ロックコンサートの無骨な男らしさを匂わせるチラシデザインです。
単純なモノトーンではなく、色味として少し紫を加えることで、アーティストのダンディな雰囲気や男性の色気を感じさせるデザインになっています。大胆にデザインが削られてしまったような演出は紙面にインパクトを与え、ロックらしいパワフルさと、チャリティーにおける不屈の精神を思わせます。
デザイナーの振り返り
■ 凝ったフォントやレイアウト、華美な装飾を避け、骨太なサウンドを想像させるようなチラシデザインに仕上げています。
■ 表面にほぼ全ての情報を掲載するため、アートワークとのバランスに気をつけて作成しました。
■ 裏側は企画意図とアクセスを余裕を持ってレイアウトし、落ち着いて目を通してもらえるようにしています。アーティスト写真も表面よりもリラックスした雰囲気のものをチョイスしました。
イベントの魅力を伝えながら、いかにチラシ上で情報をコントロールするか
最近は、チャリティなどが目的のロックイベントなどが全国各地で開催されているようです。このようなイベントは、屋外で行われることも多く、たくさんの出演者でにぎわいをみせるものです。観客も自分のお目当てのバンドに的をしぼって観覧する場合も多く、このようなロックイベントでのチラシデザインにおいては、掲載しなくてはならない情報が多くなりがちですので、ロックイベントのチラシ制作では、ロックの魅力を伝えるだけでなく、いかに分かりやすく、見やすいものを作成するかが重要なポイントとなってきます。
会場の熱気が伝わるようなイメージのチラシが理想的ですが、そのためには、イラストよりは写真がむいているかもしれません。前年にもイベントが行われているようなケースでは、そのときの写真をデザインの一部に取り込むようにして作成すると、臨場感あふれるものに仕上がるでしょう。また、そのような視覚的な雰囲気だけでなく、必要な情報については、簡潔に掲載することが大切です。特に、複数のバンドが参加するイベントでは、それぞれのバンドの出演順などについても、可能な限り掲載する場合も多いようです。その場合には、出演時刻などについての表記に関しては、だれがみても、同じ判断が可能なような表記を心がけ、表記方法は統一することが肝要といえます。
チラシはイベントの宣伝媒体であり、来場者の貴重な情報源
紛らわしい表記は、イベントの混乱を招くことにもつながりますから、チラシの作成時には、ひとりではなく、複数人の目で掲載内容について細かくチェックするようにしたいものです。また、イベントの日時についても、一日だけのイベントだけでなく、数日間開催されるようなロックイベントも珍しくないので、そのような場合には、日によってのスケジュールを簡潔に載せることが大切となります。
また、屋外でのロックイベントなど、普段はそれほど混みあわないような場所で開催される場合には、イベント当日には、会場周辺の道路も混雑して渋滞などが発生する可能性もあるので、会場までのアクセス方法や、駐車場の案内、または、公共交通機関の利用をすすめるなど、そのイベントによって、対応は異なってくるので、それらに臨機応変に対処できるようなレイアウトを事前に考えておくことも大切といえます。チラシは、そのイベントに訪れる人にとっては、必要な情報がコンパクトにまとまった頼りになる一枚といえるので、その信頼にこたえることができるように、誠実に作成することを心がけています。
制作フライヤー・チラシデザインに対する感想
ザラッとした質感を与えるようなフライヤーデザインが、ロックらしさを強調していますね。
ハードな印象を与える、あるいは「男っぽさ」を感じさせるデザインには、よく排他的、あるいはやや退廃的で荒廃したムードをよくデザインに使う時があります。このチラシ表面では、なかなか凝った加工がしてある画像をチョイスしています。模型などの汚し塗装として、「ウェザリング」と呼ばれる加工がありますが、それは経年劣化を感じさせる原型のサビや塗装の剥がれを表現するものですが、この背景として使われている画像も、似たような”スレ”や”剥がれ”を表現しているのでしょう。それがカラーとして白抜きで表現しているのは面白い試みですね。フォントの使い方はスタンダードですが、斜めに入る「伝説の~」の部分や赤い2つのキャッチーなアイテムは、具体性のある写真に方向が向けられています。それぞれのアイテムは”コ”の字型に配置され、左上の白抜きのカスレ模様の表現があるため、人物は中央配置でなくともバランスが取れているんですね。全体としては表現が強いインパクトを感じさせるはずですが、ドラマーであるライブの主役を効果的に惹きつける役割を果たしています。
チラシの裏面は表面の喧騒から抑えてかなりシンプルですが、過去に行われたイベントの続編としてあるなら、ここでは地図などの重要なインフォメーションさえ明確なら、デザインとしては表面の補助としてある感じは、妥当な構成ではないでしょうか?なかなか大きく使われている裏面のモノクロ画像も、ドラマーであることを理解させる事ができますし、企画目的が支援チャリティーであり、会場の場所がハッキリわかるなら、裏面の役割はこれで充分だと思います。
こういう心意気のある音楽イベントは応援したいですね。
音楽関連のイベントはとても多くなっているのですが、地域が限られているので、それほど多く感じないという人が多いでしょう。しかも1日のみしか行われないことも多いので、あまり知られていないのです。このチラシデザインは、東日本大震災の復興を支援するためのロックイベントを宣伝するために作成されていますが、2016年時点ですでに5年経過しているため、若干風化傾向が見られます。
しかし、現在でもまだ復興途中であり、被災者が苦労しているということを忘れないように、このようなイベントは各所で行われています。
チラシデザインの作りはとてもロックらしくなっており、それほど派手ではありませんが、クールでインパクトがあると言えるでしょう。通常のロックイベントであれば、もっと派手にしてアピールしてもよいのですが、あくまで震災の復興を支援するイベントなので、このように抑えているように思えます。とても男らしさを感じることができる作りだと言えるでしょう。
※掲載しているフライヤーデザインサンプル・モックアップはイメージです。実際の用途・サイズ・仕上がりとは異なる場合がございます。