ブランドの顔となるロゴマーク制作。CI(コーポレートアイデンティティ)の核となる、企業やブランドの想いや使命、姿勢を言葉で表した「コンセプト」を立てたら、いよいよ目に見えるものとして形にするデザインの段階へと移ります。
コンセプトシートやムードボードといった、デザインの指針となる材料を用意し、ロゴの元となるスケッチを書き溜めたら、そこから候補を絞り込み、よりリアルなデザインワークへと進んでいきましょう(前章:「コンセプト編」参照)。
具体的なロゴのデザインを考える時、知っておきたいロゴデザインならではの基礎知識があります。ここでは、より良いロゴ作りのために、基本となるポイントをいくつか紹介していきます。
ロゴの構造とその種類
絵柄だけが印象に残るロゴや、ブランド名が文字として表記されているロゴなど、ロゴマークと一言で言っても、そのスタイルにはいくつかの種類があります。どのスタイルが正解ということはなく、それぞれのブランドの個性や、ロゴマークの使い方によって適した形を選ぶことになります。
ロゴマークは、図柄でイメージをあらわす「シンボルマーク」、ブランド名を文字であらわす「ロゴタイプ」、スローガンや業種、URLなどを併記する「ステートメント」の3つの要素から構成されます。組み合わせ別にどのような特徴があるのか見ていきましょう。
シンボルマーク
具象をモチーフにしたり、ブランドのコンセプトを抽象化するなどして作られる図柄。
インパクトが強く、商品や業種をイメージしやすい。また、記憶に残りやすく、年齢性別を問わず受け入れられるため幅広い業種で用いられます。
しかし、ロゴタイプを伴わず、シンボルマークだけでロゴとして成立させる場合は、受け取る側が、そのシンボルマークが何のブランドであるかを認識していなくては成立しないため、大手企業やブランド(スターバックスやアップルコンピュータなど)でない限りは浸透させるのが難しいという側面もあります。
また、シンボルマークは絵柄だけでなく、ブランド名の文字から着想を得る場合もあります。ブランド名の頭文字をモチーフにしたり、2文字以上のイニシャルを使い、文字のコンビネーションをデザイン化するモノグラムなど、多くのブランドで使われている手法です。
ロゴタイプ(ワードマーク)
文字を主体にデザインした「読める」ロゴマーク。文字として記憶されるため、ブランド名や企業名を覚えやすく、判別されやすい。
アルファベットの場合は、大文字小文字のどちらを使うか、日本語の場合は平仮名・カタカナ・漢字のどれを使うかで大きく印象が変わります。また、書体の雰囲気や文字間の空き、色のチョイスなども印象を左右するポイントです。
シンボルマーク+ロゴタイプ
ロゴの組み合わせではもっとも多いスタイル。
想像力を膨らませるシンボルマークとブランド名を明確に伝えるロゴタイプ。この二つを併用することで、見る人に正確な情報を届け、なおかつ言葉にすることが難しいブランドのコンセプトを視覚で伝えることができます。
シンボルマークとロゴタイプの大小や、配置の仕方、また、ロゴタイプとシンボルマークを融合させたりと、さまざまな組み合わせのパターンがあります。
ステートメント(タグライン)を付加する
シンボルマークやロゴタイプの周りに、文字列として追加することが多いステートメント。
タグラインとも呼ばれるこの文字列は、ブランドの業種(例:beauty&helthやitalian restaurantなど)や、スローガン(例:clean energy や 明るい未来を創造する など)、URLなどをロゴの一部として付け足す役割を持っています。ステートメントを付加することでロゴが表わすブランドに具体性が増し、認知されやすくなります。
ロゴのデザインスタイルを明確にする
ロゴデザインは、形はもちろんデザインが持つスタイルを決めておくことも大切です。
