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パッケージデザイン

Design Week 2021のパッケージデザイン賞候補作品に見るブランドストーリー


パッケージデザイン

デザイン専門サイトDesign Weekは1986年に創刊された雑誌『Design Week』が起源です。同サイトがすぐれたデザインを表彰するDesign Week賞は2021年で31年目を迎えました。ブランド・キャンペーン、アイデンティティ・デザイン、印刷物、ポスターなどさまざまな部門ごとに賞が贈られますが、その中からパッケージのグラフィックデザイン部門の候補作品をいくつかご紹介します。

いずれも、比較的小規模なブランドが競争の激しい市場に切り込むというシチュエーションが共通しています。競合との差別化を図るために、ブランドストーリーをどのようにパッケージデザインに落とし込むかの参考となるでしょう。

 

マイクロファイバークロスのシンプルで力強いリブランド例

英国のマイクロファイバークロスのブランド「E-Cloth」が2021年のDesign Week賞のパッケージの平面デザイン部門で表彰されました。

水だけできれいに汚れをふきとれることが最大の特徴であるE-Clothは、25年前に生まれました。従来のパッケージでは、その特徴をアピールするために、水滴のイラストが大きくレイアウトされています。また、化学薬品を使用していないこと、雑菌を99%除菌できることなどがシール状にデザイン処理されています。パッケージには小さな窓が開けられていて、クロスそのものを触って確かめることも可能。製品パッケージのグラフィックとしては至って正統派と言えるものです。

しかしながら、市場は競合ひしめく飽和状態となっています。E-Clothのリブランディングを請け負ったブランドデザイン会社Pearlfisher社は、新しい世代の消費者に向けて「エモーショナル」なアプローチを取ることにしました。シンプルかつ力強いデザインによって、これまでとは異なるポジショニングをねらいます。

 

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そこで生み出されたのが、大文字「E」をかたどったミニマルなパッケージです。EはもちろんE-Clothからとられたものですが、同時に、Easy(簡単)、Ecological(エコ)、Economical(経済的)、Efficient(効率的)、Effortless(手軽)、Environmental(環境にやさしい)、Essential(必須)といったプロダクトの特徴の象徴にもなっています。

新しいパッケージの印刷面は、基本的にテキストだけで構成されたミニマルデザインとなっています。メインビジュアルだった水滴は、デボス加工(空押し)で、さりげなく上品に表現されています。除菌99%という特徴も水滴の中にまとめられました。アイテムごとに色とプロポーションは異なりますが、「E」を型どったフォーマットによって、ラインナップ全体でカラフルな統一感が作り出されています。

従来型のデザインに比べると、商品とパッケージがひとつのかたまりに一体化していて、強い存在感を示しています。あたかもE-Clothという新しいカテゴリーがあるかのような印象です。従来型デザインのパッケージを使っている競合商品は、E-Clothの前では、その他大勢組としてかすんでしまうでしょう。

このE-Clothのパッケージデザインは、伝統ある英国のD&AD賞でもリブランド部門で表彰されています。

 

ミツバチの世界を再現したパッケージデザイン

ここからは、Design Week賞候補としてノミネートされたデザインを紹介します。

まずは、英国ロンドンで単花蜜を手作りしている「B’s Bees」です。養蜂家の頭文字Bとミツバチ「bee」の発音が同じことから、文字「B」を核としてさまざまにアイデアが広げられています。

 

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びっしりとBを並べてあるのはミツバチの巣のイメージです。ミツバチのひとつの群れには、女王蜂は1匹しかいません。何千何万匹の働き蜂の中から女王蜂を見つけ出すことも養蜂家の重要な仕事のひとつであるということをヒントにして、ラベルを埋めつくす「B」の中に「B’s Bees」というブランド名を紛れ込ませました。

B’s Beesのハチミツは職人による少量生産です。パッケージデザインを手がけたStudio Meanは、製品のクオリティの高さを表現するために、紙と印刷にもこだわりました。花の蜜と花粉の色であるとともに、「ホンモノ」であることを感じさせる質感から、G.F Smith社のファインペーパー「Colorplan」の「Sorbet Yellow(シャーベットイエロー)」が選ばれています。ラベルの文字は活版で印刷されました。

 

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ミツバチに関するトリビアを載せたミニブックレットや、ハチミツを使ったカクテルのレシピパンフレットなども作られました。これらの印刷物も、Colorplan Sorbet Yellowで揃えられています。オリジナルカクテルの名前は、オールディーズの曲名やミュージシャンの名前の「be」や「B」を「B’」に代えて付けられました。また、ネーミングのヒントになった曲のプレイリストをSpotifyで提供するという遊び心にもくすぐられます。

