
「忙しいけど儲からない」を防ぐ価格設定の考え方
フリーランスとして、あるいは自分の事業としてデザインの仕事をしていると、多くの人が一度は「価格設定」の壁にぶつかるのではないでしょうか。僕も独立したての頃は、自分のスキルや提供する価値に対して、いくらが適正なのか、本当に悩みました。
特に、会社員から独立した場合、時間の感覚が大きく変わりますよね。会社にいれば、打ち合わせの時間も、資料を探している時間も、お給料が発生していました。でも、独立すると、その全てが「自分の時間=コスト」になります。この意識転換が、適正な価格設定をする上で、めちゃくちゃ大事なんです。
今回は、僕が過去のツイートでも触れた「時間=コスト」という考え方を深掘りし、特に見落としがちな「見えないコスト」について、そしてそれが価格設定にどう影響するのかをお話ししたいと思います。「毎日忙しく働いているのに、なぜか手元にお金が残らない…」そんな状況を避けるためのヒントになれば嬉しいです。
大原則「時間=コスト」を体に刻む
まず、フリーランスや個人事業主にとっての基本中の基本、「時間=コスト」という考え方についてです。これは、「時給いくらで働く」ということではありません。
デザイン制作そのものにかかる時間はもちろんコストです。でも、それ以外にも、ビジネスを成り立たせるためにはたくさんの時間を使っていますよね。その一つ一つが、実はコストなんだと認識することがスタート地点です。
会社員時代の感覚が残っていると、「打ち合わせは準備みたいなもの」「アイデアを考えている時間は、まだ仕事が始まっていない」なんて思ってしまうかもしれません。でも、独立したら、その時間も貴重なリソース。その時間を使って他の制作ができたかもしれないし、新しいスキルを学ぶこともできたかもしれない。だからこそ、全ての業務時間をコストとして捉える必要があると考えています。
請求書に載らない「見えないコスト」たち
では、具体的にどんな時間が「見えないコスト」になりやすいのでしょうか? 僕が特に重要だと考えているのは、以下の3つです。
1. お客さんを見つけるための時間(営業・広告)
新しいお客さんを獲得するための活動、これも立派なコストです。
- 営業活動:ポートフォリオサイトを更新したり、SNSで発信したり、交流会に参加したり…。直接的な制作ではないけれど、将来の仕事につながる大切な活動です。問い合わせ対応や、見積もり作成にも時間がかかりますよね。
- 広告費:もし広告を出稿しているなら、その費用はもちろん価格に転嫁しないといけません。広告運用に時間を使っているなら、その時間もコストです。
これらの活動にかかる時間や費用を価格に含めておかないと、いざ仕事を受注しても、営業活動分のコストを回収できない、なんてことになりかねません。
2. アイデアを生み出す時間(企画・考案)
デザイナーにとって、アイデアを練る時間は、成果物の価値を左右するとても重要なプロセスです。
- リサーチ:競合のデザインを調べたり、参考資料を探したり。
- コンセプトメイキング:デザインの方向性を考え、コンセプトを固める時間。
- ラフスケッチや試作:具体的な形にする前の、思考錯誤の時間。
これらは、手を動かしてIllustratorやPhotoshopを操作している時間とは違いますが、デザインの質を高めるためには不可欠です。特に、クライアントの課題解決につながるような深い提案をするためには、相応の思考時間が必要になります。この「考える時間」の価値を、自分自身がしっかり認識し、価格に反映させることが大切です。
3. 認識をすり合わせる時間(打ち合わせ・コミュニケーション)
クライアントとの打ち合わせや、メール・チャットでのコミュニケーション。これも、意外と多くの時間を占めます。
- ヒアリング:クライアントの要望や課題を深く理解するための時間。ここを丁寧にやるかどうかで、後の手戻り具合が大きく変わります。
- 提案・説明:デザインの意図を伝え、フィードバックをもらう時間。
- 修正対応:フィードバックを受けて修正し、再度確認してもらうやり取り。
特に「丁寧な打ち合わせ」を心がけるなら、その分、多くの時間が必要になります。クライアントとの認識齟齬を防ぎ、スムーズにプロジェクトを進めるためには欠かせない時間ですが、これも立派なコストです。もし、打ち合わせが長時間に及んだり、回数が多くなったりすることが想定されるなら、それも価格設定の際に考慮しておく必要があります。
「忙しいのに、なぜか儲からない…」その原因とは?
もし、あなたが「毎日たくさんのタスクをこなしていて忙しいはずなのに、思ったほど利益が出ていない」と感じているなら、それは、先ほど挙げたような「見えないコスト」を価格にきちんと反映できていないからかもしれません。
制作時間だけをベースに価格を決めてしまうと、営業や打ち合わせ、アイデア出しに使った時間は、全て「持ち出し」になってしまいます。そうなると、
- 働いても働いても、利益が積み上がらない
- 新しいスキルを学んだり、機材を新調したりする余裕がない
- 疲弊してしまい、仕事の質が落ちる、あるいは続けられなくなる
という、まさに「忙しいけど儲からない」「じり貧」の状態に陥ってしまう可能性があります。これでは、せっかく独立して自分の力で道を切り開こうとしているのに、本末転倒ですよね。
自分の価値を守るための価格設定ヒント
では、どうすれば「見えないコスト」を価格に反映できるのでしょうか?
一番シンプルなのは、自分の時給(時間単価)を設定する際に、制作以外の業務時間も考慮に入れることです。
例えば、1ヶ月の総労働時間のうち、実際に手を動かして制作している時間が6割だとしたら、残りの4割は営業、打ち合わせ、学習などの「見えないコスト」にあたる時間かもしれません。その4割の時間も含めて、自分が目標とする収入を達成できるような時間単価を設定する必要があります。
あるいは、プロジェクトごとに見積もりを出す際に、制作時間だけでなく、打ち合わせやリサーチ、修正対応にかかりそうな時間も予測して、項目として計上するという方法もあります。
どちらの方法が良いかは、仕事のスタイルや案件の種類にもよると思います。大切なのは、「請求書に載らない時間も、自分のビジネスにとってはコストである」という意識を持ち、それを価格に反映させる工夫をすることです。
もちろん、最初は「こんなに高くしていいのかな…」と不安になるかもしれません。でも、自分の時間とスキル、そして提供する価値を正当に評価することは、プロフェッショナルとして、そして事業を継続していくために、絶対に必要です。
まとめ – 健全なフリーランス活動のために
今回は、フリーランスデザイナーが陥りやすい価格設定のワナと、「時間=コスト」の考え方、特に「見えないコスト」の重要性についてお話ししました。
- 独立したら、全ての時間がコストであると認識する
- 営業、広告、アイデア考案、打ち合わせなど、「見えないコスト」を見える化する
- これらのコストを価格に反映させないと、「忙しいけど儲からない」状態になる
- 自分の価値を正当に評価し、持続可能な働き方を目指す
価格設定は、一度決めたら終わりではありません。経験を積んだり、スキルが上がったり、あるいは経済状況が変わったりする中で、常に見直していくべきものです。
この記事が、あなたの価格設定を見直すきっかけとなり、より健全で、やりがいのあるフリーランス活動を送るための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
時間=コスト。独立すると値段設定に迷いますよね。営業するならその経費を、広告を出すなら広告費を商品価格に加味しておかないと、忙しいけど儲からないという事態になりがち。大事なのが、アイデア考案等の時間もコストと捉えること。丁寧に打合せするなら、そこも価格に反映しないとじり貧に。
X (Twitter) – Apr 28, 2020