様々な広告について
自社の商品やサービスを販売していく為にまずは必要なこと。それは「知ってもらうこと」ではないでしょうか。ひと口に知ってもらうと言っても、商品名だけ伝わればいいのか、その内容・特徴まで伝えたいのか、はたまた制作側の想いやバックグラウンドまでも知ってもらいたいのかなどと、認知にはかなりの幅が存在しています。それら知ってもらいたいことをある程度絞り込み、認知させたい深度やターゲット、利益の創出方法、広告予算によって媒体を選び、伝えられるカタチにすることが広告デザインの大切な役割です。
広告媒体は大きく分けると3パターンに分類されます。
まずひとつは、国内の総広告費の過半数を占める「マス媒体」です。これは、マスコミュニケーション媒体、すなわちテレビ・ラジオ・新聞・雑誌などを指します。広告費が高い分、注目度も比例し、情報伝達のもっともメジャーな位置を占めるという意味でATL(Above the line:情報の上流)とも呼ばれています。
ふたつめは「SP(セールスプロモーション)媒体」と呼ばれる、購買へダイレクトに結びつく媒体で、チラシやDMなどの印刷媒体や看板、交通広告が挙げられます。これらはエンドユーザーへのより具体的なアプローチを主にすることからBTL(Below the Line:情報の下流)とも呼ばれています。
最後に挙げるのが「インターネット媒体」です。インターネット媒体は先に紹介したふたつの媒体の特性を併せ持っており、近年成長著しい分野です。消費者との接点がこれまでの広告のスタイルとは違い双方向であることが大きな特徴となっています。また、SNSの発達で「拡散」や「共有」という新たな情報伝播のカタチが生まれており、広告の在り方自体を変えていく高いポテンシャルを持っていると言えるでしょう。
具体的には、どのような媒体があるのでしょうか。ここからは、あらゆる産業の中で多岐にわたる広告の種類を紹介していきましょう。
テレビ広告
近年、若者のテレビ離れが深刻化していると言われていますが、中年以上の世代を中心にいまだ文化の中心にあるのは、やはりテレビです。国内総広告費の1/4以上のシェアを占め、制作費も放映費も他の媒体と比べ莫大な予算を必要としますが、その分、影響を及ぼすターゲットは広く、リアルタイムでの発信となるため、情報の信頼度や鮮度は格段に高くなります。また、映像という表現方法は人々に豊かな印象を与え、記憶に残るイメージを植えつけます。ブランドイメージの定着やキャンペーンなどの伝達、他媒体との連動における主幹的なポジションとして効力を大いに発揮します。
テレビ広告には「タイム」と「スポット」の2種類があります。「タイム」とはいわゆる番組スポンサーというもので、ターゲット層の視聴数が多いと思われる番組のスポンサーとなり、番組の中で流されるCM(30秒が基本)として広告が放映されます。出稿期間は1クール(3ヶ月)が基本で、3ヶ月間同じ曜日同じ時間帯で放映されることになります。規定が多い分自由度は低めですが、繰り返し同じ時間帯に同じ層の人々へ訴えかけられるため、イメージの定着を効果的に図ることが出来ます。
それに対して「スポット」は、15秒CMを基本とし、番組と番組の間に放映される単発広告です。新商品のキャンペーンやイベントなど、決まった期間に集中して広報を仕掛ける時には抜群の効果を発揮する手法で、価格的にも「タイム」よりおおむね安く済みます。イメージを映像というカタチに具現化するテレビ広告には、幾通りもの表現方法があります。伝えたい内容に最も適したサイズとボリューム・予算に沿った構築、映像ジャンルの選択を経て具体的な制作へと進んでいきます。企画・撮影・編集と段階を踏みイメージへ近づけ、一つのCMが完成していきます。
ラジオ広告
テレビと比べて一時代前の感があるラジオですが、地域密着性があり、パーソナリティーとリスナーの距離が近く、目的やターゲット次第では良い効果が期待できるのがラジオ広告です。運転中のドライバーや家事の最中の主婦、受験勉強中の学生など、「何かをしながら」聴くことが生活の一部となっているケースが多く、根強い人気があります。
