世界52か国で、7700店舗以上のアイスクリーム・パーラーを展開している、米「バスキン・ロビンス(Baskin-Robbins)」のロゴデザインが、4月に生まれ変わりました。大幅なデザイン変更は2006年以来のことです。
🥁 drumroll please🥁…. can you guess the next flavor of the month? Hint: It’s inspired by the best Mother’s Day gift of all time. We’ll reveal the answer after 31 guesses. pic.twitter.com/2Bm3IwRUZN
— Baskin-Robbins (@BaskinRobbins) April 26, 2022
日本では「サーティワンアイスクリーム」のブランド名で親しまれていますが、本社のある米国ほか世界各国では、社名と同じ「Baskin-Robbins」ブランドでチェーン展開しています。
バート・バスキンとアーヴィン・ロビンスのふたりが創業したバスキン・ロビンスは、販売するアイスを「サーティワンアイスクリーム」と名付けました。月に31日間、毎日違うフレーバーのアイスクリームを楽しんでほしいという願いを込めてのことです。
第2次世界大戦後に、それぞれ別のアイスクリームショップを創業したふたりは、数年後に事業の合体を決め、社名をバスキン・ロビンスとします。その当時から、アラビア数字の「31」がロゴにあしらわれてきました。
なお、今回のリブランディングが展開されるのは、いまのところ米国とカナダだけということです。
日本のサーティワンでおなじみの先代ロゴデザイン

・バスキン・ロビンスの先代ロゴ / Renan – stock.adobe.com
バスキン・ロビンスがこれまで使ってきたロゴは、日本の「サーティワン・アイスクリーム」と基本的には同じです。日本のロゴには、カタカナの「サーティワン」が追加されています。
先代のロゴは、大文字「BR」のモノグラムと小文字のブランド名の組み合わせでした。ベースの色はブルーで、モノグラムの一部が「31」と読めるようにピンクになっています。
モノグラムのBとRのストロークは上に行くにつれて太くなっています。ステムはどことなくエクスクラメーションマーク(ビックリマーク)のようです。文字のプロポーションも上に向かって広がっていて、ポンっと飛び出しているような印象も受けます。

・バスキン・ロビンスの先代ロゴ / JHVEPhoto – stock.adobe.com
ブランド名「Baskin Robbins」のロゴタイプは、ジオメトリック・サンセリフ書体をベースにアレンジしたようなデザインです。波打つようなラインに沿って並べられ、かたむきも文字ごとにまちまちです。
先代ロゴは、全体に躍動的で、楽しい気分にあふれています。今日はどのフレーバーを選ぼうか、という注文するときのワクワク感を思い出させるロゴデザインです。
2006年バージョンと2020年バージョン
先代ロゴのデザインは、一見すると2006年から2020年まで使われていたロゴとほとんど同じように見えますが、実は2020年にリニューアルされたものです。色はピンクもブルーも若干ビビッドになり、文字のデザインもこまかく手直しされています。
モノグラムを見ると、2006年ロゴでは「31」が少し大きめだったものが、2020年バージョンでは、「B」「R」それぞれで天地の長さが揃えられています。各エレメント間のスペースも全体に再調整されていて、細かく見ていくと結構手が入っていることがわかります。
新しい「BR」モノグラムはピンクとブラウンのツートーン
今回のリブランディングで、ロゴデザインは大きく変わりました。
モノグラムの「31」が、サーティワンアイスクリームのスプーンと同じピンクであること以外はすべて変わったと言えるでしょう。
ブルーの代わりにブラウンを採用し、ピンクの彩度も抑えられています。ブランド名はすべて大文字に変更され、波打っていたベースラインもまっすぐになりました。モノグラムはセリフ書体に代えられています。

・トイザラスのロゴ / Ricochet64 – stock.adobe.com
先代のロゴデザインには、おもちゃ専門店のブランド「Toys “R” Us(トイザらス)」のロゴに通じるような、子供っぽい奔放さがありました。それに比べると、新しいロゴは少し大人びたように感じます。
とはいえ、あくまでも以前に比べて、ということです。製品がアイスだからといって、クールで冷たいデザインになったわけではありません。太くてまるっこいモノグラムは親しみが持てます。幾何学的な円や半円形をした空間(カウンター)は、コーンやカップに入れたアイスをイメージしているかのようです。また、「Baskin」と「Robbins」をつなぐハイフンは、ピンクのドットになっています。
