日ごろお洒落を楽しむ上で、皆さんはどこにこだわりをもっていらっしゃいますか?
千差万別、人それぞれかもしれませんが、お洒落が好きな方にとってスルーできないのが「腕時計」ではないでしょうか?特に男性にとっては、機能性をもったアクセサリーとしてこだわりを持っておられる方は多いはず。廉価なものから高級品までありますが、特に歴史ある老舗ブランドは品質に対するこだわりが強く、それぞれ品物に対する「プライド」を持っています。そもそもロゴデザインとは、企業や商品の持つ性格や特性を知ってもらうための「顔」。
ウォッチブランドはロゴで何を語るのでしょうか。それでは一緒に見ていきましょう。
名実ともに腕時計界の王、ロレックスのロゴ
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さてこのロレックス( ROLEX )のロゴデザイン、時代やモデルによって少しずつ変化があるのをご存知でしょうか。ロゴタイプを見ていくと、基本は書体に飾り(セリフ)がついたセリフ体です。日本でいう明朝体に近い形で、伝統や威厳、高級感を感じさせる書体です。
過去のものは、縦線と横線の太さもそう変わらず、セリフの部分が滑らかな曲線で繋がっているブラケット・セリフという書体で、分類的にはオールドフェイスというジャンルに属します。与えるイメージは「伝統」「重厚感」。それに合わせ、シンボルマークの王冠も若干ぽっちゃりしています。
M DOGAN / Shutterstock.com ・ロレックスの旧ロゴ 「R」の書体が特徴的
そして現在のロゴタイプは、セリフ体には変わりありませんが、縦線に比べ横線が細く、セリフ部分もブラケットが抑え目になり、ヘアライン・セリフ(セリフのつなぎ目が直角)に近づいています。分類もオールドとモダンの中間、トランディショナルに属します。イメージは「洗練」「やや近代的」。シンボルマークも以前よりスマートになりすっきりとした印象です。威厳がありながらも洗練され、時代性と遜色なくシンクロしているのは企業の柔軟な姿勢があってこそです。そういった姿勢が、いつの時代も受け入れられる商品開発に結びついているのでしょう。
価値観を体現する、卓越したオメガのロゴデザイン
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前述のロレックスと双璧を成す高級腕時計ブランド「オメガ ( OMEGA )」。そのロゴマークに秘められた意味はブランドの意思そのものを強く表現するものです。「Ω」はギリシャ文字最後の文字で、「完成」「実践」「完璧」「達成」を意味します。100年を越える歴史の中でNASA認定の公式腕時計に採用されるなど、Ωが意味する通り、その機能性と耐久性は世界が認めるところです。また、「Ω」の形は人の肩から上の姿を記号化したものという解釈も併せ持ち、人間をやさしく暖かな光で包み込むという意味も込められているそうです。
・原型となったFutura(フーツラ)のタイプフェイス
そして、シンボルマークの下に配置されている「OMEGA」の文字。サンセリフ体(飾りをもたない欧文書体。国内におけるゴシック体)のFuturaをベースにオリジナルで作成された書体です。
このオメガ書体に行き着くまで、30余年を有したというこだわりは、時計へのこだわり同様、理想を追い求める妥協のない企業理念を感じずにはいられません。Futuraはサンセリフ書体の中でジオメトリックという分類に属し、幾何学図形をベースにした計算された数学的なフォルムが特徴です。オメガのオリジナル書体は、Futuraをさらにブラッシュアップし、文字以上のスタイリングを極めた完璧という名にふさわしいフォントです。未来感を感じさせファッショナブルでありながら、時代に左右されない永続性のあるロゴデザインです。
王室御用達ブランド、カルティエの優美なロゴ
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ナポレオン3世の時代より宝飾ブランドとして愛されてきたカルティエ (Cartier)。英国王室をはじめ15カ国以上の王室御用達を拝命しているロイヤルブランドです。1900年代に入り、飛行士からの依頼で腕時計をつくりはじめ、宝飾ブランドらしい優美なデザインの腕時計を世に輩出してきました。
そのようなカルティエのロゴタイプはスクリプト書体と呼ばれる筆記体フォントを使用しています。流れるような文字の綴りはエレガントで繊細なイメージをもち、高級ブランドにふさわしい格式の高さを感じさせます。一般的に可読性が低いと言われるスクリプト書体ですが、カルティエの場合はイタリックにも近い可読性の高いデザインです。宝飾品の中にはリングなど裏側にロゴを刻印することも多く、そうした場合複雑過ぎる書体では彫ることはもちろん、読むことも難しくなるということも一因かもしれません。
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また、おもにバッグやジュエリーなどにデザインとして使用されることが多い「ダブルC」のシンボルマークは、セリフ体の「C」の文字を組み合わせたモノグラムデザインです。鋭角なセリフ部分が印象的で、周囲を囲む楕円形のパーツも合わせ、線の強弱がはっきりとつけられています。女性的なフォルムでありながら主張を強くもつ個性的なシンボルマークです。ゆえに、このマークを配したジュエリーやバッグを持つことは格別のステイタスを感じさせ、品物以上の価値を与える元祖ブランド力ともいえる価値あるロゴデザインと言えるのではないでしょうか。
プロフェショナル品質の腕につける計器、ブライトリング