 

ななめ45度に揃えられたグラフィティ的パッケージデザイン

英国の「Cloak+Dagger」は、競合がひしめくクラフトビール市場で、意欲的な若者3人が2017年に立ち上げたブランドです。彼らの熱量の高さは、公式サイトの「about」の見出しに「ビールマニア(enthusiasts)」と掲げているところからもうかがえます。いわゆるビールの「エンスー」というわけです。

彼らは、ビール造りからデザイン、販売、SNSでの発信まで自分たちで手がけています。Cloak+Daggerのメンバーのひとり、Leigh Pearce氏は、イラストレーターでデザイナーでもあります。そして、Cloak+Daggerのブランディングをおこなっているのは、Pearce氏が別のアニメーターと共同経営しているデザインスタジオLollyです。

 

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Cloak+Daggerブランドのどこか悪ぶった感じのトーンはPearce氏の趣味が大きく影響しています。彼は、80〜90年代のポップカルチャーからおおいにインスピレーションを得ています。それが、ビール缶のデザインにグラフィティやヒップホップ的世界が広がっている理由です。

 

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ビールの名前は、ヒップホップ的に韻(ライム)を踏んでいたり、おもしろいことば遊びになっています。そしてその名前をポップなイラストで表現したものがパッケージとなっています。ミュージシャンやラジカセから宇宙人、得体の知れない抽象的なビジュアルまで多彩です。「ブッとんだ」感じのパッケージデザインですが、それぞれのカラーパレットは黒・白プラス最大2色までに限られいます。そして、すべてのイラストが、垂直、水平、斜め45度のグリッドに沿って描かれていて、ビールのラインナップ全体での統一感が保たれています。

ちなみに、「Cloak +Dagger」は、「マントと短剣(cloak and dagger)」というフレーズをブランド名にしてものです。この表現は、スパイ小説やミステリーを指していたり、秘密の行いを意味したりします。

 

タフで美しいジャケットブランドのタフで美しいパッケージデザイン

メジャーブランドやファストファッションブランドの製品は、必ずしも期待どおりのクオリティには仕上がっていない、とひとりの男性がたち上げたブランドが「Frahm」です。自然が厳しいと同時に美しいように(tough and beautiful)、丈夫で美しい(tough and beautiful)全天候型ジャケットを男性向けに提供しています。

環境への負荷に配慮し、無駄を少しでも減らすために、オンラインでプリオーダー制としています。また、創業者本人の体験も踏まえ、売り上げの一部がメンタルヘルスの慈善団体「Mind(マインド)」に寄附されます。

 

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ブランディングを手がけたSupple Studioは、Frahmのコンセプトや製品の特徴を英国に生息する甲虫類でシンボライズしました。素朴な無地のカートンには、クワガタムシやカナブンの美しいクローズアップ写真が大きくレイアウトされています。消費者はカートンを見て触った瞬間に、Frahmの世界を実感し、注文してよかったと思うのではないでしょうか。

Supple Studioの公式サイトでは、同スタジオのポートフォリオが動画で紹介されています。紹介されている制作事例もそのプレゼンテーションの仕方もアイデアにあふれていて刺激的です。


【参考資料】
2D packaging – graphics | Design Week (https://www.designweek.co.uk/awards-2021-results-2d-packaging-graphics/)
Design, Packaging & Branding of E-Cloth – Pearlfisher (https://www.pearlfisher.com/work/e-cloth/)
E-Cloth | Chemical-Free Cleaning with Microfiber Cloths and Mops (https://uk.e-cloth.com)
B’s Bees (https://www.bsbees.uk/)
B’s Bees on Packaging of the World – Creative Package Design Gallery (https://www.packagingoftheworld.com/2020/10/bs-bees.html)
Cloak + Dagger (https://www.cloakanddaggerbrewing.com/)
THE BEER — Cloak + Dagger (https://www.cloakanddaggerbrewing.com/the-beer)
CLOAK + DAGGER – Lolly Studio (https://lollystudio.co.uk/portfolio/cloakanddagger/)
OUR NEW PACKAGING & ICONS – BY A CUSTOMER! – FRAHM Jacket (https://frahmjacket.com/blogs/blogs-podcasts/our-new-packaging-icons-by-a-customer)
Flexible, resilient and nimble | Supple Studio (https://supplestudio.com/)

※公式WEBサイト情報もあわせてご確認ください。



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