世の中には数多くの企業やブランドが溢れかえり、その数に比例するようにロゴマークも存在しています。ブランディングはもちろん、広告戦略の基本は競合との差別化です。ロゴマークにおいても、差別化は必須。ブランドのアイデンティティの中核となるロゴマークが競合に埋もれてしまっては、差別化どころかユーザーの記憶に残ることすら難しいでしょう。
如何にしてロゴマークを覚えてもらうか。競合との線引きをロゴマークでどのように表現するか。今回は、その解決方法の一つとしてユニークな戦略を得意とするグラフィックデザイナーを紹介したいと思います。彼の名は LEO LOGOS。スマートでユニークなロゴデザインに魅せられたリトアニアのデザイナーです。
10年以上ブランディングの現場で働いてきた彼は、数ある競合からブランドを際立たせる方法を発見しました。「ロゴマークの中にブランドの象徴的なモチーフを潜ませ、見る人に発見させるという体感的な要素を含むデザインは注目を集めやすく記憶に残りやすい」という結論に至ったのです。これまで500社以上のクライアントのロゴデザインを担当してきたという彼の制作例から、代表的なものをピックアップしてご紹介していきましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, LEO LOGOS! )
文字のかたちとモチーフを関連付けるロゴデザイン例
「A」と「気球」を組み合わせたロゴ
Air Balloonというロゴタイプ。気球やアドバルーンを扱う企業でしょうか。頭文字「A」をバルーンに見立て、気球の絵柄をシンボルマークにしています。ぷっくりと膨らんだ「A」のかたちが何ともユーモラスに見えますが、その下に乗り場を書き足すことで、しっかりとエアバルーンに見えてくるから不思議です。わずかに左に傾いた気球の下に影を落とすことで宙に浮かんでいる感覚が表現されていますね。
「C」と「磁石」を組み合わせたロゴ
こちらは、シンボルマークとロゴタイプが一体になっているロゴマークのパターンです。「collector」というこのロゴマークは、コインや骨とう品を扱うショップのロゴマークだと思われます。頭文字「C」は磁石をあらわし、「O」はコインをあらわしているそうです。磁石はブランドの業態には直接関わりはないかもしれませんが、「集める」というキーワードに対し、磁石のもつイメージは親和性が高く、ブランドのトレードマークとなりえるモチーフなのではないでしょうか。
「b」と「マップピン」を組み合わせたロゴ
スマートフォンやタブレットなどで利用される地図やナビのアプリケーションのロゴマークでしょうか。シンボルマークは小文字の「b」と地図表示などで使われる「ピン」をあらわしています。シンボルマークだけでもインパクトが強く、完成度の高い図柄なので、このままアプリケーションのアイコンとしても活用できそうですね。
「A」と「ハット」を組み合わせたロゴ
シークレットエージェント、日本で言うところの探偵にあたる職業のロゴマークです。シンボルマークは、Agentの「A」を用い、よく見てみると下のスペース部分にエージェントが被っているような帽子のシルエットが描かれています。モチーフがさっと余白に溶け込む、まさにシークレットなロゴマークですね。
「A」と「ダンベル」を組み合わせたロゴ
スポーツトレーナーのロゴマークでしょうか。ANDRIUSの「A」の文字とダンベルを重ね合わせシンボルマークとしています。直線のみで構成されるこのシンボルマークは、レトロなビデオゲームに使われるドット絵のようで、楽しんでトレーニングができそうな親近感を感じさせます。
2つ以上のモチーフをシンボライズしたロゴデザイン作成例
「iphone」と「救急車」を組み合わせたロゴ
スマートフォンが故障してしまうと、多くの現代人は救急車を呼びたいほど困惑してしまいます。少し風刺めいているかもしれませんが、そんな世の中へのメタファーも込めた携帯電話修理店のロゴマークです。スマートフォンと救急車の特徴をうまく利用しシンボルマークに仕立てています。画面に表示されている赤い十字のマークや、わずかに傾斜している電話のかたちなど、ディテールにこだわり緊急事態をユニークに演出しています。
「パソコン」と「コーヒーカップ」を組み合わせたロゴ
カフェでインターネットが利用できるネットカフェのロゴマークです。パソコンのモニターとキーボードの略図に取っ手を加えるだけで、コーヒーカップにも見えてしまう、まさにアイディア勝負のロゴデザインです。簡潔ながら直球のアイディアでまとめられたロゴマークは、印象が強く誰からも認識されやすいというメリットがあります。逆に、競合から追随されやすい部分もありますので、後発のブランドの動きには注意が必要です。