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大空に夢を抱いた創始者から始まった、腕時計クロノグラフの始祖、ブライトリング ( BREITLING )。各国空軍の公式サプライヤーとして不動の地位を確立したのは1940年代のこと。それから現在に至るまで、度重なる技術革新を続けその活躍の場は、空・海・宇宙と舞台を広げていきました。
そんなブライトリングのロゴデザインは、1980年代に現会長が生み出したもので、シンボルマークは、「翼」「錨」「B」が融合したデザインです。これは、当時パイロットの腕時計として空の世界で活躍していたブライトリングが、「海」の世界でもプロの計器を作っていくと宣言したもので、実際にその後、航海士用の腕時計を発表し成果を納めています。
ロゴタイプは「Copperplate Gothic」というフォントをベースに作られています。1901年にリリースされたセリフ体の書体です。セリフ部分が極めて小さくタイニーセリフと呼ばれていますが、サンセリフ体と比べると、この小さなセリフのおかげで「風格」や「エレガントさ」が表現され、歴史あるブライトリングにはぴったりの書体です。また、一文字一文字がほぼ正方形の面積をとっており、どっしりとした安定感を感じさせます。ブライトリングの腕時計がもつ、堅牢さや正確さが字面を通してイメージできるのはこのためなのです。
スポーツウォッチの名門、タグ・ホイヤーのロゴ
dean bertoncelj / Shutterstock.com ※タグホイヤーの旧ロゴ 新ロゴはこちら
1860年スイスで生まれたホイヤー。精巧なクロノグラフやストップウォッチを世に出し、名立たるF1レースやインディカーレースの公式ウォッチを担当してきました。1985年にTAGグループから資金提供を受け、現在のタグ・ホイヤー( Tag Heuer )というブランド名に落ち着きました。近年、スマートウォッチのリリースも記憶に新しく、新しい分野にも野心的に進出していくイメージのあるタグ・ホイヤーですが、ロゴデザインもアップデートされ、従来の矢印で「G」をあらわしていたシンボルロゴから、シンプルにユニバーサルに変化を遂げた「TAG」の表記に変更されました。
現在主流のシンプルなフラットデザインの流れを汲み、エンブレム自体も少し横長に全体に読みやすくなりました。「HEUER」の文字は変わらずエンブレムに沿ってパースをつけて描かれています。赤と緑の補色関係を生かした配色に、エンブレムの形を生かしたパースの利いたロゴデザイン。デザインはリニューアルされても、伝統を感じさせながらも遊び心を加えた小粋なイメージは永久に不滅ですね。
柔軟な発想と都会的なカジュアル感、スウォッチのロゴ
Sergey Kohl / Shutterstock.com
1960~1970年代、日本式のクオーツ時計が世界を席巻し、これに巻き返しを図るべく登場したのがスウォッチ ( Swatch )。これまで伝統と格式を重んじてきたスイスの時計業界の常識を打ち破るプラスティックボディと廉価な価格設定。ハイペースでリリースされる新作の数々は世界のファッショニスタを熱狂させました。
トーキングウォッチとも言われるスウォッチのスタイルは、身につけている人の気持ちや自分らしさをその時々で着替えるように付け替えられるバリエーションの広さにあります。それはカラーやデザインに留まらず、素材や形にまで及びます。そんなスウォッチを代表するロゴデザインは、意外なほどシンプルで清潔感溢れる丸みを帯びたサンセリフ書体。すべての文字が同じ太さで描かれ、滑らかな曲線と角張った直線が同居する独特の書体は、スウォッチの持つ自由さと遊びごころを表現しているかのようです。そして横に添えられたスイスの国旗を象ったシンボルデザイン。まるで「スウォッチ+○○」といった含みを感じさせる象徴のようです。
Tupungato / Shutterstock.com ・スウォッチの店舗(大阪) シンプルな什器が特徴的
世界各地にあるスウォッチのストアは、どこもそのロゴデザインと同様にクリーンでシンプルな設計になっているそうです。これは、個性的なデザインが揃うスウォッチがより映えるようにと配慮された結果に他なりません。
メイドインジャパンの頑丈ボディ、G-SHOCKのロゴ
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1983年、CASIOから発売された日本製のデジタル腕時計、G-SHOCK。ウレタンで全面をカバーされたその厳ついボディに世界中が驚かされました。-30℃に耐えうる耐低温仕様、防塵、防泥、衝撃吸収、耐磁性、ソーラー蓄電と腕時計の常識を塗り替え続けるタフな腕時計の進化は留まることを知りません。
そんなG-SHOCKのロゴタイプは、開発当初のG-SHOCK本体のフレームデザインをそのまま書体に投影させたと思える、角を落としたゴシック体です。字の太さもヘビー級に重く、存在感そのものがG-SHOCKとリンクする、まさに屈強なロゴデザインと言えるのではないでしょうか。
いかがでしたでしょうか。腕時計ブランドのこだわりをなぞりながら、そのロゴデザインについて紹介してきました。
古くからクラフトマンシップに支えられてきた業界だけに、格式を大切にするロゴデザインが老舗ブランドに多く見受けられました。そして、機能やデザインを別の角度から捉えた新たなブランドは、対照的にカジュアルで身近な印象を尊重したデザインが採用されているようです。腕時計は、性別問わず持ち主の価値観を感じさせるアクセサリーの一つ。やはり、その顔となるロゴデザインは思いを込めた特別なもののようです。
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