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デザイナーの働き方

「デザインが好き」だけじゃ続かない? デザイナーの働き方と、僕たちが失っているもの

デザインの世界って、キラキラして見えますよね。「好きなことを仕事に!」という夢を抱いて、この業界に飛び込んできた人も多いと思います。僕自身、モノづくりが好きで、自分のアイデアが形になる瞬間に大きな喜びを感じています。クライアントに喜んでもらえたり、世の中の役に立っている実感を得られたりするのは、デザイナーならではの醍醐味です。

でも、その一方で、ふと周りを見渡すと、才能豊かで「デザインが本当に好き」だったはずの仲間たちが、いつの間にかこの業界から距離を置いている…なんてことが、残念ながら少なくありません。

「他にやりたいことができた」という前向きな理由なら良いのですが、話を聞いてみると、「働き方が合わなかった」「心身ともに疲弊してしまった」という声が多いことに、胸が締め付けられる思いがします。

デザインという仕事は、本来もっと創造的で、ワクワクするもののはず。なのに、なぜ続けられなくなってしまう人がいるのでしょうか? 今回は、デザイナーの働き方について、少し深く考えてみたいと思います。

 

デザイナーを取り巻く「見えない」プレッシャー

デザイナーの仕事が、時に過酷になる背景には、いくつかの要因があるように感じます。

まず、「時間との戦い」。これは多くの仕事に共通することかもしれませんが、デザインの場合、特に締め切りがタイトなことが多いです。急な修正依頼や仕様変更も日常茶飯事。「明日までに!」「なんとか今日中に!」という言葉が飛び交う現場も珍しくありません。

また、デザインは「成果が見えにくい」「価値を理解されにくい」という側面も持っています。良いデザインを作るためには、リサーチ、コンセプト設計、アイデア出し、試行錯誤…と、目に見えない多くの時間と労力がかかっています。でも、完成したデザインだけを見ると、「なんだかサッと作ったように見える」と思われてしまうことも。その結果、適正な対価が得られなかったり、無理な要求をされやすくなったりするケースもあるように思います。

さらに、デザイナー自身の「こだわり」や「責任感」も、長時間労働に繋がりやすい一因かもしれません。「もっと良くしたい」「期待に応えたい」という気持ちが強い人ほど、時間を忘れて没頭してしまいがちです。もちろん、それは素晴らしいプロ意識ですが、度が過ぎると自分を追い詰めてしまうことにもなりかねません。

「好き」を言い訳に、無理をしていませんか?

「好きな仕事なんだから、多少の無理は仕方ない」

「クリエイティブな仕事は、夜遅くまでやるのが当たり前」

そんな風潮が、デザイン業界には根強く残っている気がします。でも、本当にそうでしょうか?

「好き」という気持ちは、仕事を続ける上で強力なエンジンになります。でも、それだけを燃料にして走り続けるのは、いつか必ずガス欠を起こしてしまいます。心や体が悲鳴を上げているのに、「好きだから頑張らなきゃ」と自分に鞭打っていませんか?

デザインは、数ある職業の中の一つです。特別なものでも、他の仕事より尊いものでもありません。他の仕事と同じように、健全な環境で、持続可能な働き方ができてこそ、良いパフォーマンスを発揮できるはずです。

長時間労働や過度なプレッシャーは、短期的には成果を出せるかもしれませんが、長期的にはデザイナーの創造性を奪い、心身を蝕んでいきます。燃え尽きてしまっては、元も子もありません。

働き方の「ヤバさ」に気づかないフリをしていないか

僕が気になるのは、デザイナーの労働環境が、一般的な感覚からすると「なかなかヤバイ」状況にあるにも関わらず、それがあまり問題視されていないように見えることです。

もちろん、全ての職場がそうだとは言いません。素晴らしい環境を提供している企業やチームもたくさんあります。でも、一部の過酷な環境が「業界の常識」かのように扱われ、そこで働くデザイナーたちが声を上げにくい状況があるとしたら、それは大きな問題です。

