米フェイスブック(Facebook)が10月28日に社名をメタ(Meta)に変更しました。フェイスブックやインスタグラムのアプリを開いたときのスプラッシュ画面や、社名変更を伝えるメッセージで、企業名とロゴが変わったことに気づいたひとも多いでしょう。
これまで「Facebook」は、企業名であると同時にアプリ名でもありました。しかし、今回の変更によって、「Facebook」は、「Messenger」(メッセンジャー)や「Instagram」(インスタグラム)などメタ社が提供するアプリやサービスのひとつになります。
sdx15 – stock.adobe.com – Metaの企業ロゴ
Facebookアプリの利用規約の冒頭には、FacebookアプリとMeta社との関係を簡潔に説明している次のような1文があります。
「Facebook社の名称はMetaに変わりました。企業名は変わりましたが、既存の製品は今後も提供されます。FacebookアプリもMetaから提供されます」
アルファベットの「M」と無限大記号を組み合わせるというアイデア自体は、とりわけユニークというものではありません。ドイツの頭痛対策アプリや、日本のコンサルティング会社のロゴデザインとの類似性がメディアでも取り上げられました。
世界に大きな影響力を持つ巨大IT企業群の一角として、世界中で認知されていた超有名ブランド、フェイスブック。その社名を変更したメタ社のロゴデザインについて見てみましょう。
新ブランド名「Meta」とアプリの関係を示す動画
メタ社は、YouTubeなどの公式動画で、企業名変更やブランドコンセプトをアナウンスしています。その動画ではメタ社のロゴがアニメーションロゴ風に表示されていて、旧Facebook社アプリとMetaブランドとの関係性がわかります。
動画にまず表示されるのは、大文字のアルファベットで構成されているフェイスブック社の企業ロゴと同社の代表的なアプリのアイコンです。Facebook、Messenger、Instagram、WhatsApp(ワッツアップ)、Oculus(オキュラス)の5つのアイコンが、企業ロゴの横に並べられています。
アイコンがそれぞれの色の円に変わり、たがいに溶け合いながらワードロゴと一体化して、メタ社のシンボルマークに変身するというアニメーションです。今後Facebookを含むこれらのアプリを提供していくブランドはメタである、ということが直感的に伝わります。
sdx15 – stock.adobe.com
企業名とアプリでワードロゴの区別を試みていたフェイスブック
一般のアプリユーザーには、それほど認識されていなかったかもしれませんが、2019年11月にフェイスブック社は、Facebookアプリとの違いを明確にするために、企業ロゴのデザインをリニューアルしていました。アプリのワードロゴは小文字、企業ブランドは大文字です。書体も異なっていました。また、小文字「f」のシンボルマークはアプリにのみ使用され、企業名には使われません。
おもしろいのは、企業名ワードロゴがアプリのロゴと一緒に使われるとき、色をアプリのロゴにそろえるというガイドラインがあったことです。たとえば、Facebookアプリのロゴはブルーなので、企業ワードロゴもブルー、パープル系グラデーションであるInstagramのグリフアイコンと同じ画面に表示されるときは、社名ワードロゴも同じくパープル系グラデーション、という具合です。
・Facebookが企業ロゴデザインを変更しアプリとの違いを明確化
新ブランドのロゴデザインはシンボルマークとワードロゴの組み合わせ
hurricanehank – stock.adobe.com – メタ社のロゴデザイン
フェイスブック社の企業ロゴは、大文字によるワードロゴ(ロゴタイプ)でした。それに対して、メタ社のロゴはシンボルマークとワードロゴとの組み合わせになっています。
3次元空間でも使える立体的なシンボルマーク
無限大記号をモチーフとしたマークは、微妙なグラデーションがつけられています。そのため、3次元的な立体感を感じます。上述のロゴ動画では、チューブのようなラインが回転しながらシンボルマークに変化するので、3次元的ロゴであることが強く印象づけられます。
公式サイトをパソコンのブラウザで開くとアドレス入力欄やタブにファビコンが表示されますが、そのような小さなアイコンもグラデーションで描画されています。立体的な表現へのこだわりなのでしょう。
