働く場所について
あなたにとって一日の中でもっとも多くの時間を過ごす場所はどこですか?
性別や年齢、職種によってバラバラだとは思いますが、圧倒的にオフィスと答えられるのではないでしょうか。長い時間を過ごす場所だからこそ快適に楽しく過ごしたいもの。また、居心地のよい環境はモチベーションアップにもつながります。職場の雰囲気が違うだけでもインスピレーションに差が出ることもあるでしょう。特にデザイナーという職業は、豊かな想像力やセンスを重要視するものです。
働き方が多様化していく昨今、オフィスのあり方もまた進化を遂げています。国内はもとより、世界にはたくさんの素敵なデザインのオフィスがあります。こんな事務所で働けたら…なんて想像力を働かせながら世界のオフィスを覗いてみましょう。
2つの会社がシェアする開放的なワークスペース
design : ROY DAVID ARCHITECTURE
南アフリカのゲーム会社「Jelly Button Games」とweb関連会社「Hamutzim Studio」が共有するオフィスです。天井高が3.5mほどある工業ロフトビルを改築したオフィスは、中央の共有スペースを介しながらも、それぞれの占有スペースを確保する機能的なデザインになっています。
中央から、「パブリック」「セミパブリック」「プライベート」とゆるやかにゾーニングしており、段階的に住み分けができるように配慮されています。それぞれの作業効率を高めるためにもプライバシーは充分確保されていますが、それと同様に開放感と空間の共有にも注力しています。
パブリックスペースにはキッチンやダイニング、レセプション、図書スペースなどが設けられており、どちらの会社のスタッフもくつろぐことのできる共有ゾーン兼オフィスの、エントランス的な役割をもっています。こうしたスペースを活用し、互いの知識や情報交換、リフレッシュタイムにちょっとしたパーティーなども開かれているそうです。セミパブリックゾーンにはビリヤード台やピンボールマシーンなんかが置かれていて、なんとも羨ましい環境です。
作業スペースやダイニングなど置かれている家具はすべてカスタムメイド。オーク材や合板、鉄など素材感をいかして作られています。そして柱の個性的なイラストは、地元のストリートアーティストとオフィスのスタッフによって描かれたもの。見ているだけでワクワクするようなクリエイティブオフィスにぴったりのアートです。
オフィスの片隅に設けられたゲームスペース。ゲーム開発を仕事としている彼らには欠かせないスペースですが、気分転換にも使われているそう。こうしたリフレッシュタイムからまた新しいアイディアが生まれるのでしょうね。
空間同士の仕切りとして導入されたのが、木組みで作られたパーティションです。それぞれの部屋のプライバシーは確保しながらも、視覚的な開放感は保たれています。木製の家具たちとも調和しており、様々な方向で組まれている木はそれぞれに面白い模様を見せています。実用性とデザイン性を兼ね備えた優秀なパーティションですね。
壁面に対して開口部が大きくとられ、窓が大きいのもこの事務所の特徴の一つです。自然の光をたくさん取り込むことで、体内時計がリセットされて頭も体もすっきりし、作業効率も上がります。開放感と遊び心がいっぱいのデザイン事務所。こんな職場なら面白いアイディアがどんどん生まれてきそうです。
動線で仕切られた革新的なシェアオフィス
design : ROY DAVID ARCHITECTURE
こちらは南アフリカにあるハイテク企業「Apester」と「Cocycles」がシェアする2階建てのオフィスです。オイルステインで塗装したダークな色合いの木材やむき出しのコンクリート。エネルギッシュでワイルド、良い意味で野心を感じさせる内装デザインです。
中央の階段と会議室からなるパブリックスペースを中心に、グリーンの動線で表されているのが「Cocycles」のスペース。赤の動線で表されているのが「Apester」のスペースです。明確な仕切りやパーティションがなくても、それぞれのスペースが確立しているところに斬新な空間デザインを感じます。
階段を挟むようにして、ラウンジスペースと会議室が2つ並んでいます。ラウンジスペースはオープンに両社のスタッフが自由に行き来でき、会議室は、周囲から独立した個室になっています。会議室な独立しているとはいえ、ガラス製の壁で覆われているので視覚的には閉塞間を感じず、ガラスにペインティングを施して適度な目隠しにしているところがナイスアイディアです。このパブリックゾーンを囲むようにして作業スペースが並んでいます。
大会議室は12名、小会議室は6名まで使えるようになっており、少人数のブレストや社内会議など用途に応じて使い分けられます。ガラスにペインティングされたイラストはブランドをイメージしたテクスチャー。ポップでユニークな絵柄に囲まれて、和やかな気持ちでミーティングができそうですね。
大きめに作られた無骨なまでにシンプルなデスクにPCが並ぶ、プライベートスペース。デスク間のスペースを広めにとり、ゆったりと開放的なつくりにしてあります。日本の建築事情ではなかなか実現するのが難しい贅沢なゆとりです。
このなんとも不思議な空間、レクリエーションスペースだそうです。ちょっとした息抜きや軽いミーティングにも使えそうですね。このスペースはプライベートエリアに挟まれるようにしてあるのですが、両エリアから仕切るために存在しているのが可動式のウッドパネルです。木の板に黒板用の塗装を施し、ストリートアーティストの手により、イマジネーションを掻き立てるサイケデリックなイラストが描かれました。このパネルは、鉄パイプを中心に回転する開閉式のパーティションの役割と、空間に動きをつけるインテリアのアクセントにもなっています。
