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忙しいフリーランス

フリーランスのデザイナー。なんだか自由で、好きな場所で好きな時間に、クリエイティブな仕事だけに没頭している…そんなイメージを持っている人もいるかもしれません。僕もかつては、そんな働き方に淡い憧れを抱いていました。

でも、実際に独立という道を歩んでみて気づいたのは、なんか想像していた以上に「デザイン以外の仕事」が多いな…ということです。

もしあなたが「デザインにだけ集中したいから、独立したい」と考えているなら、少しだけ立ち止まってこの記事を読んでみてください。会社を辞める前に知っておきたかった、フリーランスのリアルな一面についてお話しします。

 

デザインは「着手するまで」が、想像以上に長い

クライアントから「こんなデザインをお願いしたいのですが…」と相談が来たとき、すぐにIllustratorやFigmaを開けるわけではありません。実は、ここからが長い道のりの始まりです。

まずは、クライアントが本当に実現したいことは何か、どんな課題を抱えているのかを丁寧にヒアリングします。それをもとに、デザインの方向性を考え、スコープ(業務範囲)を定義し、見積もりを作成する。時には、いくつかのパターンの提案資料を用意する必要があるかもしれません。

この一連の作業、会社員時代は営業担当者やディレクターが主導してくれていました。デザイナーは、ある程度方向性が固まった段階で「じゃあ、よろしく!」とバトンを受け取ることが多かったように思います。

しかし、フリーランスはこれを全部一人でこなします。

一番精神的にこたえるのは、まだ受注が決まっていない段階で、かなりの時間とエネルギーを投下しなければならないことです。数日かけて提案資料や見積もりを作り込んでも、最終的に「今回は見送ります」という一言で終わってしまうことも少なくありません。もちろん、それはビジネスなので仕方がないこと。頭では分かっていても、やはり気持ちが沈む瞬間はあります。

この「デザインに着手するまで」のコミュニケーションや調整業務が、仕事全体の大きな割合を占めること。これは独立前に、もっとはっきりとイメージしておくべきだったなと感じています。

 

細切れになるクリエイティブ時間というストレス

細切れになるクリエイティブ時間

ようやく受注が決まり、いざデザイン作業へ。集中して「ゾーン」に入りたい…そう思った矢先に、別のクライアントから請求書に関する問い合わせのメールが届く。あわてて会計ソフトを開いて確認し、返信を書く。

さあ、気を取り直して作業に戻ろう。…すると今度は、新規の案件相談のメッセージが。すぐに対応しないとチャンスを逃してしまうかもしれない。またしても作業を中断し、打ち合わせの日程調整を始める。

こんな風に、フリーランスのクリエイティブな時間は、常に細かな雑務によって分断されがちです。一つひとつは小さなことかもしれません。でも、集中力の糸がプツプツと切られてしまう感覚は、想像以上にストレスフルです。

僕たちデザイナーにとって、集中できる環境は何より大切。アイデアを深め、細部にこだわり、クオリティを突き詰めるには、没頭する時間が必要です。その時間が細切れにされると、どうしても思考が浅くなり、本来発揮できるはずのパフォーマンスが出しにくくなってしまいます。

「後でまとめてやろう」と思っていても、クライアントを待たせるわけにはいかない連絡も多く、結局は合間合間に対応することになりがち。このクリエイティブと雑務のスイッチングコストが、日々の業務に重くのしかかってくるのです。

会社という「見えないセーフティネット」のありがたさ

独立して初めて、会社員時代がいかに恵まれていたかを痛感しました。

例えば、お金や経費の処理で困ったとき。経理部に聞けば、すぐに正しい手順を教えてくれました。クライアントとの契約内容で不安な点があれば、法務部がリスクをチェックしてくれました。パソコンの調子が悪ければ、情報システム部の担当者が駆けつけてくれました。そして何より、営業部のメンバーが必死に仕事を取ってきてくれるからこそ、僕たちはデザインに集中できました。

当時は当たり前だと思っていた、その環境。それは、各分野のプロフェッショナルたちが作り上げてくれた、巨大で「見えないセーフティネット」でした。何か困ったことが起きても、そのボールを然るべき部署に「丸投げ」できた。その安心感は、計り知れない価値があったと思います。

フリーランスは、これら全ての役割を一人で担う「代表」です。デザイナーであり、営業であり、経理であり、総務でもある。この現実を理解し、すべての責任を自分で負う覚悟が求められます。

 

「デザインへの集中」を本気で目指すなら

アウトソーシング

ここまで読むと、「じゃあ、独立したらデザインに集中できないの?」と思われるかもしれません。

結論から言うと、「デザインにだけ集中したい」という動機で独立するのは、少し矛盾をはらんでいる可能性があります。むしろ、純粋にクリエイティブな作業に没頭したいのであれば、専門部署のサポートが手厚い会社に所属している方が、その願いは叶いやすいのかもしれません。

もし、フリーランスとして「デザインに集中できる環境」を本気で手に入れたいなら、もう一段階上の目標設定が必要です。それは、自分がやらなくてもいい雑務を、他の誰かにお願いできるだけの事業規模に育てること。

例えば、税理士に経理や確定申告を丸ごとお願いする。アシスタントを雇って、事務作業やスケジュール管理を任せる。そうやって、自分が本当にやるべきクリエイティブな仕事に時間を投下できる体制を、自ら作り上げるのです。

もちろん、そのためには人を雇えるだけの売上を安定して稼がなければなりません。また、人に仕事を任せるには、的確な指示を出し、進捗を管理するディレクション能力も必要になります。それはそれで、また別のスキルと大変さが伴います。

フリーランスとしてデザインに集中するためには、一度デザイン以外の経営やマネジメントといった領域にも深くコミットする必要がある、ということなのかもしれません。

 

独立したら雑用は増えると思います。(アウトソースするにしても、指示はしないといけないし)デザインにだけ集中したいなら、案外会社に勤めている方が良い気もします。

X (Twitter) – Feb 7, 2022

この記事は過去の自分のX(Twitter)のポストを元に、編集しています。

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トミナガハルキ

グラフィックデザイナー/AMIX 代表。独学でデザインを学び、パッケージメーカー→美容系ベンチャー→家庭用品メーカーでのデザイン・広報運営を経て独立。現在は小さな事務所を拠点にASOBOAD等のサービスを運営し、ロゴ・パッケージ・広告物を中心に制作しています。著書『#ズボラPhotoshop 知識いらずの絶品3分デザイン』は各カテゴリでベストセラーを獲得。2020年Adobe Creative Residency選出。ブログでは、10年以上の実務から学んだことや働き方のヒントを等身大の視点で発信しています。