2024年12月5日(現地時間)に米国パントン(Pantone)社が2025年の色「カラー・オブ・ザ・イヤー 2025」を発表しました。暖かみのあるブラウン「PANTONE 17-1230 Mocha Mousse(モカ・ムース)」です。
このモカ・ムースが、これまでブラウンが持っていた「素朴で落ち着いた」イメージを「あこがれや高級感」を持つ色へと拡張する、とパントン社は説明しています。
同社は2024年の色として「PANTONE 13-1023 Peach Fuzz(ピーチファズ)」を選んでいます。2025年のモカ・ムースは、このピーチ・ファズの「あたたかくやさしい感覚」をさらに発展させて選ばれました。
パントン社が、このやわらかくおいしそうなブラウンに、どのような思いが込められているのか見てみましょう。
くつろぎと充足のひとときを凝縮した動画
Meet Pantone’s Color of the Year 2025: PANTONE 17-1230 Mocha Mousse 🍫☕
A rich, warming brown inspired by chocolate, and coffee. Earthy, elegant, and comforting—Mocha Mousse connects us to nature and modern refinement.
Explore more via https://t.co/T8fKMpL4Pm #MochaMousse pic.twitter.com/2b428qm7iy— PANTONE (@pantone) December 5, 2024
「あなたの夢はなんですか」とたずねられて、チョコレートたっぷりのバスタブでチョコまみれになりたい…と答えるスイーツ好きは、あなたの近くにもいますか。パントン社の「カラー・オブ・ザ・イヤー 2025」を紹介する公式動画を見ると、そんなことを思い出させてくれます。
おいしそうなココアムースやチョコレート、コーヒー、クリームなどが次々とあらわれます。環境音楽風のBGMに重ねられているのは、クリームや液体が混ぜられるときの音です。最近話題のASMRを意識しているのでしょうか。動画にはシルクのような布地も出てきます。
その食べ物や飲み物が変形しながら、いくつかの単語を見せます。それは次のようなものです。
コーヒーを一口飲んだあとの「Ooo(ふぅ〜)」、濃厚なスイーツを味わったときの「Ahh(あ〜)」、気持ちのよいシーツにくるまったときの「Mmm(ん〜)」、おいしいものを食べた時のストレートな「Yum(うまい)」など。
自分の好きなものを味わうとき、気持ちよさやよろこびから、思わずもらしてしまう声です。そこには満足やくつろぎの感情も含まれています。
パントン社はモカ・ムースが「暖かみのあるリッチなブラウン」であるとして、次のように説明しています。
「(モカ・ムースは)カカオやチョコレート、コーヒーのおいしさを連想させて、心地よさを求める私たちに訴えかけます」
気取らず心地よいブラウン
2025年の色を紹介するパントン社の公式サイトで、モカ・ムースには「洗練されたナチュラルなエレガンス」があると紹介されています。モカ・ムースは単独でも存在感を示し、また、カラーパレットうちの一色としても、ミニマルなスタイルから装飾性の高いデザインまで、幅広く活躍できるというのです。
公式サイトには、モカ・ムースの特徴をあらわす3つのキーワードが挙げられています。
- 洗練された贅沢(Thoughtful indulgence)
- 調和のとれた心地よさ(Harmonious comfort)
- 満足感(Feelings of contentment)
洗練された贅沢とは
「日常のささやかな楽しみを大切にしたいという想いのもとに生まれたPANTONE 17-1230 Mocha Mousseは、洗練された贅沢さを表現しています」
これは、パントン・カラー研究所(Pantone Color Institute)のエグゼクティブ・ディレクター、リアトリス・アイズマン(Leatrice Eiseman)氏のことばです。
「洗練された贅沢」とは、「thoughtful indulgence」の訳語ですが、そのニュアンスをもう少し説明したほうがしっくりくるかもしれません。
「thoughtful」ということばには「思慮深い」という訳語があてられることが多く、また、「indulgence」には、欲におぼれること・道楽・贅沢・甘やかし…といった意味合いがあります。
ですから、「思慮深い道楽」または「思慮深い甘やかし」という表現は矛盾しているように感じます。しかし、パントンが意図しているのは、「意識的に求める心の充足」のことです。
