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創作と計算

「作れる」だけじゃ食っていけない?デザイナー独立前に知っておきたい「商売」の話

自分のスキルで何かを生み出すのって、最高に楽しいですよね。頭の中のイメージが形になった瞬間、クライアントに「ありがとう!」って言われた時… この喜びがあるから、クリエイティブな仕事はやめられません。

そして、スキルが身についてくると、「自分の力でやってみたい」「フリーランスとして独立したい」と考える人も多いのではないでしょうか。僕もそうでしたし、その気持ち、すごくよく分かります。

でも、ちょっと立ち止まって考えてみてほしいことがあります。それは、「作れる」スキルがあることと、「仕事として成り立つ」ことは、必ずしもイコールではないということです。

もちろん、独立にチャレンジすること自体は素晴らしいし、そこから得られる経験は何物にも代えがたいものです。ただ、「作れる」という一点だけで飛び込んでしまうと、思った以上に大変な現実に直面するかもしれません。

今回は、僕自身の経験も踏まえながら、「作れる」スキルを「商売」として成り立たせるために大切な視点について、お話ししたいと思います。

 

なぜ「作れる」だけでは難しいのか?

線を引く

「デザインができる」「イラストが描ける」「コードが書ける」… こうしたスキルは、確かに価値があります。でも、少し周りを見渡してみてください。同じように「作れる」スキルを持った人は、たくさんいますよね。

つまり、スキルがあるだけでは、残念ながら特別な存在にはなりにくいのが現実です。

もちろん、ずば抜けた才能や技術があれば話は別かもしれません。でも、多くの場合は、他にも選択肢がある中で、あなたを選んでもらう理由が必要になります。

それに、せっかく素晴らしいものを作っても、それが誰にも知られなかったり、適切な価格で買ってもらえなかったりしたら、仕事としては成り立ちません。作ったものを、それを求めている人に届け、きちんとお金に変えていくプロセスがあって、初めて「商売」になります。

「作れる」というスキルは、いわばスタートラインに立つためのパスポートのようなもの。そこからどうやってレースを進めていくか、その戦略がとても重要になるのです。

 

「職人」から「商人」へ 〜 求められる視点の転換

独立して仕事をしていくということは、単に「作る人(職人)」であるだけでなく、「商売をする人(商人)」としての視点を持つことが求められます。

「商人」というと、なんだかお金儲け主義みたいで嫌だな、と感じる人もいるかもしれません。でも、ここで言う「商人」の視点とは、自分のスキルや作ったものを、どうやって価値に変え、届け、そして事業として継続させていくかを考える力のことです。

具体的には、こんな視点が大切になります。

  • 誰に届けたいのか?(ターゲット設定):あなたのスキルや作風は、どんな人の役に立つのか、どんな人に喜ばれるのかを明確にする。
  • どうやって知ってもらうか?(マーケティング・集客):ポートフォリオサイト、SNS、ブログ、交流会への参加など、自分に合った方法で存在を知ってもらう努力をする。
  • いくらで提供するのか?(価格設定):自分のスキルや提供する価値に見合った、そして相手も納得してくれる価格を設定する。安売りは自分の首を絞めることにもなりかねません。
  • どうやって価値を伝えるか?(ブランディング・提案力):単に「作れる」だけでなく、「あなたにお願いしたい」と思ってもらえるような、独自の強みやストーリーを伝え、相手の課題を解決する提案をする。
  • お金の管理は大丈夫か?(計数管理):見積もり、請求、入金確認、経費計算、確定申告… フリーランスはこれらも全て自分で行います。どんぶり勘定では、いつか立ち行かなくなります。

これらは、デザインや制作のスキルとはまた別の、いわば「ビジネススキル」です。独立するということは、これらのスキルも磨いていく必要がある、ということです。

人気クリエイターの裏側 〜 計算された「ゆるふわ」戦略

ここで、少し具体的な話をしてみましょう。

例えば、SNSで大人気の、ゆるくて可愛いイラストを描くクリエイターさんっていますよね。一見すると、その人の才能やセンス、好きなものを自由に表現しているだけのように見えるかもしれません。

でも、本当にそうでしょうか?

