米国Google社が、2023年9月5日(現地時間)に同社のOS「Android(アンドロイド)」のロゴデザインをリニューアルしました。2019年8月のリニューアル以来4年ぶりの変更です。
先代から始まった、ロゴタイプとマスコットの頭部との組み合わせという構成は継承されていますが、ロゴタイプの頭文字が大文字になり、ドロイド君は3Dデザインになりました。ロゴタイプの書体も変更されています。
Googleロゴとのバランスを考慮したロゴタイプ
新ロゴタイプの変更点
今回発表された新ロゴタイプと2019年バージョンの大きな違いのひとつは、頭文字が大文字「A」となっていることです。Google社は、その理由を次のように言っています。
「今回のアップデートでは、AndroidとGoogleを結びつけるため、長年使用してきた『android』の小文字表記から「A」を大文字にし、Android特有の曲線と個性を加えつつ、Googleのロゴを忠実に反映することで、両者のバランスと調和を持たせました」
現在Googleのロゴタイプの頭文字は大文字で「G」となっています。Androidも大文字「A」となったことで、ロゴタイプ全体の印象は重なり合ってくるでしょう。
ロゴの一貫性を追求
文字のデザインについても「Googleのロゴを忠実に反映」としています。Googleロゴと、先代Androidロゴ、新Androidロゴを並べると、確かに先代ロゴよりも新しいロゴタイプの方が、Googleロゴと一貫性が感じられるデザインです。
GoogleとAndroidでは、共通の文字は「o」しかないのですが、細かく見ていくと、ストロークの太さやエックスハイト(x-height=小文字「x」を基準とした文字の高さ)が、両方のロゴで共通しているのがわかります。
文字の細部に込められた意図
また、たとえば「n」のストロークの上端が、肩(ショルダー)部分よりも上に突き出さないように処理されてます。「r」にも同じ処理がおこなわれています。「i」のドットも少し大きめです。これらによって、文字や全体の印象が柔らかくなっています。
Google社の狙い
先に紹介したGoogle社のコメントは、以下のように続きます。
「Androidデバイスと、みなさんがすでに知っているGoogleのアプリやサービスとの関係をより明確にしてくれることを願っています」
Apple社のiPhoneのユーザーには、iPhoneとiOSやアプリを一体のものとして感じているひとが多いと思います。AndroidデバイスとGoogleアプリとの関係にも、このような強い結びつきを感じて欲しいというというGoogle社の意図があるのでしょう。
マスコットのドロイド君が立体化
New Android logo 👀 pic.twitter.com/50JCiWsFHC
— Pixel #TeamPixel (@GooglePixelFC) September 5, 2023
日本では「ドロイド」君として知られているマスコットには、実は、正式な名前は付けられていません。米国Google社内では「Bugdroid(バグドロイド)」と呼ばれています。確かに頭のアンテナは虫(バグ)の触角のようです。
マスコットとブランドの関係
ロゴタイプとマスコットの頭部の組み合わせが、正式にブランドロゴとなったのは、前回のリニューアルからです。
— 先代マスコットのシンプルな魅力
先代のマスコット頭部は、Googleの提唱する「フラットデザイン」を象徴するかのように、ミニマルで幾何学的な顔をしています。分度器のような形状に、真円でくり抜かれた目と、細い棒を突き刺したかのようなアンテナで構成された、とてもシンプルなデザインです。
— ドロイド君誕生の背景
このドロイド君のイラストは、ロゴマークにロボットを使うようにとの要望を受けた、当時の社内デザイナーIrina Blok氏が、トイレの入り口にある紳士用・婦人用を示すピクトグラムからインスピレーションを得て生み出しました。
— ドロイド君の進化と変遷
目の大きさや間隔、アンテナの太さなどの微妙な調整と、色の変更は何度かおこなわれてきましたが、ドロイド君の基本的なスタイルはキープされてきました。
新たな立体的デザインへの転換
ですから、今回のリニューアルでおこなわれたドロイド君の立体化は、とても大きな変更であることがわかります。立体化によって、顔つきもずいぶん変わりました。顔に対する目の比率が大きくなり、アンテナも太くなりました。単なる穴から、黒い輝きのある瞳は、何かを訴えかけているかのようです。ゆるキャラを思わせます。
平面のマンガや2次元アニメが実写化されたときのように、なるほど、そういう風になりましたか、と感じるひとは多いのではないでしょうか。
変幻自在なマスコットはコミュニティの遊び心を反映
Google is overhauling Android’s logo and iconic robot mascot! The new visuals “draw inspiration from Material design to complement the Google brand palette, as well as be adaptable.” The updated visuals will “appear on Android devices and in more places starting this year.”… pic.twitter.com/4mPrgAIWI5
— Mishaal Rahman (@MishaalRahman) September 5, 2023
ドロイド君のカスタマイズ文化
ドロイド君(バグドロイド君)は以前からAndroidユーザーの間では、遊びの素材として楽しまれてきました。別の色に変えられたり、服を着せられたり、別のキャラクターのパロディにされたり、まるでフィギュアのようにカスタマイズされています。実際にドロイド君のフィギュアもあります。
公式プロモーションでのバリエーション
