海外のデザインWEBマガジン「JUST™ Creative」より【ロゴデザイナーインタビュー】についての記事を紹介したいと思います。600以上のデザインに関わる賞を受賞し、30年以上のキャリアを持つジェフ・フィッシャーさんの貴重なインタビューです。※翻訳・掲載許可をいただいています。(Thank you Jacob Cass!!)
以下、非常に長い記事となりますが、少しでもロゴデザインに興味があれば、読む事をおすすめ致します。
ジェフ・フィッシャーとは誰なのか?
ジェフ・フィッシャーはロゴデザイナーであり、デザイン本の著者、ブランディングのコンサルタント、雑誌の執筆者、デザインについての講演者、そしてブロガーなのです。フィッシャーは自身のロゴや企業イメージの取り組みにおいて、600近くの地域、国内・国外のデザイン賞を受賞しています。彼の作品はロゴのデザインやグラフィックデザインを使ったビジネス、小規模なビジネスマーケティングについて、100冊近くの本で特集されています。
下記には彼の作品のいくつかが紹介されています(私が個人的に選びました)が、彼のLogoPond 作品集からも、もっとたくさん見ることができます。
インタビュー
では、インタビューを進めましょう。
Jacob Cass(以下JC): まずは、Just Creative Designでのインタビューに協力いただきありがとうございます。私のようなグラフィックデザインを学ぶ学生があなたほどのデザイナーにインタビューをできるのは光栄です。読者たちもあなたに感謝をすると思うので、改めて、ありがとうございます。
Jeff Fisher(以下JF): ジェイコブ、ありがとう。私もJust Creative Designの定期的な読者であるから、そんなブログのインタビューを受けられて嬉しいよ。
JC: 昨年Freelance Switchでもインタビューを受けられたと思うので、そこで取り上げられなかった新しい質問をしたいと思います。また、今回はロゴデザインに完全に焦点を当てたいと思います。では、インタビューを進めますね…
グラフィックデザインの定義について
JC: まずは、あなたは「グラフィックデザイン」をどう定義するか教えてください。
JF: 私が35年前に高校生だった時は「グラフィックデザイン」という言葉は使われてもいなかった。当時は、そういった仕事は「商業美術」と呼ばれていた。「グラフィックデザイン」という言葉を最初に聞いたのは、1974年に、Milton Glaserの「Graphic Design」という本に出会った時だ。その本は、私が大きくなったらなりたいと思っていたものに名前をつけてくれた。その本を読みながら「これだ!」と思ったよ。
執筆がアイデアを伝達するのに使われるように、グラフィックデザインは大体は、芸術的、創造的なコミュニケーションに関することだ。多くのデザイナーは、この「芸術」の側面を落としがちだ。また一部は物事を可愛くすることで満足し、コミュニケーションの要素を考慮しないままになっているね。
JC: では次に「企業イメージのデザイン」について定義してもらえますか?
JF: とても不思議だが、「企業イメージのデザイン」と聞くと、私がまだ駆け出しの頃、保守的で伝統的な企業のために作らされた退屈で、面白くない「デザイン」のことを思い出してしまう。だから私は「イメージのデザイン」について話し合うとき「企業」という言葉を排除しようとする傾向にあるのかもしれない。時には「企業イメージのデザイン」に関わっていると感じることがあるが、私の仕事は企業のみに制限されたものではない。
時には「小さなビジネスイメージのデザイン」「スポーツマーケティングのイメージのデザイン」「非営利団体のイメージのデザイン」「舞台のイメージのデザイン」などでもあり、その言葉自体は特段好きではないけれども、「ブランディング」の方がずっと適切に感じる。「イメージのデザイン」においては、ロゴを作るだけでそのまま顧客から離れるといったことは滅多にない。
私は、大抵はビジネスのすべての側面においてイメージを実現することを行う。それは文房具のパッケージや付帯用具、広告や看板、さらには会社の基本的な文化においてもだ。君の口にしたフレーズ、「企業イメージのデザイン」は少しだけ排他的で、自分たちを「企業」として捉えていない小さな顧客を怖がらせてしまうことがある。簡単に言うと、その表現は少し時代遅れだと感じているよ。
ロゴデザインの重要なルールとは
JC: 多くのロゴデザイナーはそれぞれロゴの役割に関する重要なルール(例:拡大縮小可能であること、黒でも機能すること、覚えやすいこと、2色か3色しか使わないこと、など)をもっています。あなたの、ロゴの重要なルールはなんですか?