もちろん、才能やセンス、そして「好き」という気持ちが根底にあることは間違いありません。でも、多くのファンを獲得し、それを仕事として成り立たせている人たちは、その裏側で驚くほど緻密な計算をしていることが多いです。

  • どんなイラストが、どんな層に、どんな風に響くのか?
  • どのSNSプラットフォームで、どんな時間に、どんな言葉と一緒に発信するのが効果的か?
  • どうやってファンとの関係性を築き、エンゲージメントを高めていくか?
  • イラストを使ったグッズ展開や、企業とのコラボレーションはどう進めるか?
  • 収入の柱を複数持つために、どんな展開が考えられるか?

一見「ゆるふわ」に見える世界観も、実はターゲット層の心に刺さるように、細部まで計算され尽くされている可能性があります。キャラクター設定、色使い、言葉選び、発信のタイミング… 全てが、ファンを獲得し、ビジネスとして成長させるための戦略に基づいているかもしれません。

これは、イラストレーターに限った話ではありません。どんな分野のクリエイターであっても、「感覚」や「才能」だけで成功しているように見える人の多くは、見えないところで泥臭い努力や計算、つまり「商売」としての工夫を重ねているものです。成功には、ソロバン勘定が欠かせない、ということです。

 

「商売」として成り立たせるために、今日からできること

フリーランサー

「なんだか難しそう…」と感じたかもしれません。でも、大丈夫。最初から完璧にできる必要はありません。少しずつ意識を変え、行動していくことが大切です。

今日からできることとして、いくつか提案させてください。

  • 自分の「価値」を言葉にしてみる:「何が作れるか」だけでなく、「それによって誰にどんな良いことを提供できるか」を考えてみましょう。これが、あなたの独自の価値になります。
  • 情報発信を始めてみる(または強化する):自分の作品や考えを、ブログやSNSなどで発信してみましょう。最初は反応がなくても、続けることで誰かの目に留まる可能性があります。ポートフォリオサイトを整えるのも重要です。
  • 数字を意識してみる:自分の作業にどれくらいの時間がかかっているか計ってみる、目標とする収入を得るにはどれくらいの単価や件数が必要か計算してみるなど、簡単なところから数字に慣れていきましょう。
  • ビジネスについて学んでみる:本を読む、セミナーに参加する、詳しい人に話を聞くなど、方法はたくさんあります。マーケティング、会計、交渉術など、興味のある分野から少しずつ知識を増やしていくのがおすすめです。
  • 小さく試してみる:いきなり大きな独立を目指すのではなく、副業から始めてみる、クラウドソーシングで実績を積んでみるなど、リスクを抑えながら「商売」の経験を積むのも良い方法です。

大切なのは、「作ること」と同じくらい、「届けること」「価値に変えること」にも意識とエネルギーを向けることです。

 

おわりに – スキルとソロバン、両輪で走ろう

「作れる」スキルは、本当に素晴らしいものです。それはあなたの努力と情熱の結晶であり、誰かの役に立ったり、心を動かしたりする可能性を秘めています。

でも、その素晴らしいスキルを活かして、独立し、仕事を続けていくためには、「商売」の視点、つまり「ソロバン」を持つことがどうしても必要になります。スキルというエンジンと、商売というハンドルやタイヤ。その両方が揃って初めて、行きたい場所へスムーズに進むことができるのです。

独立は、決して楽な道ではありません。でも、自分の力で道を切り拓いていく経験は、何にも代えがたい充実感を与えてくれます。

もしあなたが今、独立を考えているなら、「作れる」スキルを磨き続けると同時に、ぜひ「商売」の視点も養ってみてください。スキルとソロバン、その両輪をしっかりと回していくことで、あなたのクリエイターとしての可能性は、もっともっと大きく広がっていくはずです。

 

「作れる」だけで独立するのはリスクが高いです。もちろんチャレンジして得るものはありますが、きちんと「商売」として展開しないと拡げるのが難しい。 ゆるふわイラストで大人気のあの人もガチガチに計算している。ソロバン大事。

X (Twitter) – Nov 14, 2018



この記事は過去の自分のX(Twitter)のポストを元に、編集しています。

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グラフィックデザインを中心とした小さなデザイン事務所を経営しています。スタッフや外部のデザイナーさん・ライターさんに助けられながら、コツコツと地道に仕事をする日々が気に入っています。パッケージメーカーのデザイナーとして新卒入社→美容系のベンチャーに転職→家庭用品メーカーに転職...という流れを経て、その後独立しました。フリーランスデザイナーとして、10年以上の経験から学んだことや雑記をブログにしています。情報発信が趣味に近く、それが興じてPhotoshop関連の本を出版したり、noteを執筆したりしています。