「そこまで働かせないと、本当に良いデザインは生まれないのだろうか?」
「この働き方を続けて、僕たちは一体何を得て、何を失っているんだろうか?」

そんな疑問が、僕の頭をよぎります。

才能あるデザイナーが疲弊し、業界を去っていくことは、本人にとってはもちろん、業界全体にとっても大きな損失です。新しいアイデアや視点が失われ、デザインの質そのものが低下していく可能性だってあります。

 

より良い働き方のために、僕たちができること

デザイナーたち

じゃあ、どうすればいいのでしょうか? これは、デザイナー個人だけの問題ではなく、企業やクライアント、業界全体で考えていくべき課題だと思います。

デザイナー個人としてできること

  • 自分の限界を知り、境界線を引く:無限に働き続けることはできません。「ここまでやったら休む」「この時間は連絡を返さない」など、自分なりのルールを決めることが大切です。
  • 「No」と言う勇気を持つ:無理な納期や要求に対して、時にはっきりと「No」と言うこと、あるいは代替案を提案することも必要です。健全な関係性を築くためには、一方的な我慢は禁物です。
  • 自分の価値を正当に主張する:自分のスキルや経験、提供できる価値を理解し、それに見合った対価を求めることは、プロとして当然の権利です。
  • 休息を意識的に取る:忙しい時ほど、意識して休息を取り、心身をリフレッシュさせることが重要です。良いアイデアは、リラックスした状態から生まれることも多いものです。
  • 仲間と繋がる:同じような悩みを抱えるデザイナー仲間と情報交換したり、相談したりすることで、気持ちが楽になったり、解決策が見つかったりすることもあります。

企業やマネジメント層に求められること

  • 現実的なスケジュール管理:無理のない納期設定と、適切な人員配置を心がける。
  • 労働時間の尊重:サービス残業を前提とせず、定められた時間内で質の高い仕事ができる環境を整える。
  • デザインへの理解と適正な評価:デザイナーの仕事内容やプロセスを理解し、その価値を正当に評価する。
  • 心理的安全性の確保:デザイナーが意見や懸念を表明しやすい、風通しの良い職場環境を作る。
  • 休息と成長の機会提供:休暇を取りやすい雰囲気を作り、スキルアップや学びの機会を提供する。

クライアントや関係者に期待したいこと

  • デザインプロセスへの理解:デザインは魔法ではありません。良いものを作るには時間とプロセスが必要です。
  • 明確なコミュニケーション:目的や要望を具体的に伝え、フィードバックは建設的に行う。
  • パートナーとしての尊重:デザイナーを単なる「作業者」ではなく、課題解決のパートナーとして尊重する。

 

デザインを「続けられる」仕事にするために

デザインは、世の中をより良く、より豊かにする可能性を秘めた、素晴らしい仕事です。だからこそ、この仕事に情熱を持つ人たちが、希望を持って働き続けられる環境であってほしいと心から願います。

「好き」という気持ちを大切にしながらも、自分自身を犠牲にしない働き方。それが当たり前になるように、デザイナー一人ひとりが意識を変え、声を上げ、そして業界全体が変わっていく必要があります。

この記事が、今まさに働き方に悩んでいるデザイナーさんや、これからデザイナーを目指す方々、そしてデザイナーと関わる全ての人にとって、何かを考えるきっかけになれば嬉しいです。

 

折角デザインが上手いのに、働き方が合わずにデザインから距離を置いてしまう方が周りに何人かいます。デザイナーの労働環境って、一般的な感覚からするとなかなかヤバイのに、あまりフォーカスされませんよね。そこまで働かせないと駄目なんだろうか。数多ある内の一つの職業に過ぎないのに。

X (Twitter) – Mar 12, 2020



この記事は過去の自分のX(Twitter)のポストを元に、編集しています。

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グラフィックデザインを中心とした小さなデザイン事務所を経営しています。スタッフや外部のデザイナーさん・ライターさんに助けられながら、コツコツと地道に仕事をする日々が気に入っています。パッケージメーカーのデザイナーとして新卒入社→美容系のベンチャーに転職→家庭用品メーカーに転職...という流れを経て、その後独立しました。フリーランスデザイナーとして、10年以上の経験から学んだことや雑記をブログにしています。情報発信が趣味に近く、それが興じてPhotoshop関連の本を出版したり、noteを執筆したりしています。