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「あの仕事は上で、こっちは下?」そんな価値観、もう捨てませんか? – 多様な働き方とそれぞれの尊さ

普段、色々なデザインの仕事に関わっていると、ふとした瞬間に「これって、どっちが良い仕事なんだろう?」なんて考えてしまうことがあります。特に、同じ業界の中でも、働き方や仕事の内容が大きく違う人たちを見ると、無意識に比べてしまう自分がいることに気づきます。

でも最近、それってあまり意味がないことかもしれないな、と感じるようになりました。今日はそんな、仕事における「多様性」と、それぞれの「価値」について、僕が考えていることを少しお話しさせてください。

 

レイヤーが違えば、「正しさ」も違う

どんな職業にも、実は色々な「レイヤー(階層)」があると思いませんか?

例えば、多くの人がイメージしやすいのが「飲食業」かもしれません。一口に飲食店と言っても、星付きの高級レストランから、誰もが気軽に立ち寄れるファストフードチェーンまで、本当に様々ですよね。

高級レストランでは、厳選された食材、洗練された空間、丁寧なおもてなしが提供されます。そこには、特別な時間を過ごしたい、最高の味を体験したいというお客さんの期待があります。一方で、ファストフード店では、手軽さ、スピード、リーズナブルな価格が魅力です。忙しい合間にサッと食事を済ませたい、家族で気軽に楽しみたい、そんなニーズに応えています。

どちらが「上で」どちらが「下か」なんて、決められるでしょうか?

高級レストランのやり方をファストフード店に持ち込んでも上手くいかないでしょうし、逆もまた然りです。それぞれがターゲットとするお客さんも、提供する価値も、そして成功の基準(お店の「道理」と言ってもいいかもしれません)も全く異なります。大切なのは、それぞれが違うアプローチで、誰かの期待に応え、笑顔を生み出しているという事実です。

これは、僕がいるデザインの世界でも全く同じことが言えます。

デザインの世界にもある、多様なレイヤー

デザインと一言で言っても、その中身は本当に多岐にわたります。

  • 企業のブランドイメージを根本から作り上げるブランディングデザインもあれば、地域の小さなお店の、心温まるチラシデザインもあります。
  • 最先端の技術を駆使したウェブサイトやアプリのUI/UXデザインもあれば、限られた予算と時間の中で、情報を分かりやすく伝えるための資料デザインもあります。

求められるスキルも、かけられる時間や予算も、プロジェクトの進め方も、全く違います。最新のデザインアワードで評価されるような、斬新で洗練されたデザインだけが「良いデザイン」なのでしょうか?

僕はそうは思いません。

例えば、町の小さなパン屋さんの、手書き風の温かいチラシ。それを見た人が「あ、美味しそうだな、行ってみよう」と思ってくれたなら、それは素晴らしいデザインの役割を果たしています。たとえそれが、デザインの教科書に載るようなものではなかったとしても、です。

重要なのは、そのデザインが、誰のために、どんな目的で作られ、そしてその目的を達成できたかどうか。それぞれの「レイヤー」には、それぞれの「正しさ」や「価値基準」があるのです。

 

「優劣」ではなく「違い」として捉えることの大切さ

違い

僕たちはつい、分かりやすい基準で物事を判断しようとしてしまいます。「売上が大きい方がすごい」「有名な仕事の方が価値がある」「最新の技術を使っている方が優れている」…といったように。

もちろん、それらが一つの指標であることは間違いありません。でも、それが全てではないはずです。

ある人は、多くの人に影響を与える大きなプロジェクトにやりがいを感じるかもしれません。
またある人は、地域に根ざし、一人ひとりの顔が見える関係性の中で仕事をすることに喜びを感じるかもしれません。

革新的な表現を追求することに情熱を燃やす人もいれば、誰かの困りごとを、デザインの力で着実に解決していくことに使命感を持つ人もいます。

これらは単なる「違い」であって、そこに本来「優劣」はありません。それぞれの場所で、それぞれのやり方で、社会や誰かの役に立とうとしている。その事実は、どのレイヤーであっても等しく尊いものだと僕は思います。

 

多様なレイヤーがあるからこそ、世界は豊かになる

もし世の中のレストランが、高級店しかなかったら? あるいは、ファストフード店しかなかったら? きっと、今より不便で、つまらない世界になってしまうでしょう。

様々な選択肢があるからこそ、私たちはその時の気分や状況に合わせて、最適なものを選ぶことができます。それは、仕事の世界でも同じです。

多様な働き方、多様な価値観、多様なアプローチがあるからこそ、社会は豊かになり、様々なニーズに応えることができます。そして、異なるレイヤーで働く人たちが互いを尊重し、時には刺激し合うことで、業界全体がより活性化していくのではないでしょうか。

自分自身の「立ち位置」を知り、他者を尊重する

この考え方は、自分自身の働き方を見つめ直す上でも、とても大切だと感じています。

  • 自分は今、どのレイヤーで、誰のために、どんな価値を提供しようとしているのか?
  • そこで求められている「道理」は何なのか?
  • そして、自分とは違うレイヤーで頑張っている人たちの仕事には、どんな価値があるのか?

これを意識することで、他人と比べて落ち込んだり、逆に根拠なく優越感を抱いたりすることが少なくなりました。それよりも、自分のやるべきことに集中し、同時に、他のフィールドで活躍する人たちへのリスペクトを持てるようになった気がします。

 

まとめ – それぞれの場所で、誰かを笑顔に

今回は、仕事における「多様なレイヤー」とその価値について、僕が考えていることをお話ししました。

高級レストランも、ファストフード店も、それぞれのやり方で人々のお腹と心を満たしています。デザインの世界でも、大きなプロジェクトも、小さな町の仕事も、それぞれの形で誰かの役に立っています。

「どっちが上か、下か」なんていう不毛な比較はやめて、それぞれの「違い」を認め、尊重し合うこと。そして、自分自身がどの場所で、どんな風に貢献したいのかを見つめること。

それが、これからの時代をより良く、そして自分自身も心地よく働いていくために、大切な視点なのかもしれません。

この記事が、あなたの働き方や、周りの人との関わり方について、何か少しでも考えるきっかけになれば嬉しいです。

 

同じ職業でも色んなレイヤーに分かれていて、それぞれに仕事の道理があるようです。別のレイヤーに行けば違った道理がある。 飲食でも高級店から格安チェーン店まで様々ですが、優劣なんてナンセンスで、違ったアプローチで誰かを笑顔にしている。 様々なレイヤーが必要であり、大切なんだと思います。

X (Twitter) – Nov 27, 2018



この記事は過去の自分のX(Twitter)のポストを元に、編集しています。

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グラフィックデザインを中心とした小さなデザイン事務所を経営しています。スタッフや外部のデザイナーさん・ライターさんに助けられながら、コツコツと地道に仕事をする日々が気に入っています。パッケージメーカーのデザイナーとして新卒入社→美容系のベンチャーに転職→家庭用品メーカーに転職...という流れを経て、その後独立しました。フリーランスデザイナーとして、10年以上の経験から学んだことや雑記をブログにしています。情報発信が趣味に近く、それが興じてPhotoshop関連の本を出版したり、noteを執筆したりしています。