初代ロゴへの敬意が込められたリデザイン

初代ロゴデザイン via Wikipedia
バスキン・ロビンスというブランド名が誕生したのは1953年です。その当時のロゴの色もピンクとブラウンでした。使われている書体は、19世紀の木活字(もくかつじ)の雰囲気を持っています。
独特の装飾がほどこされた「31」は、立体的な厚みがあります。ロゴタイプは、通常のセリフ体とは逆に、水平方向のストロークの方が太いデザインです。この初代のロゴは1991年のリニューアルまで使われていました。
新しいロゴは初代ロゴへの敬意を表している、というバスキン・ロビンスのコメントが、ウェブメディア『Insider』で紹介されています。
「(オリジナルロゴは)サーカスにヒントを得たピンクとブラウンの書体が使われていました」
サーカスや遊園地にはアイスクリームの屋台がつきものです。たしかに、初代ロゴの独特の書体やデザインは、楽しい、非日常の時間を感じさせます。
このサーカスを思わせるロゴを作り出したのは、広告代理店カーソン/ロバーツ(Carson/Roberts)です。一緒に事業を進めることに決めたバスキンとロビンスは、最初の広告キャンペーンをカーソン/ロバーツ(Carson/Roberts)に依頼しました。
カーソン/ロバーツは、ふたりの名前をブランド名にすることを提案します。また、毎日ちがうフレーバーを楽しめる「31アイスクリーム」というアイデアも同代理店によるものです。
カーソン/ロバーツは、チェリーとチョコレートを表すピンクとブラウンをアイデンティティ・カラーに選びました。初代のロゴには、ピンクとブラウンのドットに囲まれたバージョンもあり、広告にも2色の水玉模様がデザインエレメントとして使われています。水玉模様もピエロを連想しますし、楽しい雰囲気が生まれます。
新しいロゴでは、次のようなところに初代ロゴへのリスペクトが見られます。色のコンビネーション、モノグラムの太くて楽しげなセリフ書体、モノグラムのカウンターやロゴタイプのハイフンに使われているドットなどです。
「過去回帰型」リブランディングの効果と、難しさ
記事で紹介されているバスキン・ロビンスのリブランディングは、「現代的に進化する」というよりも「初代ロゴの精神に回帰する」アプローチを取っています。これは「過去回帰型リブランディング」と呼べるパターンで、近年の老舗ブランドのリブランディングでよく見られる手法です。
過去回帰の効果は、いくつかあります。創業の精神に立ち戻ることで「ブランドの本質」が浮かび上がる。古いファンには「あのブランドが帰ってきた」という回帰の喜びがある。新しいファンには「歴史のあるブランド」として新鮮に映る。まったく新しいデザインを採用するより、ブランドの「資産を再活用する」アプローチになる、という意味で合理的です。
ただ、難しさもあります。単に古いロゴを復活させるだけでは「時代遅れ」と感じられてしまいます。バスキン・ロビンスの場合、1953年のピンク&ブラウンというコンセプトを引き継ぎつつ、書体や配置は現代的に再解釈しています。「過去のエッセンスを抽出して、現代の文脈に翻訳する」という二重の作業が必要なため、実は完全新作よりも難易度が高い場合があります。
落ち着いたトーンのブルーをふくむカラーパレット
バスキン・ロビンスのロゴにブルーが採用されたのは、1991年のリニューアルのときです。ブルーのブランド名の中央に、ピンクの「31」がレイアウトされていました。2006年と2020年のリニューアルでも、ピンクとブルーの組み合わせは保たれていました。
今回のリニューアルで、ロゴからはブルーが消えてしまいましたが、ブランドのカラーパレットの中には健在です。ミントやソーダを連想する新しいブルーは、以前のロゴよりも落ち着いたトーンに変えられました。
バスキン・ロビンスのウェブサイトを見ると、ピンク、ブラウンと同等にブルーが使われています。パッケージや動画、SNS、スタッフのユニフォームも、ピンク、ブラウン、白、そしてブルーという組み合わせです。このおかげで、これまでの30年間で消費者の心に焼きついた、ブランドのカラーイメージとのつながりも切れていません。
サイトデザインからパッケージやユニフォームまで、徹底的に一貫したカラーパレットが適用されているバスキン・ロビンスは、ブランドアイデンティティの実装に関して、良い参考になると思います。
コーポレートカラー変更の「失う認知」と「得る印象」のトレードオフ
バスキン・ロビンスがメインカラーをブルーからブラウンに変えた判断は、ブランディングの観点で大きな意思決定です。長年使われてきた色を変えるときには、必ず「失う認知」と「得る印象」のトレードオフが発生します。
失うのは「視覚的な認知の蓄積」です。10年・20年と同じ色を使い続けてきた結果、消費者は「あの店舗の青」「あの看板の青」を無意識のうちに記憶しています。色を変えると、この蓄積が一度リセットされます。店舗の発見が遅れる、棚の中で見つけにくくなる、といった短期的なマイナスが起こり得ます。
