米国のOpenAIが、2月5日(現地時間)にブランドリニューアルをおこないました。ロゴデザインやカラーパレットも一新され、あらたにカスタム書体も作られています。
OpenAI(オープン・エーアイ)は、人工知能(AI)の研究と展開を行う企業です。元々は非営利団体として設立されました。
生成AIといえば、まず名前があがる「ChatGPT(チャットジーピーティー)」は、OpenAIが提供しています。世界中が驚いた動画生成AI「Sora(ソラ)」もOpenAIが開発しました。
OpenAI / Mojahid Mottakin – stock.adobe.com
ChatGPTは、OpenAIが2022年11月に公開されました。その後3ヶ月足らずで月間アクティブユーザーが1億人に達します。InstagramやTkiTokを超える、驚くべき普及スピードです。
いまやビジネスでもプライベートでも、生成AIを避けて通ることはできないと言っていいでしょう。
今回のブランドアイデンティティのリニューアルは、デザイン統括のVeit Moeller氏とデザインディレクターのShannon Jager氏が率いるOpenAI社内チームと、デザインスタジオStudio Dumbar/Dept、書体デザインスタジオABC Dinamoとのコラボレーションでおこなわれました。
Studio Dumbar/Deptは、オランダのロッテルダムを拠点としています。ブランディングやビジュアルアイデンティティを専門とするデザインスタジオです。実験的なアプローチによる印象的なタイポグラフィやモーションデザインを活用したプロジェクトで知られています。
核となる価値観は「シンプル」「空間」「不完全」「鮮やか」
OpenAIは、『Refreshed.』(刷新)と題された動画を公開しています。今回のブランドリニューアルの概要を1分50秒にまとめたものです。
動画がスタートしてしばらくすると、同心円状に配置されたグリッド点が登場。
グリッドの右には、「シンプル(simplicity)」「空間(space)」「不完全(imperfection)」「鮮やか(vivid)」という4つの言葉が並べられています。この4つが、新しいビジュアルアイデンティティの核となる価値観です。
グリッドの上でドットが動きながら、その4つの価値観をひとつずつ視覚的に表現していきます。
次に、タイポグラフィ、ロゴタイプ、シンボルマーク、カラーパレットが順に登場。どのようなリニューアルがおこなわれたかが、アニメーションでコンパクトに表現されます。
続いて、自然や風景などの象徴的なビジュアルで示されるのは、ブランドのトーン(声)です。これらのイメージには、「誠実」「謙虚」「共感的」という言葉が添えられています。
最後に、レイアウトフォーマットと具体的な印刷物の「活用例」がさまざまなバリエーションで登場して動画は終わります。
シンボルマーク「ブロッサム」
建築やデザイン、アート分野での世界的なメディアである『Wallpaper*』が、OpenAIの社内デザインチームを取材しています。記事には、今回のブランドリニューアルで目指したものについて、次のようなコメントがあります。
「もっとオーガニックで人間的なアイデンティティを作り出すこと」
ChatGPTのアプリアイコンにも使われているOpenAIのシンボルマークは、並べて比べないと、リニューアル前後の違いがわかりにくいかもしれません。
先代を踏襲しながらディテールをアップデート
3つの三角形が知恵の輪のようにからみあったシンボルマークは、「ブロッサム(blossom)」と呼ばれています。
ブロッサムは、フラワーと違い、リンゴの花やオレンジの花、梅の花などのように、おもに木に咲く花をいいます。桜がチェリーブロッサム(cherry blossom)というのは聞いたことがあるのではないでしょうか。
先代のシンボルマークでは、ラインの太さが外周と内部で異なっていましたが、新しいデザインでは均一になっています。
中央の六角形も大きくなりました。花びらにあたる部分の空間もわずかに広くなっています。
新しいデザインの方が、全体に明るくすっきりとした印象です。
幾何学模様のグリッド
「ブロッサム」は7つの真円で構成されたグリッドに基づいて描かれています。グリッドとなっているのは、ひとつの円の周囲に6つの円を重ねた幾何学模様です。
先代のブロッサムもこのグリッドに基づいていましたが、新しいデザインでは、バランス良くなるよう手直しされました。
前述のメディア『Wallpaper*』は、このシンボルマークのグリッドが、「生命の種(seed of life)」と呼ばれる幾何学模様であることにも言及しています。