ブランドに持たせたいイメージが上品なものなのか、カジュアルなものなのか、また、洋風であるか和風であるか・・・例を挙げればきりがありませんが、コンセプトシートやムードボードを指針に、ロゴから感じさせたい「雰囲気」を明確にしておきましょう。
クラシック・トラディショナル
時代に左右されない伝統的な雰囲気。シンプルかつ上品で落ち着きのあるイメージ。
色や書体も落ち着きのあるものを選び、信頼性と重厚感に重きを置きます。
モダン&ミニマル
現代的で洗練された雰囲気。無駄なものを廃したシンプルで都会的なイメージ。
余白を上手く使い、カラーはモノクロやビビッドな色の組み合わせなどメリハリの効いた配色が好相性。
カジュアル&ユニーク
子どもや若年層、ファミリーなどをターゲットにするブランドに多いパターン。
色は明るくPOP、ディスプレイ書体などを使い個性的でユニークな雰囲気を演出します。シンボルマークにはイラストやキャラクターなどを立て、よりカジュアルに親しみが湧くイメージを。
ビンテージ&レトロ
ここ最近のトレンドともいえるスタイル。オーガニックなクラフト紙をベースに焼印のような処理を施したロゴをプリントするなど、「古めかしさ」を「新しさ」に変換させるスタイルが代表的。ナチュラルな雰囲気を好むカフェやプロダクト、ワイルドなイメージを持つアウトドア系ブランドなどに適しています。
和風
日本の源流である「和」のテイスト。最近では海外からも注目を集めるようになった「和」をデザインに取り入れることで、しっとりと落ち着きのあるイメージを構築できます。また、あえて洋風の書体やビジュアルをミックスすることで新たな「和」を創造し、斬新さを印象付けることもできます。
フォントの種類とカラーの選択
記号のようにコンパクトな面積に、ブランドのコンセプトを詰め込んでデザインされたロゴ。その中でイメージを大きく左右するのは、シンボルマークなどの意匠はもちろん、書体(フォント)やカラーも第一印象に深く関わります。とくに、シンボルマークを持たないロゴタイプの場合は、その影響はとても大きく、フォントとカラー選びがロゴデザインの要になるといっても過言ではありません。
フォントとカラーは見る人へ感覚的にアプローチする視覚的情報。理屈では補えないダイレクトなメッセージになるため、ブランドのコンセプトとずれないように慎重にセレクトしましょう。
【フォントの種類がデザインに与えるイメージ】
セリフ体(明朝体)
和文フォントでは「明朝体」と呼ばれる、文字の端にセリフ(「うろこ」「ひげ」)と呼ばれる出っ張りを持つ書体。文字を構成するラインに強弱があり、クラシックで格式高い印象を与えます。女性らしいしなやかな印象も持つため、化粧品やファッション系などのブランドに好まれます。
サンセリフ体(ゴシック体)
和文フォントでは「ゴシック体」と呼ばれる、セリフを持たず、ラインの強弱が少ない書体。可読性が高く、装飾が少ないためミニマルで現代的なイメージに適している。幅広い業種に使われ、コーポレートフォントにも選ばれやすいです。
スクリプトフォント
欧文書体の中で「筆記体」を用いた書体。手書き感があり、独特の雰囲気を持つことから、ロゴタイプに採用されるケースもありますが、可読性に乏しいフォントも多いので注意が必要です。お洒落なイメージを演出できるので、カフェなどの飲食店やファッションブランドなどに重宝されます。
ディスプレイフォント
個性的な外観を持つ書体。サンセリフ体やセリフ体に比べると装飾が多いため、ただ文字を並べるだけでもロゴタイプやシンボルマークとして機能する場合もあります。ただし、インパクトが強い分、他のブランドと被るとイメージが重複するため、ロゴマークにする際は事前に競合調査を行なった方が良いかもしれません。
【色がロゴデザインに与えるイメージ】
赤 – アグレッシブ・動的
情熱や野心、怒り、パワー、愛など、エネルギッシュなワードが並びます。赤はパトカーや救急車のランプに使われるなど、人間にとって注意を引く色。ロゴに取り入れることで強烈なインパクトを与えます。