中央の階段を上っていくと、そこにあるのは・・・・一面ガラスで囲われた光降り注ぐパティオ。中にはバーカウンターがあり、プロジェクト完成後には打ち上げなど行われるのでしょうね。パティオを出ると、ダウンタウンを見下ろす屋上テラス。仕事に行き詰った時にはここにくれば気持ちもすっきり切り替えられるでしょう。
自然を体感できる、エコロジーなデザイン事務所
design : ZROBYM architects
東欧の国、ベラルーシにある建築デザイン事務所。BMXで走り回れるほどの余裕のあるスペーシングと、自然を感じる素材選びが個性的なオフィスです。広大な湿原と豊かな森林を有するベラルーシらしさを感じる、ナチュラルにこだわった内装が見所です。
エントランス部分を囲むのはたくさんの木の板。普通は平らで広いカットした断面部を貼り合わせて壁や床にするものですが、ここでは立てて並べるように装飾しています。下段の写真では照明スイッチの部分をアップにしていますが、圧倒的なボリューム感、木の存在感を感じます。
そして、レセプションの手前に見えている「穂」に注目です。一般的に観葉植物を飾っているオフィスはよく見かけられますが、小麦や稲を飾っているオフィスはあまり聞いたことがありません。このデザイン事務所は、普通インテリアにはすることのないような「自然」に植生している植物を取り入れることで、他にはない自然との一体感を感じられる空間づくりを実現しています。
一面グリーンに占拠された壁の横には、リサイクル材で作られた紙の筒、再生紙管でできた照明があります。それと同様に再生紙管で作られた椅子も置かれており、エコロジーへの取り組みとデザインを融合させた建築事務所のこだわりを感じます。椅子の後ろに投光機がみえますが、再生紙管の照明も然り、このオフィスでは照明器具にもこだわりをもっています。建設現場で使われている裸電球のような照明や、木製の吊り型照明など、どれもシンプルでエコ、無駄を省いた造形美を感じさせます。
照明に使われている再生紙管は、ペーパーラックとしても活用されています。空間のアクセントとしてもいきており、お洒落で実用的な家具に見えてきますね。これならちょっとしたスペースがあれば真似できそうです。
作業デスクは合板にビビットなブルーのパイプで脚をつけたシンプル設計。PCのキーボードまで木製(!)を使っているとは、脱帽です。そして、右手に見える社名が入った緑の壁。壁だけでなく天井まで苔を生やした驚きの演出です。
自然に包まれているような感覚をオフィスで味わうことができる、なんとも不思議な空間です。緑は目にもやさしく、PC作業が多くなってしまう職種にはありがたい効果もありそうです。
建築デザインというジャンルは常に自然との共生を意識していかなくてはならない職種です。資源の有効活用や自然の雄大さを感じさせるこのオフィスのインテリアデザインは、そうしたテーマを体現する素晴らしい作品の一つといえるでしょう。
優しいトーンで統一された落ち着きのあるワークスペース
design : Nefeli Kallianou
グレイッシュなコンクリートの床に白い壁、家具はパステルトーンとホワイトオーク、そしてアクセントにゴールドの真鍮。女性的なやさしいトーンで統一されています。
広々としたスペースにデスクが2つ。個人経営のデザイン事務所や少人数のワークスペースには最適です。
色調のこだわりは照明やインテリア小物まで徹底されており、空間の和を乱さない配慮を感じます。
窓から見える景色まで美しいのが、また羨ましい限りです。一度は思い描いたことのある、憧れの部屋ではないでしょうか。
木の温もりを感じる、モダンで機能的なデザイン事務所
design : Another Studio
極力壁を取り払い、アパートのワンフロアを広々としたオープンスタジオに改築した、ブルガリアにある建築デザイン事務所です。書棚やカーテン、スライドドアなど可動式の間仕切りとなる家具を使い、オープンでありながら、緩やかにゾーニングされたハイセンスなオフィスです。
オフィスの中心に位置するY字に組まれたセントラルデスクです。3つに分割することができ、作業人数や作業内容に合わせ動かすことも可能です。動かすことも念頭に置かれ、照明もシンプルな天井吊り下げ式になっています。電球型の照明器具は、天井に設置された他の器具と同型で揃えられており、飾り気のなさが逆にモダンに感じるお洒落な照明です。
書棚は全部で3つ設置されており、その全てが部屋同士の仕切りも兼ねています。両側から利用できる書棚や、可動式のサイドテーブルやチェアを組み込んでいるものなど、スペースの有効活用とともに、風通しの良い空間作りに一役かっています。
オフィスにはミニキッチンとバスルームも設けられています。デザイナーなど時間の不規則な仕事だと、水回りがオフィスにあるのはとても心強いものです。ヨーロピアン調のタイルがオフィスゾーンとの住み分けをしてくれて、ほっと一息つける場所を演出しています。
キッチンの出入り口に注目すると、ポールを渡し、上着を掛けられるようにしています。ワークスペースとの間をコートハンガーにすることで、カーテンのような効果を担い、ここでも緩やかなゾーニングがされています。このオフィスの機能的な空間利用術は、真似したくなるものばかりですね。
木とグリーンと質のよいリネン。そこに居るだけで癒されるような心地よいデザインオフィスです。
まとめ
インテリアデザインにこだわったオフィスや、機能性に特化したオフィスなど様々なスタイルが見られました。それぞれこだわるポイントは違っても、よい仕事をするために最適な環境を求める姿勢は共通しているのではないでしょうか。今回ご紹介した中にも、すぐ取り入れられそうなアイデアがいくつかありましたね。春に向かって心機一転、オフィスの模様替えのヒントにしてみてはいかがでしょうか。
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