デザイン事務所として、様々のクライアントと日々仕事をする中で、相性の良い人もいればそうでない人もいます。これは人間同士なのである意味では仕方のないことです。
今回のタイトルはとてもストレートに、「良いクライアント・悪いクライアントとは」です。アンタッチャブルなテーマではありますが、自分の体験・聞いた話を含め、”あるある”という部分がありましたので、ご紹介したいと思います。
今回は、21世紀の教育プラットフォームを標榜する”The Future“の動画を翻訳しています。※記事掲載は許諾を得ています。(Thank you The Future and Chris Do !!)
クリス(右 : 以下C):皆さんこんにちは。今日は良いクライアントと悪いクライアントについて話していきます。ではまず悪いクライアントについて話しましょう。デザイナーなら誰もが話したがりますよね。
ホゼ(左 : 以下J):クライアントについて、ね。
悪いクライアントについて
C:クライアントが会ったとたんに私に「証明」を求める時は、そのクライアントが悪いクライアントだとすぐにわかります。私が証明をしなければならないクライアントは、私の性格に合っていません。
昔、ビジネスパートナーとのミーティングに呼ばれたときに「で、どんなことしてくれるの?」って言われました。その時はこのミーティングは無意味だと思って帰りましたよ。
J:そんなにすぐに悪い雰囲気になってしまうんだね。
C:そうですよ。だって初対面の人に「で、何してくれるの?」とは聞かないでしょう、普通。
J:雰囲気の話をすると、例えばクライアントと初めて会うときに「このあいだの作品とても素晴らしかったですよ」なんて言われると、雰囲気がとても良くなりますよね。
それと比べて、会ってすぐに「おたく、高いね!」なんて言われると雰囲気は悪くなりますね。
お金について
C:それでは、完全に私の個人的な観点から「時給と価値」について話したいと思います。
作成や作業に費やす時間と、私が作るものの価値についてです。作業時間とレートを知りたがるクライアントが多いですが、私はこのやり方が好きではありません。時給は、作品の価値を減少させると思います。
J:クライアントと話し合いをしていて、タイムラインや予算についての話が主になると、プロジェクトの中で何が本当に重要なのかわかっていないのがわかりますよね。
目標と戦術を分けて考えてはいけません。良いクライアントは、費用などの細かいことではなく、私と仕事することに対しての熱意や彼らのビジョンについて話してくれます。
C:私はお金のことについて話すのは悪いことではないと思いますが、予算について話すのと時給について話すのは違うと思います。
私はまず予算について話します。1時間半のディスカッションをした後で、40万ドルのプロジェクトに4000ドルの予算しかないなんて知りたくないですからね。時間を無駄にしないためにも、時給ではなくプロジェクトの予算について話したいのです。マーケティングイニシアチブにどれくらい費やせるのか、どのような資源があるのかについて知りたいです。
ピートキャンベル的クライアント
J:私の初めての悪いクライアントは、「ピートキャンベル」(海外ドラマ「マッドメン」に出てくる出世欲の強い男)のようなプロデューサーでした。彼は自分のことにしか興味がなく、企業の中での地位のみを得ようとしていて、経験もありません。こちらが仕事を完了するまで、嫌がらせをしてきました。
C:私も、自分を作っているタイプのクライアントを前にするとネガティブな気分になります。周りにもバレバレですからね。人間としてどうあるべきかということだと思います。
リスのようなクライアント
J:次は、動物のリスのようなCEO。
「こういうのがいいんだ!」って言った直後に、くるり!!