高級な贅沢品を求めるのではなく、たとえば、丁寧に淹れたコーヒーを味わったり、心地よい音楽を聴いたり、あるいは、質の良い家具に囲まれた空間でくつろいだり、といった、ささやかながらも心豊かな体験のことを言っているのです。
日々の生活のなかで自分自身を大切にし、心をこめて「自分だけの特別な贅沢」を楽しむことを意味しています。
「さりげないエレガンスと豊かな感覚的魅力を備えたPANTONE 17-1230 Mocha Mousse(モカ・ムース)は、ささやかでありながらも一日を通して満ち足りた気持ちをもたらす、贅沢なひとときを演出します」
調和のとれた心地よさとは
カラー・オブ・ザ・イヤー 2025の検討を始めたとき、パントン社のチームは「調和」を最重要テーマとしました。それは、人々が調和を求め続けていると考えたからです。
人間関係・仕事・社会とのつながり・自然環境などと調和していると感じると、わたしたちは充足感と心の平穏を得ます。
「トレンド感のあるファッションカラーでありながら、ニュートラルな魅力も兼ね備えたこの色は、変化し続ける世界の中で私たちに調和と安らぎを与えてくれます」
満足感とは
飾らない親しみやすさと、豊かな贅沢を兼ね備えたモカ・ムースは、自分だけのリラックスタイムにぴったりの色であると、パントン・カラー研究所は考えています。
「カカオやチョコレート、コーヒーのエッセンスを感じさせる洗練されたブラウンは、日常の中でほっとひと息つけるひとときを演出し、頑張る自分へのご褒美となります」
先に紹介したパントン社の公式動画は、まさしく自分へのご褒美タイムを映像化したものと言えるでしょう。
自然環境や消費に対する意識の変化を反映
パントン社が2025年の色にモカ・ムースを選んだ背景には、自然環境や消費に対する人々の意識の変化があるといいます。
現代の人々は持続可能な暮らしを追い求めています。自然界ともっと密接に調和しようとする大きな動きがあります。天然素材や天然色と結びつく色に囲まれると、環境とのつながりはより強く感じられます。
そこで、パントン・カラー研究所は、オーガニックな色であるモカ・ムースが、環境を尊重し、自然とのつながりを感じさせると考えました。そのことが、わたしたちの精神のバランスを生み、心を満たすというわけです。
また近年は、トレンドの移り変わりがゆるやかになる傾向があります。そのため、シーズンを問わず使える色に注目が集まっています。
モカ・ムースは、トレンド感のあるファッションカラーでありながらも、ニュートラルな魅力を兼ね備えているので、「変化し続ける世界の中で調和を求める人々の願いを体現」している、とパントン・カラー研究所はコメントしています。
カラー・オブ・ザ・イヤー 2025とのコラボレーション・プロダクト
カラー・オブ・ザ・イヤー 2025のパートナー企業となったブランドから、モカ・ムースのコラボレーションモデルがリリースされています。
米国の通信機器メーカーMotorola(モトローラ)社は、スマートフォンの2機種、razr 50 ultraとedge 50 neoで、モカ・ムースを採用したスペシャルバージョンを発表しました。バイオベース素材とコーヒーの粉によって作られたヴィーガンレザーレザー仕上げのケースになっています。
ウェブサイト作成用CMSのWixは、モカ・ムースを取り入れた「Webカプセルコレクション」を期間限定で提供しています。ウェブサイト制作用のさまざまな素材やデザインテンプレートをモカ・ムース仕様にデザインしたコレクションです。
家具をオンラインで販売している米国のJoybirdは、「自分を幸せにするものに浸る」をテーマに、モカ・ムースのソファなどを発売。
デンマークのオーディオメーカーLibratoneは、モカ・ムースを採用したオープンイヤーヘッドホンをリリース。「すべての音色がより調和的に感じられ、内なる平和のひとときをもたらし、自己発見の旅へといざなう」としています。
ほかにも、スマートフレグランスディフューザーを開発・販売するPura、コスメのサブスクリプションサービスIPSY、オーダーメイドの壁紙を手がけるSpoonflower(スプーンフラワー)、日本でもおなじみの付箋のPost-it、高品質の茶葉をあつかうTealeaves、高級カシミヤ製品のブランドOyunaなども、モカ・ムースとコラボレーションしています。
モカ・ムースをどう使うか
パントン社のサイトには、以下のようなモカ・ムースの使い方のヒントが掲載されています。
アパレル分野では、モカ・ムースの上品で温かみのあるブラウンが、軽やかな素材や柔らかな質感と調和して、心地よいエレガンスを演出できるとしています。
ヘア&ビューティー製品でモカ・ムースを採用すると、肌の魅力が引き出されるので、シンプルで洗練された美しさが期待できます。