ラジオにおける広告制作では、基本的には広告デザインのセオリーでコンセプトを詰めていきましょう。まず広告ターゲットですが、ラジオではリスナーのライフスタイルを捉え、聴取時間帯に注意する必要があります。例えば、主婦層であれば日中、マイカー通勤中の会社員であれば朝または夕方、若年層であれば深夜というように、時間帯によってリスナーが異なってきます。また、ラジオパーソナリティーが掴んでいるリスナー層が広告ターゲットと合っているのかどうかも慎重な検討が必要です。パーソナリティーのキャラクターがもつ「人気」がどの層に訴求しているのか、番組内容とからめて理解しておきたいポイントになります。以上を踏まえればターゲットに対してピンポイントでのリーチが期待できます。
費用面では、テレビ広告と比較するとより低コストで展開することが可能です。ラジオ広告もテレビ広告と同様に「タイム」と「スポット」の2種があります。「タイム」では指定した番組内でCMを流すことができます。番組提供スポンサーとなる場合、番組制作費と媒体費の負担がセットで生じます。番組には、全国ネットの番組と、地域のみで放送されるローカルの番組があります。番組中にパーソナリティが広告内容を読み上げるようなスタイルもあります。「スポット」では番組と番組の間にCMが流れます。CM一本からの購入が可能で、時間帯や季節を選んで集中的に打つこともできます。
インターネットのストリーミングメディアに押されているように見られがちですが、最近ではPCやスマホでラジオ番組を再生できるアプリ「radiko」の普及でリスナーも増えてきています。
新聞・雑誌広告
新聞や雑誌は、読者が自分のペースで読むことができ、再読や切り取って保存するなどの記録性もあるため、詳細な情報を確実に伝達したい広告に適しています。
日本の新聞はほとんどが自宅に配達されるため、各世帯への強いリーチ率を誇ります。テレビ・ラジオと同様に、全国紙から、都道府県で配布される県紙、複数都道府県で配布されるブロック紙まであります。社会的な信用度も高く、信頼性の強い媒体であると言えます。
新聞広告では、紙面上のどのスペースに広告を出稿するかによってそれぞれの呼び方があります。記事の中に掲載される場合は「雑報広告」と呼び、「題字下」「題字横」「記事中」「突き出し」などがあります。定期的に企業名やロゴなどを掲載し、周知を図るケースが見られます。大きく入る広告は「記事下広告」と呼ばれます。新聞紙面の文字段落は上から順に15段ありますが、その三分の一にあたる下部スペースが「全5段」、その半分が「半5段」。紙面の三分の二を使う場合が「全10段」。紙面全体を使う場合が「全15段・全面広告」と呼びます。これらの記事下広告では、文字だけではなく、画像を使い、しっかりとデザインされた広告制作がよく見られます。新聞広告大賞などの形で、広告デザインの優秀さが競われることも多いです。
雑誌広告では新聞広告と異なり、雑誌のもつ方向性・専門性によってターゲットを絞り込むことができます。さらに、保存性が高いため再読・回読など反復効果も期待されます。雑誌広告をデザインする際には、ターゲットの好みに合った表現を用いることで、より強く訴求する広告を作ることが可能です。
雑誌広告には大きく分けて「タイアップ記事広告」と「純広告」の2種があります。「タイアップ記事広告」は、雑誌側で記事・特集のようにデザインする広告で、その雑誌の読者がより読みやすくなり、訴求度が高まります。「純広告」は、広告主が制作するタイプの広告になります。企業イメージやブランドアイデンティティーを伝えるのに適しており、広告主の意図したイメージを的確に伝えることができます。
掲載する場所ですが、表紙の裏や裏表紙などは「表回り」と呼ばれます。裏表紙は「表4」と呼ばれ、掲載料金が最も高くなります。表紙の裏は「表2」、裏表紙の裏面は「表3」となります。目次ページの前後は「目次回り」、中綴じページの見開き部分は「センター見開き」と呼びます。
印刷物
チラシ、ポスター、DMなどの印刷媒体は、エンドユーザーへの具体的アプローチに強いBTL(Below the Line:情報の下流)の代表選手として、商品購入の促進を目的としたSP(セールスプロモーション)によく使われます。地域の企業や商品販売と生活者を結びつける際には、とても効果的で強い媒体であると言えます。デザインの自由度も高く、企画や表現方法を工夫することによってレスポンスの向上が期待できます。
