私達が普段何気に利用しているものは、それぞれメーカーが製造したものですが、そのメーカーには独自のロゴがあります。私達が商品を購入する際、何気にロゴデザインからそのメーカーがどこかということを把握し、購入することも多いと思います。
ロゴというものは、消費者に強く印象付けることを目的としていることがほとんどであるため、その多くがカラフルでインパクトの強いものとなっています。特に自動車メーカーにおいては、エンブレムとして車のセンターに配置されるため、デザインは非常に重要なのです。またそれぞれのロゴマークには印象付けの他にも、隠された意味が存在します。
自動車メーカーは世界中に多数存在しており、それぞれ違ったロゴが使われています。そんな自動車メーカーの中から、いくつかのメーカーのロゴデザインについて、その隠された意味を紹介していきます。
日本の代表的存在、TOYOTA(トヨタ)のロゴマーク
日本の代表的自動車メーカーであり、もはや世界でもトップクラスに君臨しているのが「TOYOTA」です。
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トヨタのロゴは横長の楕円形で、真ん中にTOYOTAの頭文字である「T」を象るように2つの楕円が描かれている、比較的シンプルなデザインです。しかし、シンプルながらもしっかりと印象に残るデザインでもあります。世界には様々なロゴがありますが、このエンブレムの認知度はかなりのものではないでしょうか。楕円の組み合わせのみで表現するというのは一見簡単そうですが、シンプルなデザインほど細かなバランスが重要になります。
実は、この楕円形のロゴデザインには大きく深い想いが隠されています。トヨタ車のエンブレムはかつて車種ごとにバラバラで、統一されたロゴマークは存在していませんでした。そこで、会社の創立50周年を記念し、5年という歳月をかけ作られたのが現在の楕円形のロゴデザインです。第一に重視されたポイントは遠くからでもトヨタの車だと識別できる「視認性」です。そして第二に、他社メーカーと並んだ際にも引けを取らない、輝くような「個性」。当時、デザインを担当したデザイナーは、「動感」「成長発展を示す未来感」「洗練性」「グレード感」などをキーワードにデザインを組み立てていったそうです。
そうして出来上がったロゴデザインは、今ではデザインという枠組みだけではない企業の姿勢や理念をも示す存在へと昇華していきました。内側の2つの楕円は、ユーザーとメーカーとのつながり、そして外側の楕円はそれらを取り巻く世界をあらわしています。また、マークの背後は空間と定義されており、果てのない世界に広がる「トヨタからお客さまに伝えるべき価値」を意味しているのだそうです。そして、3つの楕円形を形成する線は一定の太さではなく微妙に変化をもたせることで、日本の文化である「毛筆」をイメージしており、世界を市場にするメーカーの自国への愛の表現でもあるのです。
太陽と天空をモチーフにした日産のロゴデザイン
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創業当時から先進技術の吸収に積極的で、海外企業との技術提携などを通し自社ブランドの自動車開発を行ってきた日産。昭和33年には、当時世界で最も過酷なレース、オーストラリア大陸一周ラリーに出場し、見事クラス優勝を飾るという偉業を成し遂げました。この時、出場した車種が自社開発の「ダットサン」。その開発技術の素晴らしさが世界にも認められ「技術の日産」と親しまれるようになりました。
日産のロゴマークは、この「ダットサン」から生まれたものが今でもベースとなっています。センターに大きく赤の日の丸、そこに天空をイメージしたコバルトブルーの長方形を重ねて、白文字で「DATSUN」と書かれていました。
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その後、真ん中の「DATSUN」を「NISSAN」と書き直し社紋となったのです。この時から使われている、赤・白・青のトリコロールカラーは現在でもコーポレートカラーとして生きており、ディーラー各社の店頭看板やレースカーのボディデザイン、日産がスポンサーのサッカーチームのチームカラーなど、ブランドイメージの統一に一役買っています。