オレンジ – 食・温かさ
陽気、食欲、親しみ、遊び心など、賑やかで開放的なイメージのある色です。赤よりはやわらかく、黄色よりは落ち着きのある中間色です。
黄 – 明るい・警告・軽い
明るい・元気・光・コミュニケーションなど、眩しく輝くようなワードが並びます。有彩色の中でもっとも明るく、見ているだけ心が楽しくなるようなイメージを与えます。赤と同様、注意を促す色でもあり、黒と組み合わせることで「危険」をイメージさせる強い配色になります。
ピンク – 若々しさ・幸福・女性的
愛情・女性的・幸せ・優しさ・若々しさなど、「ハート」を司る色だけあって「心」と密接に関わるイメージを持っています。ピンク色のものを見たり、身につけると女性ホルモンが活発になるといわれるほど心理的効果の強い色です。
青 – インテリジェンス・冷たさ・静的
自然・落ち着き・知性・信頼・集中など、母なる「海」をイメージさせるような寛大で落ち着きあるイメージを持つブルー。空や海、水など昔から人間の生活に溶け込む色であるからか、世界的にも好感度の高い色として知られています。信頼や知性をイメージさせるため、幅広い業種で好まれる色です。
緑 – リラックス・エコ・安全
リラックス・自然・鎮静・調和・安全など、心を穏やかにし、どんな色とでも相性よく使いやすい色。草木がグリーンであることから、自然と深い関わりを感じさせ、エコやリサイクルなど地球にやさしいイメージを与えやすい。
紫 – 神秘的・高貴・エキゾチック
神秘的・高貴・エキゾチック・芸術・中性的など、青と赤の混色である紫は複雑で精神性と深い関わりのある色です。赤と青の含有率で色味にも幅があり、上品なイメージにも下品なイメージにもなり得る色。感性を刺激する色なので、意図を持って上手に使えるかどうかがポイントです。
茶色 – 落ち着き・大地に想起されるもの
堅実・安定・包容力・伝統・温もりなど、大地に根付くようなどっしりとしたイメージを持つ茶色。彩度が低いので派手さはありませんが、飽きのこない色なので堅実さをアピールしたい業種にはピッタリの色です。また、レトロ感やビンテージ感を出すにも適しています。
無彩色(白・黒・グレー)
白は光を反射し、黒は光を吸収します。相反する二つの色は、言うまでもなくもっとも相性が良く、白と黒からなるロゴは基本中の基本です。カラーのロゴデザインの場合もモノクロパターンは別途用意することが多く、明暗だけで認識できるデザインを心掛けることが大切です。
また、白と黒の中間色にあたるのがグレーです。モノクロのデザインの時はもちろん、どんな色とでも相性が良く、上品なイメージを持つグレーはロゴデザインにおいて使い勝手のよいカラーの一つです。
まとめ
前回紹介したロゴマークを作る手順は、多少順番は前後しますが、
- 競合を調査しブランドについて分析する
- コンセプトシートやムードボードを使い、コンセプトとデザインの方向性を模索する
- コンセプトとデザインスタイルを決定し、アイデアスケッチを開始する
- アイデアスケッチを元にロゴの種類を検討しいくつか候補を絞り込む
- フォントやカラーを検討・調整し最終形に近づける
というステップでした。最後に最終形のロゴをブラッシュアップし完成となります。
ロゴマークをデザインするには、多種多様な方法があり、今回紹介したステップは一般的な一例に過ぎません。ただ、ブランドのコンセプトを明確にし、それに形を与えるという作業はロゴデザインの基本であり、どの手順でも変わらない部分です。
自分でロゴを考える際も、デザイナーにロゴを依頼する場合も、ブランドのコンセプトを十分に理解し、完成に至るまでぶれることのないアイデンティティを確立することがもっとも大切なポイントです。
【関連記事】ロゴデザインの考え方の全てがわかる! ロゴマークの作り方まとめ – ひとり広報
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