企業やブランドの理念・文化・特色などをそれ1つで表す「ロゴマーク」は、会社の顔となる非常に重要なアイコン。CI(コーポレートアイデンティティ)の観点から見ても、企業戦略として議論が欠かせないポイントです。ロゴを作成する際に、全体の印象を左右する”鍵”とも言われるのがフォント(書体)の選択。頭の中で描いたイメージに近付け、ロゴのもたらす効果をさらにUPさせるためには、フォントの力が欠かせません。今回は、ロゴデザインにおいてフォントを選ぶ時のコツをご紹介します。
1. まずは基本となるフォントの種類を見極めよう
世の中に溢れかえる数多のフォントの中から、自分が求めるイメージピッタリのものを選び抜くのは非常に難しいことです。従って、大きな分類から基本となるフォントの種類を選んでいき、選択肢を絞っていくのが最も効率の良い決め方になります。まず、日本語(和文)フォントの場合は「ゴシック体」「明朝体」「筆書体」「手書き文字」、英語(欧文)フォントの場合は「サンセリフ体」「セリフ体」「筆記体」「手書き文字」に大別されており(細かな分類はもっとありますが…)、それぞれ大きく特徴が異なります。
字の太さが均等でよく目立ち、カジュアルかつ親しみやすく、シンプルではっきりとしたイメージが特徴の「ゴシック体・サンセリフ体」。
逆に文字の太さに抑揚があって長文でも読みやすく、ウロコと呼ばれる装飾がついた上品な雰囲気で、高級感のあるイメージが特徴の「明朝体・セリフ体」。
そして「筆書体・筆記体・手書き文字」は個性的で面白いものやデザイン性が高いものが多く、それぞれ得意とする分野が違います。
フォントの数が多すぎてどれにしたらいいかわからない、となる前にあなたがロゴデザインを請け負った企業・ブランド・商品のイメージと照らし合わせ、まずこの8種類のタイプから合いそうなものを決めてしまえば、選ぶ作業に費やす時間が節約でき、その後の選定が格段にしやすくなります。
2. イメージに沿った運命のフォントを探し出そう
大まかなタイプを選んだら、次は具体的にどのフォントを使うのかという話になります。そのロゴデザインに最適なフォントというのは、宣伝効果やイメージアップなど様々なメリットをもたらしますが、その一方で合わないフォントを使用してしまった場合、本来のポテンシャルが発揮できないという結果にもなりかねません。
ではどうやって最終決定を下すのか?そういう時こそ、あなたがロゴデザインを手掛けるブランド・企業のことをよく考えてみて下さい。例えばスイーツブランドショップのロゴデザインをする場合、上品な高級感を出すために華奢な明朝体を選んだとしましょう。そのショップが抹茶や黒蜜など和素材と洋風の生地を使用した名物商品を展開していると想定するならば、欧風のモダンなオシャレさの中に、はんなりとした丸みや和風の雰囲気も取り入れた和洋折衷風の明朝体フォントを選択するとよりイメージが伝わり、お客様に対してのブランドアピールにもなりますね。
といった具合に、提供する商品・サービス・社風などを精査し、ロゴデザインを通して世間にどんなイメージを与えたいのかをしっかりと把握する必要があります。また同じ分類の中でも、フォントによって正反対のイメージを与えるということも多くあります。例えばゴシック体にしても、角ばった太い無機質なフォントの場合は硬いイメージになりますし、逆に角に丸みがあったりレトロな雰囲気のものであれば柔らかいイメージになったりと、全く違う印象になります。デザインコンセプトに沿ったフォント選びは非常に大切ということですね。
3. さらなるアレンジを加えてロゴにオリジナリティを発揮する
おおよそ使用する基本フォントが決定したら、実際に文字を配置してみて下さい。そこから様々なアレンジを加えるだけで、さらにあなたのオリジナリティ溢れる良作になる可能性が高まります。例えばフォントウェイト(文字の太さ)。ウェイトは少し調整するだけでイキイキと力強く見せたり、逆に繊細で落ち着いた雰囲気にしたりと、全体の印象をガラリと変えることができます。また他にも、フォントをアウトライン化してオブジェクトや図形などを組み合わせる、ペンブラシツールを使用して飾りを足す、文字の周りにフチを追加する、スペース(文字と文字の間)を調整するなどカスタマイズすれば、さらに特徴を出したロゴになりますね。
Rolf G Wackenberg / Shutterstock.com
例えば、世界的青果・食品メーカーの「Dole」のロゴは、O(オー)の真ん中が黄色いギザギザに抜かれた特徴的なデザインになっており、太陽が水平線から上がってくるイメージで作られています。
TK Kurikawa / Shutterstock.com
日本で有名なAEON(イオン)グループのロゴは、AとEの一部が融合していて、ロゴの中心に「エターナルリング」という輪があり、グループの一体感や世界平和などを表しています。手掛ける商品・ブランドを象徴するモチーフや理念を取り入れるのも、アピール効果が高まってさらにいいかもしれません。ありきたりなフォントでも、そのようにあなたの手でアレンジを加えれば世界に1つのオリジナリティを発揮することも可能です。
4. ベーシックなフォントでも普遍的なデザインに
ここまでは、選んだフォントに如何にしてオリジナリティを加えるかという話をしてきました。しかしながら、歴史ある企業やブランドのロゴデザインの中には、シンプルでベーシックな書体が使われているにも関わらず印象に残るものがたくさんあります。基本となるフォントがさほど特徴がない書体でも、ウェイトやスペースをほんの少しだけ変えたり文字の一部を欠けさせたり付け足したりなど、パっと見てもわからないようなちょっとした変化でも、デザイナーの努力によってその微妙な違いがブランドの個性となり人々の印象に残るのです。
ロゴであれば尚更、トレンドを追うのではなく長く愛されるものにする必要があるでしょう。一見ベーシックに見えるフォントでも、少しの工夫で流行に左右されない普遍的なデザインに昇華することもできるので、試行錯誤して納得の行くロゴデザインを追求してみて下さい。
5. 最後に
世の中には数えきれないほどフォントが存在しています。多ければ多いほど、どれを使うのが最善なのかという悩みが生まれ、デザイン上の大きな課題となるでしょう。特にロゴはその企業やブランドの価値を引き上げ、経営戦略の基本となる大切な象徴でもあるため、フォントの選択は非常に重要なアクションです。それ一つでデザインの方向性や完成度が大きく変わるので、よく考えた上で使用しなければなりません。
また、有料フォントの値段はいずれも比較的高めですが、文字のラインナップの関係で海外のフォントよりも日本のフォントの方が高く、プロ用のものを一通り揃えるとかなりの値段になります。日本の有名なフォントブランドの「モリサワ」は、年間約5万円で同社のフォントが使い放題のサービスなどを提供していますが、そのくらいの金額をかける価値がフォントにはあるということですね。
一方でデザイン性に優れた無料のフリーフォントも多く存在し、レベルも高く使い勝手が良いものもたくさんあるので、選択肢は無限にあると言っても過言ではありません。あなたの求めるピッタリのフォントを探すことが、最高のロゴをデザインする第一歩になりますよ。
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