ロゴマークは、企業やブランドのイメージを代表する看板のようなものです。デザインするにあたり、ブランド名の頭文字やイニシャルをモチーフにしたり、事業内容を彷彿とさせるモチーフを使い、シンボルマークを制作するなど、何をモチーフにして表現していくかは千差万別です。その選択肢の一つとして「動物」をモチーフにする場合があります。
一般に認知されている動物は、誰もが何らかのイメージを持ち、好き嫌いや個人的な思い入れのほかに、社会全体の共通認識ともいえるパブリックイメージが存在しています。ロゴマークなどのデザインに動物をモチーフとして使用する場合、その動物に関するパブリックイメージを上手く使うことで、そのブランドや企業の与えたいイメージとリンクさせることができるのです。では、どんな動物がどのようなイメージを与えるのか、実例を交えながら考察していきましょう。
「犬」のモチーフを使用したロゴデザインについて
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この蓄音機に耳を傾ける犬のロゴマーク、見覚えがありますよね。日本ではビクター、海外ではレコード販売のHMVでもお馴染みのマークです。ビクターもHMVも、実は同じ犬をモチーフにしてロゴマークをデザインしていますが、日本では商標登録の関係上、HMVは英字のロゴのみとなっているそうです。この犬のマークの由来は、HMVの正式名称と深い関わりがあります。「His Master’s Voise」これがHMVの正式名称であり、この犬を描いた絵のタイトルでもあります。
ある画家の兄が飼っていた「ニッパー」という犬がこの絵に描かれている主人公です。その画家の兄が他界してしまい、当時の蓄音機から亡き兄の声を流したところ、ニッパーは耳を傾けじっとその声に聞き入っていたそうです。それを見て画家が感動し、犬と蓄音機の絵を描いたのがこのロゴマークのはじまりでした。
犬のデザインが与えるイメージ
犬は私たちにとって、もっとも身近な動物の一種です。昔からペットとして愛され、犬も家族の一員であるという家庭は少なくありません。そんな犬が思い起こさせるキーワードは、
●忠誠 ●従順 ●人懐っこい ●献身 ●保護 ●狩猟
などが挙げられます。日本では、通信情報サービスのソフトバンクの犬のキャラクターも有名ですね。 顧客に対し、忠義を尽くし献身的であること。親しみ深いパートナーのような存在であることなど「犬」から伝わってくるイメージは、寄り添い、共にあるような非常に近い距離感を与えるモチーフです。
「猫」のモチーフを使用したロゴデザインについて
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クロネコヤマトのキャッチフレーズでお馴染みのヤマト運輸。社名に「クロネコ」は入っていないものの、ヤマト運輸と言えばクロネコと連想するくらい、結びつきが強いキャラクターです。
ヤマト運輸のロゴマークに猫が抜擢されたのは、1957年当時、業務提携していたアメリカの運送会社が白猫の親子を描いたロゴマークを採用していたことに由来するそうです。当時の社長が同社のロゴマークに強く共感し、ヤマト運輸のロゴマークにも猫が選ばれたそうで、なぜ黒猫になったのかは定かではありませんが、子猫がもっともケガをしにくい部分を母猫がやさしく咥え運ぶ姿は、お預かりした荷物を大切に運ぶというヤマト運輸の基本的な精神を反映しています。また、猫が持つ「俊敏」なイメージも運送の世界には不可欠な要素の一つであり、猫のイメージをロゴマークに使用したのは納得のいくチョイスだと言えるのではないでしょうか。
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また、同じネコ科の動物をモチーフとしたロゴマークにスポーツブランドの「PUMA」があります。モデルになっているピューマは、ネコ科に属する大型肉食哺乳類で、その力強さや鋭敏な動きが同社のイメージに当てはまることからロゴマークのモデルになったと言われています。
猫のデザインが与えるイメージ
猫があらわすイメージのキーワードは、
●俊敏 ●自由 ●しなやか ●いたずら好き ●気まぐれ ●獰猛 ●金運・福
などが挙げられます。猫な犬と並ぶ、人間の暮らしと深い関わりをもってきた動物です。特に、日本では招き猫に代表されるように、福を呼び込む動物として古くから慕われてきました。犬とはまた違う自由奔放なキャラクターに魅力を感じる人が多く、ロゴマークやマスコットキャラクターなどに非常に多く採用されています。
「ライオン」のモチーフを使用したロゴデザインについて
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同じネコ科の動物でも一際目立つ存在なのが、百獣の王と呼ばれるライオンです。力強く、気品高いイメージは多くのブランドや企業から人気が高く、ライオンをイメージしてデザインされるロゴマークは数えきれないほどあります。