・チラシ広告
ポスティングまたは新聞に折り込まれて配布されるため、消費者の目にとまりやすく、販売促進に直結します。メインターゲットは主婦層で、食品・衣料品・家電製品などの小売店セール情報の告知や、サービス業の案内などによく利用されています。サイズや配達地域、配布日を指定することができ、ATLに比べてスピーディかつ安価に制作することができます。自由にデザインできる特性を生かし、広告のみならず地域の生活情報として親しまれる傾向があります。
・DM(ダイレクトメール)
ダイレクトメールは郵送やメール便などを使い、自宅や事業所に直接情報を届ける広告手法です。顧客情報をベースに送付されるため、期待されるターゲットを絞ることができます。多くの企業では、キャンペーンのお知らせなどに使うケースがよくみられます。ハガキやチラシなどシンプルなものから、ボリュームのあるカタログまで様々なサイズがあります。顧客データを活用できるため、セグメントされたターゲットに直接メッセージを届けることが出来ます。また、雑誌や新聞に比べて形状が自由である点や、レスポンス率を元に広告効果の検証を行える点などが特徴です。
・ポスター広告
店頭や交通機関など、よく見られる場所に展開すると効果的です。ポスターは商業美術として生活を彩る役割も果たします。ヨーロッパではアート的に優れたポスターが街に溢れています。企業イメージのアップやイベント告知など、強くイメージを押し出して行きたい場合に有効な媒体です。
店頭広告(POPなど)
店頭で商品周りに設置される販売促進のための広告媒体をPOP(ポップ)と呼びます。POPは「Point of purchase advertising(購買時点広告)」の頭文字を取った略語です。例えばスーパーの店内では、商品陳列台、柱、天上吊り下げポスター、ショッピングカートなどに配置されています。内容は商品名や価格、キャッチコピーや説明文などがあります。季節催事などのイベント時にはテーマを表現したポスターを柱や壁面、天上吊り下げに配置して総合的な店内演出を図ることで、店舗イメージが醸成され、売り場の雰囲気が変わります。
POP広告は、店が推奨したい商品について店員に代わって情報提供し、購買を促進させます。来店客は自分が見たい広告を自分で選ぶことができるため、店員による一方的な情報提供よりも効率的に、より多くの商品に対して広く興味を持つきっかけをつくります。また、商品説明に関わる業務もサポートされ、負担が軽減される効果があります。
POPには商品メーカーが自社製品の売り込みのためにデザイン制作し広告器材として提供するもの、店舗側で手書きで制作するもの、デザイン会社に発注して店の雰囲気を作り上げるように演出するものまで、様々な種類があります。パソコンのフォントには「ポップ体」という書体があり、楽しく親しみやすい雰囲気でデザインされており、ポップ広告をデザインする際によく利用されています。
店頭広告のデザインでは、商品内容の把握をまずしっかりと行い、イベントの場合は季節感を感じさせるイラストや色調などに配慮してイメージを固め、制作を進めていきます。商品名と価格を表現する書体(フォント)、説明文(コピー)、表現の工夫など、用途と状況に応じて選び、適切なデザインに仕上げていきます。価格重視の場合は金額の大きさに重点を置き、商品内容を重視させたい場合はコピーに重点を置きます。
消費者のほとんどは店頭で購入する商品ブランドを決めると言われ、店頭広告の存在はお客様の購買意欲を後押しし、店舗の売上を左右するとまで言われるほど重要視されています。
ノベルティ広告
広告メディアを使用しないマーケティング手法「ノンメディア・マーケティング」という捉え方をされることもあり、近年注目を集めています。ノベルティ(novelty item)という言葉にはもともと「めずらしいモノ・コト」という意味がありますが、現在では「企業が自社や商品の広告のために、ロゴや名称を入れて(名入れ)配布する粗品・記念品」という意味で使われることが多くなっています。「名入れ」の方法はさまざまで、一般的なものはシルクスクリーン印刷です。革製品などでは型押しや箔押し、木製品やボールペンなどにはレーザー彫りなどもあります。フルカラー印刷で画像や写真も印刷することもできます。デザインする際には、企業や商品ロゴの形状・色を最適なカタチでグッズに入るようにしっかりと配慮する必要があるでしょう。