JF: K.I.S.S.(※Keep it simple, stupid=シンプルにしろ、馬鹿者)の原則は学校で頭に叩き込まれ、今もほとんどのデザインにおいては使っている。私の努力の中で、一番成功したもの=一番シンプルなものだ。気づくと必ずデザインの概要から何かを引いて、一番基本的なコミュニケーションツールを抽出しようとしているね。
デザイナーとして、意識的にも無意識的にも、私たちは周りに見えるもの全てに影響されていることはわかっている。だが、私は常にデザインの最新で最も優れた「流行」とされているものは何でも避けるようにしている。私の「ジェフイズム」の中の一つだが、グラフィック産業の専門家が何かを現在の【デザインの流行】だと言った時は、盲目的にそれに全員が従うのではなく、逆に全てのデザイナーにとってその「流行」はその瞬間から避けるべきだと考えている。
1990年、仕事場にコンピューターが現れた時には、すでに13年近くデザイナーとして専門的に仕事をしていた。その前にたくさんの効果的なロゴデザインを作っていたので、法則として、本当に成功できるデザインはソフトによる「特殊効果」なしで作ることができることを知っている。イメージには傾斜やグラデーション、3D画像は必要ない。そう言った「特殊」な加工は顧客にとっていいデザインの手法とはならない。私はただアイコンや芸術作品を、タイプで対処されたものの隣に貼り付けるのは好きではない。時としてそれが適切で効果的なこともあるが、私は顧客のために力強くてユニークなロゴを作る際にはこれを避けようとしている。私はタイポとグラフィックの両方の要素を混ぜ合わせて、正確なイメージを作ろうと努力することを楽しんでいるんだよ。
JC: 私は最近、”トップロゴデザイナーの秘伝のロゴデザイン工程”について記事を書き、その中で秘伝のロゴデザイン工程は以下からなると解説しました。(当該記事翻訳版: 良いロゴを作るための普遍的なプロセス・条件まとめ)
1. 概要:概要を得るために顧客に対してアンケートやインタビューを行う。
2. 調査:産業そのものや、その歴史、競合に焦点を当てた調査を行う。
3. 参照:簡潔なデザインに関連するロゴデザインのスタイルや流行の中で成功したものや、現在の姿を調査する。
4. スケッチと概念化:簡単なデザインと調査に沿ってロゴデザインを発展させていく。
5. 再考:デザインの工程から離れ、一旦休憩を取る。そうすることでアイデアが熟成し、彼らの情熱が新たになる。さらに、ここでフィードバックを得る。
6. 修正・改善:どうデザイナーが自身を位置づけるか。例:顧客に何をするかを言われるのか、こちらが顧客を最適な解決に導くのか。
7. プレゼンテーション:デザイナーは顧客に対して選択した幾つかのロゴを提案するか、コレクション全体を見せるかを選択する。
8. お祝い:ビールを飲み、チョコレートを食べ、寝て、次のロゴデザインに取り掛かる。
これらはあなたのデザイン工程に似ていますか?違うのであれば、何があなたの工程を構成し、何が構成に入らないのかを教えてください。
JF: 確かにあなたのリストに含まれている幾つかの側面は私の工程に入っている。だが、特定のプロジェクトの中で、工程に含まれているかどうかは顧客のニーズと要望によって決定される。私にとっては、「参照」と「スケッチと概念化」の間には「とっととスタジオから出て行け」ステップがある。たいてい私はパソコンを切り、机を離れて、スタジオから逃亡する必要がある。そうすることで紙やデジタル画像にスケッチやコンセプトとして残す前に、脳に可能性のあるアイデアを浸透させることができるんだ。
デザインの進め方について
JC: プロジェクトを始める前に、顧客からどういった情報を集めますか?ロゴデザインのアンケートのようなものを使うのですか?
