スペックワークを知っていますか?
日本ではあまり定着していない言葉ですが、「スペックワーク (SPEC WORK)」というものが海外の広告デザイン業界で問題視されています。スペックワークを平たく言えば、「気に入ったらお金を払うよ (気に入らなければ払わない)」という類のクライアントからの要求です。
カナダの広告代理店 Zulu Alpha Kilo は、そんな業界のスペックワークについてNOを掲げ、5年前から提案依頼書の8割を断るという英断を行いました。当初は社員・クライアント含め、非常に混乱したそうですが、その結果、この5年間一度もスペックワークを行わず成長を遂げてきたのです。
そんなZulu Alpha Kiloが、一風変わった映像を制作しました。これを観ればデザイン業界の「スペックワーク」がいかに良くないことであるかが理解できます。スペックワークにNOというべきである!(Say no to spec)という標語を掲げた、反スペックワークPRビデオです。今回は、Zulu Alpha KiloのCCO兼創立者のZak Mrouehに許可をいただき、映像の掲載と翻訳を行っています。(Thank you Zak !!)
– 以下動画内容の翻訳です –
クライアント:こんにちは。こちらが提案依頼書です。
額縁店オーナー:提案依頼書?なんだそれ。
クライアント:提案依頼書です。戦略的なプロセスで、私に合うパーソナルトレーナーを選びたいと思います。
クライアント:まずスペックワークとしてデザインをいただき、それから最終作品を気に入るか検討して、それから費用を払うかもという感じですね。
建築家:(苦笑)
クライアント:どうですかね?
建築家:言ってる事がめちゃくちゃ。
クライアント:今回は1ドル75セントの予算がないんです。一杯コーヒーをいただいてそれを気に入るかどうかまず検討したいので、スペックワークで一つください。
カフェ店員:・・・嫌です。
クライアント:スペックワークで朝食を作ってほしいんだ。もし私が気に入ったら、レストラン集に掲載して・・・
飲食店店員:は?あんた一体何を・・・
クライアント:そう!それからお金を・・・
飲食店店員:時間の無駄だ。ほら!帰ってくれよ!忙しいんだ。
クライアント:スペックワークで額を作ってくれないんですか?
額縁店オーナー:絶対に作らないよ。
クライアント:そうですか・・・。では、クライアントはどうやって増やしていくんですか?
額縁店オーナー:クライアントは私を信用しているし、私の仕事のクオリティを気に入っているんだ。
パーソナルトレーナー:君をクライアントとして欲しいけど、僕は始めからサービスを提供しているんだから、君も始めから払ってくれないと。それがビジネスのルールだよ。
カフェ店員:あなたがすでに私のクライアントだったら、今コーヒーにお金を払っているんじゃないですか?
クライアント:私がそのコーヒーを気に入るかどうかなんてわからないだろう?
カフェ店員:信頼するんですよ。
飲食店店員:世の中どこでも通じるルールを教えてやる。まずお金を払って、それから食べるんだ。
クライアント:もし額が気に入ったら、それから1年間君の額を買いましょう。その代わり割引してくださいね。そのあとの1年はさらに20%割引という形で。私と継続してビジネスができるんですから。
額縁店オーナー 呆れ顔
建築家:だめです。私はプロフェッショナルの建築家で、時間を使ったらその分の費用を払ってもらっています。
クライアント:スペックワークで得たあなたのトレーニングメソッドの権利は全て私にあるということでいいですか?
パーソナルトレーナー:君にトレーニングを教えると言う事は、僕の”知的財産”を与えるということだよ?
クライアント:分かってますよ。
パーソナルトレーナー:いや、だめだね。そんなこと絶対にしないよ。誰がそんなこと引き受けるんだ?
クライアント:ええと、私たちはあまり相性がよくないみたいですね。
建築家:そうみたいですね。よくないと思います。
飲食店店員:あんたは政府の手先か何かか?あんたおかしいよ。
クライアント:他のレストランはタダでやってくれるよ!
飲食店店員:出てってくれ!早く!なんでここに来たんだ?さっさと出てけよ!
パーソナルトレーナー:君は、タダで仕事をするのか?
クライアント:えーと・・・しませんけど?
パーソナルトレーナー:じゃあ、なんで僕にそうしろって言ってるんだ?
この動画を見て、クライアントがとても無礼で非常識で横柄な人物に見えたのではないでしょうか?こんなやつ、一体どこにいるんだと。
しかし広告デザイン業界においては、こういった要求や要望が実際に存在しています。こういった「スペックワーク」にいい加減NOと言いませんか?
表面的に見れば、クライアントが良いアイデアだけをバイキングのようにかいつまむのは良い方法に見えるかもしれませんが、実際は悪い事だらけです。スペックワークがクライアントに良くない理由は次の通りです。
1. 実際のデザイナーの才能が発揮されない
2. 理想的で長期的なパートナーと出会えない
3. デザイナーのリソースを奪い、結局その補填をしないといけない
4. 安全牌になりがちで、パイオニア的なアイデアの邪魔となる
5. 結局、誰も得しない
「私は、このやり方はもう誰にも良いことはないと思います。クリエイティブな仕事をタダでやるくらいなら、チャリティーや世界を今より良い場所にできるような事に創造力を使おうではありませんか。戦略パートナーと長い付き合いをすることに「YES」と言いましょう。現実世界のビジネスの問題を解決することに「YES」と言いましょう。企業を向上させることに「YES」と言いましょう。共に。なぜなら、私たちが共に協力し合って誤解だらけのスペックワークを終わらせなければ何も変わらないからです。今が、クライアントとデザイナーが共に、スペックワークに「NO」と言う時です。」by Zak Mroueh
#saynotospec
スペックワークに「NO」と言おう
Thank you Zulu Alpha Kilo !!
CREDITS:
Agency: Zulu Alpha Kilo / Creative Director: Zak Mroueh / Art Director: Guilherme Bermejo / Writer: Nick Doerr / Agency Producer: Tara Handley / Production House: Zulubot / Director: Zak Mroueh / Producers: Tara Handley, Daniel Kaplan / Director of Photography: Albert Huh / Casting Director: Shasta Lutz / Post, Editing, Music Company: Zulubot / Editor: Mike Headford / Colorist, Transfer: Roslyn Di Sisto – Smith / Producer: Tara Handley / Music : Asche and Spencer / Engineer: Stephen Stepanic / Sound Mixer: Ian Reynolds / Cameraman: Alex Oktan / Actor: Chris Locke
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