さて、日産のロゴマークは、ダットサン以降、筆記体を用いたりゴシック体を用いたりしながら、様々な形態でその時代時代をエンブレムという形で彩っていきます。そして創業50周年を節目とし、1983年にロゴマーク及び指定フォントが一新されました。この時のロゴタイプが現在のロゴタイプに大きく影響を与えています。それまで、個性をそれほど主張してこなかったゴシック体の「NISSAN」の文字でしたが、新たに指定されたフォントは、近未来的な匂いを感じさせる幾何学ベースのフォントデザインでした。直線で基本を構成しながらも要所に曲線を入れることで、柔軟な姿勢と確かな技術力の両側面が見事に表現されています。
その後2001年、ルノー傘下に入りカルロス・ゴーン氏指揮のもと新たなデザインが社内コンペで検討され、現在の立体的なロゴデザインへと改修されました。ロゴタイプは50周年に制定された書体デザインをベースにブラッシュアップされ、ベーシックなサンセリフ書体「Akizidenz Grotesk」の日産バージョン「NISSAN AG」とモリサワ書体の「新ゴ」の組み合わせを企業フォントとしました。この時採用されたロゴデザインのサンプルは今でもカルロス・ゴーン氏のオフィスに飾られているそうです。「至誠天日を貫く」これは日産創業者が残した創業精神を語る言葉です。現在も残る、円とそれを貫く「NISSAN」の文字は創業者の精神を今も伝え続けているのです。
理由は穴を塞ぐため?! ルノーの不思議なひし形ロゴ
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前出の日産を傘下に収めたヨーロッパ有数の自動車メーカー、ルノー。そのロゴデザインは、上品さと合理性を合わせ持つ美しいひし形で知られています。なぜひし形になったのか。経緯ははっきりと伝えられていないそうですが一番有力なのが、当時のルノー製自動車の前部の穴を塞ぐのに最適な形だからだったのではないかと言われています。なぜ穴があったのかは、クラクション用とも蒸気排出用とも言われていますが、機能的な面からロゴマークが出来上がったというのは、他メーカーの由来をみてもなかなか出てこない稀有な理由です。
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ルノーの創業当時のロゴマークは、創業者であるルノー兄弟のイニシャルを用いたモノグラムでした。そこから、歯車と自動車をモチーフにした円形のデザインとなり、円形の時代がしばらくつづいた後、あのひし形のデザインが登場します。立体感を感じさせるラインで描かれたピラミッドのような三角形を上下に配置し、センターに「RENAULT」と表記されたものでした。
それから30年経ち、構成要素は残しつつフラットで可読性の高いデザインに変更され、さらに10年後「RENAULT」の文字は姿を消し現在の形状につながるメビウスの帯状のひし形へと変わっていきました。現在はコーポレートカラーであるイエローをベースに、メタリックな質感をもつシルバーのひし形が、彫りこまれているかのように陰影を持たせて描かれています。ロゴタイプは小さなセリフ(飾り)をもつタイニーセリフで書かれており、自動車メーカーのロゴでありながら繊細でエレガントな印象を与えます。製造している自動車もさることながら、フランスの企業らしい洗練されたお洒落なロゴデザインです。
スポーツカーの代表格 Ferrari(フェラーリ)のロゴマーク
イタリアの自動車メーカーであり、日本でも高級外車として根強い人気のあるのが「フェラーリ」です。
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また、同じイタリアのメーカーで元は農業用トラクターの製造が専門でしたが、その後スポーツカーも手掛けるようになったのが「ランボルギーニ」です。この2社は長年ライバル同士として知られてきました。特にランボルギーニのフェラーリに対する対抗意識は強く、それはメーカーロゴに大きく反映されています。
フェラーリのロゴは「跳ね馬」がモチーフになっていますが、そもそもこの跳ね馬は第一次世界大戦で活躍したイタリア空軍のエースパイロットが、自身が愛用していた機体のエンブレムに使用していたものだとされています。盾型のクラシカルなエンブレムの形状のトップには、イタリア国旗の3色(トリコローレ)が施されています。メインカラー鮮やかイエローであり、跳ね馬のブラックがよく映えるデザインです。このメインカラーのイエローは、フェラーリ発祥の地イタリアのモデナ市の色で、ポルシェのイエローよりも格段に明るく、イタリアらしい色彩感を放っています。