ファッション分野では、柔らかな編み物や洗練されたバッグなどのアクセサリーで、モカ・ムースはどんな色ともなじみます。また、ジュエリーには温もりと高級感が加わります。
インテリアデザインにモカ・ムースを使えば、木材や革製品などに溶け込み、心地よい空間を演出できます。
チョコレートやコーヒーを思わせる贅沢な色は、パッケージやマルチメディアデザインでも、温もりと高級感を感じさせることで、魅力的なデザインとなります。
また、テーマに沿って構成された5種類のカラーパレットも公開されています。
暖色と寒色が絶妙に調和し、エキゾチックな雰囲気をかもし出す「Uniquely Balanced(ユニークな調和)」、石畳の小道を思わせる上品な「Floral Pathways(花の小径)」、食欲をそそるスイーツのような、目にも美味しい「Deliciousness(美味なる彩り)」、洗練されたブラウン系に、青やグレーの微妙なコントラストを加えたクラシックな配色「Subtle Contrasts(繊細なコントラスト)」、シンプルでありながら洗練された雰囲気の「Relaxed Elegance(穏やかな優雅さ)」です。
カラープラットフォーム「Pantone Connect」
ウェブサイトや紙への印刷で利用したいときは、「Pantone Connect(パントン・コネクト)」を参照すると、さまざまな情報が得られます。Pantone Connectは、ブラウザまたはスマホアプリで利用できるプラットフォームです。
パントン・コネクトで、「Mocha Mousse」を検索すると、「FHI Cotton TCX 2801 綿の布地に染色」と「FHI Paper TPG 2801 紙にラッカーコーティング」のふたつが表示されます。
カラーチップをクリックして表示されるメニューから「カラーデータ」を選ぶと、Hex値が表示されます。布地に染色のチップは「#A47864」紙にラッカーコーティングの方は、「#A47B67」と微妙に値が異なります。
紙にプロセス印刷する場合に、どのようなかけ合わせにするかを調べたい場合は、「クロスレファレンス」を選びます。ベストマッチとしてカラーコード「P 44-6 C」が示されます。これは布地でも紙でも同じです。
プロセス印刷する場合は、印刷用紙や、インキメーカーなどによって発色が異なりますので、印刷に詳しいデザイナーや印刷会社の担当者にカラーコードを提示したうえで、CMYK値を相談することをおすすめします。
【参考資料】
[公式サイト]
PANTONE® USA | Pantone Color of the Year 2025 (https://www.pantone.com/color-of-the-year/2025)
PANTONE® USA | Design With Pantone Color of the Year 2025 (https://www.pantone.com/articles/color-of-the-year/how-to-use-pantone-color-of-the-year-2025-mocha-mousse-in-products)
PANTONE® USA | PANTONE 17-1230 Mocha Mousse Color Palettes (https://www.pantone.com/articles/color-of-the-year/color-of-the-year-2025-color-palettes)
[メディア]
Pantone names its color of the year for 2025 | CNN (https://edition.cnn.com/2024/12/05/style/pantone-color-of-year-2025-scli-intl/index.html)
How to Wear Mocha Mousse, Pantone Color of the Year 2025 (https://www.elle.com/fashion/trend-reports/g63107028/pantone-color-of-the-year-2025-mocha-mousse/)
Pantone Colour Of The Year 2025 Mocha Mousse Explained (https://www.elle.com.au/fashion/pantone-colour-of-the-year-2025-mocha-mousse/)
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