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ビバ・マゼンタ

パントン「2023年の色」は強さと活力を象徴する「ビバ・マゼンタ」|カラー・オブ・ザ・イヤー 2023


ビバ・マゼンタ

2022年12月1日(現地時間)に米国パントン(Pantone)社が2023年の色「カラー・オブ・ザ・イヤー 2023」を発表しました。鮮やかで力強い赤、「PANTONE 18-1750 Viva Magenta(ビバ・マゼンタ)」です。

パントン社は、ビバ・マゼンタを「恐れを知らない勇敢な色」と表現しています。また、古くから使われてきた天然染料であるコチニールにインスピレーションを得た色だとも説明しました。

このビバ・マゼンタは、なぜ2023年の色に選ばれたのでしょうか。

 

型破りな時代の型破りな色合い

Viva Magenta

・PANTONE 18-1750 Viva Magenta(ビバ・マゼンタ)/  Mercedes Fittipaldi – stock.adobe.com

パントン社が2023年の色を発表したときに、ビバ・マゼンタは「型破りな時代の、型破りな色合い」であると紹介されました。

「型破りな時代」というのは、COVID-19のパンデミックを世界中が経験している現在のことです。パンデミック禍の影響で、わたしたちは行動変容を強いられてきました。ライフスタイルや考え方、価値観、世界の見方などが大きく転換しました。

しかし、それだけではありません。戦争や気候変動、経済、社会など、わたしたちの生活に不安定をもたらす要素は増えています。まさに、今わたしたちは型破りな時代にいるのです。

パントン社は、2023年の色について次のように言っています。

「長期にわたる破壊的なできごとを乗り切るために、わたしたちに必要な安心感とモチベーションを、ビバ・マゼンタは与えてくれるのです」

パントン・カラー研究所(Pantone Color Institute)のエグゼクティブ・ディレクター、リアトリス・アイズマン(Leatrice Eiseman)氏は、型破りな時代に新しいビジョンを提示してくれると感じたからビバ・マゼンタを選んだのだと、米『TIME』誌のインタビューに答えています。

「(ビバ・マゼンタは)実に躍動感に満ちた色であり、より楽観的な未来のためにすべてのひとが必要としている、新しい強さを示す色なのです」

 

高まる自然への関心と感謝

天然由来の配色

気候変動への関心やサステナビリティへの意識は高まっています。また、パンデミックによって健康への志向はさらに高まり、天然由来のものを求める流れは大きくなりました。

パンデミックのロックダウンの時期を経て、室内に花や植物を取り入れる人々も増えました。旅行やスポーツ、アウトドアでの活動などが制限されていましたが、いよいよ再開のときを迎えています。

さらに、ネットとオフラインの境界は日々の生活のなかであいまいになりつつあり、バーチャルとリアルの融合は進んでいます。アイズマン氏は次のように語りました。

「仮想世界が日常生活の重要な部分になっていくにつれ、私たちは自然やリアルなものからインスピレーションを得ようとしています」

パントン社は、カラー・オブ・ザ・イヤー 2023を検討するなかで、人々の自然への意識と感謝が高まっていることが確認できたと言います。

 

ビバ・マゼンタの原点はコチニール・レッド

コチニールレッド

ビバ・マゼンタ「PANTONE 18-1750 Viva Magenta」がパントン・カラーに加えられたのは2019年です。すでに、ファッションやビューティー業界をはじめ、さまざまな領域で広くビバ・マゼンタは受け入れられてきました。

ビバ・マゼンタは、「世界でもっとも強く明るい色」である天然染料、コチニール・レッドにインスピレーションを得た色であるとパントン社は表明しています。

コチニールは、サボテンに寄生するコチニールカイガラムシ(別名エンジムシ)のメスから抽出される赤色の染料または顔料です。アステカやインカ帝国で染料として使われていましたが、16世紀中ごろにヨーロッパに伝えられました。明るく鮮やかな赤色は当時のヨーロッパ人を驚かせたそうです。

ビバ・マゼンタと自然とのつながりについてのアイズマン氏の説明は、次のようなものです。

「原初的なものに根差したビバ・マゼンタは、もう一度わたしたちを元のものへ結びつけます。自然の力を呼び起こしながら、わたしたちの精神に活力を与え、内なる力を強めてくれます」

 

没入型「マゼンタバース(Magentaverse)」展を開催

ビバ・マゼンタは、自然と過去だけに目を向けて選ばれたわけではありません。

パントン社は、Artechouse(アーテックハウス)とのコラボレーションで、「Magentaverse(マゼンタバース)」展を開催しています。アーテックハウスは、テクノロジーとアートの融合をコンセプトとした、デジタルアートギャラリーです。

マゼンタバースは、没入型の実験的な展示で、ビバ・マゼンタの世界を、視覚・聴覚・触覚で体験することができます。

パントン・カラー研究所のローリー・プレスマン(Laurie Pressman)副社長は、ここ数年で、人々の自己意識・健康・優先順位・アイデンティティに変革がもたらされたと言います。その結果、仮想空間であれ、現実空間であれ、その両方が混ざり合った空間であれ、「自由に探究して、自分が何者であるかを正確に受け入れられる空間ができたのです」。

アーテックハウスが公開しているマゼンタバースのプロモーション動画を見ると、パントン社の次のことばの意味するところを、わずかながら感じることができます。

ビバ・マゼンタは恐れを知らない、勇敢で、脈動する色です。そして、その活力が、喜びに満ちた楽観的な祝祭を促し、新しい物語を紡ぎ出すのです」

 

