 3. RJ Thompson, H.J. Heinz Company 4. Denis Aristov, KS-Stroy
その他目立ったロゴトレンド
リバイバル:他の企業が立体的で透明なロゴに改変している中、Miller High Lifeなどの企業はフラットなベクターロゴへ後戻りしています。
Landor Associates、Miller High Life
等角図法:eBoyは等角図法と立体を使った世界へいち早く足を踏み入れました。これらの新しいロゴはeBoyの絵にすんなり馴染む事が出来ます。
Denis Aristov、Gizmo
ブラックホール:アート作品がOreckの掃除機に少し近寄り過ぎた時に、誰かがそれをカメラで撮っていたようです。欠片があちこちに飛んで、それらは全て小さな穴へ吸い込まれてしまうのです。
Brandberry、Idealogy
拾った棒:シルエットや形がランダムに落とされた棒で埋め尽くされています。これらの棒は全てモノラインなので、同じくらいのポジティブスペースとネガティブスペースがあることが多いです。
Interbrand Sampson Group、Commercial Bank of Africa
反応的:このトレンドの例であるVisit Nordkynのロゴはとても素晴らしいです。これらのロゴは消費者へ情報を提供するというコンセプトを持っています。企業のロゴを見て、マーケットがどのように動いているかなどがわかるのです。
Neue Design Studio、Visit Nordkyn
メダリオン:これらのロゴは円のエリアの中の情報が多すぎるので、ロゴというよりはアステック・カレンダーに見えます。この莫大な量の情報は、消費者の注目を集めます。
Sol Consultores、Metrix Networks
参考 : LogoLounge ©20011 Logolounge Inc.
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