JF: 私のイメージデザインの仕事のほとんどは会うことのない顧客のために行うものなので、メール経由で送る「イメージデザイン調査」の返答として顧客から提供される情報に大きく頼っている。質問の中でも一番役に立つのは、彼らのビジネスに関連する産業についての詳細、ロゴデザインについての情報の要求、好まないデザインの要素だ。
顧客にとって、好むものを定義するのは、たいていは難しい。だが好まないものに関しては、大方私に揺るぎない意見を提供してくれ、そういった情報は好ましくない方向に顧客とのプロジェクトを進めるのを回避させてくれる。顧客への調査質問の回答から、彼らの産業の詳細について教えてくれるという面でも頼っている。また、その産業を調査するのに使える資源をあたえてくれる。私はデザインやイメージのプロではあるが、その産業のプロではないからね。
JC: 顧客から必要な情報を得た後は、どういった外部的な調査を行いますか?調査の量は支払額によって異なりますか?
JF: 外部的な調査は決して受け取る支払いに依存することはない。顧客の要望と要求に対して一番よい、可能性のある解決策を作り出すのに必要とされていることによって決まるからだ。必要となる調査は、他にもその特定のプロジェクトや産業にも左右される。もし、私がよく知っている産業にある顧客のイメージをデザインするのなら、実際に必要となる調査は少なくなるだろう。
例えば、ここ数年で私はいくつもの舞台作品のロゴに関わってきた。対象となるものの知識がないままにプロジェクトの段階に入っていこうとは思わない。ただ舞台やミュージカルのタイトルの感じに沿って、私のコンセプトの土台を作る。私は実は、舞台のイメージの中で、グラフィックの面での驚きに変換出来そうな鍵となる文章の要素を見つけるために、劇の台本を読む時間を取っている。
JC: いくつかのコンセプトがまとまったら、いくつくらいのデザインを顧客に見せますか?また、それらは鉛筆でのスケッチなのか、より洗練された、デジタルのイラストなのかも教えてください。
JF: 私はスケッチをする、というよりは落書きをする。机などに向かって、スケッチパッドを使って時間をかけてロゴプロジェクトの粗いコンセプトをスケッチで書き出すことは滅多にしない(経験の浅いデザイナーにはまさにそうするように提案しているけれどね!)。私の中での一番いいデザインは机に向かっている時には滅多に浮かび上がることがなく、大抵はガーデニングをしている時、電話をしている時、これといった刺激のないミーティングの時、道を運転している時、シャワーを浴びている時といったことが多い。なので、結局その時に手元にあるものに落書きをすることになる。付箋や、封筒、ミーティングの資料、紙の破片や新聞の端などだ。粗い落書きや脳の奥に蓄えられたコンセプトを持って、その後にパソコンに向かってデザインの要素と「遊ぶ」。その後には大抵顧客に2~4つのデジタル画像を提案するが、洗練されているとは言えない。多くは少しまだ端の方が粗いからね。だが、私が何を伝えようとしているのかが顧客にしっかり伝わるくらいにはコンセプトははっきりしているよ。
今まで、最初に顧客に提案したコンセプトが、顧客がもつイメージデザインのニーズにとって完璧であるとわかっていたことが何度もある。そういった時には、ロゴのコンセプトを持って行って、顧客に「これがロゴです」ということに対して抵抗は全くなかった。その時には顧客も反対したことはなかったしね。80~85%の場合においては、顧客に最終的に了承されたロゴは私の最初のコンセプトにとても近いものだったよ。
デザインの提案がマッチしなかった場合について
JC: 今までにあなたが提案したロゴのデザインに顧客が完全に満足しなかったことはありますか?もしあったなら、どう対処しましたか?その追加のデザインに追加の費用は請求しましたか?こういったことはどのくらいの頻度で起こりますか?