5分おきに気分が変わります。これは「キラキラした物症候群」と言って、現実的な方向性ではなく、ユニコーン(=つまり絶対に見つからない)が欲しい人のことを言います。
ドナルド・トランプ的クライアント
最後に、リスCEOに関連した、ドナルド・トランプCEO… 何を笑ってるの?(笑)ドナルド・トランプCEOは、「私のほうが上だ!私がお前に教えてやる!」という態度をとる人です。中身がないことを怒鳴り散らしている人です。
C:でもそのタイプのクライアントは、予算は大きいんだよね。
J:そう!そうなんだよ!予算はとても大きい!それか、予算はあるのに払うのを拒むかも・・・。どちらにしろ、担当したくないクライアントですよ。
C:私の悪いクライアントリストはけっこう長いですよ。悪いクライアントが多かったのかもしれないけど…。
逐一命令するクライアント
まず、何をどうやってするかまで逐一命令してくる「マイクロマネージャー」タイプのクライアントはひどいです。何をするか、どうやってするかのどちらかだけを教えてほしいです。そうでないと、私がクリエイティブプロジェクトにおいて意味のある仕事をできなくなってしまいますから。
オンオフの線引きをしないクライアント
次に、理不尽な期待を持っていて、線引きができないクライアントです。
年中無休だと思っている人達ですから、休日前の夜中に電話してきます。境界線が見えていないし、理不尽な期待を持っているんです。悪いクライアントは曖昧なフィードバックを返してきます。よく「見たらわかるから」と言われます。長い時間、これが嫌だあれが嫌だとネガティブなことばかり言うのに、何を求めているのかを言ってくれないクライアントです。何が嫌なのかを言うのは簡単ですが、自分は何が欲しいのかしっかりと考えて伝えるのは難しいのですね。
なんでも簡単にできると思っているクライアント
次に、悪いクライアントは何でも簡単にできると思っています。
よく、「これは簡単でしょ?」「これは難しくないよね?」と言われますが、そこで「難しくないです」と言ってしまうと「じゃあできるよね」と言われて罠にはまってしまい、何度も何度も訂正と改良をしなければならなくなります。
過度に優柔不断なクライアント
また、悪いクライアントは優柔不断でもあります。
他人から意見をせがみます。私は、自分が何を求めているのかがわかっているクライアントと仕事がしたいです。ご近所さんやPTAや自分の奥さんに、自分の求めているものが何かを聞くような人は、自分の欲しいものが全くわかっていません。もし自分の求めているものがわからなければ、「わからないから君を信用するよ。」という勇気を持ってそう言ってください。そうすれば、私たちについて知っていることをベースに、お勧めできるものを提案します。
個人を中傷するようなクライアント
悪いクライアントは、個人的な攻撃をしてきます。
完全に一線を超えていて、もはや仕事の話をしません。君は怠けているだとか、アイデアが良くないだとか、個人的な攻撃をしてきます。「君にこれを良くしてもらいたくて雇ったのに、なんで前より悪くなってるの?」とか言われますが、そういうコメントは誰にとっても良いものではありませんよね。君が最高だと思って雇ったのに、こんなんじゃだめだって言われてしまう。私は、これでは上手くいっていないから、目標を達成するために工夫しましょうと言いますよ。
ダークサイドの人間は、他人の個人的な感情を壊すことで優越感に浸ることしかできません。アーティストのエゴはとても壊れやすいことを知っているんですよね。個人的な攻撃を受けて壊れてしまった人は、前よりさらに頑張ってクライアントに尽くそうとしてしまうのです。
ポーカーフェイスなクライアント
他にも、不透明なクライアントがいます。
何を考えているのか全くわからないし、感情やプレッシャーを隠してしまいます。「ポーカーフェイス症候群」と言って、その作品が良いのか悪いのかもわからないし、あまりコメントもしてくれません。これは、協力して行うプロジェクトだという根本的なアイデアを壊しています。
無責任なクライアント
最後に、皆を責めるタイプの悪いクライアントもいます。
責任を全くとりません。成功した時だけ、それは彼らのおかげになりますが、それ以外の時は全て彼ら以外の人間のせいにします。皆バカだし、皆がプロジェクトを妨害しようとしていると主張します。でも私はこういったことは自分から招くことだと思います。もしあなたが悪いクライアントに悩まされているのならそれはあなたが良くない関係を受け入れてしまっているせいですので、変えていきましょう。
良いクライアントについて
C:次に、重宝すべき良いクライアントについて話しましょう。
