外国人の集客を意識した剣舞パフォーマンスイベントの、和風なチラシデザインです。
西洋のイメージを「動」とするなら、日本のイメージは「静」と言えるかもしれません。ソードダンスという荒々しさすら感じるイベントタイトルですが、チラシデザインは金屏風を彷彿とさせるような落ち着いた印象に仕上げています。海外の人が期待するのは、アグレッシブなパフォーマンスではなく、どこかに日本の美意識を感じるような舞ではないかと考え、デザインを制作しました。
剣の舞のエレガントなビジュアル
このチラシは、日本の武士の精神を象徴する剣舞パフォーマンスを、洗練されたシルエットで表現しています。金色の背景に映える2人の武士の影は、伝統的な日本の美学を感じさせ、見る者に強烈な印象を残します。舞い散る花びらのディテールが動きの美しさを強調し、古の戦場を思い起こさせる雰囲気を醸し出しています。
国際的なアピール – 外国人観光客を招待するデザイン
チラシには、英語でのクリアな情報提供がされており、国際的な観光客にもアクセスしやすくなっています。開演時間や会場の住所が簡潔に記載され、非日本語話者にも優しく、イベントへの参加を容易にします。無料入場という情報は、訪日外国人にとって特に歓迎される特典であり、多くの観客を惹きつけることでしょう。
デザイナーの振り返り
■ 赤・金・黒の組み合わせは非常に相性がよく、平面的なチラシでありながら、インパクトのあるデザインに仕上りました。
■ 文字情報が少なめのため、ビジュアルが重要になる(=自由度が高くなる)チラシです。剣舞の緊張感が想像できるように制作しています。
■ シルエットを捉えただけでなく、桜の花びらが散る演出を加えることで、”一瞬”を切り取ったような印象を与えることが出来ます。
観光客が行きたい!と思わずにいられないチラシ制作例
引きつけるビジュアルの重要性
チラシデザインは、何よりもまず、人の関心を引くものでなければ意味がありません。何のイベントなのかを判るようにデザインされなければなりません。大きく文字を並べるのは、ひとつの方法ですが、剣舞パフォーマンスとなると話は少し違ってきます。今回の剣舞パフォーマンスは、主に外国人に向けたイベントです。外国からの観光客の関心を引くには、文字は勿論ですが、よりインパクトのある絵柄が重要になります。
日本の伝統文化をビジュアルで表現
外国人が、日本という国に対して持つイメージをビジュアル化することにより、印象に残るものを作成しなければなりません。動と静が同時に存在し、瞬時にそれが入れ替わる武芸の世界の神秘的な部分を、デザインに反映させることになります。
日本の象徴を取り入れて
制作においては、金色をベースとして使っています。金屏風のイメージは日本文化の1つの象徴でもあるからです。日本的なイメージと言えば、赤い太陽(日の丸)も重要です。太陽を赤く表現したのは日本人くらいだと言われるほど、独特の表現なのです。そしてまた、外国人にとっては、日本は極東の地でもあります。太陽に一番近い国と言ってもいいかもしれません。そのイメージも、ここには込められています。
散る美しさ(儚さ)も日本の文化を象徴するもの
日本の花が持つ特別な美しさ
美しく咲く花もまた日本らしさを表します。梅は、春の到来を告げる花であり、そのかぐわしい香りと凛としたさまが美しいものです。舞い散る桜には、華やかさと散りゆく寂しさがあります。そこには、剣の世界が持つ美しさと儚さに似たものが存在し、剣舞パフォーマンスのより強固なイメージを刻み付けます。
言葉とイメージで描く世界
チラシのデザインは、文字を並べて絵を描けばそれでいいというものではありません。いくつもの言葉を、一枚の表現として伝えるものです。いわば、そこにはひとつの世界があり、その世界に人々を誘うためのものです。別の世界の窓口となるべきものなのです。そうすることで、人々の関心を惹きつけることが出来ると言えます。
制作フライヤー・チラシデザイン
に対する感想
VOICE ※第三者による感想です
デザインは日本的ですが、レイアウトは海外の方への配慮を感じますね。
英語表記のレイアウトの利点は、やはり左揃えのレイアウトの原則に則ったデザインや構成をとりやすいこところにあります。日本語はWEBでも近代の広告デザインにおいても、左から記述することに慣れていますが、本来は縦書きに適しているのが平仮名の特徴で、文字も西洋の書体とは違って1字で意味を表すアイコンの役割に近いものがあるんですね。
このチラシでも、非常に大胆な書体を採用できるのは、筆記体というロジック、つまりは左から書き始める書体である本質が利用できるからです。西洋でも英語圏の書体は、筆記スタイルになると必ず右に倒れた恰好となるため、右の空白を多くとっても、デザインとして全体を見ることができます。このチラシデザインでは、文字の要素は極端に絞り込んでありますが、「サムライ」というキーワードと、ダンスといった共通の文化を盛り込んでいるため、外国人向けには充分な宣伝効果を期待できます。日の丸と武家日本の貴族などを象徴とした、海外がイメージする黄金と、ヨーロッパでは愛好家も多い錦鯉と、武士のイラストなど、伝統を全面に推したイメージで、このチラシ広告は完結しているといっても良いでしょう。
海外向けの広告戦略には、既存の諸外国が持つイメージに近い印象から惹きつけ、まずは広告による関心を呼ぶのが先決です。文化の説明、イベントの説明は英語で詳しく説明しても、機能やサービス、イベントの特徴は外国人には伝わりにくいです。その最たる例が世界的なヒットとなったAppleの広告戦略で、言葉よりも普遍的なイメージと企業のイメージを重複させ、まずは関心を呼び起こすことが最優先のコンセプトになっています。このチラシも、日本国内の先進的で電脳的な側面を排除し、外国が日本に抱きやすいイメージを効果的にイラストと配色で表しているのが特徴的です。そのため、フォントも従来の印刷媒体にみられる統一感ではなく、書に通じるイメージのある書体を選んでいます。画面が立体感のないフラットに見えるところも、日本画に見られるイメージに近いですね。こうした異文化に近い印象を与える告知、宣伝には対象者となる見る側の視線を意識することが重要で、西洋から出立したデザインとは異なる意識でこうしたチラシ・デザインを行う必要が時にはあるでしょう。日の丸紙面の角でシャープに大胆に断ち切っており、スパッとシャープな紙面になっているのも印象的です。
VOICE ※第三者による感想です
シルエットデザインにすることで、想像力が膨らみますね。
このチラシデザインは外国人向けに作成されたということで、日本語ではなく英語で書かれていますが、日本人向けではないので、英語であっても全く問題はないでしょう。剣舞パフォーマンスということで、侍が刀で戦っているシルエットが書かれているのですが、他にも日本らしいシルエットがいくつかあります。それは周りにたくさん散らされている桜吹雪、さらにはワンポイントになっている梅の花と錦鯉ですが、鯉に関してはシルエットだけなので、錦鯉であるとは限りません。
しかし、日本の鯉と言えば錦鯉が有名なので、外国人であっても日本が好きであれば、やはり錦鯉ではと思ってしまう人もいるでしょう。このようにシルエットで描くことで、いろいろな想像力を働かせることができるのと同時に、実際に行ってみてみたいという気持ちになる外国人も多いと思います。現在ではどんどん日本の文化が失われていますが、本当に外国人客を誘致したいのであれば、もっと日本の文化を大切にするべきということを感じさせてくれるチラシデザインです。
※掲載しているフライヤーデザインサンプル・モックアップはイメージです。実際の用途・サイズ・仕上がりとは異なる場合がございます。