IKEAのブランド戦略とロゴの役割
スウェーデン発のグローバル企業であり、キッチン家電からインテリア・家具などをデザインして販売している「IKEA」。2008年から今日まで、世界最大の家具小売事業者として君臨し続けています。今回のIKEAのロゴのリニューアルは、マイナーチェンジと言えるもので、ある日変わっていても気づかないかもしれません。
IKEAは世界中で多くの人々に愛されているだけでなく、企業としてはカタログや店舗デザイン、プロダクト名に至るまで独自のブランディングを綿密に作り上げてきました。そのブランドイメージはシンプルかつ機能的な北欧デザインの象徴として定着しています。そんなIKEAが今回行ったロゴの微調整は、一見すると些細に感じられるかもしれません。しかし、グローバル展開する企業にとってロゴはブランドの「顔」であり、細部のデザインや文字間隔の修正が長期的に大きな影響を与える場合もあります。店舗の看板だけでなく、公式サイトやアプリ・広告・製品パッケージなど、ロゴが使用される場面は多岐にわたり、そのすべてが統一された「IKEAらしさ」を担保する役割を果たします。
こうした統一感のあるビジュアル戦略を維持するために、ロゴの調整は欠かせません。誤差が小さく見える変更であっても、見慣れない人の目には意外と違いが伝わりやすいものですし、企業がロゴに施す「ちょっとした工夫」は、その後何年、何十年にわたって世界中で使用され続けるのです。
ロゴ変更の具体的なポイント
Today on Brand New (Noted): New Logo for IKEA https://t.co/H7TXH94XvT pic.twitter.com/Wz5GOP0DGs
— UnderConsideration (@ucllc) April 11, 2019
左がBefore / 右がAfter(最新ロゴ)
全体的なロゴタイプのカーニング(文字間隔)が見直され、以前よりも縦幅のボリュームがアップしました。今回の変化のポイントは、小さくした時の視認性向上にあるのではないでしょうか。文字を大きく見せる方向でのリニューアルだと感じられます。また、AとEのネガティブスペース(黄色地が見える部分)に対して、以前より大きくゆとりを持たせてあります。そのため離れて見てもその部分が潰れて見えることがありません。
デジタル時代に求められるロゴの視認性
こうした「ほんの少しの変化」こそが、企業にとっては大きな勝負所でもあります。昨今では、ウェブサイトのアイコンやスマホ画面でのアプリロゴなど、ロゴを縮小表示する機会が急増しました。そのため、よりシンプルで、かつ遠目でも判別しやすいデザインが求められます。IKEAの今回の調整は、その要請にしっかりと応える施策と言えるでしょう。実際、スマートフォンのホーム画面にアイコンとして並んだときに、微調整前のロゴよりもインパクトを失わずに認識できるかどうかは、企業のデジタル戦略においてとても重要になってきています。
また、IKEAが扱う製品のパッケージや店内サインなど、さまざまなサイズで印刷される場所にもこのロゴは使われます。拡大・縮小の幅が広いデザインツールこそ、潰れない文字のバランスが必要となるため、今回のリニューアルによって幅広い場面での見やすさが格段に高まることが期待できます。
ブランド価値向上につながるロゴ変更
・IKEAのロゴデザイン – Jörg Hüttenhölscher – stock.adobe.com
きちんと伝えないと、気づかない程の変化です。巨大な企業ですので、新旧ロゴが入り混じる状態はしばらく続くのではないでしょうか。この変化がIKEAにどれだけの利益やメリットをもたらすのかが気になる所ですね。
企業イメージ向上と実務上のメリット
デザインの世界では、こうしたロゴやコーポレートアイデンティティのアップデートがもたらす影響は大きく分けて二つあると考えられます。ひとつは「企業イメージの向上」。ブランドの顔となるロゴが洗練されれば、それだけで新鮮さや先進性を感じさせます。特に、グローバル企業のロゴ刷新はニュースとなり、多くの消費者の目に留まるため、話題性によるPR効果も期待できます。もうひとつは「実務上のメリット」。印刷やデジタル媒体での展開がしやすくなり、ロゴを使用する店舗スタッフやデザイナー側にも扱いやすさが生まれるかもしれません。
一方で、多くの支店や販売チャネルを抱える世界的企業では、新しいデザインの浸透に一定の時間を要します。しばらくは旧ロゴとの“混在”を目にすることもあるでしょう。しかしながら、地道な差し替えプロセスを経ることで、やがては世界中のIKEAが新しいロゴに統一され、見慣れた空間の中でもさりげなく洗練された印象を与えてくれるはずです。
こうして企業が着実にブランドを磨き続ける背景には、一つひとつの小さな変更が長期的なブランド価値を支え、消費者の信頼や愛着を育む原動力になるという考え方があります。IKEAが継続的に世界トップの家具小売企業であり続けるためにも、今回のロゴリニューアルは大切なステップのひとつと言えるのではないでしょうか。
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