一方で得られるのは「新しいブランドポジション」です。ブルーを脱することで「子ども向けのお店」というイメージから離れ、大人世代も訴求対象に含められる印象に変わります。記事でも触れられている「Z世代を含む新しい層へのアプローチ」は、まさにこの新しい印象を獲得するための判断です。色変更は、現状の認知を維持できないリスクと、新しい層を獲得できる可能性を天秤にかける作業、と捉えると、判断の重みが見えてきます。
「イェーイをつかもう」
新しいタグライン「Seize the Yay(イェーイをつかもう)」のもとで、バスキン・ロビンスとしては初めての公式グッズの販売が始まりました。
*Airhorns* Merch Alert 🚨!!!!! Baskin-Robbins swag is here and ready to be flexed. Shop the link in our bio ➡️ pic.twitter.com/cgenf52DNT
— Baskin-Robbins (@BaskinRobbins) April 18, 2022
Tシャツやソックス、スウェットから、キャップやビーチタオルなど。さらに、スケボーや自転車まで、アイテムはさまざまです。どれもブランドの新しいカラーパレットで楽しくデザインされています。
タグライン「Seize the Yay」には、日常の楽しい時間をつかもう、という思いが込められています。色とりどりのフレーバーが楽しめるアイスクリームも、そんな瞬間を届けてくれます。公式グッズとして提供されているアイテムも、それぞれに日常のハッピーで「イェーイ」な時間を彩ってくれるというわけです。
今回のブランディングを手がけたデザイン会社ChangeUp(チェンジアップ)は、次のようにコメントしています。
「熱狂的なファンを持つ、バスキン・ロビンスのようなブランドには、世代を超えて受け入れられる力があります。新しいビジュアル・アイデンティティ・システムは、昨日のファンを今日のロイヤル顧客へと変え、日々のハッピーな瞬間でZ世代の心をつかむのです」
タグラインとロゴの刷新が「セット」で行われる理由
バスキン・ロビンスのリブランディングでは、ロゴの変更だけでなく「Seize the Yay」という新しいタグラインも同時に導入されています。これは偶然ではなく、ブランドの大規模刷新では、ロゴ・タグライン・カラー・タッチポイント全体をセットで変えるのが基本だからです。
理由はシンプルで、消費者は「ロゴ単体」「タグライン単体」を見るのではなく、それらが組み合わさった「ブランド全体の印象」を受け取るからです。ロゴだけを変えてタグラインが古いままだと、両者のあいだにギャップが生まれて、リブランドの効果が半減してしまいます。逆に、ロゴ・タグライン・色・写真のトーン・口調のすべてが新しい方向に揃うと、消費者の中で「ブランドが本気で変わった」という印象が立体的に積み上がっていきます。
中小規模のブランドでも、リブランディングを検討するときは「ロゴだけ変える」より、「ブランドのタッチポイント全体をどう揃えるか」を最初に計画するのがおすすめです。一度にすべてを変えるのが難しい場合でも、「半年計画でロゴ→タグライン→Webサイト→販促物」と段階的に揃えていく流れを設計しておくと、最終的なリブランド効果が大きくなります。
【参考資料】
・Baskin-Robbins changes its logo – CNN (https://edition.cnn.com/2022/04/11/business/baskin-robbins-new-logo/index.html)
・Baskin-Robbins has an ice-cool new logo | Creative Bloq (https://www.creativebloq.com/news/baskin-robbins-new-logo)
・Baskin-Robbins Debuts a Majorly Sweet Brand Relaunch – PRINT Magazine (https://www.printmag.com/branding-identity-design/baskin-robbins-debuts-a-majorly-sweet-brand-relaunch/)
・Baskin-Robbins – Wikipedia (https://en.wikipedia.org/wiki/Baskin-Robbins)
この記事について
ロゴニュースのコーナーでは、ロゴに関するプレスリリース情報などをお待ちしております。お問い合わせフォームより気軽にご連絡ください。
サイトへのお問い合わせ・依頼 / ロゴデザイン制作について