Androidの最新バージョンに搭載される新機能を紹介する公式プロモーション動画でも、さまざまな姿をしたドロイド君を見ることができます。
— Google社の声明
新しいマスコットの姿について、Google社は次のように語っています。
「Androidロボットは私たちのロゴの中で目立つ存在となり、人々がAndroidに期待するようになった遊び心を反映しています」
マスコットの多様性
ロゴカラーのグリーンではなく、イエローだったり、動物のぬいぐるみのように毛皮のスキンにおおわれていたり、メタリックな光沢をまとっていたりします。
ほかにも、ヘッドホンを装着し、工事用ヘルメットをかぶり、アイスクリームのようにカラフルだったり、80年代のワークアウト(フィットネス)を思わせるヘッドバンドをしていたり、実にさまざまな姿をしています。
公式サイトでの表現とその意味
公式サイトには、LGBTQのレインボーフラッグの色に塗られたドロイド君や、パンクロッカーのスパイキーヘアーのようなトゲトゲ頭のドロイド君もいます。
これはまさしく、Androidユーザーのコミュニティーがドロイド君をいろいろな姿にして楽しんできた遊び心を、3Dドロイド君が体現しているのです。また、オープンでインクルーシブな考え方も反映されていると言えます。
Android 14はAIを活用した新機能を搭載
今回のロゴリニューアルは、OSの新バージョンAndroid 14のリリースに先行する形でおこなわれました。
Android 14の新しい姿
新しい機能にはAIが活用され、これまでにない利便性が実現しています。
たとえば、視覚障がい者向けのサポートアプリ「Lookout」では、カメラに写った対象物をAIがくわしく説明し、ユーザーの質問にも答えてくれる機能も追加されています。また、出かける前に天気予報を出したり、飛行機のフライトスケジュールを表示したりしてくれます。
AI活用の革新的な機能
デジタル空間と現実空間との融合は、ここ数年どんどん進んでいます。AndroidのAIによる新機能は、その流れの中にあります。
— デジタルと現実の融合
Google社は、マスコットのリニューアルについて次のようにコメントしています。
「デジタル環境と現実環境との間を容易に移行できるように、ロボットのフルボディの外観を更新し、チャネル、プラットフォーム、コンテクストを問わず、多用途で信頼できる仲間にしました」
マスコットの意義とリニューアル
これはつまり、デジタルインタフェースの象徴ともいえる、フラットな2次元のピクトグラム的ドロイド君ではなく、現実の3次元世界にドロイド君をひっぱり出した、ということなのでしょう。
— ブランドとバグドロイドの関係
Google社の次の言葉は、そういうことだと解釈できます。
「私たちのブランドを視覚的に示すものとして、バグドロイドがAndroid自体と同じくらいダイナミックに見えるようにしたいと考えました」
スイーツのニックネームはGoogle社内では開発コードネームとして継続
AndroidにはABC順にスイーツの名前のコードネームがつけられてきました。バージョン1.5の「Cupcake」から始まって、1.6で「Donut」、2.0で「Eclair」という具合です(AとBはなし)。コードネームは一般のユーザーにも公開され、OSのニックネームとして受け入れられていました。
マテリアルデザインが導入されたバージョン5.0の「Lollipop」が個人的には記憶に残っています。それぞれのスイーツに扮したドロイド君の画像をネット上で見ることができます。
— コードネームの廃止とその理由
このコードネームは2018年にリリースされた9.0の「Pie」を最後に2019年以降は廃止となりました。歴代のスイーツの中には、米国以外では一般的でないものもありました。かならずしも世界中で通じるわけではない名前は、グローバルなサービスを展開しているGoogleとしては適切ではない、という判断です。
— Google社内での継続 – 新しいコードネーム
Android 10以降はコードネームが公開されることはありませんでしたが、Google社内では、「Q」以降も引き続きコードネームが使われていたようです。10月リリースが予定されている最新バージョン14では、「Upside Down Cake」になっています。
【参考資料】
[新ロゴのアナウンスメント]
・A new modern look for the Android brand (https://blog.google/products/android/modern-look/)
[YouTube公式動画]
・Do more at a glance with new productivity features for your Android devices (https://youtu.be/uZt4ZI10RFU?si=lsk6LoKcdAqj6aiT)
[ロゴリニューアル報道]
・Google Reveals Brand-New Android Logo and 3D Robot – CNET (https://www.cnet.com/tech/mobile/google-reveals-brand-new-android-logo-and-3d-robot/)
[歴代ロゴ]
・Android Logo and symbol, meaning, history, PNG, brand (https://1000logos.net/android-logo/)
[Android新機能]
・最新の機能やアップデートのすべて | Android (https://www.android.com/google-features-on-android/september-2023/)
Google Japan Blog: Android の新機能と最新ロゴのご紹介 (https://japan.googleblog.com/2023/09/AndroidLookoutbrand.html)
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