この「生命の種」のような幾何学模様は、古代エジプトをはじめ、世界各地の古代文明で見られ、宇宙の創造や、生命の根源、神と人間の関わりなどを理解する手段と認識されてきました。現代に至るまで、さまざまな宗教的建造物や芸術品などに見つけることができます。
カスタム書体「OpenAI sans」
New Arrival: OpenAI brand and font – OpenAI Sans. I like the smooth ‘G’. pic.twitter.com/QK19Ucqq7S
— Steve Moser (@SteveMoser) February 5, 2025
社内チームのMoeller氏とJager氏は、OpenAIが、はっきりとした戦略や統一性を持たずに、場当たり的に発信してきたと、『Wallpaper*』にコメントしています。書体・ロゴ・カラーパレットなどは、製品ごとにまちまちで一貫性はありませんでした。
精密さと人間味とのバランスをとったデザイン
タイプフェイスに関しては、製品ごとに異なる書体が使われてきたものを、新しいカスタム書体「OpenAI sans」に統一しました。
「OpenAI sans」はジオメトリックなサンセリフ書体です。フォントファミリーは、ライト、レギュラー、ミディアム、セミボールド、ボールドの5つのウェイトと、それぞれのイタリック体を中心とした構成になっています。
デジタルと印刷の両方で、明瞭さと多様性を追求して開発されました。合字(リガチャ)、等幅数字、大文字小文字で異なる句読点などが提供されています。
OpenAIの公式サイトには、次のような説明があります。
「このフォントはOpenAIのブランド理念を体現するよう設計されており、テクノロジーの精密さと人間のぬくもりとのバランスを取りながら、包括的で未来志向のトーンを表現しています」
書体デザインの選択には、「すべての人類のために貢献する」というOpenAIのミッションを支える役割が込められていると述べています。
なお、公式動画「Refreshed.」には、ラテン文字以外の言語も登場しますが、その詳細については残念ながらわかりません。いずれもOpenAI sansと同じ方向性でデザインされているようです。
カスタム書体によるロゴタイプ
ロゴタイプ(ワードマーク)も「OpenAI sans」によって組まれました。
「ChatGPT」「Sora」のロゴタイプも同じ書体です。
興味深いのは、シンボルマーク「ブロッサム」と「OpenAI」のロゴタイプを一緒に使ってはならない、という規定になっていることです。
ブラウザで公式サイトを開くと、左上にロゴタイプが表示されますが、スクロールすると、シンボルマークに置き換わります。置き換わるときのトランジション効果がさりげなくて好感が持てます。
研究論文とタイポグラフィ
公式動画『Refreshed.』では、ロゴタイプやシンボルマークよりも前にカスタム書体が紹介されています。
OpenAIのデザインディレクターJager氏は次のようにコメントしています。
「OpenAI Sansはタイポグラフィへのラブレターです」
また、デザイン統括のMoeller氏は、このように述べました。
「本質的に、タイポグラフィはあらゆるものとやり取りする手段です。ChatGPTにとって、それがよりどころとなる要素なのです」
音声や画像、アクションなどを介したインタラクションも開発が進んでいます。とはいえ、今のところ生成AIとのやりとりの多くは、テキストによっておこなわれているのでタイポグラフィが重視されるのでしょう。
研究機関としてスタートしたOpenAIにとって、研究論文は重要な成果物です。
公式動画の中で、レイアウトのフォーマットを重視していることがアピールされ、印刷物の制作例がある程度のボリュームで紹介されている理由もそこにあると考えられます。
Moeller氏は次のようにも述べています。
「データの視覚化はそれ自体が本物の芸術です」
ブランドアイデンティティの核として躍動する「点」
ベルリンを拠点とする書体デザインスタジオABC Dinamoにカスタム書体OpenAI sansの制作を依頼したとき、OpenAIのデザインチームは、「点」を文字デザインに統合するという明確なビジョンを持っていました。
公式動画の中でも、小文字の「i」や疑問符「?」のドットが矩形ではなく円(または点)であることが示されています。また、大文字「G」のエッジの丸みが、円をガイドラインとしてつけられていることがわかります。
OpenAIの公式ガイドラインには、ロゴタイプの「O」の外側が完全な円であることが記されています。
この「点」は、書体にだけ取り入れられているわけではありません。
