
もしかすると一番身近?コンビニエンスストアのロゴ
日常の中でロゴマークを1つも見かけない日があるでしょうか。よほど文化から遠のいたところで自給自足の暮らしをしているとかでなければ、答えはNoであると思います。手に取る日用品、食品、衣服にいたるまでほとんどのものにロゴは存在しています。一歩外に出てみると、ロゴマークは様々なお店の看板や広告としてそこら中に溢れています。中でもよく目にするのはチェーン展開する店舗、そしてロードサイドにある店舗・・・コンビニエンスストアです。

コンビニのロゴはドライブ中などでも遠くから見かけるだけで、どの店舗のものなのか大体識別がつくと思います。これって実はすごいことだと思いませんか?今回はそんなコンビニのロゴについて見ていくことにしましょう。
コンビニのロゴは、「遠距離視認性」を最優先に設計されている
コンビニのロゴデザインは、家庭用品や食品など、近距離で見られる商品ロゴとは設計思想が違います。最大の前提条件が「数十メートル先から識別できること」です。これが他のロゴ設計と異なる、コンビニロゴ特有の制約になっています。
街を歩いていて「あそこにコンビニがある」と認識するのは、文字を読む前の段階です。色の組み合わせ、看板の形状、ロゴ全体のシルエットだけで、どのチェーンかを判断しています。だから、コンビニのロゴは色を強く使い、シンプルな形状で、識別距離の長いデザインに収束していきます。
これは普通の企業ロゴ設計とは違う前提です。たとえばオフィス系のサービスロゴなら、近距離で名刺やWebで見られる前提なので、繊細なディテールも有効です。一方、コンビニロゴでは細かい装飾はかえって邪魔になります。「どこから・どんな状況で・どれくらいの距離で見られるか」を最初に設定すると、ロゴ設計の方向性が決まりやすくなります。
日本のコンビニ業界のトップを走る「セブンイレブン」のロゴ
コンビニと言えば「セブン」と連想する人も多いのではないでしょうか。多彩なプライベート商品、多角的なサービス。コンビニのクオリティをいつも底上げしてきた旗手的な存在といっていいでしょう。

TungCheung / Shutterstock.com セブンイレブンのロゴマーク
セブンイレブンの創業は、1927年アメリカのテキサス州からでした。原点となったお店はなんと氷小売店!まだ家庭用冷蔵庫が普及していなかった当時には欠かせないお店だったんですね。故に、夏場の営業時間は週7日毎日16時間、休みなく営業を続けました。当時のお客さまは大変喜ばれましたが、どうせお店を開けてくれているのなら、卵や牛乳、パンなんかもあるともっと便利なんだけど…という声が。すぐにその声に耳を傾け、出来たお店が現在のセブンイレブンの前身となったわけです。そして1946年、営業時間にちなみ店名を「7-ELEVEN」とし、「7」と「ELEVEN」組み合わせたロゴマークの原型が出来上がったそうです。
赤・オレンジ・緑~世界共通のコーポレートカラー
ロゴマークや店舗デザインにも登場するセブンイレブンのコーポレートカラー「赤・オレンジ・緑」。この色は創業当時から変わらず、世界中にあるセブンイレブンで共通なのだそうです。設定された当時の記録は残っておらず、正確な意図は現在では特定できないそうですが、現在のセブンイレブンジャパンの見解では
オレンジ・・・夜明けの空の色
赤・・・・・・夕方の空の色
緑・・・・・・砂漠のオアシス
という位置づけで、「日の出から日没まで、お客さまのオアシスとなるような店舗」という思いで設定されたのではと言われています。
色の関係を生かした目立つロゴマーク
買い物用のバスケットを思わすようなグリーンの箱に鎮座する、存在感抜群の赤とオレンジで描かれた「7」のマーク。緑と赤は色相環上で補色の関係にあり、反対色とも言われています。互いを引き立てる色で、さまざまなシーンで使用される組み合わせです。そして、赤と緑は野菜などの食品にも多く見られる色でもあります。加えてオレンジ色は「食欲」「親しみ」などを象徴するポジティブなエネルギー色。これらの色味を使って作られたこのロゴマークは、多くの人の目を引きなおかつ親しみやすく、「食」のイメージも喚起させる、とてもバランスの良いのロゴデザインといえるのではないでしょうか。
ネットでも話題?!ロゴマークに隠された謎

