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海外のデザインについて

「海外のデザインはお洒落」は本当? 現地で感じたリアルと、日本のデザインへの新たな視点

「海外のデザインって、なんだかお洒落だよね」

カフェでの会話やSNSのタイムラインで、そんな言葉を耳にすることがあります。確かに、ネットや雑誌で見かける海外のポスター、パッケージ、Webサイトなどは、洗練されていて、色使いやタイポグラフィが大胆で、なんだか「カッコいい」と感じるものが多いかもしれません。僕自身も、海外のデザインに刺激を受けることは少なくありません。

でも、ふと立ち止まって考えてみるんです。「海外のデザインは全部お洒落で、日本のデザインはそれに比べて…」という考え方は、果たして本当なのだろうか?と。

 

キラキラした部分だけを見ていないか?

僕たちが普段目にする「海外のデザイン」って、実はかなりフィルターがかかっている可能性があります。

考えてみてください。デザイン系のブログやまとめサイト、SNSでシェアされるのって、その中でも特に優れたものや、話題性のあるものが中心ですよね。言ってみれば、デザインの「ハイライト集」を見ているような状態です。旅行先で撮った写真だって、一番きれいに撮れたものや、思い出深い場所を選んで人に見せますよね。それと同じで、僕たちは無意識のうちに、海外デザインの良い部分、キラキラした部分ばかりを浴びているのかもしれません。

もちろん、素晴らしいデザイン、革新的なデザインが海外にたくさんあるのは事実です。学ぶべき点も多い。でも、それが「全て」ではないはずです。

現地で感じた「日常」のデザイン

以前、少しだけアメリカの街を歩く機会がありました。初めて訪れた国のデザインはもちろん刺激的でしたが、それ以上に僕の心に残ったのは、街中に溢れる「日常のデザイン」でした。

例えば、スーパーマーケットの棚に並ぶ商品のパッケージ。もちろん、おっ!と目を引くような素敵なデザインもあります。でも、中には「あれ?これは…」と首を傾げたくなるような、ちょっと雑というか、お世辞にも洗練されているとは言えないデザインも、思った以上にたくさん目にするんです。

街角で見かけるイベントの告知フライヤー、地元の商店の小さな看板、公共施設の案内表示…。そういった、いわゆる「デザインの最前線」ではない場所のデザインは、日本と同じように、玉石混交。むしろ、「日本のあのデザインの方が丁寧だな」と感じることさえありました。

これは決して、海外のデザインを貶めたいわけではありません。そうではなくて、「海外だから全てがお洒落」という単純なイメージは、現地に行ってみると意外とそうでもない、というリアルな感覚を覚えた、ということです。

 

「普通」を知ることで見えてくるもの

スーパーマーケット

この経験は、僕にとって大きな気づきになりました。

インターネット越しに見ていた「憧れの海外デザイン」は、現地の人々にとっては「日常」の一部。そして、その日常の中には、僕たちが普段日本で目にしているのと同じように、素晴らしいものもあれば、ごく普通のもの、そして時には「うーん…」と考えてしまうようなものも、当たり前に存在している。

この「当たり前」を知ることができたのは、大きな収穫でした。

それと同時に、日本に帰ってきてから、日本のデザインに対する見方も少し変わった気がします。

日本のデザインの良さを再発見する

海外の「普通」のデザインに触れたことで、これまで当たり前だと思っていた日本のデザインの良さに、改めて気づかされることが増えました。

例えば、

  • 細やかな配慮:パッケージの開けやすさ、説明書きの丁寧さ、情報の整理の仕方など、使う人のことを考えた細やかな配慮が行き届いているデザインが多いこと。(特に開けやすさなどの快適性は日本のパッケージは凄いと思う)
  • 品質感の高さ:大量生産品であっても、印刷の質や素材の選び方など、全体的な品質感が高いものが多いこと。
  • 独自の美意識:派手さはないけれど、静かで、品があり、どこかホッとするような、日本ならではの美意識が息づいているデザインがあること。

もちろん、日本のデザインにも課題はあるでしょう。もっと大胆さが必要な場面もあるでしょうし、変化を恐れずに新しい表現に挑戦していくことも大切です。

でも、「海外のデザインはお洒落なのに、日本は…」と一方的に決めつけてしまうのは、あまりにもったいない。実際にちょっとでも外の空気に触れ、日常のデザインを見て回ることで、「なるほど、こういう良さもあるのか」と海外のデザインから学ぶと同時に、「いやいや、日本のデザインもなかなかやるじゃないか!」と、自国のデザインに対する誇りや愛情のような気持ちが、自然と湧き上がってきたのでした。

 

まとめ – フラットな視点でデザインを楽しもう

「海外のデザインはお洒落」という言葉は、全体の一部を切り取ったイメージである可能性が高いです。実際に現地を訪れ、日常に溢れるデザインに触れてみると、そのイメージはもっと複雑で、リアルなものになります。

そして、その経験は、翻って日本のデザインの魅力や価値を再発見するきっかけにもなり得ます。

素晴らしいデザインは、世界中のどこにでもあります。大切なのは、「海外だから」「日本だから」という色眼鏡を外して、一つ一つのデザインとフラットに向き合うこと。そして、できれば実際に自分の目で見て、肌で感じてみることではないでしょうか。

そうすれば、きっともっと深く、もっと豊かに、デザインの世界を楽しむことができるはずです。

もし海外に行く機会があれば、有名な観光スポットだけでなく、ぜひ地元のスーパーや商店街をぶらぶら歩いてみてください。きっと、面白い発見があると思いますよ。そして、日本の街を歩くときも、ぜひ「日常のデザイン」に目を向けてみてください。意外なところに、課題や素敵なデザインが隠れているかもしれません。

 

「海外のデザインはお洒落なのに日本は〜」と言い切るのは、実際に現地を見て回ってからでも遅くないはず。ちょっと行ってみるだけでも「その辺のフライヤーとかパッケージは雑なのも割とあるな」とか感じられる。確かに素敵なデザインもある、と同時に、日本もやるじゃん!と思う気持ちも生まれる。

X (Twitter) – May 10, 2020



この記事は過去の自分のX(Twitter)のポストを元に、編集しています。

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グラフィックデザインを中心とした小さなデザイン事務所を経営しています。スタッフや外部のデザイナーさん・ライターさんに助けられながら、コツコツと地道に仕事をする日々が気に入っています。パッケージメーカーのデザイナーとして新卒入社→美容系のベンチャーに転職→家庭用品メーカーに転職...という流れを経て、その後独立しました。フリーランスデザイナーとして、10年以上の経験から学んだことや雑記をブログにしています。情報発信が趣味に近く、それが興じてPhotoshop関連の本を出版したり、noteを執筆したりしています。