信頼できるベンダーを選び、プロとしてしっかり仕事をさせてくれるクライアントが好きです。それだけです。「あなたを信頼してくれて、あなたをプロとして扱ってくれるクライアント」に価値があります。
リスペクトを持って協力してくれるクライアント
J:「禅CEO」は、とても落ち着いていて怒ったりせず、チームとして正しい人たちを選んでいる人のことを言います。言葉を濁したりせず好き嫌いをはっきりと言う人ですが、それを無感情というわけではなく・・・マインドフルで心地良い形でできる人です。ビジョンや共同プロジェクトについて詳細を担当する人たちがいるわけですが、この禅CEOは素晴らしい協力者です。その分野の知識と経験が豊富で、しっかりと役目を把握している人です。
周りの人々をまとめ、あなたがプロジェクトを成功できるようにコーチングしてくれます。プロジェクトの進行中は、彼の企業で内部的に今の状況を把握しサポートしてくれます。それがあなたをデザイナーや企業としてリスペクトしてくれている本当のパートナーです。
C:さて、クライアントがあなたを信頼してくれるということは、あなたの意見に耳を傾けてくれるということです。良いクライアントはあなたに意見や考えを求め、何かを決断する時にも参加してくれますし、彼ら自身の考えや意見よりも強いものとして受け止めてくれます。
スティーブジョブズの有名な言葉で「AプレーヤーはA+のプレーヤーを雇うがBプレーヤーはCプレーヤーしか雇わない。」とありますが、常に自分よりレベルの高い人を雇って、信頼してその人たちが良い方向に導いてくれるようにするべきなのです。世界トップレベルの建築家やデザイナーを雇って、どうデザインすべきかを教えるのは意味がありません。
デザインの価値を認めているクライアント
次に、デザインを競争でのアドバンテージとして認めているクライアントはとても貴重なクライアントです。デザインを「あまり美味しくないご飯をマシにするソース」としてではなく、他と差をつけるものとして見ているクライアントです。その価値がわかる人はあなたの価値もわかっているので、良い関係が築けるでしょう。
雇用者の扱いが良いクライアント
公平なクライアントは良いクライアントです。スタッフや雇用者をどう扱っているかを見れば、その人があなたをどう扱うのかがわかるはずです。たまに全く一貫性がなく、スタッフや雇用者の扱いがひどいのに、あなたをとても良く扱うような人もいますが。
悪いクラアントは「独裁者」、良いクライアントは「召使(労働者)のリーダー」として比較できます。
共同作業をしているときに、召使のリーダーは他の人と問題を共有しチームを引っ張りますが、独裁者は上からそれを眺めるだけです。
オープンマインドなクライアント
良いクライアントは視野が広いです。「詳細は任せますので提案してください」と言っていても、こちらから少し違ったものを提案すると引き下がってしまうクライアントがいますよね。でも、視野が広い、オープンマインドなクライアントは、それがたとえ彼らの想像していたものとは違っていても、そのデザインにした意味を知りたがります。
良いクライアントは社交的です。友達と飲みにいくとかそういったことではなくて、良いクライアントはあなたの良い作品や、あなたと協力することの素晴らしさを共有しようとします。手柄を自分のものにするのではなく、あなたとの共同作品として他人と共有して、次の仕事につながるきっかけにしてくれます。
これは私の文化の反映なのですが、私は自分のビジネスに集中している人と仕事をするのが好きです。私はデザイナーですが、セールスマーケティングやビジネスゴールを彼らが担当するのに対し、デザインの面は私に任せてくれる。これはとても光栄なことです。
デザインを自分でも出来ることは良いこと?
その逆で、デザインを自分でも作れるクライアントは最悪なクライアントです!
いえ、これはデザイナー同士の憎みあいではなく、最悪なのです。デザインを自分でも作れるクライアントは、クリエイティブなことを普通だと思っているので「簡単でしょ、これ。早くやってよ!」と言ってきます。それか、「ちょっと貸して、一緒にやってあげる」と言ってきて、私はマウスを動かして「拡大する?縮小する?」と言うだけになってしまうのです。私の脳みそは停止してしまいます。
これはもう私がクライアントと共に解決策を見出しているのではなく、クライアントが言うことをただやっているだけになります。だから、感情的にも個人的にも、クライアントを見極めます。仕事の価値を理解していて、しっかりと見合った報酬を払ってくれるクライアントです。でも、クリエイティブな人たちはその逆をすると思います。ホゼはどう思いますか?