ノベルティを媒体とした広告はスペシャリティ広告(特殊広告)とも呼ばれ、プレミアム(景品)とは区別されています。イベント、展示会、プロモーション、商品購入の際のおまけ等、あらゆるシーンで配布され、企業名・商品名を印象付け、購入促進を図ります。生産数の少ない限定品の場合、オークションで売買されるほど人気が高まることもあります。
グッズの種類としては、Tシャツ、帽子、マグカップ、クリーナー、ティッシュペーパー、トートバッグ、キーホルダーなどの生活小物系、ボールペン、付箋、メモ帳、ケース、クリアファイル、カレンダーなどのオフィス文具系、お菓子やジュースなどの飲食系などがあります。近年はスマートフォン関連やPC関連のグッズもよくみられます。アイデア次第で様々な展開が可能で、ノベルティのためだけに商品開発からはじめる企業もあります。
交通広告
交通広告とは、電車・バス・タクシーの車内、車外、駅構内などに掲載される広告です。通勤や通学などで頻繁に利用する人は、毎日一定時間同じ場所に居るため、視認性と認知度が高くなります。車の利用が多い地方より、公共交通機関の利用者が多い都市部に強いのが特徴です。
交通広告のコストは、駅や路線の利用人数に比例して増減します。乗降客数の多い路線・駅の広告料金は高くなります。広告をアプローチしたい地域や路線、駅などを絞り込むことができるため、費用対効果の高い媒体と言えます。そのエリアで開業している商業施設や学校などの訴求に利用するのが効果的です。広告展開時には、エリアマーケティングによる的確な媒体選択が必要で、公共機関に掲示するという性質から、専門的なデザイン性も必要となります。
交通広告の種類は多岐に渡ります。車内広告は、車内の特定の場所に止まって一定時間を過ごすことから、接触時間が長くなり、広告の精読率が高まるため、内容を読ませるような情報量が多い広告の展開が可能です。車内中央の天井から下げる「中吊」、網棚上・窓・ドアの上に掲載する「窓上」、ドアのすぐ横に掲載する「ドア横」、ガラス面やドアに貼り付ける「ステッカー」があります。ある車両をまるごとひとつの広告で貸切り、強いインパクトを狙う「車両ジャック」という展開もあります。
駅構内広告は、歩いている時に見ることが多く、キャンペーン、ブランドのPRなどビジュアルを活かしたイメージ広告に適しています。ポスターでPRする「駅貼り」、柱に巻くタイプの「アドピラー」、電子看板の「デジタルサイネージ」、床を利用した「フロア広告」、プラットホームにみられる「電飾看板」などがあります。「駅貼り」では同じポスターを連続して貼る「連貼り」で強いインパクトが出せます。「電飾看板」は、年単位の契約が多く、駅近郊の施設紹介など長期にわたる告知に主に利用されます。駅構内全てをイベント的に利用する「駅ジャック」という企画もあります。
車外(車体)広告としては、「ラッピング電車」「ラッピングバス」など車両全体に広告をデザインするものがあります。普段見慣れている車体のビジュアルが大きく変化することでる強いインパクトが得られます。
デジタルサイネージ
デジタルサイネージ(Digital Signage=電子看板)とは、施設内や公共空間に設置されたディスプレイなどに動画や静止画を表示する広告媒体です。表示面積は建物の壁面サイズから自動販売機の小窓サイズまでさまざまです。すでに数多くの場所で様々なデジタルサイネージが設置され、広告に限らず様々な情報が提供されています。空港、駅、高速道路SA、デパート、スーパー、銀行、大学、ホテル、映画館、病院、美術館、エレベーター、トイレなどにもデジタルサイネージは急速に広まっており、電子看板という言葉に代表される「ビル壁面にある大型ディスプレイによる広告」にとどまらない広がりを見せています。
欧米の都市部では既にかなり普及しており、至るところでみることができます。デジタルサイネージは内蔵メモリやメモリーカード等に情報を保持することができ、秒単位で表示内容を替えたり動画表示を行うことが可能です。また、ネットワーク対応機の場合は、通信ネットワークで表示情報を受け取り、リアルタイムで内容を更新できるため、明確な目的達成と効果が期待できる媒体となります。
