企業やそのブランドのロゴに使われる色は、その企業が主張したい方向性を端的に表現しています。色が人々に与える印象には一定のパターンがあるため、デザイナーはそれを意識して色を選ぶのです。
今回は緑色を使ったロゴを見ていきましょう。緑は「安心」を与え「調和」の印象を持つ色です。この色を選ぶ企業に共通する方向性は、顧客に対して落ち着いた自然な印象を保とうという姿勢です。金融や住生活、カフェ、SNSなどの業界によく見られます。緑は「植物・自然」のイメージも持つため、エコロジカルな印象をより与えたいケースで選ばれる場合も多いようです。緑色のロゴの代表的な事例を見ていきましょう。
スターバックス(STARBUCKS)のロゴデザイン
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スターバックスコーヒーは1971年にアメリカのシアトルで創業しました。最初はコーヒー豆の焙煎からスタートし、紆余曲折を経てエスプレッソを中心としたドリンク類をテイクアウトで提供する「シアトルスタイル」が生み出され、またたくまに世界中に広がりました。
スターバックスのロゴは、事業展開の戦略を反映して3回のリニューアルを行っています。いちばん最初のバージョンのカラーリングは緑色ではなく、コーヒーを表わす茶色でした。中央にセイレーンのイラストがあり、それを囲むように「STARBUCKS COFFEE& TEA」の文字が丸く配置されていました。
スターバックスが産まれたシアトルは、海に囲まれた港町から発展した街。セイレーンはギリシャ神話に登場する海の怪物で、店名は、メルヴィルの小説「白鯨」に登場するスターバック航海士に由来します。
15年後の2回目のロゴリニューアルで、STARBUCKSの文字を囲む帯は緑色に変わります。セイレーンのイラストはさらに省略され、黒のバックに配されました。この配色は、「海に囲まれたシアトル」のようにも見えますね。緑色は「安心感」「調和感」を印象づける色。ロゴが変わったのは、シアトルからコーヒー店チェーンとして拡大していくまさにその時。リニューアルしたロゴは、まるで、大海原に航海に乗り出す船の紋章のようです。
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その5年後にも世界展開を見据えたリニューアルがあり、セイレーンのイラストが上半身のみに簡略化され、インパクトが高まりました。このタイプは近年まで使われ続け、最も認知されているでしょう。日本で似たような「緑の丸囲い」デザインのロゴで展開したエクセルシオールカフェはロゴが似すぎているとして訴訟に発展し、後に和解して円の色を緑から青に変更したそうです。
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19年後の2011年のリニューアルでは、ついに「 STARBUCKS★COFFEE」の文字がなくなり、セイレーンのみとなりました。
そこには、店名を語らずとも認知されているという一流ブランドの風格と、コーヒー以外にも商品展開しはじめたスターバックスの企業戦略が伺えます。
JR東日本(JR EAST)のロゴデザイン
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鉄道事業は社会インフラとして、周囲との調和を必要とします。所有者が異なる土地と土地のあいだを繋ぎ、騒音や事故などの問題も抱えながら、環境に配慮して和を保ち、安全に運営していかねばなりません。「安心」と「調和」をイメージさせる緑色が選ばれることは、適切な判断といえるでしょう。JapanRailwayのふたつの頭文字を採ったJRのロゴは太く力強く描かれ、社会の大動脈としての役割をしっかり果たそうとしているかのように感じられます。
JPゆうちょ銀行(JAPAN POST BANK)のロゴデザイン
Piotr Swat / Shutterstock.com
JP(日本郵便)本体の企業ロゴは、郵便ポストの赤色から連想される赤いロゴで、人々の生活に密着し必要とされる企業姿勢を表しています。そこから発展したJP BANK(ゆうちょ銀行)は、ベースカラーを緑に変えています。金融機関に最も必要とされる安心感。ロゴデザインは本体のJPと変わらず、カラーリングでその違いが表現されています。
グーグル アンドロイド(Androido)のロゴデザイン
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アップルはiPhone/iPadで人々が情報と関わる新たなライフスタイルを生みだしました。それを後追いするグーグルのスマートフォンOS「アンドロイド」は、PCのOSで世界一のシェアを持つマイクロソフトの青色とアップルの黒と異なるように意識したのでしょうか、「和」を生みだすエコロジカルな緑色をベースカラーに選びました。思い切ってかわいいロボットをモチーフにして印象づけ、マイクロソフト・アップルというビッグ2と大きな差異化を図っています。
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アンドロイドOSはこの数年で圧倒的にシェアを伸ばし、2017年の世界のモバイルOSシェアではアンドロイドが7割以上を占めました。ちなみに日本では、アップルのiOSのシェアが7割近く、「日本人はiOSが世界一好き」という結果になっています。
まとめ
「緑」のロゴデザインに共通しているのは、「安定」「調和」という安らぎをもたらす静かな印象でした。そこからは、最前線から一歩引いた守りの戦略、または2番手・3番手からスタンダードを狙って展開を図る企業の姿が浮かび上がります。赤の補色となる正反対の緑ですが、しっかりと根を貼って業界に定着していこうとする粘り強さ、しぶとさからは、ある意味では赤よりも野心的で力強い意欲が感じられます。
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