「ベルベットの手袋の中のこぶし」

ベルベット

ビバ・マゼンタの「viva(ビバ)」は、イタリア語やスペイン語などで「万歳」という意味です。「Viva!」と喜びを表すときに使われます。アイズマン氏は、ビバ・マゼンタという名前について次のように『TIME』誌に語りました。

「祝うための色であり、楽観主義と喜びを促進する生き生きとした色であることを、名前自体が示しています」

赤は人生を謳歌するパワーカラーであり、ビバ・マゼンタは、大胆さと楽しさのバランスがとれている赤なのです。ビバ・マゼンタは、激しい優美さを表しており、自信と人間らしさを際立たせるよう、わたしたちを鼓舞します。

「主張が強いけれども、攻撃的ではないビバ・マゼンタは、大胆に支配するのではなく、『ベルベットの手袋の中のこぶし』のようなアプローチをとるのです」

パントン社の公式サイトでは、ビバ・マゼンタが、ウォームとクールのバランスがとれた、ニュアンス豊かな赤であり、物理空間と仮想空間を心地よく行き来するハイブリッドカラーであると説明しています。

Viva Magenta使用例

「型破りな時代」というのは、バーチャルとリアル、テクノロジーと自然が融合し、これまでになかった体験ができる時代でもあるのです。パンデミックのなかで新しい価値観が生まれました。自然への意識や態度も変わりました。そして、制限が解かれた人々には、自分自身を表現したいという意欲が高まっています。

「純粋な喜びに溢れ、思う存分実験し、自己表現するよう勇気づけてくれる、生き生きとした新しい赤なのです」

 

カラー・オブ・ザ・イヤー 2023とのコラボレーション・プロダクト

カラー・オブ・ザ・イヤー 2023のパートナー企業となったブランドから、ビバ・マゼンタのコラボレーションモデルがリリースされています。

Motorola(モトローラ)社は、ビバ・マゼンタをボディカラーに採用したスマートフォンを発表しました。コラボモデルのEdge 30 Fusionにはシボ加工をほどこされ、ビバ・マゼンタの色調とあいまって高級感を漂わせています。仮想現実的な色の甲虫が登場するプロモーション動画は、マゼンタバースと共通の世界観です。

米国のSpoonflower(スプーンフラワー)は、テキスタイルや壁紙などを、オンデマンドでプリントしてくれるネットショップです。好きなデザインのホームインテリア用のアイテムを作れます。また、自分のデザインを発表することもできます。スプーンフラワーは、ビバ・マゼンタを使った、6人の著名アーティストの作品を発表。また、ビバ・マゼンタによるオリジナルデザインを競うデザインチャレンジを開催しています。

ボートをこぐ、ローイング運動を室内でおこなえるトレーニングマシンを開発しているHydrow(ハイドロウ)からは、ビバ・マゼンタを採用したモデルがリリースされました。従来のトレーニングマシンには使われていなかった、生き生きとした色によって、トレーニングの喜びが高まることを同ブランドは期待しています。

ブラジル発のエシカルスニーカーブランドCariuma(カリウマ)からは、コラボレーションモデルが6種発売されました。Cariumaはリオ・デ・ジャネイロで誕生した、SDGsとエシカルを基本理念としているブランドです。プラスチックや紙、インクなど素材にはリサイクル素材を使い、製造工程で必要な電力は代替エネルギーでまかなっています。世界中のスケートボーダーやセレブの関心を集めています。

 

ビバ・マゼンタをどう使うか

ビバ・マゼンタの活用例

公式サイトにはビバ・マゼンタの使い方のヒントが示されています。

たとえば、おとなしい服を目覚めさせるのに、淡いグレーやブルー、パステルカラーと組み合わせると、ビバ・マゼンタがアクセサリーのように輝くと言っています。

「Pantone Connect」にビバ・マゼンタと一緒に示されているカラーパレットは、ベージュ系、ライトブラウン系、ライトなブルーグレーです。

ビバ・マゼンタを毛先に取り入れて、髪をアクセサリーに変身させる、美容業界の大胆なスタイルが紹介されています。また、唇、ほほ、ネイルにも輝きを与え、年齢、性別、肌の色に関係なく使える万能な色合いということです。

インテリアでは、ソファやラッカー仕上げの壁に大胆に使って、色のパワーを発揮させるというアイデアや、アクセントカラーとして使ってもドラマチックな効果が得られるとしています。

型にはまらない、大胆で魅力的なブランドであることを表現できるというのが、グラフィックデザインに対するヒントです。生き生きとして情熱的なブランドであると消費者に印象づけたい場合に、ビバ・マゼンタを採用することをすすめています。赤は進出色なので、周囲の色を押しやって、消費者の視線を引きつけます。

 


【参考資料】
PANTONE® USA | Pantone Color of the Year 2023 / Introduction (https://www.pantone.com/color-of-the-year/2023)
PANTONE® USA | What is Viva Magenta? (https://www.pantone.com/articles/color-of-the-year/what-is-viva-magenta)
Pantone Color Of The Year 2023 Announcement (https://vimeo.com/777201957)
パントンから、2023 カラー・オブ・ザ・イヤーを発表します: PANTONE 18-1750 Viva Magenta (https://www.pantone-store.jp/download/COY_2023_Press_Release_JP.pdf)
Pantone Color of the Year 2023: What to Know | Time (https://time.com/6238112/pantone-color-of-the-year-2023/)
MAGENTAVERSE | ARTECHOUSE (https://www.artechouse.com/program/magentaverse-miami/)
Introducing Pantone’s 2023 Color of The Year—Welcome to the Magentaverse! | Vogue (https://www.vogue.com/article/pantone-names-viva-magenta-the-color-of-2023)

 

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