例えば、ホテルや駅や空港での案内板、金融機関の店内で表示する株価情報提供、スーパーの店頭での商品情報提供、学校や病院での連絡情報など、ユーザーニーズに応じた情報提供の媒体として広がりを見せています。街の景観を向上させる空間アートとして、ビデオ・ウォールやイルミネーションなどの活用も可能です。緊急時には公共空間で避難情報を流すなど、公的な取り組みも進んでいます。
2015年の調査によると、デジタルサイネージ広告市場においては、2013年から2020年の間に約6倍の成長が見込まれています。広告としての利用方法は、交通広告、屋外広告、店頭広告の3つに分けることができます。そのなかでも大きく増加するとみられているのが店頭広告です。大型ディスプレイを必要とする屋外に比べ、小型のディスプレイで始められるためです。ポスターや看板のような印刷物の取替えの手間がかからず、また動画が表示できるために強い注目度があります。デジタルサイネージでは設置場所を考えてターゲット層の設定を行い、その特定層に焦点を絞った広告デザインを展開できます。例えばリアルタイムなキャンペーンなどの情報発信が挙げられます。
最新の動きとしては、3D映像技術、映像に合わせた香りを放つ装置、視聴者の有無や人数を画像認識により感知して表示内容を変える工夫、スマートフォンとの連携などが計画されています。
屋外広告
屋外広告は、常時または一定の期間、屋外で不特定多数に向けて表示される看板類をいいます。店舗やビルの側面や屋上に設置される大型なものをビルボード(billboard)、店舗前や道路に置かれてその店の存在を示す「看板」が代表的な屋外広告ですが、近年目覚しい発展を遂げているのが電光掲示板やデジタルサイネージ(Digital Signage=電子看板)と呼ばれる可変性を持つデジタル映像パネルによる広告です。その他にも「電柱広告」や「消火栓広告」、繁華街のビルの屋上や壁面などに設置される「ネオンサイン」、鉄道や幹線道路沿線の田畑に設置される「野立て看板」などがあります。料金は、設置場所の交通量や知名度~マスコミへの露出量、期間や時期、内容などにより大きく変わります。
継続的に公共性のある場所に置かれるため、屋外広告物法、建築基準法、道路交通法や条例などにより制限があります。地域によっては景観保護のため、強い条例で制限される場合があります。デザインする際には、その地域の条例を把握し、使用色や面積の制限がないか確認してから企画を進めます。公共性に配慮した配色、表現方法の選定を踏まえてデザインを進めます。色の見え方が一般と異なる(先天的な色覚異常、白内障、緑内障など)人は、日本全体では300万人以上、世界では2億人もいるとされており、そのような色を見分けにくい人にも情報がきちんと伝わるよう、出来るだけ多くの人に見分けやすい配色を選ぶカラーユニバーサルデザイン(Color Universal Design、CUD)を使うことが望ましいでしょう。
空中広告
屋外空間を利用する広告です。現在では禁止されていますが、一昔前には航空機から散布するチラシがあり、フライヤーの語源となりました。現在見られる空中広告はアドバルーン、飛行船の船体広告などですが、近年ドローンを用いた最先端の広告が注目を浴びています。アドバルーンは圧倒的なボリューム感があり、遠くからでも見る人の目を釘付けにします。博覧会・展示会・新店舗オープンやセールなど、各種イベント開催の告知に用いられることが多いです。年齢や性別に関係なく、誰もを楽しませ、華やかに盛り上げる効果があります。
バルーンほど色や形が様々で、意外性に富んだ演出物はほかにありません。最近は形も色も様々なバリエーションを選ぶことができるようになりました。オリジナルの形状をデザインして発注することも可能です。