Tupungato / Shutterstock.com
最近、SNSやネットでも取り上げられているセブンイレブンロゴの謎。皆さん、ご存知でしょうか?創業当初からそうであったようなのですが、長年見てきたのに気付かなかった…という方がほとんどのようです。ELEVENの最後の「N」が小文字の「n」だったということに。言われてみれば…という感じなのですが、この意味、コーポレートカラー同様、もう年月が経ちすぎて真相がはっきりしないそうです。
諸説ありますが、代表的なものが2つ。
まず一つ目は、商標登録で通らなかったという説。
現在でもそうですが、商標として登録するには単純な数字の羅列などの意味を持たない名称は登録するのが困難なのです。それで最後の文字を「n」とすることでこれを回避したとする説です。
そして最も有力なのが、「デザイン的なアクセント説」
ロゴを考案した当時、社長夫人が、すべて大文字にするより、小文字を入れたほうが見た目に美しくなるのでは?と意見したとかしないとか。確かに、大文字だけだと直線だらけで厳つい印象です。「n」が入るだけで曲線のやわらかさが加わり親しみやすい印象になります。国内でも「キユーピー」や「キヤノン」など、同様にデザイン的な字面を優先させ、拗音を通常の大きさの文字で表記するという、似たような事例があります。社名の表記まで変更させてしまうとは、デザインが与える影響とは凄いものです。
牛乳屋さんが出発点、ブルーのコンビニ「ローソン」のロゴ

TK Kurikawa / Shutterstock.com ローソンのロゴマーク
ブルーの爽やかな印象どおり、美容や健康に関する品揃えが整っていると言われるローソン。情報端末機の導入も早く、一歩先行くイメージもあります。そのはじまりは、1939年アメリカのオハイオ州からでした。J.J.ローソンさんがはじめた牛乳店。とても新鮮でおいしいと評判になり、やがてお店はローソンミルク会社となり、日用品なども扱うチェーン店になったそうです。このミルクショップの看板が青かったことから、現在のロゴマークの色、そしてミルク缶のデザインもそこからきているということです。
セリフ体の特徴を存分に生かしたロゴタイプデザイン
TungCheung / Shutterstock.com
以前にも紹介しましたが欧文書体には「セリフ体」と「サンセリフ体」があり、日本語書体でいうと、前者が「明朝体」後者が「ゴシック体」に相当します。セリフ体の一番の特徴は文字の節々に飾りがついていることです。
ローソンのロゴタイプはご覧の通り、そのセリフ体の飾りを存分に強調したデザインになっています。セリフ体は本来、華美で知的、高級感などを印象付ける書体です。しかし、ローソンのロゴタイプは飾りの部分がとても大きく、かつ角を落として丸みをつけたデザインになっています。このため、親近感が湧き、カジュアルなイメージも与えつつ、「安っぽさ」からは距離を保った印象づくりに成功しているのです。また、同様の効果を与えるのに一役かっているのがロゴマークを囲むエンブレムです。まるでワッペンのようなこの囲みは、ほかのコンビニにはないパーツで、他社との差別化と洒落た印象をもたらします。
2色の色に込められた、ファミリーマートと顧客の「絆」

Sakarin Sawasdinaka / Shutterstock.com ファミリーマートのロゴ
1973年、日本で生まれたメイドインジャパンのコンビニエンスストア。吸収合併を繰り返し、近年成長著しいグループです。社名の由来は、「お客さまとFC加盟店、本部とが家族的なお付き合いをしながら共に発展してゆきたい」という考えからつけられたそうです。ブランドカラーに指定されているブルーとグリーンには意味があり、ブルーは「楽しさ」「新鮮さ」、グリーンは「信頼」「安心」をあらわしています。またその2色で描かれた2本の太い線は「お客さまとの太い絆」を意味しています。
キャッチコピーがあらわす「親近感」
ロゴ刷新と共に新たに加わったキャッチフレーズ「あなたと、コンビに、」。読点が意味している通りロゴも含め「あなたと、コンビに、FamilyMart」で1つの文節になっています。キャッチフレーズには手書き文字を使うことで、これまでのコンビニロゴにはなかった「温度」を感じさせ、顧客との視点の同一性をアピールしています。
「色だけで識別される」強さは、長期積み重ねの結果として生まれる
コンビニロゴの面白い特徴のひとつは、「色だけで識別される」レベルにブランド認知が定着していることです。緑と赤を見ればセブンイレブン、青を見ればローソン、青と緑を見ればファミリーマート、というように、文字を読まなくても色だけで判別ができます。
この「色だけで識別される」状態は、長期間の積み重ねの結果として成立しています。各チェーンが、創業以来同じ色を一貫して使い続けてきたこと、店舗・看板・パッケージ・ユニフォーム・販促物など、すべての接点で同じ色を維持してきたことが前提です。短期間のキャンペーンや一時的な変更ではなく、「数十年単位で同じ色を守る」姿勢がブランド資産を作っていきます。
中小ブランドや新興ブランドにとって、コンビニロゴの色運用は学べるところが多くあります。「目立つ色を選ぶ」だけでなく、「選んだ色を5年・10年・20年と守り抜く」という姿勢が、最終的に「色だけで識別される」強さにつながります。色を変えたくなる誘惑(リブランディング、流行への対応)に耐えて、長期で守ることが大切になります。
焼印をヒントに作られたアメリカ生まれの「サークルK」のロゴ