良いクライアントと巡り合うには
J:視聴者の皆さんは、これがどう自分に関連するのか?と思っていると思います。
どうやったらよいクライアントを持てるのか?どうやったらあなたたち(私たち)のようになれる?どうやったら、クリスのようになれる?(笑)
直感を磨こう
C:私やホゼが言っていることはもう皆さんが知っていることだと思います。もう知っていることなのに、危険信号が出ても無視してしまっているのだと思います。暗い路地を歩いていて危なそうな人が近づいてきたら、防御態勢を取りますよね。iPodを見せびらかしたりせずに、守りの体制に入りますよね。
でも、ビジネスの世界での人々とのやり取りでは私たちはそれを忘れてしまいます。直感を無視してしまった代償はとても大きいです。男女関係でも仕事でもこれは同じで、最初から悪い関係になるとわかっているときがあります。もしそうなってしまったら、起こったことをしっかり理解して学び、同じ過ちを繰り返さないようにすることが大事です。
悪いクライアントを作り出しているのは自分自身?
J:男女関係は良い例ですね。良いクライアントを見つけることは、自分にあったパートナーを見つけるのと同じことです。デートが上手くいかないように、悪いクライアントと出会うこともあるでしょう。先ほどから私たちの経験から語っているクライアントたちのように。
でも私は本当は「悪いクライアントなど存在しない」と思っています。あなたのクライアントはあなたが作っています。どういうことかというと、あなたの自覚はあなたの選択に現れます。恐怖心があると、クライアントにいじめられたりしてしまいます。私は、それは自分自身のせいだと思うんです。だから、自分をまずしっかり持つようにして、それから自分の求める道や求めるクライアントを決めていくようにしましょう。
「NO」と言える力をつけよう
C:時に、悪いクライアントを持つことしかできないような状況に陥ることがあります。それが経済的な理由だったり、一度きりだと思ってしてしまったり。もし私が今駆け出しのデザイナーだったら、しっかり「NO」と言えるようにして力をつけていきますね。
J:問題なのは、どんなタイプのクライアントにも対応できる人になれるかどうかです。例えばさっきお話したドナルド・トランプのようなクライアント。ええと・・・(笑)
要するに、成長すればするほど、クリスのようになれるのです。自分のエネルギーとスペースを守れるようになります。お金などどうでもいいのです。
C:これは実話なのですが、600万ドルのプロジェクトを断ったことがあります。本当に600万ドルですよ。
理由は、クライアントに、危険で良くない雰囲気を感じたからです。初めてのミーティングの時に、今後ずっと悪い関係になるとわかっていました。わかりやすい質問をしているのに反応が悪かったですし。だからそのあとEPに「これは1000万ドルでもやりたくない。皆がとてもつらい思いをしてしまう。」と言いました。こういうときはシンプルに「NO」と言いましょう。YesとNoしか言わないように聞こえるかもしれませんが、ペットフードから電化製品まで本当に幅広いジャンルのクライアントを持つ私たちにはもちろんグレーゾーンもあります。
本当に大事なのは、クライアントと築く関係です。もし、とても神経質な代表の方がクライアントだったら、仕事をすることは可能ですが、割に合わないと感じて嫌になるのかもしれません。そういうことが初めにわかっていないと、とても大きな問題になります。私は、電話をいただければ喜んで仕事をします。ただ、もし、嫌な気持ちになるときは、報酬が割に合っていないのです。だから、料金は高く設定しましょう。
それでは、良いクライアントと悪いクライアントのエピソードを見てくれてありがとうございました。いいね!を押してコメント、チャンネル登録お願いします。ではまた次回!
Thank you The Future !
Credits:
Executive Producer– Chris Do
Hosts– Chris Do & Jose Caballer
Director– Aaron Szekely
Cameraman– Aaron Szekely, Andrew Truong
Producer– Aaron Szekely
Editor– Aaron Szekely
Musical Director– Adam Sanborne
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