メタ社公式の「Design at Meta」というサイトには、このシンボルマークが、同社のバーチャルリアリティ(VR)技術を使った空間の中で、1本のラインから描き上げられたのだという説明があります。つまり、動画や3Dの中での使用も前提としているデザインなのです。
「メタのシンボルマークのフォルムは、2次元と3次元のあいだで途切れることなくシームレスに機能するループ形状です。(中略)『Meta』のMにも見えますし、同時に、メタバースの無限の可能性を象徴する無限大記号にも見えます」
「メタのシンボルマークはメタバースのなかでダイナミックに活用できるようデザインされています。メタバースでは、ロゴを通り抜けたり、ロゴのまわりを回ったりできます」
Designing our new company brand: Meta – https://design.facebook.com/stories/designing-our-new-company-brand-meta/
また、シンボルマークの色や質感や動きには、とくに制約はないようです。アイデンティティカラーを指定しないロゴとしては、最近リニューアルされた米ケーブルテレビ「MTV」を思い出しますが、それと同じアプローチを3次元的に発展させた表現といえるかもしれません。
・米ケーブルテレビ「MTV」がブランドロゴデザインをリニューアル
書体は2019年のリニューアルを踏襲
先に述べたように、企業ブランドとしてのフェイスブックは、2019年に1度デザインのリニューアルをおこなっていました。メタのワードロゴの書体は、そのときに作られたカスタム書体を使っています。
また、アプリのスプラッシュ画面で表示される「from Meta」のロゴの色は、それぞれのアプリアイコンの色に揃えられています。これも、前述のように、2019年のリニューアルのときに採用された表現方法です。アプリをいったん終了して、もう一度開くときにスプラッシュ画面を見ることができますので、お手持ちのFacebook、Messenger、Instagramで確認してみてください。
メタバースとメタプラットフォーム
マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)CEOは、フェイスブック社はソーシャルメディアの会社として知られてきましたが、同社の本質はひとびとをつなぐ技術の開発にあるとしています。そして、次のように述べています。
「私たちはソーシャルメディアから新しいフロンティアに踏み出します。それがメタバースです」
ソーシャルメディアからメタバースへ。「フェイスブック」というSNSアプリと同じ名称では、これから向かう方向と合わなくなったのが、社名変更の理由なのです。
メタバースとは「超える」という意味のギリシャ語由来の単語「メタ(meta)」と「宇宙」を意味する「ユニバース(universe)」の合成語です。メタバースという言葉自体は、1990年代のSF小説で登場した言葉ですが、現在ではインターネット上の3D仮想空間をあらわします。
ところで、メタ社の正式名称は「Meta Platforms, Inc.」(メタプラットフォーム社)です。ザッカーバーグ氏は、これからの事業を「一連のアプリ」と「未来を見据えたブラットフォーム」の2本柱で構成するとも述べています。
メタバース実現につながる同社のもっとも具体的な技術やサービスは、いまのところ、Oculusブランドから提供されているものです。今回の企業名変更にともなってOculusブランドは今年で廃止されます。2022年からは、「Oculus Quest」が「Meta Quest」に、「Oculus」アプリが「Meta Quest」アプリに変わることが決まっています。
・マッキー・サタデー(Mackey Saturday)- Instagram・Unsplash・Oculusのロゴを作った気鋭の若手デザイナー
【参考資料】
・The Facebook Company Is Now Meta | Meta (https://about.fb.com/news/2021/10/facebook-company-is-now-meta/)
・Company Info and News | Meta (https://about.facebook.com/)
・Designing our new company brand: Meta (https://design.facebook.com/stories/designing-our-new-company-brand-meta/)
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