JF: 頻繁には起こらないが、起こることはある。ほとんどの場合、仕事のパラメーターは私のプロジェクトの同意書に明確に記されている。顧客は費用に対して何が提供されるか、最初のプロジェクトの説明から超過した仕事はどのくらいかかるかをはっきり理解している。ここ10~12年の間では、困難だったことは4つしか思いつかない。そのうち1つは完了したけれど、他の3つは頓挫したよ。
一度顧客に折れた変なことがあって、私がより良いと思っている判断や推奨に反して、彼が欲しているものを完璧に作り上げた。そのイメージ作りのプロジェクトはとてもスムーズに進み、完成に近づいていた。実際に、プロジェクトの中のロゴの部分は承認され、私はロゴを用いたパッケージデザインに取り掛かっていた。だが突如、顧客から連絡があり、ロゴデザインにスウッシュ(※ナイキのマークのようなライン)を足すよう頼まれた。これはLogoHellというサイトのロゴでスウッシュの流行がとてもうまく描かれた直後だった。私は彼になぜスウッシュが欲しいのかを聞いた所、彼は「他者が皆ロゴにスウッシュがあるから。」と言った。それに完全にムカついて、私はスウッシュを足し、他のデザイン済の製作物の全てのロゴを置き換え、追加の仕事分として莫大な料金を追加したが、彼は喜んでそれを払った。私は誰にもそのロゴを見せることは絶対にない。
他の3件に関しては、イメージデザインの専門家として雇われたが、その後に仕事をすることを拒否された。どの件においても顧客がビジネスや製品のイメージを作る工程で、自分の思う方法から脱却できないことが関連していた。問題は、彼らの個人的な好みが、「ターゲットへのイメージやマーケティングの戦略と合わない」と、私には言われたくないということだった。私はそのために雇われているように感じていたのだが。私はプロジェクトの全ての側面を噛み砕きすぎるし、私自身のエゴが邪魔をしていないかを確認するために、気づくと一歩後ろに引いていることがある。
他の時には、ビジネスパートナーは褒めていたにもかかわらず、その顧客がとんでもなく酷かった。その時には二重人格を持つビジネスの対応をしている気分になったよ。幸いそのプロジェクトは未完成のまま終わりを迎えた。その件においては、問題は私でなく彼らの側にあり、血なまぐさいことにならずに終わってよかったと思っている。
一番最近の件は、完全に私のせいで、他の誰にも非はない。私は自分の中の最も大事なルールのひとつを守れなかった。それは、常に自分の「本能的直感」を信じろということだ。初日から、そのプロジェクトと顧客の何かが変な気がしていた。小切手を受け取り、いいプロジェクトになるだろうと感じて取りかかった。すぐにわかったのが、顧客は欲しているものが全くわかっていなかった。欲していないものについてもわかっていなかった。私にはプロジェクトの同意の言葉における法的な保証がなかったので、後戻りもできず、悪夢を見ているようだった。「人を喜ばせる」モードで進めたが、うまくはいかなかった。顧客は何度も「不満な顧客は嫌でしょう?」というようなことを言っていた。そして、バカバカしくも何回かのコンセプトを提案した後に「あなたから受けたものはオンライン上のロゴデザインのセルフサービスのものと同等だ」というメッセージを受けた。私にはそれだけで十分だった。結果的に、顧客の支払いの一部を返し、丁寧な言葉を綴った手紙を添え、プロジェクトを終わりにした。
ロゴデザインの制作時間について
JC: わあ、悪い顧客の対応をしなければならないのは私たちだけではないのですね…では、ロゴを作成する際に平均でどのくらいの時間をかけますか?ロゴにかける時間を左右する要素は何ですか?
