1.はじめに
皆さん、こんにちは。弁護士の河本です。
皆さん、こんにちは。弁護士の河本です。今回は、前回までと切り口を変えまして、民法という法律について、特にデザイナーの皆さんに関係のある部分を解説したいと思います。
2.民法って何?
さて、デザイナーの皆さんは著作権法や商標法は何度か耳にしたことがあるかと思いますが、民法という法律をご存知でしょうか。これは、一言でいうと、「民(たみ)」の「法」、つまり私達に関する基本的なことを定めた法律なのです。
そして、私達のなかには、当然このコラムを執筆している私も含まれますし、デザイナーの皆さんも含まれます。つまり、皆さんにも関係のある法律なのです。
3.民法の大改正
この民法、100年以上大きく変わることはありませんでしたが、今年の4月1日から大きく改正された形で適用されています。この話を聞いて皆さんはどう思いますか?
「弁護士じゃないし、法律の改正なんてイチイチ気にしていられないよ!」と思いませんか?
私も今の仕事をしていなければ、たぶん皆さんと同じ気持ちでしょう(笑) ですが今回の改正にはデザイナーの皆さんが知っておくべき部分がありますので、以下ではその部分に絞って解説していきたいと思います。
4.契約不適合責任
古い民法には、瑕疵担保責任というものがありました。簡単に説明すると、委託を受けて制作し、納品したデザインにミスがあったとき、相手が皆さんに対して「ミスを直せ!」「ミスの分のお金払え!」という要求を言える権利です。
しかし、民法改正によって、この瑕疵担保責任が【契約不適合責任】というものに変更されました。「何が違うの?」と思うでしょう。これ、けっこう大きな違いなんです。
まず、契約不適合責任とは「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」に、委託者が受託者に対して「目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完」「不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる」権利です。要するに、納品したものが契約の内容とズレているときに、デザイナーの皆さんがやり直しや代金減額を請求されることになります。
そして、上の権利のポイントは「契約の内容に適合しない」ことです。つまり、どのような契約内容かによって皆さんが責任を負うかが変わってくるわけです。
具体例を考えてみましょう。
デザイナーの皆さんが取引先から「顔が丸くて手足が長いキャラクターを作って欲しい。」と言われたとします。この場合、出来上がったキャラクターの顔が星型であれば、これは契約内容とズレていますので、皆さんは契約不適合責任を負うことはイメージし易いでしょう。
では、出来上がったキャラクターの手足が長さ3㎝だとして、皆さんは「十分長い手足である。」と考えていましたが、取引先が長い手足として考えていたのは5㎝以上のものだったとします。この場合、契約内容に適合しているのでしょうか。何となく、紛争の火種を感じますよね。
5.伝えたいこと
とはいえ、デザインというものの性質上、事細かく仕様を特定できないことは仕方ないでしょう。大切なのは、契約不適合責任を出来る限り追求されなくする、つまりリスクを減らすために、「出来る限り契約の目的や内容を詳細に特定すること」です。この特定が甘いと力の強い相手企業から「契約と違うじゃん!」と言われ、やむなく従わざるを得ないことになりかねません。逆に、しっかり特定ができていれば、そのような心配はなくなるわけです。
そして、このような特定は通常、契約書によって為されます。つまり、今後は今まで以上に契約書の取り交わしが重要になってきます。とはいえ、場合によっては契約書を取り交わさないこともあるでしょう。そのような場合でも、LINEやメール、電話でのやりとりで出来る限り内容を特定し、記録として残しておくべきでしょう。
※コラムは執筆時の法令等に則って書いています。※法令等の適用は個別の事情により異なる場合があります。本コラム記事を、当事務所に相談なく判断材料として使用し、損害を受けられたとしても一切責任は負いかねますので、あらかじめご了承ください。
<プロフィール> 河本和寛(弁護士)
1989年生まれ。金沢大学を3年で卒業後、名古屋大学法科大学院に進学し、名古屋の地で弁護士となる。専門は企業法務、知的財産権及び交通事故紛争。また、弁護士1年目から全国各地の企業相手に講師として適正取引推進のための法律普及業務を行っている。
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