
強いから独立したんじゃない。「弱さ」を受け入れて見つけた、自分らしい働き方
キャリアについて考えるとき、多くの人は自分の「強み」をどう活かすか、どう伸ばしていくかに焦点を当てるかもしれません。「〇〇が得意だから、この道に進もう」「このスキルを磨いて、専門家になろう」といった具合に。
もちろん、それはとても大切なことです。でも、僕の場合は少し違いました。独立して自分の力で仕事をするようになったのは、何か特別な「強み」があったからではありません。むしろ、自分の「弱さ」と向き合った結果、たどり着いた道でした。
もし今、会社員デザイナーとして働き続けていたら、きっとキャリアに悩んでいたと思います。今回は、僕がなぜそう思うのか、そして「弱さ」だと思っていたことが、どうやって自分らしい働き方に繋がったのかをお話しさせてください。
会社員時代に感じていた「ズレ」
僕はこれまで、デザイナーとして3つの会社を経験しました。それぞれの場所で多くのことを学びましたが、同時に漠然とした「ズレ」のようなものも感じていました。
まず、体力的に自分がそこまでタフではないこと。ハードワークが続いたり、締め切り間際のプレッシャーが極度に高まったりすると、どうしてもパフォーマンスが落ちてしまう。周りのエネルギッシュな同僚たちを見ていると、「自分はこのペースで長く続けられるだろうか」と不安になることもありました。
それに、僕には強いリーダーシップがあるわけでもありません。チームをぐいぐい引っ張っていくタイプではなく、どちらかというとサポート役や、調整役の方がしっくりくる。組織の中でキャリアアップしていくには、マネジメント能力やリーダーシップが求められる場面も多いですが、正直、そこに自分の適性があるとは思えませんでした。
そして何より、デザイナーとしてのスキルです。グラフィックデザインを軸にしてきましたが、「これだけは誰にも負けない」と胸を張れるような、突き抜けた専門スキルがあるわけではなかった。もちろん、それぞれの会社で求められる業務はこなしてきましたし、デザインそのものは好きです。でも、「スペシャリスト」と呼べるほどの深掘りができていない、という感覚が常にありました。
企業の求める「専門性」と僕の「浅く広い」知識・スキル
転職活動をする中で、企業が求める人物像と自分のスキルセットの間に、さらにギャップを感じるようになりました。
多くの企業、特にデザイン職の募集では、「グラフィックデザインのスペシャリスト」「UI/UXデザインの専門家」といった形で、特定の分野に特化したスキルや経験が重視される傾向があります。それは当然のことだと思います。企業としては、その分野で即戦力となる人材を採用したいわけですから。
一方、僕の経験は、良く言えば「多様」、悪く言えば「器用貧乏」でした。グラフィックデザインはもちろん、ある会社ではパッケージのCAD設計に携わり、また別の会社では印刷現場とのやり取りで専門知識を身につけました。さらに、デザイナーでありながら広報のような活動に関わったこともあります。他にも細々とした経験がたくさん。
一つ一つのスキルは、その道のプロフェッショナルには到底及びません。パッケージ設計の専門家には敵わないし、印刷のプロには知識量で負ける。広報だって、専門でやっている人には敵いません。
もし僕が企業の採用担当者だったら、きっとこう思うでしょう。「結局、この人は何が一番得意なんだろう?」「なんだか中途半端な人だな」と。専門職としての採用を考えた場合、僕の「浅く広い」スキルセットは、なかなか評価されにくいものだったのかもしれません。
「弱さ」だと思っていたものが「武器」に変わる場所
会社員として働く中で感じていた体力的な不安、リーダーシップへの苦手意識、そして「中途半端」に見えるスキルセット。これらは、僕にとって一種の「弱さ」であり、キャリアを考える上での悩みでした。
でも、独立という働き方を選んだことで、これらの要素が思わぬ形で活きてくることになります。
例えば、広報活動の経験。当時はデザイナーなのに畑違いな仕事をしていると感じることもありましたが、この経験があったからこそ、文章を書くことへの抵抗がなくなり、自分の考えや活動を発信する力が身につきました。今、こうしてブログを書いたり、SNSで発信したりできるのは、間違いなくあの経験のおかげです。フリーランスにとって情報発信は何かと重要なので、これは大きな助けになっています。
パッケージのCAD設計や印刷現場の知識も、今の仕事に直結しています。クライアントからパッケージデザインの依頼を受けたとき、単に見た目のデザインだけでなく、設計上の注意点や、印刷で起こりうるトラブルを予見して、事前に回避策を提案できます。データ作成においても、後工程を理解しているからこそ、スムーズでミスのない進行が可能です。これは、クライアントからの信頼に繋がりますし、結果的に仕事の質を高めることにも貢献しています。
つまり、会社員時代には「浅く広い」「中途半端」だと感じていたスキルセットが、独立した途端、複数の領域を横断し、プロジェクト全体を俯瞰して見ることができる「強み」に変わったのです。
独立後の仕事は、必ずしも一つの専門分野だけで完結するわけではありません。クライアントの課題を解決するために、デザインだけでなく、その周辺知識やコミュニケーション能力、情報発信力など、様々なスキルを組み合わせることが求められる場面がたくさんあります。
特定の分野を深く掘り下げるスペシャリストももちろん素晴らしいですが、僕のように複数の分野にまたがる知識や経験を持っていることで、点と点を繋いで新しい価値を生み出したり、プロジェクト全体をスムーズに進めたりする役割を担うことができる。僕のスキルセットは、独立という働き方の中で、ようやく輝ける場所を見つけたのかもしれません。
体力的な不安やリーダーシップへの苦手意識も、独立したことでマイナス面ばかりではなくなりました。自分のペースで仕事を進められますし、無理な働き方を避けることができます。リーダーとして組織を引っ張る必要もなく、クライアントや協力してくれる方々と、対等なパートナーとして良好な関係を築くことに集中できます。
自分に合った働き方を見つけるということ
僕が独立したのは、「強かった」からではありません。むしろ、会社という組織の中で自分の「弱さ」を感じ、「このままでは難しいかもしれない」と思ったからです。そして、その「弱さ」だと思っていた部分が、実は独立という働き方においては活かせる要素だった、というだけのことです。
もし、あなたが今、自分のキャリアに悩んでいたり、自分のスキルセットに自信が持てなかったりするなら、少し視点を変えてみてほしいと思います。
「弱さ」だと感じていることは、本当に弱さでしょうか?環境や働き方を変えれば、それが活かせる場面があるかもしれません。
「中途半端」だと感じているスキルセットは、組み合わせることでユニークな価値を発揮する可能性を秘めているかもしれません。
もちろん、専門性をとことん追求する道も素晴らしいです。でも、キャリアの選択肢は一つではありません。大切なのは、周りの価値観や「こうあるべき」という思い込みに縛られず、自分自身の特性や経験を冷静に見つめ、自分に合った働き方や輝ける場所を見つけることではないでしょうか。
僕の経験が、少しでもヒントになれば嬉しいです。
僕は強いから独立したのではなく、弱いから独立しました。もし会社員デザイナーのままなら、今キャリアに悩んでいたと思う。
X (Twitter) – Mar 29, 2025