デザイナーやクリエイティブ職に従事する人たちが、将来どのような場所で活躍するのか。それには様々な選択肢があります。それぞれにメリット/デメリットが存在し、働き方も大きく異なります。今回は、Philip VanDusen 氏の動画 “デザイナーへのキャリアアドバイス” を翻訳してご紹介したいと思います。※記事掲載は許諾を得ています。(Thank you Philip !!)
Philip VanDusen 氏はP&G、GAP、Petsmart、Safeway、GEホンダエアロエンジン、シェブロン、Microsoft、LEVI STRAUSS(リーバイス) などを含む世界トップクラスの企業、国際リテーラー、消費者製品の戦略的ブランディング、グラフィックデザイン、製品開発を手掛けるトップクリエイティブリーダーです。
彼はPepsiCo(ペプシコーラで知られる食品会社)とOld Navy(GAP傘下の衣料品店)のデザインVPと、国際的ブランディングエージェンシーであるLandor AssociatesとAnthem Worldwideのエグゼクティブクリエイティブディレクターを務めました。
現在、戦略的グラフィックデザイン、ブランド制作、ブランド開発を専門とするVerhaal Brand Design (http://philipvandusen.com)の創立者兼CCOを務めています。20年以上にわたって100社以上の企業や起業家のブランドやロゴ、ウェブサイト、Eコマースプラットフォームの制作と新しい製品の開発を手掛けています。
以下、映像と翻訳内容です。
https://www.youtube.com/watch?v=CQkQvy_n6wE
皆さんこんにちは、Philip VanDusenです。
今日はクリエイティブプロフェッショナルが就ける3つのキャリアについてお話します。それぞれが何なのか、それらの長所と短所について見ていきますが、初めにクリエイティブキャリアに就くなら今がとても良いタイミングだということを言っておきます。
デザインは今や万物の動力になっています。テクノロジー、イノベーション、メディア…。
今がクリエイティブプロフェッショナル達が最も活躍できる時代なのです。また、デジタルやVR、3D、ゲーム、メディア、映像、放送、印刷など様々な素晴らしい選択肢があります。正しい方法を選べば、とても稼げる仕事でもあります。クライアントと話をするとき常に「デザイナーやクリエイティブプロフェッショナルと仕事をすることが1日で最も楽しい時間だ」という話を聞きます。ですから、この仕事はとても楽しいのです。
では、3つのキャリアの道について見ていきましょう。
デザイナー・クリエイティブ職の3つのキャリア
1つ目は”フリーランス”として働くこと。
2つ目は”事務所”に勤めること。
3つ目は”企業”に勤めること(=”インハウス”)。
“フリーランス”は3つに分けることができます。個人事業主として働くか、オンライン市場を通じて働くか、または派遣事務所を通じて働くこともできます。
“事務所”で働く際は、デザイン事務所やブランド事務所、広告代理店などが挙げられます。
“インハウス”は、企業のデザイン部門で働くことです。
私はこれら3つすべてを経験しています。国際的ブランディング事務所であるLandor associatesやAnthem Worldwideでの勤務経験もありますし、Old NavyやPepsiCoなどの企業での経験もあります。また、個人的なフリーランスやコンサルの経験もあります。これら3つのキャリアでデザイナーを雇ったこともありますし、クライアントと仕事をしたこともあります。良いことも悪いこともたくさんありましたが、完璧な道は一つもないということが言えます。3つのキャリアをやってみて、自分のキャリア経験にとってとても良いものになりました。これからこれら3つのキャリアについて深く見ていきましょう。
フリーランスについて
まず、オンラインフリーランスについてです。オンラインフリーランスとは、oDeskやFiverrやeLanceのような場所(日本で言うランサーズやココナラなど)です。長所は誰でも参加できるということですが、これは短所でもあります。だれでも参加できるということは、そのサイトでサービスを売っている人達がとても多いということですので、競争率が高く、良い人に出会うのも難しく、自分が良いデザイナーだとしても他のデザイナーたちの中で目立つことが難しくなってしまいます。
もっと短所について言うと、国際的な競争が行われる場所ですので料金のプレッシャーがあります。EUやアメリカでデザイナーの料金設定が異なる場合が多いからです。利用する人が多いため、クライアントに認識してもらうことも困難になります。こういったウェブサイトは金融的なプロセスが主になっていることが多いため、クライアントとの関係を築くのが難しいことが多いことも短所として挙げられます。
次に、個人事業主としてフリーランスをすることについてです。良い点は自分がボスなので、クライアント以外と話をする必要がないことです。自分で好きなクリエイティブビジョンを作り、優先順位を決めることができますし、自分の好きなように時間を使うことができます。
個人事業主としてのフリーランスの短所は、長い経験を積んで大企業と仕事ができるようになるまでは、小さな企業などと仕事をすることが多いことです。自分でビジネス展開をしなければならないので、クライアントを探すのも自分ですし、クライアントとの関係を築くのに加え、書類関係もすべて自分でこなす必要があります。
スケジュールや税金などもすべて自分でこなさなければなりません。こういった管理もフリーランスで働くことに含まれてくるのです。また、他の同業者と顔を合わせる機会が少ないことから、寂しくなってしまうこともあります。企業や派遣事務所などに勤めた後に、個人のフリーランスとして働くことをお勧めします。