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また、フェラーリのロゴデザインは、このシンボルデザインに加えロゴタイプも有しています。ちょっと癖のあるセリフフォントで構成されており、ラグジュアリーな雰囲気を醸し出しつつ、頭文字「F」の上部が末字の「i」まで伸びるグラフィカルなデザインです。ポルシェと同様の黒馬をモチーフとしながらも、フェラーリ独自の美学を主張する個性を生かしたロゴデザインです。
跳ね馬との因縁、Lamborghini(ランボルギーニ)のロゴマーク
一方、ランボルギーニのロゴには「闘牛」が使用されています。
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これは、元々トラクター製造を専門に行ってきたことを示しています。「牛はトラクターへの誇り」でもあるという考えと、社長が大の闘牛好きでもあったことも、闘牛がロゴとして選ばれた理由でもあります。この闘牛は大地を踏みしめ、今にも飛び掛らんとする力強さに溢れています。これはスーパーカーを世に出し続ける高級カーブランドとしての心意気、そしてトラクター製造からはじまった自社製品へのプライドのあらわれともとれるでしょう。
そして特筆すべきはそのカラーリングにあります。艶感をも感じさせる漆黒に輝きを放つ黄金色。黒と金は高級感を演出する際には非常に効果的な組み合わせです。そこに立体感を意識して描かれた闘牛のボディは一層の重厚感を与え、スーパーカーブランドにふさわしいロゴデザインに仕上げています。
ランボルギーニのロゴには、その他の意味も込められているとされており、それがフェラーリへの挑戦状だといわれています。フェラーリの跳ね馬に対抗するために闘牛をロゴに選び、堂々とフェラーリに戦線布告を示したと語り継がれています。二つのロゴを横並びにしてみると、闘牛が勇猛に馬に立ち向かっている図になります。そうしてランボルギーニは、トラクター製造を行いつつもスポーツカーも製造し、大成功を収めるまでになりました。
創業地の紋章をデザイン化したポルシェのクレスト
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ポルシェのロゴデザインは、ポルシェ全車のノーズについているエンブレムとロゴタイプで構成されています。ロゴタイプは幅広で直角にカーブするサンセリフ体を使用しています。均一な線幅と一定の角度で構成されているため無機質で未来的な印象を与えます。
それと対照的なのがシンボルになっているエンブレム「ポルシェクレスト」です。中心にある跳ね馬の絵柄は本社・工場がある、ドイツのシュツットガルト市の紋章です。跳ね馬といえばイタリアのフェラーリも同じく馬をモチーフにしています。実はこの2つのブランドの馬は同じシュツットガルトの馬を描いているのです。前出でも紹介しておりますが、フェラーリのロゴはイタリアの英雄とも言われたパイロットの愛機につけていた紋章で、当時撃墜した敵機の紋章を戦利品として自分の機体に飾っていたそうです。
フェラーリの支援者がこの紋章を同社に寄贈したことからロゴマークになった経緯があり、撃墜された機体がドイツ軍シュツットガルト市のものだったということになります。戦場を自動車業界に遷し、なんとも数奇な運命のめぐり合わせです。そして、馬の周りを飾っているのはシュツットガルトがあるヴェルデンブルグ州の紋章にある鹿の角を象ったデザインです。ベースとなっている金色は豊穣を示す麦を象徴し、フラッグの赤は祖国愛と勝利を、黒は冷静な判断力をあらわしています。
堅牢な品質の象徴、プジョーのライオン
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プジョーは1882年、フランスで設立された世界最古の自動車メーカーです。プジョーは自動車メーカーになる前は金物製造業を営んでいました。ライオンのシンボルマークは、この金物製造業時代に商標登録されたデザインで、当時主な商品であったノコギリの品質を表すために作られたものでした。その意味は「ノコギリの刃の堅牢さはライオンの刃のごとく、しなやかさは強靭なライオンの肉体のごとく、切れ味は獲物に飛びかかるライオンのごとく」という、ノコギリの優れた品質と百獣の王ライオンのイメージを関連付けるものでした。
