社内で販促用のチラシをつくる場面は、思いのほか多いものです。新製品の紹介や、社内イベントの告知、地域企業とのコラボレーション企画など、紙で情報を届けたいシチュエーションは意外なほど身近に転がっています。ところが、「プロっぽい」チラシを一から生み出そうとすると、専用デザインソフトや入稿形式の知識、印刷仕様への理解など、慣れない作業が多く、気後れするケースもしばしばです。
こうした中で、Microsoft PowerPoint(以下、PowerPoint)を用いたチラシ制作が、じわじわと注目を集めています。スライド作成のツールとして知られるPowerPointは、実は配置や図形加工、文字装飾などを自由に扱えるため、必要最低限のデザイン要素を組み立てるには十分なポテンシャルを持っています。オフィスで使い慣れたソフトであるがゆえに、専門のデザインツールよりも抵抗が少なく、初めて内製デザインに挑戦する担当者にとって敷居が低い点も魅力です。
PowerPoint(パワーポイント)で彩るチラシの可能性
PowerPointでチラシを整える最大の強みは、素材の扱いやすさと微調整の融通が利くことにあります。たとえば、「新商品の特長をもっと目立たせたい」と感じたら、テキストボックスのサイズや色を即座に変更できます。製品写真を強調したい場合は、画像を大きく拡大して配置し、不要な背景色を透過させることも難しくありません。
また、社内で複数人が同一ファイルにアクセスできるため、急な価格変更や連絡先修正にも迅速に対応できます。これまで外部のデザイン事務所に依頼していた細かな改変作業が、日常業務の流れの中で完結できるのは大きなメリットです。
ブランドらしさを宿すためのひと工夫
とはいえ、PowerPointで単純に情報を並べただけでは「社内で作りました」感が拭えず、ブランドらしさや洗練された印象を打ち出すのは難しいものです。そこで大事なのが、一定の「デザインガイドライン」を自社内で用意しておくことです。たとえば、コーポレートカラーをパレット登録し、見出し用フォントと本文用フォントを一定ルールで使い分けるといった、簡易的なガイドラインを策定します。
このような下地があれば、PowerPointで作成したチラシも見た目に一貫性が生まれ、時間を重ねるごとに「自社らしさ」がにじみ出てきます。色や書体、配置の規則性を守るだけでも、受け手が「ちゃんと考えられたデザインだ」と感じるものです。
情報を選び抜く訓練
PowerPointでチラシを組み立てる際、陥りやすい罠として「情報過多」が挙げられます。スペースがあるからと、思いつくままにテキストや写真を詰め込みすぎると、かえって何を訴求したいのかがぼやけてしまいます。そこで、まずは訴求したいポイントを明確に絞り込みましょう。今回のチラシで本当に届けたいメッセージは何か、誰をターゲットにしているのか、そのターゲットは何を求めているのか――こうした問いを明確にすることで、盛り込みたい情報が自然と精選されていきます。
たとえば新製品告知の場合、「価格」「魅力的な特長」「問い合わせ先」など、最小限ながら的確な情報を明示し、そのまわりを雰囲気を補強する写真やアイコンで味付けしていくと、すっきりと伝わりやすいデザインに仕上がります。PowerPointで要素を自由に動かせるからこそ、行間や余白を意識し、最後に一歩引いて全体のバランスを点検する作業を習慣づけるとよいでしょう。
PowerPoint特有の強み – 社内文化としてのデザイン
「デザイン」というと、特別なセンスや訓練が求められる領域というイメージがあります。しかし、PowerPointを介してチラシを何度か作っていくうちに、担当者自身が「わかりやすい情報整理」「視線の流れを意識したレイアウト」「統一感あるカラーリング」など、デザイン的な思考回路を自然と身につけることがあります。これは社内全体から見れば、小さくない財産です。
デザイン専門職ではない人材が、視覚的コミュニケーションについて一定の理解を深めることで、他の資料作りや提案書の作成にも良い影響が及びます。まるで社内にデザイン文化の芽が生えるように、PowerPointでチラシをこつこつ作り続けることで、会社全体のアウトプットの質が底上げされていく可能性があります。
外部デザイン事務所の「型」を生かす
一方で、「もう少しだけ洗練度を高めたい」「社内でのデザインレベルアップを効率的に進めたい」と考えるなら、プロのデザイン事務所に協力を仰ぐことが有効です。たとえば、あらかじめPowerPointで扱いやすいテンプレートをプロに設計してもらい、それを基に社内で自由にコンテンツを更新していく――こうしたハイブリッドな手法が考えられます。
プロがデザインしたテンプレートには、ロゴやカラーパレット、適切な余白設計、フォントの使い分け方、見出し・小見出し・本文の階層的な整え方など、一定のルールがすでに埋め込まれています。そのため、社内担当者は中身の更新に集中するだけで、自然と高い完成度のチラシが出来上がります。最初に専門家の力を借りて「型」を整えておくことで、PowerPointでの内製デザインが一段上のステージへと引き上げられるわけです。
紙の魅力を再確認する
デジタル全盛の今、紙のチラシは時代遅れに見えることもあります。しかし、手渡しできる、じっと見つめられる、ふとしたときに再度手にとられるといった、紙ならではの強みは依然として有効です。適切にレイアウトし、メッセージを絞り込み、会社の雰囲気が感じられるようなデザインを施したチラシは、受け手に確かな印象を残します。
PowerPointでチラシを作る過程は、デザインを社内文化の一部として根付かせる好機ともなります。デジタルデータを使い慣れたオフィス環境だからこそ、自分たちで生み出した紙媒体が新鮮な刺激を社内外にもたらすかもしれません。
長期的な視野で見るデザイン戦略
一度チラシをPowerPointで作成したら、それで終わりではありません。少しずつ色味を変えてみたり、新しい書体に挑戦したり、訴求ポイントを実験的にずらしてみたりと、継続的な改善が可能です。その試行錯誤の蓄積は、やがて自社特有のデザインへと発展していくことでしょう。
もし、どこかで限界を感じたら、外部デザイナーに再び意見を聞いて軌道修正することもできます。PowerPointでチラシを作ることは、単なるコスト削減策ではなく、社内のクリエイティブ意識を育み、中長期的なデザイン戦略の一端を担う取り組みではないでしょうか。
まとめ
PowerPointは、身近なオフィスツールでありながら、チラシ制作の舞台としても活躍できる柔軟な道具です。その魅力は、操作のしやすさと修正の即応性にとどまりません。自社らしさをカタチにするためのガイドラインづくり、情報整理の訓練、デザインマインドの醸成といった、クリエイティブな側面にも通じています。さらに、専門家によるテンプレート整備や指導を受けることで、ブランド表現の質を安定させ、長期的なデザイン戦略を築くきっかけにもなります。
手軽なチラシ制作から始まる新たな創造的プロセスを、PowerPointという身近なツールで育んでみてはいかがでしょうか。結果として、社内外に対して説得力あるブランドメッセージを伝える一助となり、企業全体の発信力を高めることにつながるはずです。
サイトへのお問い合わせ・依頼 / 各種デザイン作成について