ドローンを用いた空中広告はスタートしたばかりで、各国でドローンに関する法整備が進んでおり、法規制に対応した広告展開が求められてくるでしょう。その中でも様々な試みが行われています。ドローンに広告媒体を吊り下げて、高層ビルのオフィスで働く人に向けて見せるケースがあります。モスクワでは料理の出前の宣伝フライヤーをドローンで広告し、電話番号やwebサイトURLなどを見せたフライヤーを飛ばしています。服の宣伝をするケースもあります。上下コーディネートした服にブランド名と価格を入れたタグをつけて飛ばすケースもあります。ドローンが頭の部分にあたり、さながら近未来SFのような景色になります。意外性を話題に結び付けて注目度を高める手法となっています。
また、ドローン自体に発光パーツを装備し、集団飛行させてダイナミックな動きを付けつつ、なんらかの広告やパブリックアート的なイベントを実施させるものなど、それぞれ「これまでにない表現を可能にしている」ことが大きな特徴になります。
インターネット広告
インターネットとスマートフォンの爆発的な普及で、消費者の行動は大きく変化しました。従来は「AIDMAの法則」と呼ばれる消費者の行動パターンを参考にして広告展開を考えるセオリーがありましたが、インターネットが標準化した現在では「AISASの法則」というセオリーに移り変わりつつあるといわれています。
従来のAIDMAでは、Atention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Motive(動機)、Action(行動)という5つのプロセスをあらわしており、例えば「広告が目に入る(注意)」→「興味を持つ(関心)」→「その商品が欲しくなる(欲求)」→「買う気になる(動機)」→「購入する(行動)」という流れで広告が購買につながっていきます。
AISASでは、Atention(注意)、Interest(関心)、Search(検索)、Action(行動)、Share(情報共有)という5つのプロセスとなり、「サーチ(検索)」と「シェア(共有)」というインターネットでの2大行動が購買行動に加わってきました。この場合、「広告が目に入る(注意)」→「興味を持つ(関心)」→「その商品についてインターネットで検索して情報を確認する(サーチ)」→「調べた結果、その商品・サービスに充分な評価をした場合、購入(行動)」インターネットではその場で商品を購入できるため、動機を抱き記憶して買い物にでかける必要がありません。→「購入した商品やサービスの感想などをSNS等に書き込んで周囲の人々とその情報を共有(シェア)」購入後にも情報は拡散し、購入をさらに促進する効果が生まれます。
Search(検索)の動きに合わせた広告が「リスティング広告」で、検索サイトで検索したキーワードに応じて広告を出すしくみになっています。キーワードを選んで広告配信ができるので、商品やサービスの購入を検討する直前のユーザーに対して直撃するように広告を打つことが可能です。費用は成果報酬になっていて、広告を見た人がクリックした数が費用となり、CPC(Cost Per Click)と呼ばれています。代表的なものは、規模が世界最大の「Googleアドワーズ」、クリック単価が低く、費用対効果が高い「Yahoo!プロモーション広告」などがあります。
Share(情報共有)の媒体となるSNSの世界でも、安定したユーザーを獲得したサイトから「ソーシャルメディア広告」も動き始めており、中でもTwitterとfacebookは強く、たとえばFacebook広告を使えば、日本だと約2000万人にリーチできます。ソーシャルメディア広告では利用者のデータがあることが強みになっており、リスティング広告よりもさらに細かく、ターゲットを絞り込んで広告を出すことが可能になっています。
いずれも広告クリックを主な成果とする形ですが、インターネット広告の中でも費用対効果が高いといわれるのは「アフィリエイト広告」です。商品やサービスが実際に購入された際に費用が発生するタイプで、アフィリエイト・サービス・プロバイダー(ASP)を通じて大手サイトから個人ブログまで幅広く広告を掲載してもらいます。
広告の活躍するフィールドは情報技術の発展に伴ってかつてない広がりを見せています。誰に何をどのように伝えれば最も効果的なのか?さまざまな広告媒体の組み合わせをデザインしていく力がますます求められていくでしょう。
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