JF: 平均などはない。成功したロゴデザインに一時間かからないときもあれば、何ヶ月もかかるものもある。一つのプロジェクトなんて、長い、長い、一年という期間に展開していったこともある。短いプロジェクトは、大抵顧客が望んでいる結果を算出するのに必要な情報をすべて提供してくれたことによるものだ。こういった人たちは大抵私の邪魔をせず、自分たち自身の邪魔をしないので、私が多くの制限や制御なしにプロジェクトに努力を割けるようにしてくれる。長いプロジェクトは大方、大きな法人の顧客や非営利団体のためのもので、そちらだと工程が役員会やその他の承認の段階で行き詰まる可能性がある。
私はロゴプロジェクトについては決定権のある一人の個人や、小さな企業と働く方がいいと思う。大きなプロジェクトにつきものの”仲介となる人”には、プロジェクトに対する熱意が欠落している。デザイナーとしては、小さな会社のイメージを図で表したり、ブランディングをしたりする方が驚くほど嬉しい。または、草の根的な団体のために行って、自分のデザインを出発点として使い、成功していくところを見る方が良い。
デザイナーとしての立場について
JC: 自身をデザイナーのどういった立場だと思いますか?自分のしたいことをしているのか、顧客に言われていることをやっているのか、どちらだと思いますか?
JF: 30年以上の経験を経て、私はイメージやその他のデザインの側面に関する専門家になった。顧客たちはこの専門知識や過去のイメージの作品の記録に沿って、私のことを雇っている。私は自分自身をその資源として位置付けている。もしも顧客がトラクターの製造者だったら、彼らは私がほとんど知らない装置についての専門家であると捉える。顧客のデザインのニーズへの成功的な解決法には、私の技術・才能・知識だけでなく、顧客の情報の基礎・彼らの産業における歴史・特徴が必要である。ただどちらかが相手に物事のあり方を伝えるということではない。私は自分のエゴがデザインのプロジェクトの邪魔をしないようにするし、顧客も、望んでいる結果においてターゲットとする顧客に必要なものを伝える最善の方法を私が作れるように、ビジネスや団体への個人的な投資から一歩下がる必要がある。
自身のロゴについて
JC: なたの有名なLogoMotives(ジェフ自身の屋号)のロゴはロゴデザインの「ルール」に物申していると思います。あなたは以前にもお話ししていると思いますが、これをした意図と、ロゴとして電車を選んだのはなぜですか?
JF: 今ではジェフ・フィッシャーのLogoMotivesのイメージを10年以上使っているが、世界中で認知される画像となったことに驚いているよ。ロゴデザインについて、デザイナーから褒めるメールや、フォーラムのメッセージ、SNSのコメントを今でもいつも受け取り、そこには高校や大学のデザインの課程で画像を見せられたと述べられている。多くの顧客も、私のロゴデザインを、私を雇う判断の基準としたと言ってくれる。
デザイナーが自分自身の顧客になることは難しいことだ。私は、自分の存在や自分が何をしているのかを伝え、私の作品の代表作となるようなイメージのデザインを作るために10年以上苦しんだ。私の最大のマーケティングと宣伝の道具とならなければならないからね。思えば、過程の中で他人からのインプットに少し耳を傾けすぎた。だが、私という最も気難しい顧客のためにできる限り良い画を作ろうと後押ししてもくれた。
私自身のイメージがロゴデザインのルールに物申しているかはわからない。私は「ルール」の熱心なファンというわけではない。私が思うのは、しばしば「ルール」として教えられることは、実際はただ、ロゴデザインにおける良い指針に過ぎないということだ。私は「ルールは破るためにある」と考えるような男だ。もしもデザイナーたちが常にロゴデザインの「ルール」を守っていたら、多くの最も創造的とされたコンセプトはボツになっていたかもしれない。限界に挑戦するのは、とてもいいことだと思う。
企業ロゴで気に入っているものは?
