2021年12月8日(現地時間)に米国パントン(Pantone)社が2022年の色「カラー・オブ・ザ・イヤー 2022」を発表しました。赤みを帯びた淡いパープル系の「PANTONE 17-3938 Very Peri(ベリーペリ)」です。
2000年から続けられてきた同社の「カラー・オブ・ザ・イヤー」は、既存のパントンカラーから選ばれてきました。しかし、今回のベリーペリは、2022年の色を決めるにあたって新たに作られた色です。カラー・オブ・ザ・イヤーのために新色が準備されるというのは初めてのことでした。
パントン社は、ベリーペリが個人的な独創性やクリエイティビティを励ます色であるとしています。どのような思いがこめられているのかを見てみましょう。
ニューカラーはブルーと赤紫の融合
パントン社の公式サイトには、カラー・オブ・ザ・イヤー 2022のベリーペリのイメージ動画が掲載されています。
分子モデルのような、大小の球体が浮かんでいるシーンで動画は始まります。ゆっくり動いている球体は、あやめ色といったらいいのでしょうか。しばらくすると、植物の綿毛を思わせる、とても細くてしなやかなテクスチャが出現して、それぞれの球体を包んでいきます。
淡いバイオレットの繊維がゆらゆらと揺れ、細い毛におおわれなかった小さな球体のも同じ色に変わりました。この色が、2022年の色「ベリーペリ(PANTONE 17-3938 Very Peri)」です。
パントン社のプレスリリースでは、ベリーペリを次のように説明しています。
「赤紫(violet red)の色合いによって、生き生きとダイナミックになったペリウィンクル・ブルー」
プレスリリースにある「violet red」は、和名で言えば「あかむらさき」または「つつじいろ」のような色合いです。この赤紫をベースに持つ「ペリウィンクル・ブルー」がベリーペリである、という色の成り立ちを15秒の動画が示しています。
ペリウィンクルという色
ペリウィンクル(periwinkle)は、もともとは南ヨーロッパ原産のつる性植物の名前です。別名ビンカ(vinca)、和名が「ツルニチニチソウ」で、青紫色の小さな花をつけます。
この花の色に由来して、「ペリウィンクル」は色の名前にもなっています。すみれの花の色にちなんだバイオレットがあるのと同じです。ほかにもラベンダー、ローズ、オーキッドといった花の名前がついた色がありますね。
アドビ社のサイトに、ペリウィンクルを使ったデザインについて解説しているページがあります。ペリウィンクルは、「パープルとブルーの間に位置する、淡く柔らかなインディゴカラー」であると紹介されています。Hex値は#CCCCFF、RGBが204、204、255です。時代を問わず、「『落ち着き』や『静けさ』のイメージを加えるために使われて」きた色だということです。
また、シンガポールの会社が運営しているSimplicableという百科事典サイトでは、12種類のペリウィンクルが紹介されています。アドビ社がペリウィンクルのHex値としている#CCCCFFの色の名前は、このサイトではラベンダー・ブルーで、ペリウィンクルのHex値は#8E82FEです。ほかには、ダーク・ペリウィンクル(#665FD1)、ライト・ペリウィンクル(#C1C6FC)、ペリウィンクル・ブルー(#8F99FB)などがあります。
ペリウィンクルという色を踏まえて、「赤紫(violet red)の色合いによって生き生きとダイナミックになったペリウィンクル・ブルー」というパントン社の説明を振り返ってみると、ベリーペリの色合い、そしてその名前「Very Peri」の意味に、少し近づけるような気がします。
グレーとイエローのコンビネーションだった2021年の色
2021年のカラー・オブ・ザ・イヤーは、グレーとイエローのコンビネーションでした。アルティメット・グレイ(PANTONE17-5104 Ultimate Gray)とパステルイエローのイルミネイティング(PANTONE 13-0647 Illuminating)は、「永続的な強さと希望のメッセージを伝える色の組み合わせ」であるとされていました。
COVID-19のパンデミックのなかであっても、不屈の精神を失わず、未来へ向かう姿勢を表現していました。雲の背後にある太陽になぞらえるコメントもパントン社から出ていました。先の見えないコロナ禍での、忍耐と希望の象徴といえるでしょう。
それに対して2022年の色は、すでに変容しつつある生活や考え方に基づいて、未来を切り開いていくあらゆる人々を鼓舞するという思いが込められているのです。
パンデミック後の創造的世界を象徴する新しい色
2021年を通して、世界中がロックダウンや外出制限など不自由を強いられました。人々の生活は、新型コロナ禍によるマイナスの影響が避けられませんでした。しかし、その一方で、リモートワークの浸透、家族の絆の再確認、ワークスタイルの見直しも進みました。
新しいサービスやプロダクトが生まれ、仕事とプライベートへの考え方が変わり、これまでになかった生活スタイルが生まれつつあります。また、パンデミックの中でもテクノロジーの進歩はとどまることはありません。
今わたしたちは変革の時代を生きている、とパントン社は言います。同社のプレスリリースには次のように書かれています。