ブランドアイデンティティ全体で「点」が中心的モチーフとなっています。ときには円またはドット、アンカーポイントとなって、グリッドや空間、図形を支えます。
今年のスーパーボウルで60秒のコマーシャル『The Intelligent Age』が放映されました。人類の発展に貢献した数々の革新的テクノロジーとともに、ChatGPTの可能性をアピールする広告です。このコンテンツのすべてが「点」で描かれています。
カラーパレットと「エモーティブ・ポイント」
カラーパレットは、「基本パレット(primary palette)」と「表現パレット(expressive palette)」のふたつが設定されています。
基本パレットは、グレーとブルーを基調として、黒・白など計7色で構成。表現パレットは、基本パレットに数色を加えた拡大パレットです。
パレットに加え、「エモーティブ・ポイント(Emotive Point)」も作られました。水彩画に着想を得た青い渦巻き状のイメージが描かれたディスクです。
これは、ユーザーがAIとやりとりするときにデザインデバイスとして使われます。単純なモーションアイコンではなく、パターンと動きが入力に反応するようコード化されています。エモーティブ・ポイントは、ChatGPTの「声」を視覚的に表現したものであるということです。
デザイン統括のMoeller氏がおもしろい説明をしています。
「特定のキャラクターや感情を持たないよう、意図的に『非人間的な』デザインにしているのです」
写真家の作品と生成AIのコラボレーション
OpenAIの今回のリブランディングでは、人間の創造性とAI技術を融合させたビジュアルアプローチが採用されました。リアルな画像と組み合わせて異世界的なテクスチャを作成するツールとして、動画生成AIのSoraが活用されています。
デザインチームは写真家と協力しながら制作を進めました。現代の著名な写真家に直接依頼し、人間の創造性が表れている作品をリブランディングの中心としました。
その結果、風景や静物、抽象的な形など多様なイメージが作り出されました。公式動画『Refreshed.』で「トーン(ブランドの声)」として紹介されています。
AIの役割についてMoeller氏は、「AIはツールやパートナーとして機能し、ルールに縛られずに創造性を拡張する」と説明しています。グラフィックデザインにおいて、Apple社のMacが初期導入されていたことになぞらえました。
今回のブランディング全体で、ChatGPTの生成能力を使ったものはないか、というメディアの質問に対し、Moeller氏は、書体のウェイトの計算にのみ役立てたと答えています。
「写真、タイポグラフィー、モーション、空間デザインの専門家と協力しながら、DALL·E、ChatGPT、SoraなどのAIツールを思考パートナーとして活用しています」
OpenAIは、この人間の直感とAIの生成能力を出会わせることで、革新的でありながら人間味のあるブランドを作り出そうとしたのです。
【参考資料】
[Open AI 公式サイト]
OpenAI Design | OpenAI (https://openai.com/brand/)
[メディア]
Here’s OpenAI’s new logo | The Verge (https://www.theverge.com/news/606176/openai-new-logo-font-typeface-sans)
OpenAI’s brand refresh subtly signals a new era (https://www.creativereview.co.uk/openai-brand-refresh/)
OpenAI unveils its first ever rebrand | Wallpaper (https://www.wallpaper.com/tech/openai-has-undergone-its-first-ever-rebrand-giving-fresh-life-to-chatgpt-interactions)
OpenAI Enters Super Bowl 59 With a Bold AI Pitch (https://www.adweek.com/media/openai-super-bowl-59-ad-chatgpt-bold-ai-pitch/)
OpenAI’s CMO discusses its first Super Bowl ad – Fast Company (https://www.fastcompany.com/91274818/super-bowl-open-ai-ad)
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