その意味合いは、商品が自動車に変わってからも継承され、現在まで姿を変えながらロゴデザインとして受け継がれています。最初は雄々しくフロントグリルを飾っていたリアルな鋳造のライオンは年月をかけてデフォルメされていき、何度ものリファインを経て現在のブルーライオンに落ち着きました。勇ましく攻撃的なライオンの姿をシンプルに描き、現在の自動車業界のロゴトレンドに習いメタリックなボディに仕上げています。
ロゴタイプはコーポレートカラーのブルーで書かれた、曲線の使い方が印象的なサンセリフ体。線の太さの強弱をある程度残しつつエッジの処理を統一していくことで非常に高いデザイン性を感じさせます。長い歴史を持つメーカーにとって、時代が移り変わってもぶれないコンセプトを持ち続けることを指し示すには、シンボルの継承はとても有効な手段であることを確認させられるロゴデザインです
国民のための車、フォルクスワーゲンのロゴ
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ドイツを代表する自動車メーカーといえば、まず浮かぶのがフォルクスワーゲン。このフォルクスワーゲン、ドイツ語で「国民のための車」という意味をもちます。第二次世界大戦直前のころ、アドレフ・ヒトラーの発案により、国民車計画という政策が持ち上がりました。これは、ナチス政権下で労働者の余暇活動を活性化させるために、国民が出資・労働し、自動車を製造して国民自らが利用するという趣旨のものでした。結果的に大戦が始まってしまった為軍需産業に利用されたそうですが、敗戦後、当時開発された技術や工場などはソ連軍に接収され、後にイギリス軍監督のもと現在のフォルクスワーゲンの礎となったそうです。
フォルクスワーゲンのロゴがはじめて登場したのは1930年代の頃。社内公募によって決まったそうです。当時は歯車やフラッグなどのモチーフもあり今より複雑なつくりでしたが、イニシャルの「V」「W」のモノグラムの構成は変わっておらず、これが現在までも続いています。フォルクスワーゲンのロゴは「V」と「W」の構成要素が似ているため、「V」が3つ並んだような見え方をする非常にグラフィカルなロゴデザインです。無駄をきれいにそぎ落としたドイツらしい機能的な美しさをもっています。
プロペラが表現された、BMWのロゴマーク
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その他の自動車メーカーでは、ドイツのメーカーである「BMW」は、元々は航空機のエンジンメーカーであったため、ロゴの青の部分は空を示し、円の内部の青と白の交互デザインは動きのあるプロペラを表現しています。これは、第二次世界大戦中にドイツ軍へ航空機エンジンを提供していた名残りともいわれています。青い部分を黒い円で囲むことで、グッとデザインが引き締まって見えます。また、黒という無彩色を挟むことで、どんな色の車でもエンブレムが映えます。
また、ロゴの由来にはもう一つ説があり、こちらも近年になり有力視されています。それは、BMW創業の地、ドイツのバイエルン州の州旗の色が発祥というものです。バイエルン州の旗はスカイブルーと白の格子をやや斜めにしたチェッカー柄です。この2色の格子をベースに黒い円で囲んだものがBMWのロゴデザインになったという話です。どちらの説が正解なのかははっきりとはわかりませんが、BMWのロゴがもつ、爽やかでありながら品質の確かさをイメージ付ける気持ちの良いロゴデザインには変わりはありません。
Mercedes‐Benz(メルセデス-ベンツ)のロゴマーク
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同じくドイツの有名メーカーである「Mercedes-Benz(メルセデス-ベンツ)」は、スリーポインテッド・スターとして知られており、これには陸・海・空の各分野において、繁栄と優位性の象徴となる思いが込められています。
構造上空白部分が多いロゴデザインですが、消して軟弱な印象は感じさせません。鋭く真の部分を突いてくるようなスターは、攻撃的でありながら繊細で上質なイメージも持ち合わせています。