「きびしい孤立の時期を抜け出しながら、私たちの考え方や規範は変化を見せています。生活の中で見られるのは、リアルとバーチャルのあたらしい融合です。〔中略〕ゲームのトレンド、メタバースの人気が広がり、デジタル空間でのアーティスティックなコミュニティの盛り上がりなどを受けて、PANTONE 17-3938 Very Peri(ベリーペリ)は、現代生活でのデジタル世界と現実世界の融合を示しているのです」
また、青色が持つ誠実さと不変性に、赤色のエネルギーと興奮をブレンドしたベリーペリは、青の中でもっともハッピーであたたかい色であり、その新しさによって見るものを力づけると説明しています。
パントン・カラー研究所(Pantone Color Institute)のエグゼクティブ・ディレクターLeatrice Eiseman氏は、メディアの取材に対して次のように答えました。
「新しい色を考え出すことは私たちにとって間違いなく重要なことでした。なぜなら今の私たちには、世界が非常にあたらしい見え方をしているからです」
Eiseman氏は、明日がどうなるかわからない不確実な時代にあって、困難を切り抜けるための助けになるのは好奇心であり、勇敢なクリエイティビティである、とも述べています。
ベリーペリを使うときに便利な「Pantone Connect」
ウェブサイトや紙への印刷で利用したいときは、「Pantone Connect」を参照するとさまざまな情報が得られます。Pantone Connectは2021年から登録制(無料)になりました。
「トレンド」メニューから「カラー・オブ・ザ・イヤー」に移動すると、2022年の色「17-3938 TCX Very Peri」が表示されます。符号「TCX」は、Textile Cottonの略です。 カラーチップをクリックして表示されるメニューから「カラーデータ」を選ぶと、Hex値が「#6667AB」であることがわかります。
ちなみに、ベリーペリをアナウンスしているパントン公式サイトのページでは、リンクボタンや見出しが#6667ABで指定されています。
紙にプロセス印刷する場合にどのようなかけ合わせにするかを調べたい時には、「クロスレファレンス」を選びます。「FHI Cotton TCX 綿の布地に染色」をクリックするとプルダウンメニューが現れるので、たとえば「CMYK Coated CMYKプロセスインキでコート紙」を選ぶと、ベストマッチとして「P 102-6 C」が示されます。
これ以上の情報は、有料の「Pantone コネクト・プレミア」を契約する必要がありますが、インターネット上のウェブサービスで「P 102-6 C」に相当するCMYK値を調べることができます。
印刷用紙や、インキメーカーなどによって発色がことなりますので、プロセス印刷する場合は、上記の情報を参照しながらAdobe PhotoshopやAdobe IllustratorでCMYK値を確認したうえで、印刷に詳しいデザイナーや印刷会社の担当者に相談することをおすすめします。
【参考資料】
・Pantone Color of the Year 2022 / Introduction | Pantone (https://www.pantone.com/color-of-the-year-2022)
・パントン・カラー・オブ・ザ・イヤー 2022 (https://www.pantone-store.jp/coy2022/index.html)
・Introducing PANTONE® 17-3938 Very Peri: Pantone Color of the Year 2022 | Pantone (https://www.pantone.com/articles/press-releases/introducing-pantone-17-3938-very-peri-pantone-color-of-the-year-2022)
・Pantone Color of the Year 2022 / Palette Exploration | Pantone (https://www.pantone.com/color-of-the-year-2022-palette-exploration)
・Pantone unveils ‘Very Peri’ as Color of the Year for 2022 – CNN Style (https://edition.cnn.com/style/article/pantone-color-of-the-year-very-peri-2022/index.html)
・Pantone Color of the Year 2022: What to Know About Very Peri | Time (https://time.com/6126463/pantone-color-of-the-year-2022/)
・ペリウィンクルの効果で目を引くデザインに (https://www.adobe.com/jp/creativecloud/design/hub/guides/make-designs-pop-with-periwinkle.html)
・12 Types of Periwinkle Color – Simplicable (https://simplicable.com/new/periwinkle)
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