「マジシャンハット」と「カップ」を組み合わせたロゴ
こちらもカフェのロゴマークです。「magic coffee」という店名を印象付けるため、シンボルマークに一工夫凝らしています。コーヒーを入れたカップとソーサーのシルエットをつなげることで、シンボルマーク全体で見たとき、マジシャンの被る帽子に見えるようデザインされています。どんなコーヒーを飲ませてくれるのか、足を運んでみたくなりますね。
ネガティブスペースにモチーフを潜ませたロゴデザイン例
世界的に有名な物流会社FedeEx社。
参考 : FedEx社のロゴ Daryl L / Shutterstock.com
そのブランドネームと同様にロゴマークも世界中に知られています。このFedEx社のロゴマークは単なるロゴタイプではなく、ある記号が社名の中に隠されていることが大きな話題になりました。ご存知の方が多いと思いますが、「E」と「x」の間に右方向を示す矢印が潜んでいるのです。この矢印をネガティブスペースを使ってあえて目立たぬよう配置したのは、発見する驚きと、その発見を誰かに伝えたくなる心理を宣伝効果に繋げようという広告戦略があったからです。狙い通りFedExのロゴマークの秘密は人から人へと伝播し、今ではネットで検索すると数多くのサイトで取り上げられるほどになっています。
LEO LOGOS氏も、このFedExのロゴマークに感銘を受け、ネガティブスペースを生かした数多くのロゴデザインを制作しています。隠れた秘密を発見する喜びは万国共通。ロゴマークの新たな魅力を感じてみましょう。
「C」の中に「コーヒーカップ」が浮かび上がるロゴ
Come Home caféという日本のカフェ用に制作されたロゴマークです。シンボルマークを頭文字「C」を使って制作しています。「C」の中に茶色のポイントを2か所入れることで、ネガティブスペースにコーヒーカップが出現しました。
2つの「C」を組み合わせ「H」を浮かび上がらせるロゴ
このロゴマークも先に紹介したものと同じく、Come Home caféのために制作されたロゴマークです。今度は、頭文字「Cを2つ左右対称に並べ、中央のネガティブスペースで「H」の文字を形作っています。同じブランドを想定したロゴマークですが、温かみのある雰囲気を共通項にして表現の仕方に変化をつけています。上段のコーヒーカップをモチーフにしたロゴは、丸みのあるロゴタイプの印象も手伝い、非常にアットホームなイメージを感じさせます。下段のロゴは、グレー1色で書かれたロゴタイプやシンボルマークに使われているグラデーションカラーの印象でモダンなカフェのイメージを植え付けます。
2つの「矢印」を組み合わせ「N」を浮かび上がらせるロゴ
リサイクルや環境保全関係のブランドロゴでしょうか。シンボルマークに2つの矢印を使い、循環をあらわしています。その2つの矢印が囲む中心の空白に注目すると、ブランド名の頭文字である「N」が浮かび上がってきます。その存在に気が付く前と後では見方がまったく変わってしまう、だまし絵のようなロゴマークです。
「葉脈」を「矢印」に見立てたロゴ
こちらは「Frukt Kuriren」という、フルーツや野菜をデリバリーサービスしている企業のロゴマークです。野菜やフルーツの元となる、土から芽吹く二葉をモチーフとしシンボルマークをデザインしています。この二葉、よく見ると2つの葉脈と茎の部分に空白があります。空白は太陽から降り注ぐ光のようにも見えますが、実は手前側に向かった矢印をあらわしているのです。この矢印は、デリバリーという業態のコンセプトを示すもので、「あなたのもとへ、新鮮な野菜やフルーツをお届けします」というメッセージが込められているのです。
まとめ
見ているだけで楽しくなるようなロゴデザインばかりでしたね。ロゴマークに隠された意味がわかると、思わず嬉しくなってしまいます。LEO LOGOS氏の手掛けるロゴマークは、そうしたユーザーエクスペリエンスを提供する体感型のロゴデザインと呼べるのかもしれません。
圧倒的な画力によるデザインや、今までにない新たな発想から生まれるロゴデザインは言わずもがな人の心を掴みます。しかし、今回ご紹介したような、見る人に驚きや喜びを提供するロゴもまた、人の心を掴むデザインの一つなのではないでしょうか
design : LEO LOGOS ( Lithuania )
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