1.はじめに
皆さん、初めまして。私は弁護士の河本と申します。
今回から、このブログを閲覧されている皆さん、特にデザイナーの方々向けに、知的財産権とはどのような権利なのか、また皆さんがお仕事をする上で知的財産権のどのようなことに気をつければ良いのかといったお話をさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願い致します。
さて、皆さんは、知的財産権というものをご存知ですか。知的財産権とは、無体物に対して発生する権利で、知的財産権を有する方は様々な行為を行えるようになります。
そして、このブログを閲覧している方は「ロゴ」「デザイン」といった分野にご興味があるかと思いますが、「ロゴ」「デザイン」にも知的財産権が発生することがあります。
そのなかでも、今回は、「ロゴ」に注目して、知的財産権のなかでも問題となりうる商標権、著作権について触れたいと思います。
2.著作権、商標権って何なの?
著作権とは
まず、著作権とは、自分の考えや発想を表現した作品に生じる権利です。典型的には、小説や音楽、美術品や建築物に生じます。
商標権とは
また、商標権とは、自社商品と他社商品とを区別するための文字などに与えられる権利です。
さて、この著作権や商標権ですが、「どうやって使うの?」「持ってても意味あるの?」と思われるかもしれません。こういった疑問に対しては「あります!」とお答えします。
具体的例として、たとえば皆さんが苦労して生み出した「ロゴ」を他人が使いたい!と考えたとき、そのロゴに商標権などの知的財産権が発生していると、その他人は勝手にロゴを使えなくなり、「ロゴ」を生み出した人に使用料を支払って使うことになります。
つまり、知的財産権には財産的価値があるのです。
3.知的財産権ってどうやって出来上がるの?
では、知的財産権は「ロゴ」を作成しただけで発生するのか。これに対する回答は、Yesであり、Noでもあります。それは、商標権は一定の手続きを踏まなければ発生しないのに対し、著作権は作品を生み出した時点で発生するからです。
そう言われると、皆さんは次のように思うかもしれません。「自分が生み出したロゴにも著作権が発生するんだ!」「面倒な手続きをしなくていい分、著作権の方が便利じゃん!」と。しかし、そうは問屋が卸しません。
「ロゴ」に対する著作権は発生しにくいのです。
4.「ロゴ」に著作権は発生しにくい!?
ここで有名な判例を紹介します。「Asahiロゴマーク事件」(最高裁判所平成10年6月25日判決)です。詳細は割愛しますが、この事件では文字によって構成されたロゴには創作性がなく、そのため問題となったロゴは著作物ではないとして、著作権は発生しないという判断が下されました。
Savvapanf Photo © – stock.adobe.com / アサヒビールの文字(ロゴ)
ですので、もし皆さんが作成された「ロゴ」が文字のみによって構成されている場合、著作権は認められにくい可能性があります。
一方、商標権に創作性は必ずしも必要ありません。オリジナリティと他社との識別性があれば、原則として商標権発生のための手続きを行うことができます。
5.「ロゴ」と商標権 ~大事な「ロゴ」は商標登録しよう~
ですので、苦労して「ロゴ」を生み出された方、その「ロゴ」を「他人に真似されたくない!」「財産的価値を守りたい!」のであれば、商標登録することをお勧めします(登録手続きは別コラムを執筆されている加藤弁理士の専門分野ですので、気になる方は加藤弁理士まで個別にお問い合わせ下さい)
繰り返しになりますが、皆さんが生み出す「ロゴ」や「デザイン」には価値があります。その価値をしっかりと守って自分の頑張りを正当に評価してもらうには、知的財産権を意識しましょう。
なお、次回は似ている「ロゴ」や「デザイン」の問題を取り上げます。他人の「ロゴ」や「デザイン」が自分のものと似ている場合、そこに潜むリスクについてお伝えします。
※コラムは執筆時の法令等に則って書いています。※法令等の適用は個別の事情により異なる場合があります。本コラム記事を、当事務所に相談なく判断材料として使用し、損害を受けられたとしても一切責任は負いかねますので、あらかじめご了承ください。
<プロフィール> 河本和寛(弁護士)
1989年生まれ。金沢大学を3年で卒業後、名古屋大学法科大学院に進学し、名古屋の地で弁護士となる。専門は企業法務、知的財産権及び交通事故紛争。また、弁護士1年目から全国各地の企業相手に講師として適正取引推進のための法律普及業務を行っている。
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