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それと強調するかのように隣にあるのは「Mercedes Benz」を表記するロゴタイプの存在です。このロゴタイプは「Corporate A Regular」というフォントから作られています。スタンダードな書体ですが、正統派をいくセリフ体で、安定感のあるバランスのとれたプロポーションで構成されています。ベンツという王道をいく高級車だからこそ映える、奇をてらわないロゴデザインは潔く、よりハイクラスな印象を私たちに与えてくれます。
※ドイツ車メーカーのロゴの変遷
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4つの会社のつながりを意味するアウディのロゴ
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アウディのはじまりは、アウグスト・ホルヒ博士が興した自動車会社「ホルヒ社」です。ホルヒ博士は性能を重視するあまり、利益を優先する経営陣とトラブルを起こし退任させられてしまいます。そこで新たにつくった会社が「アウディ」。ドイツ語で「ホルヒ」は「聴く」を意味します。ラテン語で同じ意味をもつ言葉が「アウディ」だったのです。その後1929年、世界恐慌が訪れます。
経済危機を乗り切るため、アウディを含むドイツを代表する自動車メーカー4社が手を結び企業連合「Auto Union」を作りました。この時の4社をシンボルにしたのが現在のロゴデザインになっている「フォーリングス」のはじまりなのです。「Auto Union」結成当時のロゴマークは4つのリングのそれぞれの中心に各社のロゴが入るという複雑なものでしたが、その後4つの輪と「Auto Union」のロゴタイプを重ねたシンプルなデザインへと変わります。また他社との吸収合併の際ロゴが変わりフォーリングスが姿を消します。
シンプルな社名のロゴタイプが続いた後、1994年に原点であるフォーリングスが復活します。この頃から車のエンブレムにもフォーリングスが使われるようになり、アウディ=フォーリングスというイメージが定着していきました。現在のフォーリングスは形状も立体的でエンブレムそのものです。その形状が意味するのは、アウディが考える車の未来に必要なテクノロジー「軽量化」を具現化したイメージなのだそうです。
スマート&スピーディー、ジャガーのロゴ
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イギリス王室御用達の公用車としても知られている、高級車とスポーツカーブランド、ジャガー。サイドカー製造からスタートし、ボディ製造、自社開発車販売へとステップアップしていった黎明期。
「美しいものは売れる」という思想からデザインにこだわる高級車ブランドへの道を歩んでいきました。当初、SSカーズという社名でしたが、世界に市場を移す際、ヒットした自社開発自動車「ジャガー」から名前を受け、社名を「ジャガー・カーズ」に変更しました。
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ジャガーのシンボルデザインは、かつてフロントグリルに飾られていた鋳造のジャガーを思わせる、飛びかかる瞬間を切り取った勢いのあるジャガーを描いています。その体は一直線に伸びスマートかつスピーディー、そして美しさがあります。ジャガーの得意とする高級自動車に似つかわしいラグジュアリー感と、スポーツカーブランドである誇りを感じさせる造形美です。ロゴタイプも同様に、シンプルなサンセリフ体を用い、高級感漂うしなやかなフォルムを完成させています。
モータースポーツ界で翼を広げたベントレーのロゴ
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1919年創立されたベントレー・モーターズ。1923年からはじまったル・マン24時間レースで5回もの優勝を勝ち取った、ファクトリーチーム「ベントレー・ボーイズ」はいまだに語り継がれています。
そんなベントレーのロゴデザインは、真ん中の頭文字「B」から大きな翼を広げるシンボルマークが有名で、車のエンブレムにもなっています。この「B」は、中に空いている2つの穴の部分がほぼ真円になっており、文字を囲む楕円形と合わせて3つの円で構成される均整のとれたプロポーションになっています。ロゴタイプはくせのないサンセリフ体を使用した安定感のある字面。羽ばたくようなシンボルマークと整然としたロゴタイプは相性がよく、品質に懸けるプライドとクラシカルな高級感を醸し出しています。
