
出版と登壇のジレンマ〜持ち上げられる感がこそばゆい話
僕はPhotoshopに関する書籍を出版できたおかげで、ときどき登壇や対談の場に呼んでもらうことがあります。自分としては、こうした機会をいただけるのは本当にありがたいですし、学びも多いので嫌いではありません。ただ、実際のところそこまで登壇が得意なわけではなく、場数を踏むたびに「まだまだだなあ」と反省することも多いです。
それでも、せっかく「おいでよ」と声をかけてくれた友達の顔を思い浮かべると、できるだけお引き受けしようという気持ちになります。ところが、こうやって人前で話したり、本を出しているというだけで、不思議と周りが勝手に僕を“権威”のように扱ってくれることがあります。自分の中では「いやいや、そんなすごくないよ」と思うことが大半。それでも、なぜか偉そうに見えるらしいという“バグ”が発生しています。
そこで今回は、「出版や登壇をすると、なぜか権威が盛られるように見える」ことについて、僕がどんなふうに感じているのか、素直な気持ちで書いてみようと思います。
「出版した」だけで変わってしまった景色
正直、自分の手がけた本が書店に並んでいるのを見たときは、単純に感動しました。Photoshopに関してまとめてきた知識やノウハウを形にできた喜びは、今でも大きいです。周囲からお祝いの言葉をかけてもらったり、写真を送ってもらったりすると、「出してよかったなあ」としみじみ思います。
でも、そこで起こるのが「これで一人前の専門家だね」「第一線のプロなんだね」という評価です。もちろん、本を出すまでにはたくさんの努力や勉強をしました。それでも僕は、出版が決まったのは運が重なった部分も大きいと感じているんです。出版社の編集さんとの出会いや、作業をサポートしてくれたスタッフ。そういった人たちがいなければ、そもそも出版の話なんて進むはずもありませんでした。
けれど周りから見れば、「あの人は著書がある」という事実だけで、なんだか突出した人に思えてしまう。そういう目で見られることで、ありがたい面もあるにはありますが、僕としては「いや、実力以上に盛らないでください」と少し気恥ずかしくなるわけです。
登壇や対談で味わう「権威バグ」
本を出したことで、イベントの登壇や対談にも声がかかるようになりました。僕自身は、もともとあまり人前で話すのが得意ではありません。ちゃんと伝わるように言葉を組み立てるのが難しくて、何度も「もう少し深い話ができればよかったのに」と悔やむこともあります。
とはいえ、そうした場で議論したり、新しいつながりが生まれたりするのは楽しいです。僕にとってはチャレンジでありつつも、すごく学びのある時間でもあります。ただ、それが終わると、「今日のゲストは○○さんです!」と紹介を受けたせいなのか、観客の方や他の登壇者が「やっぱり著書も出している人は違う」と言ってくれることがあります。
もちろん、それを否定するつもりもありませんが、「いやいや、僕が話したいくつかの事柄は先人たちの受け売りですよ」と言いたくなるときもあります。僕が話せる内容は、ほとんどが周りの人たちとの会話や日々の仕事から学んだことです。だからこそ、「偉い人扱い」は僕にとって、相当ムズムズするものなんですよね。
実際、周りのおかげで成り立っている
僕が書籍を出せたのも、登壇の機会があるのも、周りの方のおかげです。原稿チェックを一緒にやってくれたスタッフや、イベントで僕を紹介してくれる仲間たち。デザインの仕事に関しても、チームプレイの重要性を痛感する場面が本当に多いです。
それなのに、いつのまにか「僕だけが成果を出した」かのように思われるのは、ときどき歯がゆさを感じます。自分がスキルを磨く努力をしていないわけではないですが、それ以上に、出会った人たちの知恵やつながりのおかげで今の自分がある。表舞台に立っている僕を背景から支えてくれる人たちの大きさを、見逃してほしくないと思います。
そうは言っても、著書を持っている人がみんな“自分一人で達成した顔”をしているわけではないでしょうし、深く感謝の気持ちを持っていると思います。ただ、表に出るのが自分だからこそ「一緒に作ったんだ」ということを伝えていきたいなと常々思っています。
僕が大事にしていること
そういうわけで、周りから期待や賞賛をいただくことは素直に受け止めつつも、「僕ひとりの手柄ではない」というスタンスは常に心に留めています。ときどき「あの本を書いた○○さん」みたいに紹介されると、むしろ恥ずかしさがこみ上げるくらいです。
自分の名前で本を出している以上、そう呼ばれるのは自然なことだし、僕も誇りに思う気持ちはあります。ただ同時に、周りのサポートがいなければ成し得なかったことを忘れないようにしたい。そこを見失うと、自分を客観視できなくなってしまって、大事な学びの機会を逃してしまう気がします。
幸いなことに、登壇や対談の場では、「こういうところが難しかった」「この失敗からこう学んだ」などの話をすると、逆に親しみを持ってもらえることも多いです。それによって、新たなアイデアや別の視点が生まれたりもするので、「自分が優れているわけじゃないし、むしろ勉強中です」という謙虚な姿勢をこれからも大切にしていきたいと思っています。
おわりに
出版したり、人前に立ったりすると、不思議と「権威バグ」とでも呼びたくなるような現象が起きてしまいます。自分の実力以上に評価されているかのようで気恥ずかしい反面、そうした場や機会を提供してくれる皆さんにはとても感謝しています。
実際のところ、僕はこれからも学ぶことだらけで、仕事でも日常でも反省の連続です。それでも、自分にとって大きかったのは「周りの存在」だと痛感しています。編集さん、仲間たち、そして話を聞いてくれる人たち。そういう人々がいなければ、いまの僕は何も形にできなかったでしょう。だからこそ、いまの状況に甘んじることなく、さらに成長していきたいです。
出版できた事は本当にありがたいし、登壇や対談は友達に誘われたらなるべく出ています。得意ではないですが、色んな学びや反省があるので、嫌いではないです。 唯一気になるのが、見せかけの権威性が勝手に上がるバグが発生する事です。別に何もしていない。ほぼ周りの方のおかげ。
X (Twitter) – Sep 26, 2020