3つ目は、これは私が最も気に入っている働き方ですが、派遣事務所を通じてフリーランスとして働くことです。ニューヨークには247やクリエイティブサークルのような派遣事務所がありますが、これらの事務所はグラフィックデザイナーを雇って、企業などがデザイナーを必要としているときに派遣する事務所です。派遣期間は1日から数カ月まで様々です。一番の長所は、フルタイムで働かなくても数多くの企業やエージェンシーのクライアントと仕事ができることです。企業や事務所で働くことがどんな様子なのか、フルタイムで働くことなく感じることができるのです。
また、経験を積むのにとても良く、幅広いプロフェッショナルネットワークを構成することができます。様々な仕事をこなすことができる機会が多いので、ポートフォリオを作る際にもとても役立ちます。自分で仕事を探す必要がないことも大きな長所です。仕事が必要な時には派遣事務所から知らせてくれるので、自分でクライアントを探す必要がないのです。
短所は、あなたが派遣事務所にお金を払わなければならないことです。自分の理想の稼ぎを得るためには料金設定を引き上げる必要が出てきます。いつ仕事の知らせが来るのかわからない不安な状態があることも事実です。フルタイムで働くことなく幅広い経験を積みたい若手のデザイナー達におすすめの方法です。[※AMIX加筆 : いわゆる日本の”派遣”とは少し異なりますね。]
もう一つの短所は、もしあなたが仕事をした事務所でお気に入りの事務所があったとして、彼らにフルタイムで雇われる話が出た際に、その事務所が派遣事務所に費用を払わなければならないことです。フルタイムで雇われるまで非常に長い期間待たなければならないこともあります。しかし、私は個人的に長所が短所を上回っていると思います
デザイン事務所勤めについて
次にお話しするのは事務所で働くことについてです。ブランディング事務所、デザイン事務所、広告制作事務所などで働くことです。長所の一つは、デザインのビジネスについて学べるということです。アカウントマネジャーや戦略、ファイナンシャル、プロダクション、メディアなど様々な面からデザインを見ることができます。ビジネス展開を通じてどのようにしてクライアントを得るのかを見ることができるでしょう。また、事務所という環境は他のデザイナー達との競争がみられる場所でもあります。クリエイティブディレクターや事務所から得るコーチングは、あなたのキャリアで非常に重要なものとなります。
また、戦略やプロセスを学び、様々なクライアントと仕事をすることで、とても速いスピードで上達することができますし、ポートフォリオを作る際にもとても良いです。多くの場合ペースが早く、拘束時間が長い仕事をしなければなりませんが、デザイナーとしてのあなたの経験としてとても役立つものになりますし、ポートフォリオやレジュメにも役立ちます。
短所はというと、プレッシャーが大きく、ペースが早く拘束時間が長いことが多いです。また、事務所がクライアントを失ったときはデザイナーを減らす必要がありますので、その不安があります。
インハウスについて
最後にお話しするのは、企業のデザイン部門で働くインハウスの働き方についてです。企業で働くことの長所の一つは給料が事務所やフリーランスよりもいいことです。安定していて、様々なメリットがあります。あるブランドとともに深い部分まで仕事をする期間が長くなりますので、ブランド開発やビジネス、ブランド戦略についてしっかりと学ぶことができます。
短所として挙げられるのは、事務所やフリーランスで働くのと比べると少し多様性に欠けた内容の仕事かもしれないことです。長い期間の中で1つもしくは2つのブランドと仕事をします。私の知人は、初めて仕事をした企業に3年勤めましたが、その期間でKingsford Charcoalとの仕事だけをこなしたといっていました。
そのため、ポートフォリオにはKingsford Charcoalでの作品しかなく、次の仕事を得るのに苦労したそうです。ですから、ポートフォリオは少し多様性に欠けてしまうかもしれないし、一つのブランドと長い間仕事をするのはデザイナーとしては少し退屈かもしれません。また、競争が少なく仕事の進みが遅いため、スキルアップもゆっくりとしたものになります。企業では政治的な複雑な構成があるため、それぞれの部署がどのように協力しているのかが複雑なこともあります。さらに、インハウスデザイナーは外部デザイン事務所や外部の契約デザイナーより価値が低いとみなされることもあります。理由はわかりませんが、私の経験からしても、インハウス企業では内側の人間よりも外部の人間に価値を見出すようです。
これらが、グラフィックデザイナーやクリエイティブプロフェッショナルが選ぶことのできる3つのキャリアの道でした。覚えておくべきことは、完璧な道は一つもないということです。そして、永遠に変わらないものも一つもありません。一つの道を試してみて、うまくいかなかったり自分に合っていないと感じたら、他の道も試してみましょう。
これら3つの道を経験することは自分のキャリアにとって非常に良いことです。例えばデザイン事務所で働く際には、企業での経験がある人は好まれますし、逆に企業で働く際にはデザイン事務所での経験が好まれます。ですから、キャリアの道を変えたり色々試してみるのは悪いことではありません。さらに、ポートフォリオを作る際に様々な企業やデザイン事務所で経験した様々なカテゴリーの作品を入れることができます。
いろいろなデザインをすることも大事ですが、同時にデザイン戦略やデザインのビジネスについても学んでください。学ぶことも創ることもやめないでください。
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Created by Philip VanDusen
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