JC: 企業ロゴで、気に入っているものをいくつか見せてくれますか?これらは一番気に入っていないものとどう違うのでしょうか?
JF: ここ最近では、私の一番気に入っている企業のロゴはUnilever(ユニリーバ)のイメージだ。まずは、世界貿易センタービルのようだった昔のイメージのいい置き換えになった。他にも、大企業の想定できる「ルール」をたくさん破っている。シンプルなグラフィックではないし、タイポグラフィの処理は保守的、伝統的でないし、イメージが実際に特徴を伝えている。
Joe DuffyのThe Islands of the Bahamasのイメージも気に入っているし、こちらも伝統的な企業のイメージにおける「ルール」を多く破っている。LandorによるThe Cotton logoも、そのシンプルさやグラフィックとタイプの要素の融合があり、長年私のお気に入りだ。
最後のお気に入りのロゴは、私自身のものだ。これはいくつかの理由でつい笑顔になってしまう。過去18年間で、私は小さな、もしくは地域の非営利の劇場会社のために100以上のロゴを作ってきた。プロデューサーは常に、イメージを作成するにあたって完全に創造への自由を与えてくれた。「2 Boys in a Bed on a Cold Winter’s Night」という劇のロゴを作る時には、絶対に楽しめると思った。まず、この劇のタイトルは多くの人を引きつけると思った。次に、最初すぐに思い浮かんだグラフィックは本当に注目を集めるものだった。最終的な画は文字なしでTシャツの表に、そして裏には完全なロゴとして印刷された。私は公共の場でこのTシャツを着るのが大好きで、多くの人にいいデザインだと褒められ、彼らがグラフィックの中で何が起こっているかに気づくときの顔を見れた。デザイナーたちはたまには議論を呼ぶようなデザインでいたずらをしかけることは必要だと思うよ。
私の一番気に入らない企業のデザインは、「タイプ処理の横に丸をつける」に落ち着くと思う。at&tやxeroxの現在のイメージは、それぞれが表す会社のしていることに見合っていないと思う。素晴らしいイメージが「レベルを下げ」られれば、それらはすぐに古くさくなる。あと、Capital Oneの古風なスウッシュはなんなんだ?デザイナーとしては、これらの有名デザインに対する正当な意見を聞ける会議にぜひ参加したいね。
デザイナーになったきっかけは?
JC: これはインタビューの中で聴くのは遅いかもしれませんが、あなたがイメージのデザイナーになったきっかけはなんですか?また、この仕事の一番難しいところと、やりがいを感じるところはどこですか?
JF: 小学生の頃から私は芸術が好きだった。12か13歳の時点で私は宣伝やデザインに興味を持っていた。私はタイポグラフィーが好きだったし、字形でいつも遊んでいた。中学や高校の時には芸術的試みにとりつかれたようになっており、私の芸術作品の個展も行ったよ。高校の美術の講師に一度私が「絵画を正しく理解していない」と言われたことがあり、カンカンに怒ったよ。結果として、私は学校区の中で初めて芸術に関して個人的な勉強をさせられた生徒となった。それは、様々な形態の芸術やデザインと「遊ぶ」自由を与えてくれる機会だった。私は常に所々で、ロゴデザインで軽く遊んでいて、大学ではオレゴン大学の日刊校内新聞の宣伝部のデザイナーとして過ごした。その時でも私の元へ来るプロジェクト全てに、苦労して時間をかけた。それがプロのデザイナーに期待されているものだと思っていたんだ。
長年の間、私はMilton Glaser, Art Chantry, Sayles Design, Michael Schwab, Saul Bass, Louise Fili, Seymour Chwast, Rick Tharp, Hornall Anderson Design Works, Chermayeff & Geismar などのデザイン作品に魅了され、刺激を受けてきた。これらのデザイナーや企業のイメージにおける努力は、常に私に自分のロゴデザインを改善し続けるように後押ししてくれた。
