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生成AIについて

デザイナーの「専門性」は終わるのか?生成AIを触って見えてきたこと。

「AIの進化がすごい」

最近、SNSでも仕事の雑談でも、この言葉を耳にしない日はないかもしれません。新しいツールが次々と生まれ、昨日まで不可能だったことが、いとも簡単に実現されていく。そのスピード感に、多くの人が漠然とした期待や、あるいは少しの不安を感じているのではないでしょうか。

僕もその一人です。ただ、その感覚は「すごいな」という他人事の感想とは少し違います。

まるで、小雨だと思って油断していたら、ほんの数秒で景色が一変し、気づけば膝まで水に浸かっていたような。そんな、自分のいる場所そのものが揺らぎ始めるような、静かな凄みを感じています。

 

まさか自分が、プログラミングをするなんて

デザイナーである僕にとって、プログラミングやコーディングは、正直なところ専門外の領域でした。もちろん知識として概要は理解しているつもりですが、自分で手を動かして何かを作るというのは、また別の話。そこには分厚い「専門性」の壁があると思っていました。

ところが最近、AIの力を借りることで、その壁をひょいと乗り越えられてしまったのです。

例えば、Webサイトのちょっとしたカスタマイズや、業務を効率化するための簡単なツール開発。「こういうことがしたい」という曖昧なイメージをAIに投げかけると、まるで優秀な翻訳者が間に入ってくれるかのように、具体的なコードを返してくれます。エラーが出ても、その内容を伝えれば解決策を教えてくれる。

これまで何時間も専門書と格闘したり、専門家にお願いしたりするしかなかったことが、自分の手元で、しかも驚くほど短時間で完結していく。これは衝撃的な体験でした。

新しいスキルを身につけたというより、新しい「能力」を手に入れた感覚。デザイナーとしての活動の幅が、少し広がったような可能性を感じました。

 

鏡の向こう側で起きていること

生成AIについて

しかし、その高揚感と同時に、背筋が少し冷たくなるような感覚を覚えたのも事実です。

なぜなら、僕がAIの助けを借りて「専門外」の領域に足を踏み入れられたということは、その逆もまた然りだからです。

つまり、これまでデザインを専門としてこなかった誰かが、同じようにAIを翻訳者として、デザインの領域に簡単に入ってこられるかもしれない。僕がコーディングの壁を乗り越えたように、マーケターやエンジニア、あるいは全くの異業種の人が、デザインの壁をいとも簡単に乗り越えてくる未来。

単に「ライバルが増える」という単純な話ではありません。僕たちが時間と経験を積み重ねて培ってきた「専門性」というものの価値が、根底から変わってしまう可能性を示唆しています。

クライアントが求めるものも変わるでしょう。「このくらいのデザインなら、AIで十分だよね」と言われる日は、そう遠くないかもしれません。僕たちが拠り所にしてきたスキルや知識が、当たり前のものになっていく。

膝下まで浸かった水は、もう決して引くことはない。僕たちは、これまでとは全く違うルールで戦うことになる新しいフィールドに、すでに立たされているのかもしれません。

不確実な時代の「アイドリング」

「じゃあ、どうすればいいのか?」

そう問われると、正直、僕も明確な答えを持っているわけではありません。生成AIには、権利関係や情報の正確性など、まだグレーな部分が多く、特に商用利用には慎重になるべき側面もあります。世の中がこの先どう動いていくのか、誰にも正確な予測はできません。

ただ、一つだけ確信していることがあります。それは「思考停止が一番危ない」ということです。

よく分からないから、怖いからといって、この大きな変化に蓋をしてしまう。それこそが、気づいた時には完全に飲み込まれてしまう、一番のリスクだと感じます。

だから僕は、今すぐAIを完璧に使いこなそうとするのではなく、常に「アイドリング状態」にしておくことを意識しています。いつでも走り出せるように、エンジンだけは温めておく。そんなイメージです。

具体的には、大げさなことではありません。

  • 自分の業務プロセスをAIに説明させ、その要約が的確かを検証し、AIの「理解力」の現在地を測る。
  • 専門分野のニュースについてAIと対話し、その情報の「鮮度」や「偏り」を観察する。

大切なのは、完璧な結果を求めることではなく、触れ続けることでAIの「クセ」や「可能性」、そして「限界」を肌感覚で理解しておくこと。実際に触れていないと、日々流れてくるニュースもどこか他人事で、自分の中に知見として蓄積されていきません。

 

飲み込まれるか、乗りこなすか

AIという波は、もうそこまで来ています。もしかしたら、もうとっくに僕たちの足元を洗い始めているのかもしれません。この巨大なうねりを前に、僕たちにできることは何でしょうか。

デザイナーの本質的な価値は、単に美しい形を作ることだけではない。課題を発見し、コンセプトを練り上げ、人の心に寄り添うことだ――。そんな風に言われることもあります。それはきっと正しいでしょう。

でも、その「本質的な価値」さえも、AIとの関わり方次第で形を変えていくはずです。

飲み込まれることを恐れて立ちすくむのか。それとも、波を乗りこなす側に回るのか。

その分水嶺は、今この瞬間の、テクノロジーとの向き合い方にかかっている気がしてなりません。明確な答えが見えない今だからこそ、好奇心を忘れずに、まずはエンジンをかけてみる。僕たちデザイナーにとって、そんな「アイドリング」の時間が、これまで以上に重要になっています。

 

AI、今何ができるどうこうよりも、「え?先週そんなことできなかったよね?」の感じに凄みを覚えます。小雨か〜すぐ止むでしょ…と思った5秒後に膝下まで水に浸かってたみたいな。ヤバいと思うタイミングすら無く飲み込まれるかもしれない。だから、とりあえず触ってみて、情報を取り入れています。

X (Twitter) – Mar 17, 2023

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グラフィックデザインを中心とした小さなデザイン事務所を経営しています。スタッフや外部のデザイナーさん・ライターさんに助けられながら、コツコツと地道に仕事をする日々が気に入っています。パッケージメーカーのデザイナーとして新卒入社→美容系のベンチャーに転職→家庭用品メーカーに転職...という流れを経て、その後独立しました。フリーランスデザイナーとして、10年以上の経験から学んだことや雑記をブログにしています。情報発信が趣味に近く、それが興じてPhotoshop関連の本を出版したり、noteを執筆したりしています。