Tupungato / Shutterstock.com サークルKのロゴ
アメリカ西部で生まれたサークルKの前身会社「Kay’s Drive in Grocery Store」は、他州に進出する際、西部で盛んだった牛の放牧をヒントにロゴを作り出しました。Kay’sの「K」を丸で囲み、当時、牛の所有を示す「焼印」をモチーフにしたのです。
ブランドカラーのオレンジは、アリゾナ州の夕日の色、赤は同じくアリゾナ州の夕日に照らされた山の端の色をあらわしています。雄大な美しい景色だったのでしょうね。書体は丸みのある太めのゴシック体。力強さと親しみやすさを兼ね備えたインパクトの強いロゴデザインです。
太陽と感謝の意味を重ねた色あざやかなロゴ「サンクス」

TK Kurikawa / Shutterstock.com サンクスのロゴ
「Sun(太陽)」のようにあたたかく明るいお店と、「Thanks(ありがとう)」の気持ちを込めて「sunkus」と名付けられました。ロゴに使われている赤と黄色は、太陽の明るさと暖かさ、お客さまへの愛と親しみを象徴しています。白は、清潔で清掃の行き届いた店内を、緑は鮮度と安全を意味しています。そしてこのロゴの真ん中、「sun」と「us」の間を歩く、ユニークな「K」の文字。これは「kids」の「K」をあらわしており、お子さまでも安心して来店できる店という意味が込められています。
親会社の山崎製パンのイメージを引き継ぐ「デイリーヤマザキ」

Tupungato / Shutterstock.com デイリーヤマザキのロゴ
山崎製パングループが運営するコンビニエンスストア。毎日(daily)の暮らしに楽しみやあたたかみを提供していきたいという願いを込めたネーミングだそう。ロゴデザインも、母体の山崎製パンのコーポレートカラーである太陽の赤をベースに、楽しさをあらわす黄でロゴタイプを彩り、影をつけることでパンの膨らみのような立体感を演出しています。丸みのあるデザインと母体とは異なる英字表記は、ポップで元気なイメージが強く、コンビニエンスストアらしい軽快な印象を持たせます。
コンビニエンスストアのロゴデザインに共通するキーワード
それぞれの企業の歴史やロゴの由来、なかなか驚かされるものが多かったのではないでしょうか。これらコンビニのロゴデザインに共通しているのは「視認性の高いデザイン」「親近感のもてるデザイン」です。コンビニエンスストアは、ほとんど誰もが利用する身近なお店。その用途と特性を大前提にした上で個性を主張する、練りに練り上げられた作品はさまざまなロゴデザインのお手本となりそうですね。
同業他社が並ぶ場面では、色配置の差別化が機能している
セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートと並べてみると、各社の色の選び方が明確に違うことが分かります。これは偶然ではなく、「同業他社と並んだときに識別される」ことを意識した、業種内ポジショニングの結果と読み取れます。
セブンは赤・オレンジ・緑、ローソンは青の単色寄り、ファミリーマートは青と緑の組み合わせ。三者が街で並んでも、瞬時に区別できる色配置になっています。これは、もし三者が同じ赤系のロゴだったら成立しない構図です。後から参入したチェーンは、先発各社の色を避けて差別化する判断が必要だったわけです。
新規ブランドが業種に参入するときは、同じ業種で先行している競合の色配置を確認して、「空いている色のポジション」を選ぶ、という発想が役立ちます。「自社が好きな色」より、「業種内で競合と区別される色」を選ぶことが、長期的なブランド認知の構築に効いてきます。色の選択は、市場の中での相対関係で決まる、という視点を持っておくと判断しやすくなります。
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