キャリアが進むにつれて、イメージ全体のデザインの仕事が来るようになり、私は常にビジネスの要素や製品、組織やイベントを、シンプルなグラフィックの記号を通して伝達しようとする挑戦を楽しんでいた。しかし一方で、ロゴ以外のデザインプロジェクトは幅広く、私が情熱を持っていたロゴデザインの仕事の邪魔になっているように感じるようになった。ほんの十数年前のことだが、広告代理店のオーナーである姉と話していた時に、デザイナーとして燃え尽きているように感じることへの苛立ちを話した。彼女は私がなぜ自分が一番好きで、得意なことに集中しないのかを聞いた。黙って彼女を見つめていると、答えは私の顔に書いてあったようだ。彼女に「ロゴデザインじゃないの」と言われた。目が覚めたような思いだった。そしてその言葉で自分がデザイナーとして楽しめることに、デザインへの努力を割くことに対して、自分自身を許せるようになったんだ。ビジネス上の名前としてJeff Fisher LogoMotivesを使い、自分自身のロゴを完成させ、自分にEngineer of Creative Identity (創造的なイメージのエンジニア)という肩書きを与えた。興味があるものであれば他の種類のプロジェクトにも取り組めるが、イメージのデザインの依頼が必ず優先される。
ロゴデザインで私がしていることに対する最大の報酬は、私がイメージを作った新興のビジネスや草の根的な非営利団体が成長し、一般的な認識をされるようになっていることを見ることだ。その途中で培われた個人的な関係や、長期的な顧客との関係も大きな利益だ。受け取った賞やデザイン本の出版はただの「儲け」だ。
ロゴデザイナーを志望する人へのアドバイス
JC: 最後に、私のようなロゴデザイナーを志望する人にどんなアドバイスがありますか?また、最後に言いたいことは?
JF: 1. シンプルにしろ。すまない、これは言いたかった。これは私の頭に30年以上刻まれている。
2. デザインの「ルール」に制限されるな。顧客のために本当にユニークなイメージを作るために、伝統的、または予想される境界を超えてデザインをするように自分を後押ししなさい。
3. 自分や他のデザイナーのためにデザインしているわけではないことを頭に入れなさい。あなたの目標は、ビジネスや団体、製品やイベントにイメージを与える上で、顧客の要求や要望に応える最善のロゴを作ることである。
4. 自分の「本能的直感」を信じなさい。これは、顧客として誰を選ぶかもそうだが、提示されたデザインの解決法のどれを顧客に提案するかにも言える。もしも一つ「勝てる」デザインがあり、それが一番顧客の役にたつと思ったなら、自分を信じて、そのデザインだけを見せなさい。もしもコンセプトの強さに疑いがあるなら、思い切って捨てなさい。もしそれを可能性のある考慮の中から外さなければ、それが顧客の選ぶデザインになってしまう。
5. 楽しんで!もし仕事が楽しくないのなら、自分の時間なのだから他にやることを見つけた方がいい。
現在では、この専門職の長所の一つは私がその時どこにいても仕事をできるということだと思う。必要なのは私のPowerBookとしっかりしたインターネット環境だけだ。私はアメリカ、海外の至るところにいる顧客のために、様々な場所で働くことができている。よく私は言うことだが、「他人とうまくやっていないというわけではない。ただ、どこで、いつ、誰とやるかを決めたいだけだ。」
※KISS(“Keep it simple, stupid”)の原則とは、設計やデザイン・セールスプロジェクトなどにおいて、必要のない複雑性は避けるべきという考え方です。
「単純であることは究極の洗練だ」by レオナルド・ダ・ヴィンチ
「完璧とは、これ以上加えられないときではなく、これ以上削りとれないときに達成されるようだ」byアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
「単純かつ軽量にしろ」byコーリン・チャップマン
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