デザイナーにとって文字(タイプ)は、広告物の仕上がりを左右する非常に重要なものです。
今回は、カナダでデザイン事務所を経営する Ben Barrett-Forrest 氏が制作した「タイポグラフィの歴史」という映像作品を元に、文字(タイプ)の歴史をご紹介したいと思います。2,454枚もの写真を使用し、140時間をかけて制作された大作です。丁寧に切り取られたタイプフェイスの数は291種類!素晴らしい映像ですので、是非ご覧ください。※記事掲載は許諾を得ています。(Thank you Ben Barrett-Forrest !!)
以下、映像と翻訳内容です。
タイポグラフィの歴史
文字(タイプ)とは、力です。
それは、言葉やアイデアを視覚的に表すための力です。
時を感じさせないのに、常に変化しています。今日お話しするのは文字(タイプ)についてです。
ブラックレターについて
タイポグラフィの創造者はドイツ人のヨハネス・グーテンベルクだと考えられています。
こんな感じの帽子をかぶった人でした。ヨハネス・グーテンベルクがコミュニケーションの世界に革命を起こす前は、本は僧侶によって手書きで書かれており、とても時間がかかりました。それらの手書き文字を元にデザインされたのが、グーテンベルクが作った歴史上初のタイプフェイス「ブラックレター」でした。
縦の線は太く横につながる線が細いため、手書きでは書きやすいが印刷されるととても凝縮して見えてしまいました。タイプは変化が求められました。
ローマンタイプの出現
それに応えて生まれたのが「ローマンタイプ」です。
皆さんもワープロなどで使ったことがある「Cambria」もこのタイプフェイスですが、初めてのローマンタイプは15世紀にフランス人のニコラス・ジェンソンによって作られました。これがそのタイプフェイスです。ジェンソンは主にイタリアのベニスを拠点としていましたが、そこで発見した古代ローマの建物に書かれていた文字にインスピレーションを受けます。
彼の作った文字はまっすぐな線と程よい曲線から構成されており、真っ黒で凝縮されたブラックレターと比べるととても読みやすいものでした。この新しいタイプフェイスは大成功を収め、たちまちヨーロッパ全土に広がりました。
イタリック体の出現
ローマンタイプフェイスの後に生まれた革新的なタイプフェイスは、ローマンタイプが傾いてスタイリッシュになったような「イタリック体」でした。
15世紀にイタリア人のアルドゥス・マヌティウスによって作られたこのタイプフェイスは、費用削減のためにページにより多くの文字を印刷できるように作られました。現代では、強調する部分にイタリック体が使われます。マヌティウスはコンマとセミコロンを作った人でもありますが、それはまた別のお話。
セリフ書体の発展
それからしばらくの間新しいタイプフェイスが生まれることはありませんでしたが、18世紀にイギリス人のウィリアム・カスロンが革新的な読みやすさのタイプフェイスを作りました。これといって特別なタイプフェイスではありませんでしたが、まさに世界中が必要としていたものでした。
「Caslon」は現代では「Old style(オールドスタイル)」フォントと呼ばれています。
何十年かして、これもイギリス人のバルカヴィルという人が「Baskerville」を作り、現代では「Transitional(トランジショナル)」フォントとして知られています。
その後、フランス人の「Didot」とイタリア人の「Bodoni」が作ったタイプフェイスは現代では「Modern(モダン)」フォントと呼ばれています。
セリフフォントのほとんどがこの3つのカテゴリーに当てはまりますが、それぞれのカテゴリーの意味はなんなのでしょう?
「Old style」フォントはセリフが太く、太い線と細い線のコントラストが低いのが特徴です。
「Transitional」フォントはセリフが細く、太い線と細い線のコントラストが高いのが特徴です。
「Modern」フォントはセリフが非常に細く、太い線と細い線のコントラストが非常に高いのが特徴です。
サンセリフ書体の出現
次に、セリフに飽きてしまったウィリアム・カスロンのひ孫であるウィリアム・カスロン4世がセリフを切り落としたことから生まれたのが、「サンセリフ」フォントです。人気はすぐに出なかったものの、のちにとても有名なフォントとなります。
2度目の産業革命の際には、広告に使う新たなタイプフェイスが必要となりました。背が高い文字や横に長い文字が、ポスターやビルボード広告に大きなサイズで使われていました。
様々なタイプフェイスの実験の結果、「EGYPTIAN(エジプシャン)」が小さな成功を収めました。
とても太いセリフがあるのが特徴で、主にタイトルに使われたタイプフェイスです。
19世紀のタイプフェイスは複雑なものが多かったのに対し、20世紀初期のタイプフェイスはとてもシンプルなものでした。
ドイツのポール・レナーが作った「Futura」というフォントは、単純な図形を元に作られました。これは「geometric sans(ジオメトリック・サンセリフ)」と呼ばれています。
同じ時期にイギリス人のエリック・ギルが作った「Gill sans」はジオメトリック・サンセリフに似ていますが、より柔らかく自然に作られています。これは「Humanist sans(ヒューマニスト・サンセリフ)」と呼ばれています。
サンセリフタイプの次なる革命は1957年にスイスで起こりました。「Helvetica」はシンプルな曲線と様々なウェイトで使用可能なことが特徴で、「世界で最も愛されているタイプフェイス」と呼ぶ人もいます。
デジタル化によるフォントの更なる発展
コンピューターが誕生してからは、タイプフェイスの世界が変わりました。
スクリーンの技術が低かった初期のコンピューターでは、ピクセル文字しか使うことができませんでした。
しかし、テクノロジー技術が発展してからは何千もの美しいタイプフェイスが作られ…美しくないものもいくつかありましたが…今では、誰もが自分のタイプフェイスを作ることができるようになったのです。
これが、タイポグラフィの歴史です。
Created by Ben Barrett-Forrest
© Forrest Media – 2013
この映像を制作したBen氏は、ポーカーをしながらグラフィックデザインの知識が学べる「THE DESIGN DECK」というゲームを開発されています。
こちらから購入できますので、興味のある方はサイトに訪れてみてください。
使わずに飾ってしまいそうです。
http://www.forrestgoods.com/shop/the-design-deck
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