上の画像のロゴマークは、世界的なホテルチェーン「The Ritz Carlton」のロゴマークです。豊かなたてがみを蓄えたライオンと王冠の組み合わせは、富と崇高さをあらわしており、高いホスピタリティとラグジュアリーな設備をもつホテルにふさわしいロゴマークです。
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同じくライオンと王冠をモチーフにしているロゴマークに、イギリスのサッカーリーグ「プレミアリーグ」があります。世界最高峰のサッカーリーグと言われ、名実ともに高い人気を誇っています。何度かロゴデザインは刷新されていますが、結成当初から王冠とライオンという組み合わせは変わっておらず、誇らしげに王冠を頭上に頂くライオンは、まさにサッカー界のトップを走り続けるリーグの象徴と言うべき存在です。
ライオンのデザインが与えるイメージ
ライオンが意味するデザインイメージは、
●勇猛 ●力 ●勝利 ●高貴 ●王者 ●純潔 ●孤高 ●富 ●栄誉
などが挙げられます。生態系のピラミッドの頂点に君臨するイメージをもつライオンは、高い品質やサービスを誇るブランドや企業に好んで使用されるケースが多く、例にも挙げたように、王冠など高い地位をあらわすモチーフと組み合わされてデザインされることがよくあります。
「鷹」のモチーフを使用したロゴデザインについて
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上の画像は、アメリカ国家安全保障局のシンボルマークです。アメリカの国旗を思わせるカラーリングのエンブレムをボディに、立派な翼をもつ鷹が描かれ、国家の安全を象徴する大きな鍵の上に堂々と留まっています。
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同じく鷹をモチーフにしたデザインに、世界的なメガバンク「バークレイ証券」があります。創業当時から何度もデザインリニューアルを繰り返していますが、一貫して「鷹」のモチーフに変わりはありません。
鷹のデザインが与えるイメージ
鷹のもつデザインイメージは、
●天空 ●捕食者 ●王者 ●名誉 ●品位 ●力 ●孤高 ●高い精神性 ●知恵
先にご紹介したライオンと、印象的に似た部分が多く見られます。ライオンが威風堂々とした地上の王ならば、鷹はよりクレバーで知恵をもった空の覇者と呼べるのかもしれません。また、鷹はつがいとなったパートナーを一生の伴侶として添い遂げるという、誠意を感じる動物でもあります。そういった性質からも、「高い精神性」 や「気高さ」というイメージに通じているのかもしれません。また、高高度から世界を見渡す(監視する)ことができるため、セキュリティ会社などにもよく用いられるシンボルです。
「猿」のモチーフを使用したロゴデザインについて
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上の画像にある猿のキャラクターは、アパレルブランド「Paul Frank」のマスコットキャラクター「ジュリアス」です。ジュリアスはさまざまなキャラクターたちと楽しく暮らし、いろいろなことにチャレンジする好奇心旺盛な猿。ジュリアスは、自由でいきいきとしており、人間がうらやましくなるほどの奔放さ。口を横に大きくデフォルメして描かれたファニーな顔は、ファッションを愛す多くの人から支持されています。
猿のデザインが与えるイメージ
猿が持つデザインイメージは、
●ユーモア ●真似 ●欺瞞 ●傲慢 ●幼さ ●知恵
人間と同じ霊長類に属する猿。その表情や仕草、特徴などを見ていると、思わず親近感を抱いてしまうほど人と近く、似た存在です。似ているからこそ、人間は猿に自分たちの姿を投影し、時に愚かなものの象徴として扱うこともあります。その反面、似ていながらも社会のしがらみに捉われない彼らを自由な存在とみなし、ユニークさの象徴とする場合も多々あります。
まとめ
動物たちから感じるイメージは、長い歴史の中で培ってきた人間との営みや、動物たちのもつ特性に基づいたものが蓄積して出来上がったものです。それらのイメージは、動物に興味を持ち始める幼い頃から意識され、先入観となって知らないうち私たちの脳裏に焼き付いています。
動物のイメージをロゴデザインに取り入れるこということは、そういった、元から人々の中にある動物のイメージを利用し、自社やブランドのイメージと結びつけることで、より的確な印象を多くの人に持ってもらうことを実現する、非常に有用な方法です。
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