広場の銅像からヒントを得たマセラティのロゴ
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イタリアに生まれたマセラティの7人兄弟。次々に自動車の世界に関わっていくことになる彼らですが、ただ一人絵を好んだ兄弟、マリオだけは例外でした。
彼は自動車に関わらない代わりに、マセラティのエンブレムを発案したといわれています。モチーフとなったのは彼らの生地ボローニャにあるネプチューン広場にあった銅像。海の神ネプチューンが持つ三又の槍(トライデント)からヒントを得てシンボルマークが誕生しました。
また、創業当時3人の兄弟たちではじめたことから、3人の結束をあらわすシンボルとも言われています。男性的でありながら繊細さを感じるマセラティのロゴは、槍がモチーフでありながら王冠のニュアンスも感じさせます。ロゴタイプも、セリフの部分を尖らせトライデントの雰囲気を踏襲しています。
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トータルで作りこまれた深みのある世界観は、独特のデザインでイタリア車業界を席巻するブランドの姿勢に相応しい独創的なロゴデザインです。
シンプルなブルーオーバルが目を引くフォードのロゴ
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1903年アメリカ、自動車王として知られるヘンリー・フォード1世によって設立されたフォード・モーター。現在のフォードのロゴはこの4年後、初代チーフエンジニア兼デザイナー C・ハロルド・ウィリスが名刺に書いた手書きの文字が原型となりました。はじめはロゴタイプを囲むオーバルこそなかったものの、リズミカルに流れるようなそのラインはすでに完成されていたと言えるでしょう。その約20年後、筆記体調の初代の雰囲気からさらに現在の書体へと近づき、はじめてブルーオーバルも登場します。
そこから現在まで約90年の間、マイナーチェンジはあれど、ほぼ原型を崩さぬままイメージを守り抜いてきました。自動車の大量生産の先駆けともいえるフォードらしく、早くからロゴにも規格を設けています。カラーはパントーン249Cでフィンランド国旗と同じ色。オーバルの幅と高さの比率は8:3の完全な楕円形と決められています。
シリコンバレー発、気鋭の電気自動車メーカー「テスラ」
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発明家ニコラ・テスラ氏の名前に肖ったテスラ・モーターズは、2003年アメリカで設立された電気自動車の製造販売を展開する自動車メーカー。
これまで紹介してきた自動車メーカーとは一線を画す、IT企業のような挑戦的な会社です。CEOのイーロン・マスク氏は常に「再生可能かどうか」という点を重要視しており、資源やエネルギーを消費してばかりの現代から新たな可能性を見出そうとしています。
そんなテスラのロゴデザインは、「テスラT」と呼ばれる「T」をデザイン化したシンボルマークに、デジタル時計の数字のような「TESLA」のロゴタイプでできています。コーポレートカラーはディープなレッド。テスラTの刺さりこむような鋭角さ、野心的な赤、そして象徴的なまでに未来をイメージさせるロゴタイプは、これから自動車業界の新たな未来を切り拓こうとする先進企業にぴったりのデザインと言えるのではないでしょうか。
自動車メーカーのロゴデザインは、その車のメーカーであることを消費者に印象付けなければならず、一種のブランドのような存在でもあります。そのロゴが付いているからその車に乗りたいと考える人も多くおり、それだけ価値の高いものでもあります。
その一方で、ロゴデザインについていろいろと調べてみると、メーカーが自社製品にかける思いやお客様に対する想い、またライバル社への挑戦的意識と自社製品への誇りなどが、そのシンプルなデザインに隠されているのです。
今までは何気に見ていた自動車メーカーのロゴですが、他のメーカーにもそれぞれの思いが込められているので、更に調査をするとまた新しい発見ができるかもしれません。ロゴの意味を知った上でその車に乗ると、より一層愛情を感じるのではないでしょうか。
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